- 更新日 : 2025年7月24日
コアタイムとフレキシブルタイムとは?フレックスタイム制の基本を解説
子育てをしながら働く社員や、仕事をしながら親の介護をしている社員など、生活環境が多様化するなか、現在政府は「フレックスタイム制」を促進しています。
この制度は「コアタイム」と「フレキシブルタイム」を労使間で決定し、それに基づいて運用されなければなりません。ここではスムーズにこの制度を導入するためのコアタイムやフレキシブルタイムの考え方、導入に必要な要件について解説します。
目次
フレックスタイム制におけるコアタイムの決め方
フレックスタイム制とは?
フレックスタイム制は労働基準法第32条の3に基づいた労働時間の管理方法です。一般的に企業では「午前8時から午後5時まで」「午前9時から午後6時まで」というように労働者が勤務する時間を定め、労働者はそれに従って働きます。
これに対してフレックスタイム制では1日当たりの労働時間を固定しません。一定期間の総労働時間だけを決めておき、労働者はその労働時間の範囲内でいつ働くかを自分の裁量で決めます。そのため労働時間を固定する場合よりも、各労働者の事情に応じた働き方がしやすくなります。
フレックスタイム制促進の背景
フレックスタイム制は厚生労働省によって、促進されています。グローバリゼーションの進展により経済状況はめまぐるしく変化するようになりました。
これに日本がついていくためには、これまで以上に各労働者の個性・能力を活用する必要があります。また労働者自身の生活も以前とは大きく変わり、親の介護が必要な場合や、共働き家庭で子どもの送迎が必要な場合など、様々な生活パターンが増えてきています。
このような状況に対応するためには固定的な労働時間管理ではなく、各労働者の裁量に任せるフレックスタイム制の導入が必要になるのです。
フレキシブルタイムとコアタイム
フレックスタイム制には2種類の労働時間があります。それがフレキシブルタイムとコアタイムです。
フレキシブルタイムとは労働者が自身の裁量で決められる時間帯のことです。労働者は定められたフレキシブルタイムの中から、自分が働きたい(あるいは働くべき)時間を決定します。裁量で決められる時間が短いと、フレックスタイム制とはみなされなくなるため、フレキシブルタイムをどの程度認めるかがフレックスタイム制のポイントとなります。
これに対してコアタイムとは労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯のことです。フレックスタイム制においてもこのコアタイムには必ず勤務していなければなりません。定例会議など固定的な業務がある場合はコアタイムを設定することで対応できます。
(出典:フレックスタイム制の適正な導入のために|東京労働局労働基準部・労働基準監督署)
こちらは東京労働局が提示するフレックスタイム制の基本モデルです。間に休憩時間を挟みながら10時から15時をコアタイムとし、6時から10時までと15時から19時までをフレキシブルタイムとしています。
フレックスタイム制採用に必要な2つの要件
フレキシブルタイムとコアタイムの設定をしただけではフレックスタイム制を導入したことにはなりません。「就業規則への明記」と「労使協定の締結」という2つの要件を満たす必要があります。
就業規則への明記
フレックスタイム制を導入するには就業規則にその旨を明記しなければなりません。具体的には次のような内容です。
(出典: フレックスタイム制の適正な導入のために|東京労働局労働基準部・労働基準監督署)
ここで明記する内容はそれぞれ労使協定であらかじめ定めておく必要があります。
労使協定で定めるべき6項目
労使協定で定めておかなければならない項目は以下の6つです。
1.対象となる労働者の範囲
→各人、各課、各グループなどで定めます。「全従業員」としても構いませんし、フレックスタイム制が求められる部署が営業部だけなら「全営業部職員」としても構いません。
2.清算期間
→フレックスタイム制において労働者が勤務するべき時間を定める期間を、清算期間と呼びます。賃金の計算に合わせて1ヶ月に設定するのが一般的です。なお清算期間は最長1ヶ月となっています。
3.清算期間における起算日
→清算期間がどの期間かを明確にするために「毎月○日」というように起算日を具体的に定めておく必要があります。
4.清算期間における総労働時間
→清算期間における総労働時間とはいわゆる所定労働時間を指します。清算期間を平均した時に1週間の労働時間が40時間以内になるよう定めなければなりません。具体的な総労働時間を定めるためには以下の条件式を使います。
清算期間における総労働時間≦清算期間の暦日数/7日×1週間の法定労働時間
5.標準となる1日の労働時間
→標準となる1日の労働時間とは、年次有給休暇を取得した際に1日を何時間労働として賃金計算するかを決めるためのものです。
6.フレキシブルタイムとコアタイム
→1~5を踏まえたうえで、フレキシブルタイムとコアタイムを設定します。
のちのち余計なトラブルを招かないよう、労使協定の段階でしっかりと話し合い、決定するようにしましょう。
まとめ
フレックスタイム制は各労働者の生活環境等に応じた働き方を実現するための労働時間の管理制度です。
しかし労働時間の管理は賃金計算に直結するため、適切な運用には事前にしっかりと労使間でルールを決めておく必要があります。安易に導入せず、導入前には自社の状況に本当に必要な制度かどうかを吟味するようにしましょう。
関連記事
・残業代計算、正しくできていますか?基本的な考え方を解説
・みなし残業は本当に従業員にとってメリットなのか?残業代を支給給与に含む意味とは
・雇用契約書は必要か不要か?事業者が知っておくべき基礎知識
よくある質問
フレックスタイム制とは?
フレックスタイム制は労働基準法第32条の3に基づいた労働時間の管理方法で、1日当たりの労働時間を固定しない制度です。 詳しくはこちらをご覧ください。
フレックスタイム制採用に必要な要件は?
フレックスタイム制を導入するには「就業規則への明記」と「労使協定の締結」という2つの要件を満たす必要があります。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
自己都合の退職でも有給消化しても良い?会社に断られた場合や円満に進めるポイント
退職を考えている方の中には、「自己都合退職でも有給休暇を消化できるのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。有給休暇は労働者の正当な権利であり、退職の理由に関わらず取得することが可能です。しかし、会社側の理解を得られず、有給消化を断…
詳しくみる副業禁止は法律的にOK?解禁されない理由や就業規則との関係についても解説!
経済が不安定な中、副業を検討されている方も多いかもしれません。しかし、副業OKの企業も増えている一方、就業規則で労働時間外の副業や兼業を制限する会社も多いのが現状です。公務員の副業は禁止されてますが、民間企業における制限は法律的に許されるも…
詳しくみる年次有給休暇の取得義務化~企業がとるべき対応策~
現行の年次有給休暇の概要と取得義務について 年次有給休暇とは、労働者の心身疲労回復や労働力の維持はもちろん、ゆとりのある生活を目指して所定休日以外に一定の休みを付与する制度です。年次有給休暇は労働基準法第39条で定められた労働者の権利であり…
詳しくみる契約社員の就業規則は必要?雇用形態によって変わること
就業規則を作成する場合、正社員の就業規則はあっても、契約社員やアルバイト・パートタイマーなどの就業規則はないという会社があります。 正社員と契約社員など、雇用形態によって労働条件が異なる場合には、その雇用形態に応じた就業規則の作成が必要にな…
詳しくみる27連勤は違法?労働基準法に基づき分かりやすく解説!
27連勤ともなると、心身への負担は避けられず、日々の疲れが蓄積していくことで特有のきつさを感じます。 本記事では 「27連勤は違法なのか?」 という疑問を労働基準法に基づいて分かりやすく解説します。法令遵守はもちろん、従業員の健康や働きやす…
詳しくみる就業規則における有給休暇の規定とは?記載例や年5日の取得義務化についても解説
年次有給休暇(有給休暇)は、労働者の心身のリフレッシュや生活充実に不可欠な権利であり、会社の生産性向上にも繋がる重要な制度です。その具体的なルールは就業規則で定められますが、複雑でわかりにくい面もあります。 本記事では、有給休暇の基本から各…
詳しくみる