• 更新日 : 2025年11月21日

カウンセリングが必要な人に見られるサインとは?従業員の変化に気づくポイントをご紹介

「最近、部下の元気がない」「仕事のミスが増えた」など、従業員の些細な変化に気づき、どう対応すべきか悩んでいる経営者や人事担当者の方もいるのではないでしょうか。このような状況は、カウンセリングが必要な人が出しているサインかもしれません。従業員の変化を見過ごしてしまうと、本人の心身の不調だけでなく、組織全体の生産性低下にもつながる可能性があります。この記事では、カウンセリングが必要な人に見られるサインを具体的に解説し、企業としてどのように対応すべきかのポイントをご紹介します。

カウンセリングが必要な人に見られるサイン

従業員の言動や様子に以下のような変化が見られたら、カウンセリングを検討すべきサインかもしれません。これらのサインは一つだけでなく、複数重なって現れることもあります。普段の様子と比較して、「いつもと違う」と感じることが重要な気づきの第一歩です。

精神的なサイン

心の内面の変化は、会話や表情に現れます。特に、ネガティブな感情の表出が増えたり、逆に感情そのものが見えにくくなったりした場合は注意が必要です。職場全体の雰囲気に影響を与えることもあるため、早期の気づきが求められます。

  • 不安やイライラを口にすることが増えた これまで穏やかだった従業員が、些細なことでイライラしたり、将来の仕事やキャリアに対して過度な不安を口にしたりするようになります。会議での口調が強くなる、同僚への当たりが厳しくなるといった変化が見られます。
  • 気分の落ち込みが激しく、元気がない 朝から明らかに元気がなく、挨拶の声に覇気がなかったり、好きだった業務への関心を失ったりします。周囲との会話を避け、一人でいることが増えるのも特徴です。表情が乏しくなり、笑顔が見られなくなることもあります。
  • 集中力がなく、上の空であることが多い 会議中にぼーっとしていたり、簡単な指示を何度も聞き返したりするなど、業務への集中力低下が目立ちます。これにより、これまででは考えられなかったようなケアレスミスが増えることもあります。

身体的なサイン

精神的なストレスは、身体の不調として現れることが少なくありません。本人も原因がわからず、内科などを受診しても異常が見つからないケースもあります。勤怠状況と合わせて、健康状態の変化にも目を配ることが大切です。

  • 頭痛や腹痛など、原因不明の体調不良を訴える 「頭が痛い」「お腹の調子が悪い」といった不定愁訴が増えます。特定の曜日や業務の前に症状が出やすい場合、精神的な負担が原因である可能性が考えられます。
  • 寝不足が続いているようで、顔色が悪い 目の下にクマができていたり、顔色が悪かったりするなど、明らかに疲れている様子が見られます。「最近よく眠れていますか?」といった声かけも、状況を把握するきっかけになります。
  • 食欲が極端に増えたり、減ったりしている ストレスによって食欲がなくなる、あるいは過食に走るケースがあります。ランチにまったく手をつけなかったり、逆にデスクで常に何かを食べていたりするような極端な変化は、注意すべきサインです。

行動面のサイン

精神的な不調は、具体的な行動の変化として客観的に捉えやすいサインです。勤怠の乱れや業務パフォーマンスの低下は、組織にとっても見過ごせない問題であり、迅速な対応が求められます。

  • 遅刻や欠勤が増えた 特に理由の不明確な遅刻や、月曜日の朝など特定のタイミングでの欠勤が目立つようになります。勤怠の乱れは、心身のエネルギーが低下しているサインである可能性が高いです。
  • 仕事のミスや抜け漏れが目立つ 集中力の低下に伴い、報告・連絡・相談の漏れや、資料作成のミスなどが増加します。これまで丁寧な仕事ぶりで評価されていた従業員にこのような変化が見られた場合は、特に注意が必要です。
  • 同僚とのコミュニケーションを避けるようになった 休憩時間やランチに同僚と話さなくなったり、社内イベントへの参加を断ったりするなど、孤立する傾向が見られます。チームワークを阻害し、職場の雰囲気を悪化させる原因にもなりかねません。

なぜカウンセリングが必要な状況になるのか

従業員がカウンセリングを必要とする背景には、様々な要因が考えられます。特に職場環境は、従業員のメンタルヘルスに大きな影響を与えます。個人の問題として片付けるのではなく、組織として改善できる点はないかという視点を持つことが重要です。

職場の人間関係

多くのビジネスパーソンにとって、職場の人間関係はストレスの大きな原因となり得ます。上司との関係、同僚との連携、部下の指導など、様々な立場で人間関係の悩みは発生します。特に、コミュニケーション不足による誤解や、価値観の違いによる対立は、精神的な負担を増大させ、孤立感を深める原因となります。

過度な業務負担

長時間労働や過大なノルマ、責任の重圧は、心身を疲弊させる直接的な原因です。特に中小企業では、一人ひとりが担う業務範囲が広く、代わりがいない状況も少なくありません。「自分が休むと仕事が回らない」というプレッシャーから、無理を重ねてしまう従業員もいます。このような状況が続くと、達成感よりも疲労感が上回り、燃え尽き症候群(バーンアウト)に陥るリスクも高まります。

将来への不安

会社の業績や自身のキャリアパス、評価制度に対する不満や不安も、精神的なストレスにつながります。「このままこの会社にいて大丈夫だろうか」「自分のスキルは正当に評価されているのか」といった漠然とした不安は、仕事へのモチベーションを低下させ、自己肯定感を損なう原因となります。変化の激しい時代において、将来の見通しが立てにくいことが、従業員の心を不安定にさせることがあります。

カウンセリングの効果

カウンセリングは、単に悩みを聞いてもらうだけの場ではありません。専門家であるカウンセラーとの対話を通じて、自分自身や置かれている状況を客観的に見つめ直し、問題解決に向けた具体的な一歩を踏み出すためのサポートを受けることができます。

感情の整理と客観視

自分一人で悩みを抱えていると、思考が堂々巡りになり、感情的に物事を捉えがちになります。カウンセラーという第三者に話すことで、もつれていた感情や思考が整理されます。また、専門家からの客観的なフィードバックを得ることで、これまで気づかなかった自分の考え方の癖や、問題の新たな側面を発見でき、冷静に状況を捉え直すきっかけになります。

ストレス対処法の習得

ストレスの原因がすぐに取り除けない場合でも、そのストレスとどう向き合い、どう付き合っていくかを学ぶことは可能です。カウンセリングでは、個々の状況や特性に合わせたストレス対処法(コーピング)をカウンセラーと一緒に探していきます。例えば、物事の捉え方を変える認知行動療法的なアプローチや、リラクゼーションの方法などを学び、実践することで、ストレスに対する抵抗力を高めることができます。

自己肯定感の回復

仕事での失敗や人間関係の悩みは、自信を失わせ、自己肯定感を低下させる大きな原因となります。カウンセリングでは、一方的に評価されたり否定されたりすることのない、安全で安心できる空間が提供されます。その中で自分の気持ちや考えを自由に話す体験は、それ自体が「自分は受け入れられる存在だ」という感覚につながり、失われた自己肯定感を回復させる助けとなります。

カウンセリングに関するQ&A

従業員にカウンセリングを勧めたり、自社で導入を検討したりする際に、経営者や人事担当者が知っておくべき基本的な知識は少なくありません。ここでは、よくある疑問についてわかりやすく解説します。

心療内科との違いは?

心療内科や精神科は、医師が診断を行い、投薬などの医学的治療を主に行う「医療機関」です。うつ病や適応障害といった精神疾患の診断や治療が目的となります。一方、カウンセリングは、主に臨床心理士や公認心理師などのカウンセラーが、対話を通じて悩みや問題の整理、自己理解を深めるサポートを行います。病気の治療というよりは、心理的な問題解決や個人の成長を目的としており、医療行為は行いません。不調の原因が精神疾患の可能性がある場合は、医療機関への受診が優先されます。

料金の目安は?

カウンセリングは原則として健康保険が適用されない自由診療のため、料金は全額自己負担となります。料金は機関やカウンセラーによって大きく異なりますが、一般的な相場としては、対面カウンセリングで1回50分〜60分で8,000円〜15,000円程度です。近年普及しているオンラインカウンセリングは、場所代などがかからないため、比較的安価な傾向にあり、5,000円〜10,000円程度が目安となります。企業がEAP(従業員支援プログラム)を契約している場合は、従業員は無料でカウンセリングを受けられることもあります。

カウンセラーの選び方は?

信頼できるカウンセラーを選ぶことは、カウンセリングの効果を大きく左右します。まず確認したいのが資格です。日本では「臨床心理士」や、2017年施行の公認心理師法によって新設された国家資格である「公認心理師」が、心理職の専門性を示す代表的な資格です。また、カウンセラーにもそれぞれ得意な分野(キャリア、人間関係、ストレス管理など)があります。相談したい内容とカウンセラーの専門性が合っているか、ホームページなどで確認することが重要です。最終的には、カウンセラーとの相性も大切なので、初回面接などで実際に話してみて、安心して話せる相手かを見極めることをお勧めします。

従業員の変化に気づいた企業の対応

従業員のサインに気づいた際、個人の問題として放置するのではなく、企業として適切に対応し、サポートする体制を整えることが重要です。これは、従業員を守るだけでなく、組織全体のリスク管理にもつながります。

相談しやすい環境づくり

まず重要なのは、従業員が「困ったときには相談していいんだ」と感じられる心理的安全性の高い職場環境です。管理職が普段から部下の様子に気を配り、気軽に声をかけられる雰囲気を作ることが基本となります。また、相談した内容が本人の許可なく他人に漏れることがなく、相談したことで人事評価などに不利益な影響が出ないことを、会社として明確に保証し、周知することが不可欠です。

外部相談窓口(EAP)の活用

社内の人間には相談しにくいという従業員も多いため、外部の専門機関と契約し、相談窓口を設けるEAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)の活用が有効です。EAPは、従業員が匿名で電話やオンライン、対面で専門家に相談できるサービスです。企業は従業員の相談内容を知ることはできませんが、全体の利用傾向などの報告を受けることで、組織の課題把握にも役立てられます。中小企業向けの安価なプランも増えており、メンタルヘルス対策の有効な一手となります。

管理職への教育(ラインケア研修)

部下のメンタルヘルスケアにおいて、直属の上司である管理職の役割は非常に大きいです。部長や課長など、職場の管理職が主体となって行うメンタルヘルスケアを「ラインケア」と呼びます。管理職が部下の変化に早期に気づき、適切な声かけや業務量の調整、専門機関への相談を促すといった対応ができるよう、会社として研修の機会を設けることが重要です。2022年4月から中小企業にも義務化されたパワーハラスメント防止措置と合わせ、管理職のコミュニケーションスキル向上は、現代の企業にとって必須の取り組みと言えるでしょう。

カウンセリングが必要なサインを見逃さないために

カウンセリングが必要な人のサインは、個人からのSOSであると同時に、職場環境の改善点を示唆する重要な指標です。従業員の変化にいち早く気づき、専門家のサポートも活用しながら、誰もが安心して働ける職場環境を整えることが、企業の持続的な成長につながります。本記事でご紹介したサインや企業の対応ポイントを参考に、個人の問題で終わらせるのではなく、組織全体でメンタルヘルスケアに取り組む文化を醸成していきましょう。


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