- 更新日 : 2025年6月10日
健康保険の傷病手当金とは
健康保険に加入していれば、被保険者や家族がケガをしたり病気になったりしたとき、一部の負担で治療を受けることができます。お医者さんが処方してくれた薬も同様です。
これを「病養の給付」といい、名称を知らない人であっても、病院に行った際、健康保険証を提出しさえすれば、一部の負担金で治療を受けることができるということを知らない人は少ないでしょう。
病院にかかったときに70歳未満の被保険者の場合は3割負担で医療を受けられるのはこの制度があるためです。そのほかにも、健康保険にはさまざまな制度があります。医療費が高額になりそうなときの「限度額適用認定」や高額な医療費を払ったときの「高額療養費」、病気やケガにより会社を休んだ場合の「傷病手当金」などがあります。
このうち今回は「傷病手当金」について解説します。
傷病手当金のあらまし
傷病手当金とは、病気やケガで出勤できず給料をもらえない場合に、被保険者とその扶養家族の生活を保障するために扶養家族の生活を保障するために設けられた制度で、健康保険から支払われるお金のことを指します。
傷病手当金は非課税で、社会保険料控除の対象です。なお、傷病手当金を受給中であっても社会保険料は請求されます。
ただし、任意継続被保険者の方は傷病手当金支給の対象外であり、傷病手当金は支給されませんので注意しましょう。なお、任意継続被保険者とは、会社を辞めて社会保険の資格を喪失した後も、一定条件を満たすことにより社会保険を継続している方です。
受けとるための要件は?
傷病手当金は、会社を休まざるを得なかったときに健康保険から支給されるものですが、例えば1日休んだだけでは適用されません。
被保険者が病気やケガで出勤できず、欠勤日が連続して3日間あった場合の4日目過ぎてから休んだ日に対して支給されるものです。
会社を休んでいても、病院へ行かずに自宅で休養した場合などには適用されません。保険診療でも自由診療でもかまいませんが、診療した事実があることが支給の要件に掲げられています。
受給期間について
4日以降から最長1年6カ月間まで支給されます。ただし、会社から傷病手当金の金額よりも多い給料が支給された場合、傷病手当金は支給されないため注意が必要です。
支給される金額について
支給額は、原則として、病気やケガで欠勤した日1日にごとに、標準報酬日額の3分の2が支払われます。ただし、以下の場合は支給額が調整されます。
・事業主から給料を受けとっている場合
・同一の傷病により障害厚生年金を受給している場合(国民年金の障害基礎年金を受けるときは、その合算額)
・退職後、老齢厚生年金や老齢基礎年金または退職共済年金などを受給している場合 (複数の老齢給付を受けるときは、その合算額)
以上の支給日額が、傷病手当金の金額を上回る場合は、傷病手当金は支給されません。一方で、傷病手当金の日額より少ないときは、その差額が支給されます。
退職後の支給条件について
傷病手当金を受けとっている途中に退職することになった場合、あるいは退職日に傷病手当金を受けとるための要件を満たしている場合、社会保険資格喪失の前日(つまり退職日)まで社会保険の被保険者期間が継続して1年以上あれば、傷病手当金を継続して受けとることができます。
在職中の手続きは事業主が行いますが、退職後は自分で社会保険事務所か健康保険組合に直接出向き、手続きを行います。
まとめ
以上、見てきたように、健康保険に加入していれば、病気やケガなどの治療、療養が必要になり、仕事復帰がすぐにかなわない場合に給料が支払われなくても被保険者と家族の生活の保障のために設けられているのが傷病手当金です。
支給の適用となるためには、健康保険組合のHPなどで、一定の条件があることを確認しておき、必要な状況になったときでも慌てずに利用できるようにしておきましょう。
また、この制度は、退職後の方でも条件によっては利用可能です。社会保険事務所あるいは健康保険組合に相談することになりますが、自分でも制度のあらましを知っておくと、相談しやすいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
育児休業等終了時報酬月額変更届とは?適用条件や記入方法をわかりやすく解説
育児休業から復帰したあと、思ったより手取りが少ないと感じる方もいるでしょう。これは社会保険料が、育休前の給与をもとに計算されているのが原因です。 育児休業等終了時報酬月額変更届という制度を利用すれば、育休後の実際の給与にあわせて標準報酬月額…
詳しくみる生命保険への加入は必要?社会保険をはじめとする社会保障制度との違いも解説!
日本では、9割近い世帯が生命保険に加入しているといわれています。テレビでも、生命保険のCMを見ない日はありません。 これほど普及している生命保険ですが、本当に加入する必要があるのでしょうか。 本稿では生命保険の概要、社会保険との違い、一部で…
詳しくみる健康保険とは?被用者保険と国民健康保険の違い
健康保険は、日本の医療制度を支える重要な保険制度です。会社員や公務員が加入する政府管掌健康保険、健康保険組合、共済組合のほかに、個人事業主や自営業者が加入する国民健康保険があります。 ここでは、日本の健康保険制度の種類や加入対象者について解…
詳しくみるうつ病の休職期間の目安は?過ごし方や退職・復職のポイントも解説!
うつ病による休職は、企業の人事担当者にとって慎重な対応が求められる課題です。労働者の健康と職場の生産性のバランスを取りながら、適切な休職期間の設定や復職支援を行うことが重要となります。 本記事では、うつ病の休職に関する基本的な知識から、休職…
詳しくみる社会保険の種類について解説!一覧表付き
社会保障制度のなかでも最も身近に感じるのが社会保険制度といえるでしょう。病気やケガの際には医療保険や労災保険、老後の生活には公的年金、会社退職時には雇用保険と、誰にとっても頼りになります。 企業の人事労務担当者にとって社会保険の知識は必須で…
詳しくみる引越し時のマイナ保険証の住所変更はどうする?手続きの流れや必要書類を解説
マイナ保険証とは、「マイナンバーカードの健康保険証利用」の略称です。マイナンバーカードを事前に登録することで、健康保険証として病院受付で利用できます。 政府はマイナ保険証への移行を段階的に進めており、2024年12月2日以降は原則として新た…
詳しくみる