- 更新日 : 2025年4月3日
外国人を採用するときに身元保証人は必要?身元保証書の書き方も解説
外国人を採用するときに、必ず身元保証人が必要というわけではありません。法律でも義務付けられておらず、会社の任意で要求できます。
ただ「どのような人が身元保証人として適当?」「身元保証書も提出してもらう必要がある?」などと疑問に思う人もいるでしょう。
そこで本記事では、外国人を採用する際の身元保証人として適当な人物や身元保証書の書き方などを解説します。
目次
外国人の身元保証人とは
外国人の身元保証人とは、本人が安定的に・継続的に入国目的を達成できるよう、トラブルが起きたときや経済的に困窮したときにサポートする人のことです。日本の法令を遵守させるといった生活指導も行います。
ただ、身元保証人に対する法的な拘束力はありません。もし身元保証人としての十分な責任を果たしてもらえなくても、今後の身元保証人としての社会的信用を失うだけに留まります。つまり、身元保証人が負うのは道義的責任です。
また、身元保証人を立ててもらうなら、日本人もしくは永住権を持つ外国人が望ましいです。経済的なサポートをする可能性もあるため、安定した収入がある方が良いでしょう。
外国人を採用する際に身元保証人は必要?
外国人を採用する際に、必ず身元保証人が必要なわけではありません。身元保証人が必要となるのは「永住者」「日本人の配偶者等」などの在留資格を申請するときです。
就労するときの身元保証人に関しては法律でも義務付けられていないため、身元保証人を立ててもらうかについては会社の自由です。採用する外国人の業務内容や職位などを考慮して、身元保証人を立ててもらうかどうか判断すると良いでしょう。
また、身元保証人を立ててもらう場合は、就業規則に記載しておくのが望ましいです。身元保証人になれるのはどのような人物か、身元保証人を立てられないときの対応などを定めておくとトラブルを防げます。
身元保証人に適した人物とは?
外国人が就労する際の身元保証人として適しているのは、外国人が業務上で損害を出して本人だけでは賠償金を払い切れないときに、代わりに補填できる人です。
賠償金を補填できるかどうかを考慮した場合、身元保証人は収入が安定した日本人になってもらうのが望ましいです。本人の両親や知人だと必要なときに連絡が取れない可能性があるため、注意してください。
また、「永住者」や「日本人の配偶者等」などの在留資格を持つ外国人を採用する場合は、在留資格の申請時に立てた身元保証人と同一人物を採用時に求めるのも良いでしょう。在留資格の申請に通っている人は、実在する人物で経済的にも安定している可能性が高いためです。
なお、身元保証人として適している条件として挙げた「収入が安定している」「日本人である」などは一例です。会社側で身元保証人の条件を決める際の参考にしてください。
身元保証書の書き方
身元保証人に関する情報は、身元保証書に記載してもらいます。身元保証人の項目は、採用した外国人ではなく必ず保証人自身に記載をお願いしてください。
身元保証書の決まった形式はありません。マネーフォワードにある「身元保証書のテンプレート」を例として紹介します。
上記のテンプレートの項目の他にも、保証人の欄に「国籍」「電話番号」「職業」などの項目を設けても良いでしょう。緊急時の連絡先や安定した収入の有無などを確認できます。収入の額を重視するなら、給与明細や源泉徴収票のコピーなども一緒に提出してもらうのもおすすめです。
また、保証内容には身元保証人に責任を負ってもらいたい内容について、保証期間には身元保証人が責任を負う期間について記載します。なお、詳しくは後述しますが、2020年の改正民法の施行に伴い、身元保証書には、身元保証人が責任を負う限度額である極度額の記載が必要となっています。忘れずに記載するようにしましょう。
「身元保証書のテンプレート」はWord形式であるため、変更や追記が可能です。会社の方針や業務内容に応じて自由にご活用ください。
外国人の身元保証人に関する注意点
外国人の身元保証人に関する注意点をいくつか紹介します。身元保証人を要求する前に確認しておいてください。
身元保証の契約期間は5年を超えてはならない
身元保証人の契約期間は、5年を超えてはならないため注意してください。また、身元保証人の契約期間を定めない場合は、自動的に期間が3年となります。期間を定めるとしても5年を超えてはなりません。
身元保証の契約を締結して3年が経ったときはプラス2年までなら延長可能ですが、5年が経ったときは延長できません。5年経ったときは、身元保証書を再提出してもらう必要があります。最初の契約時に自動更新の記載をしても無効となります。
もし、採用した外国人が自身で責任を取れる状態になっていれば、再提出してもらう必要はないでしょう。勤務態度や現在の収入などを踏まえて、身元保証人と再契約するか決めてください。
身元保証人に責任が生じる事態が起こった場合は連絡する必要がある
以下の状況になったときは、すぐに身元保証人に連絡する必要があると「身元保証に関する法律」によって定められています。
- 採用した外国人が何か問題を起こして、身元保証人に責任が発生しそうな場合
- 転勤や海外赴任などで外国人の勤務地が変わって、身元保証人が監督できなくなりそうな場合
また、身元保証人が上記の内容の連絡を受けたり、身元保証の対象者から知らされたりしたとき、身元保証の契約を解除可能です。会社側は契約の解除を拒否できません。
従って、身元保証人と契約を締結して賠償金を補填してもらえるのは、採用した外国人が損害を出したと知ったうえで身元保証人が契約を解除しなかったときのみです。
身元保証人に賠償額の上限について合意してもらう必要がある
身元保証人に賠償金を補填してほしいときは、事前に賠償額の上限(極度額)について合意してもらう必要があります。合意をもらったうえで、身元保証書に賠償額の上限を明記してください。もし賠償額の上限を記載しなければ、身元保証書は無効になると民法の第465条の2で定められています。
マネーフォワードのテンプレートを使用する場合は、「保証内容」の欄に追記するか「賠償額の上限」のような欄を設けて記載すると良いでしょう。
なお、賠償額の上限金額に関しては民法で規定されていないため、会社と身元保証人の話し合いで決められます。一般的には、100万円~1,000万円の範囲で定めている会社がほとんどです。
採用予定の外国人に身元保証人がいない場合の3つの対処法
会社側が身元保証人を要求しても、採用した外国人が身元保証人を立てられないときがあります。身元保証人を用意できない場合の3つの対処法を解説します。
1、理由書を記入してもらう
一つ目は、身元保証人を立てられない「理由書」を記入してもらう方法です。理由書の内容を確認して、身元保証人がいなくても採用できるか判断しましょう。
日本に親戚や知人がいない・日本人の知人はいるが拒否されたなどの理由で、会社側が納得できるかが重要です。
理由書を提出してもらっても内容に納得できなかったり、業務の内容的に身元保証人が不在である不安が拭えなかったりする場合は、以下で紹介する方法を試してみてください。
もしくは、内定を出す前に身元保証人を立てられない・理由書を提出できないと言われたときは、採用を見送るのも一つの手です。従業員の採用自体が会社の業績や取引先との関係などに大きく影響する可能性があるため、慎重に判断しましょう。
2、会社の責任者や採用担当者が身元保証人になる
二つ目は、会社の責任者や採用担当者が身元保証人になる方法です。外国にしか親戚や知人がいないときは、会社の役員・管理職・採用担当者などが代わりに身元保証の契約を締結できます。
もし、役員・管理職・採用担当者も外国籍である場合は、永住権を獲得しているか確認しましょう。「永住者」の在留資格は在留期間が無期限であるため、身元保証の契約期間に関して混乱やトラブルが生じにくいです。
なお、会社の責任者や採用担当者と身元保証の契約を締結するまえに、身元保証に関して丁寧に説明しておくと親切です。どのような責任を負う可能性があるか、賠償額の上限、採用予定の外国人が問題を起こしても契約を解除できることなど、しっかり伝えておきましょう。
3、外国人在留支援センターに相談する
三つ目は、出入国在留管理庁が運営する「外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)」に相談する方法です。
外国人だけでなく外国人と関係する個人や会社も相談できるため、適当な身元保証人がいない場合の対応方法について聞いてみましょう。また、会社の責任者や採用担当者が身元保証人になることに際して、何か懸念点があれば一緒に相談するのもおすすめです。
東京都にある出入国在留管理庁の窓口へ行くか、電話でも相談できます。詳しくは、「外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)」の公式ページをご確認ください。
外国人の身元保証人に関するQ&A
外国人の身元保証人に関するQ&Aを紹介します。
身元保証人を立ててもらうなら何人必要?
身元保証人を立ててもらうなら、1人もしくは2人が一般的です。安定した収入のある日本人なら1人、日本人だが正社員ではないならプラスでもう1人など、会社側で条件を決めておきましょう。
また、身元保証人を2人立ててもらう場合、それぞれの保証人と賠償額の上限について必ず合意をもらってください。どちらか一方だけでは、身元保証書が無効になる可能性があります。
身元保証書の他に必要な書類はある?
身元保証書の他に、給与明細や源泉徴収票などのコピーも一緒に提出してもらうのが望ましいです。賠償請求の可能性を考慮して、身元保証人に十分な収入があるか確認するためです。
一般的に、給与明細なら直近2ヶ月分、源泉徴収票なら昨年度の分を提出してもらいます。年収が400万円以上ある正社員もしくは公務員であれば、十分な収入があると言えるでしょう。
身元保証書の提出を拒否されたらどうすべき?
身元保証書の提出や身元保証人を立てることを拒否されたら、拒否した本人と面談してみましょう。なぜ拒否したのか・なぜ提出できないのかなどを、直接もしくはメールなどで聞いてみるのがおすすめです。
正当な理由がなかったり、理由すら教えてもらえなかったりする場合は、採用を見送ることも選択肢の一つです。ただし、内定を出したあとに取り消すと、訴訟問題に発展する可能性もあるため注意してください。
身元保証人が存在しなかった場合はどうすべき?
身元保証書に記載された身元保証人が存在しなかった場合は弁護士に相談すべきです。身元保証人に損害賠償の請求をしたときに偽造されており、賠償金を請求できないことが判明すると、裁判に発展する可能性もあります。
偽造が心配な人は、身元保証書や収入証明の書類と併せて、本人確認ができる書類も提出してもらうのが良いでしょう。運転免許証・マイナンバーカード・パスポートなど、顔写真付きの書類がおすすめです。
外国人を採用する際に身元保証人を要求する場合は身元保証書もきちんと書いてもらおう
身元保証人は、採用予定の外国人がトラブルに遭ったときに助けてもらったり、損害を出したときに賠償金を補填してもらったりする重要な人物です。
身元保証人として適当なのは、安定した収入のある日本人です。何かあったときに連絡がつきやすく、外国人が経済的に困窮した場合にサポートしてもらえる可能性があります。
身元保証書もきちんと書いてもらったうえで外国人の採用を決定してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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