- 更新日 : 2024年12月24日
残業代とは?残業の種類や計算方法について解説
残業代とは、時間外労働について支払われた賃金を指す言葉です。時間外労働のほか休日労働、深夜労働などには割増賃金がつく点が特徴といえるでしょう。労働時間には会社が決めた「所定労働時間」と法律上の「法定労働時間」があり、法的には後者を超えた労働を時間外労働と呼びます。今回は残業代の定義や種類、割増賃金の計算方法を中心に解説します。
目次
残業代とは?
残業代とは、時間外労働に対して支払われる賃金のことです。残業手当や時間外手当、超過勤務手当など、会社ごとに名称が異なりますがそれらが指すものは同じです。
一般的に時間外労働とは、その会社が決めた「所定外労働時間」と法律上の「法定外労働時間」の2種類を指し、残業代は法定労働時間の枠内である所定労働時間を超えた場合に支払われます。法定労働時間は休憩時間を除いた1週40時間以内、1日8時間以内と定められています。
法律的な時間外労働となるのは、法定労働時間を超えた労働です。これに対して法定労働時間の枠内の所定労働時間を超えた労働は一般的に「法内超勤」「法定内残業」などと呼ばれます。
例えば、1日の所定労働時間が7時間の会社で、8時間労働をしたケースを例に挙げてみましょう。所定労働時間を超えた1時間分の労働に対する残業代が支払われますが、法定労働時間の1日の上限である8時間の枠内には収まっていることがわかります。超過した1時間について法律上の時間外労働とはならない点に注意しましょう。
法律上の時間外労働に対しての残業代には、割増賃金が上乗せされます。ただし、所定労働時間を超えた場合に割増賃金を支払うと就業規則などで規程しているケースでは、就業規則に則って割増賃金を支払う必要があります。
なお、大前提として法定労働時間を超える労働や休日の労働は禁止されている点に注意が必要です。災害などへの対応以外は、企業運営上どうしても起こってしまう不測の事態に対して「三六協定」を結び行政官庁に届け出ることで、時間外・休日労働が認められる点に留意しましょう。
残業にはどのような種類のものがある?
残業代を「割増賃金が上乗せされた賃金」と定義した場合、割増賃金が支払われる、いわゆる「残業」にあたる労働にはいくつかの種類があります。既に概要をお伝えしてきた時間外労働のほか下記の労働が該当します。
- 時間外労働
- 深夜労働
- 休日労働
- 休日深夜労働
それぞれの定義と概要をチェックしていきましょう。各種残業においては割増賃金率が異なる点がポイントです。
割増賃金だけを支払えばよいのではなく、働いた通常の労働時間の賃金を支払うことが前提であることにも注意しましょう。
残業(1):時間外労働
時間外労働とは、法律上の定義としては「1週40時間、1日8時間」、あるいは変形労働時間制において特定の労働時間を超えて労働した場合の労働のことです。
時間外労働を超えた労働に対しては、25%以上の割増賃金を支払う必要があります。月給制の労働者であれば、月給をその月の所定労働時間で割って時間あたりの賃金を出し、その賃金に法定時間を超えて働いた時間数と25%以上の割増率をかけて計算します。
また、1ヵ月あたり60時間を超える時間外労働については50%以上の割増賃金か、従来の25%の割増賃金分を超える部分については代替休暇を付与しなければなりません。現在、60時間超えの時間外労働への対応は大企業のみに求められており、中小企業は猶予されています。しかし、2023年3月末をもって中小企業への猶予期間が終了することが決まっています。
残業(2):深夜労働
深夜労働とは午後10時から午前5時までの間に使用者が労働者に労働させた場合、通常の賃金の25%以上の率で算出した割増賃金の支払いが義務付けられている労働のことです。厚生労働省が必要なケースであると認めた場合は、午後11時から午前6時までの時間帯になることもあります。
さらに、法定労働時間外に深夜労働をさせた場合は、割増対象賃金の50%以上(25%+25%)の割増率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
「時間外労働」でお伝えしたとおり、大企業には1ヵ月に60時間を超える法定外の残業に対して50%以上の割増率が課せられているため、この状況での深夜労働の割増率は75%以上(50%+25%)であることにも注意しましょう。
残業(3):休日労働
休日労働は、一般的には「法定休日」と「所定休日」の2種類の休日に対する労働をあらわす言葉です。土日休みの会社の場合、日曜日を就業規則上の法定休日としているケースがあります。この場合、土曜日は所定休日扱いになります。
割増賃金が払われるのは、労働基準法で決められた毎週少なくても1日の休日である法定休日に対してです。法定休日は必ず1週間に1日設定しなければならないものではなく、変形労働制を採用している場合には、4週間のうち4日以上の休日があれば法律違反とはなりません。
休日労働の賃金に対する割増率は35%以上と定められています。休日に8時間を超えて労働させた場合、深夜に及ばない限り35%の割増率を加算すればよく、さらに時間外労働分の割増率を加える必要はないことを覚えておきましょう。
残業(4):休日深夜労働
休日深夜労働とは文字通り休日の深夜の労働を指します。法定休日、所定休日いずれについても深夜に及ぶ労働をした場合は割増した賃金を上乗せして支払わなければなりません。ただし、割増賃金率が異なります。
法定休日においては休日労働への割増率35%に深夜労働の割増率25%を加えた60%以上の割増賃金が課せられます。一方、所定休日に深夜に及ぶ労働をした場合は深夜労働の割増率25%を上乗せした賃金を支払いましょう。
残業代の計算方法
ここでは残業代のうち、時間外労働に関する残業代の計算方法の概要を確認しましょう。
1時間あたりの賃金は、下記のように計算します。
1ヵ月間の平均所定労働時間の算出方法は下記のとおりです。
月給から賞与、家族手当、通勤手当、住宅手当などは除きます。ただし、手当はすべて除くわけではなく営業手当や役職手当などは含むことに注意が必要です。
下記のようなケースを想定して、計算方法を確認してみましょう。
- 基本給280,000円、家族手当8,400円、営業手当20,000円
- 年間所定休日数122日、1日の所定労働時間8時間
- その月に法定外残業した時間数5時間、法定内残業した時間数10時間(深夜労働はしていない)
(365日−122日)×8時間÷12ヵ月=162時間
(280,000円−8,400円+20,000円)÷162時間=1,800円(1時間あたりの賃金)
1,800円×5時間×1.25+1,800円×10時間=11,250円+18,000円=29,250円
上記のケースでは、当該月の残業代は29,250円となります。
計算方法の詳細や休日労働、深夜労働の計算方法については下記の記事をご確認ください。
残業代にルールはある?注意するポイント
残業代の支払いについてルールを誤解していたり、理解が十分でなかったりすると誤った対応を取ってしまう可能性があります。ここではいくつかの注意点を挙げていきます。
- 残業代を「15分未満切り捨て」として計算している
1日の労働時間の計算にあたり、端数を切り捨ててはいけません。1分単位で支払う必要があります。切り上げはOKですので、混同しないように気をつけましょう。
また、1ヵ月の労働時間を通算した際に30分未満の端数を切り捨てることは認められています。1日あたりの残業代の計算での切り捨てが法律に違反するという点を覚えておきましょう。
- 実際の残業時間に関係なく一律の金額を「業務手当」などとして支給している
残業代を一律で支給する場合、残業代を定額払いにする旨を就業規則に明記しておかなければなりません。また、実際の残業代が定額の手当よりも少ない金額だった場合には、その差額を支払う必要があります。
- その後に仕事をしていても、定時になると一斉にタイムカードを切らせている
定時になると強制的にタイムカードを切らせ、実際には残業をしているのに残業代を支払わないのは労働基準法に違反した対応です。
- 研修や懇親会は業務ではないので残業代を支払っていない
実際は参加が強いられる、欠席すると何らかの罰則を伴うといった業務時間終了後の研修や懇親会に対しては、残業代を支払わなければならない可能性があることに注意しましょう。
残業代の基本について理解しておこう!
残業代とは、時間外労働に対して支払われる賃金のことです。所定時間を超えた残業(法定内残業)、法定労働時間を超えた残業の2つがありますが、法定労働時間を超えた残業に対しては割増賃金の支払い義務があることに注意が必要です。
そのほか、休日労働や深夜労働についても割増した残業代を支払わなければなりません。割増賃金のルールを十分に理解しないまま対応すると、残業代の支払いトラブルにつながる可能性があります。この記事を参考にして、今一度残業代の基本ルールの確認をすることをおすすめします。
よくある質問
残業代とはなんですか?
主に時間外労働に対して支払われる賃金のことです。法定労働時間を超えた労働については割増賃金を支払う必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
残業にはどういった種類のものがありますか?
割増賃金の支払い義務がある労働を残業と定義した場合、時間外労働のほかに休日労働や深夜労働、休日深夜労働があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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