- 更新日 : 2024年12月13日
出勤簿のペーパーレス化とは?手書きは違法?電子化の進め方を解説
企業は、従業員の始業・終業時刻を正確に把握しなければなりません。正確に把握できないと正確な労働時間を把握できず、給与計算の誤りにつながってしまいます。しかし、手書きの出勤簿ではミスが生じやすいでしょう。そこで当記事では、出勤簿のペーパーレス化について解説します。
目次
出勤簿のペーパーレス化とは?
出勤簿とは、労働者名簿や賃金台帳と並んで「法定三帳簿」に位置付けられている帳簿です。法定三帳簿は、企業に作成および保存が義務付けられており、必ず作成しなければなりません。
出勤簿は、企業が従業員の労働時間を把握・管理するために用いられます。出勤簿の記載事項は、以下の通りです。
- 出勤日および労働日数
- 始業・終業の時刻および休憩時間
- 日ごとの労働時間数
- 時間外労働(法定外残業)を行った日付や時刻、時間数
- 休日労働を行った日付や時刻、時間数
- 深夜労働を行った日付や時刻、時間数
出勤簿は紙媒体だけでなく、電子的な方法によって作成しても構いません。これは、ほかの法定三帳簿も同様です。そのため、現在では多くの企業で出勤簿の電子化が行われています。このような出勤簿の電子化を「出勤簿のペーパーレス化」と呼びます。
出勤簿は、保存も義務付けられています。保存期間は5年と定められていますが、現在は経過措置として3年の保存で足ります。なお、保存の起算日は、記録の完結日(従業員が最後の出勤を行った日)です。ただし、完結日より記録に関する賃金の支払い期日が遅い場合には、当該支払い期日が起算日となります。
出勤簿の手書きは違法?
手書きの出勤簿であっても、直ちに違法となることはありません。しかし、2019年の働き方改革関連法案の施行による労働安全衛生法の改正によって、企業には「客観的方法による労働時間の把握」が義務付けられています。
客観的な方法として認められるのは、タイムカードやパソコンのログイン・ログオフ時刻の記録などです。手書きの出勤簿による労働時間の把握は、客観的な方法とはなりません。手書きの出勤簿では、担当者による正確な労働時間の把握ができず、不正や改ざんが行いやすい「自己申告制」による管理が必要となるからです。
ただし、手書きによる管理が全て認められないわけではありません。やむを得ず自己申告制による場合であっても、以下の条件を満たせば違法とはなりません。
- 従業員や担当者に、自己申告制の運用ガイドラインに基づく措置を十分に説明する
- 自己申告によって把握した労働時間とパソコンの使用時間や入退館時刻などで把握した時間に著しいずれがあれば、調査のうえ補正する
- 自己申告可能な労働時間に制限を設けるなど、自己申告制を適正に運用不可能とする措置を講じない
- 違法となる労働時間の延長であるにも関わらず、記録上適正な労働時間であるように偽装することが慣習的に行われていないか確認する
上記の要件を遵守すれば、手書きの出勤簿であっても違法とはなりませんが、正確な労働時間を把握するためには、勤怠管理システム等の導入が必要となるでしょう。
出勤簿とタイムカードの違い
出勤簿と混同されるものとして、タイムカードが挙げられます。タイムカードも労働時間の把握のために用いられる点では、出勤簿と同じです。しかし、タイムカードは従業員自身が出勤時刻と退勤時刻を打刻するものであり、会社の滞在時間を示していても正確な労働時間を反映しているとは限りません。そのため、正確な労働時間を記録した出勤簿とは異なります。
タイムカードには、紙のほかにもICカード型や生体認証対応型など、様々な種類がありますが、出退勤の時刻を記録するという点においては同様です。一方で、出勤簿には始業と就業の時刻だけでなく、労働日数や休憩時間なども記録されます。
労働時間も、通常の日ごとの労働時間のほか、時間外労働や休日労働、深夜労働など、それぞれに分けて把握されます。タイムカードは記録すべき事項を全て記録できないため、出勤簿の代わりとして使用することはできません。タイムカードを出勤簿の代わりとして使用するためには、残業許可書など、ほかの書類と照らし合わせたうえでなければなりません。
出勤簿を紙で運用するデメリット
出勤簿をペーパーレス化している企業も多いとはいえ、出勤簿を紙で運用している企業も未だに多く存在します。出勤簿を紙で運用した場合のデメリットについて解説します。
手入力のミスが起きやすい
出勤簿を手書きする場合、どうしても記入ミスが発生してしまいます。労働時間を正確に把握できたとしても、記入の際にミスがあれば元も子もありません。エクセル等を用いた管理であっても、入力の際に転記ミスが起きてしまうことは容易に想像できます。
勤怠の不正や改ざんのリスク
紙の出勤簿は、容易に書き換えることが可能です。時間外労働時間を実際より過剰に申告したり、時間外労働時間の上限を超過しているにも関わらず、超過していないように偽装したりする不正が発生する恐れがあります。
集計作業に負担がかかる
手書きや手入力による出勤簿は、労働時間の集計作業も手作業で行わなければなりません。作業の手間が掛かるだけでなく、集計ミスも起きてしまうため、確認や修正を行う担当者の負担が大きくなります。
多様な勤務形態に対応できない
紙媒体で労働時間を管理している場合、実際に出社して打刻する必要があります。現在では、自宅やコワーキングスペースでリモートワークを行う従業員も少なくありませんが、紙媒体では多様な勤務形態に対応できません。
紛失や損傷のリスク
どれだけ気を付けて保管しても、紙の出勤簿は紛失や汚損のリスクをゼロにはできません。たとえば災害が発生してしまえば、紛失や汚損してしまいます。
出勤簿をペーパーレス化するメリット
出勤簿をペーパーレス化するメリットには、どのような点が挙げられるのでしょうか。勤怠管理システムによる出勤簿のペーパーレス化のメリットを解説します。
労働時間がリアルタイムに把握できる
勤怠管理システムを利用したペーパーレス化であれば、従業員の出退勤の状況や労働時間、有給休暇取得状況などをリアルタイムで把握できます。時間外労働の上限規制や、有給休暇の年5日の取得義務などに違反することもなくなるでしょう。
出退勤を自動で集計できる
勤怠管理システムを導入すれば、出退勤や労働時間の集計を自動化できます。手作業による集計ではミスが起きがちですが、勤怠管理システムであれば正確かつ効率的な集計が可能となります。
リモートワークに対応
勤怠管理システムの多くは、スマートフォンやタブレット端末に対応しています。時間や場所を問わず勤怠管理できるようになり、リモートワークを行う従業員も出社することなく打刻が可能となります。
保管管理コストを削減できる
紙の出勤簿を保管する際には、鍵付きのキャビネットで管理したり、専用の保管スペースを設けたりしなければなりません。しかし、勤怠管理システムでは、出勤簿をパソコンやクラウド上にデータとして保存できるため、保管管理コストを大幅に削減可能です。
給与計算がラクになる
勤怠管理システムには、給与計算ソフトやシステムとの連携機能を有する製品も多くあります。勤怠管理システムで把握した勤怠データを給与計算システムと連携すれば、給与計算を自動化できます。勤怠管理システムの導入は、正確かつ効率的な給与計算につながるでしょう。
出勤簿をペーパーレス化するためのステップ
出勤簿をペーパーレス化する流れは、以下の通りです。
- 出勤簿に必要な機能を精査する
- 勤怠管理システムを検討する
- 無料トライアルで試験導入する
- 従業員に周知とサポートを行う
- 効果検証と業務効率化を進める
出勤簿のペーパーレス化について、ステップごとに解説します。
1.出勤簿に必要な機能を精査する
勤怠管理システムの導入によって、出勤簿をペーパーレス化する際には、自社にどのような機能が必要なのか精査しましょう。たとえば、集計作業に課題を感じていれば、自動集計機能が必要です。また、リモートワークを行う従業員が多い場合には、スマートフォン等への対応が必要など、自社が求める機能をリストアップしましょう。
2.勤怠管理システムを検討する
勤怠管理システムは、様々な企業からリリースされており、機能や料金も多種多様です。しかし、単に高機能なシステムを選べばよいわけではなく、自社が必要な機能を備えたうえで、導入や運用のコストが低いものを選択しなければなりません。複数のシステムを比較検討し、自社に最適なシステムを見つけましょう。
3.無料トライアルで試験導入する
勤怠管理システムのなかには、無料トライアル期間を設けているものも少なくありません。無料トライアル期間を利用すると、システムと自社のマッチ具合を確認できます。どの程度自社の業務が効率化されるかも判断可能なため、積極的にトライアル期間を活用しましょう。
4.従業員に周知とサポートを行う
勤怠管理システムを導入しただけでは、従業員が存在に気付かない場合もあります。積極的な利用を促すために周知を行いましょう。また、全ての従業員がシステムをすぐに使えるようになるわけではありません。不慣れな従業員に対するサポートも忘れずに行いましょう。
5.効果検証と業務効率化を進める
勤怠管理システムは、ただ導入して終わりとしてはなりません。勤怠管理システムの導入によって、どの程度の効果が自社にもたらされたかを検証し、検証データを基にしてさらなる業務効率化を図る必要があります。
出勤簿をペーパーレス化する際の注意点
出勤簿をペーパーレス化するにあたっては、いくつかの注意点があります。注意点を守ることで導入の効果が最大化されるため、しっかりと押さえておきましょう。
段階的な導入
勤怠管理システムの導入によって、勤怠管理をペーパーレス化する際には、段階を踏む必要があります。これまで手作業や手入力であったものが、いきなり全てシステム化すると、従業員は対応が困難です。徐々にペーパーレス化を進めれば、従業員も抵抗なくスムーズにシステムに移行できるでしょう。
運用ルールの作成
ペーパーレス化する際には、運用ルールをはっきりと定めておく必要があります。Aの作業はペーパーレス化、Bの作業は従来のままでは、従業員が混乱します。どの従業員が行っていた、どの作業をペーパーレス化するのかはっきりさせておきましょう。また、運用ルールを定めておけば、トラブルが発生した際の対応も容易となります。
セキュリティ体制の構築
帳簿や書類の電子化によってペーパーレス化を行う際には、適切な閲覧権限を設定するなど、必要となるセキュリティ対策を講じなければなりません。誰でも自由に書類にアクセス可能な環境では、個人情報の流出が起きる恐れもあるでしょう。また、システムへのアクセスについても、必要なセキュリティ対策を講じなければ、不正なアクセスによる記録の改ざんなどが行われてしまいます。
教育期間の確保
システムを導入する際には、使いこなすための教育期間を設ける必要があります。システム導入後、すぐに使いこなせる従業員ばかりではありません。システムに慣れるまで時間の掛かる従業員がいる可能性もあります。システムに不慣れな状態では、業務効率が落ちるかもしれません。しかし、すぐに導入の効果がなかったと判断するのは早計です。システムに慣れて活用可能になれば、効果が発揮できる場合もあります。
出勤簿のテンプレート
出勤簿は、正確な給与計算に欠かせない帳簿であり、作成にミスがあってはなりません。しかし、出勤簿作成の重要性は理解していても、必要事項を備えたうえでの作成は難しいと感じる方もいるでしょう。そのような場合には、テンプレートの利用をご検討ください。
テンプレートを利用すれば、必要な事項を備えた出勤簿を手間なく正確に作成できます。下記リンクから無料でダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
出勤簿のペーパーレス化はマネーフォワードがサポート
出勤簿をペーパーレス化することで、勤怠管理は大幅に効率化されます。勤怠管理のミスを減らし、効率化を図りたいと考えている企業にとって、ペーパーレス化は最も効果的な方法です。しかし、自社で適切に出勤簿をペーパーレス化できるか不安な方も多いでしょう。そのような場合には、「マネーフォワード クラウド勤怠」の導入をご検討ください。
「マネーフォワード クラウド勤怠」は、パソコンやスマートフォンに加えて、ICカードを利用した打刻にも対応しています。導入によって、紙媒体での管理で注意すべき代理打刻などの不正打刻を大幅に減らせます。自動集計機能も備えており、手書きや手入力時に頻発していた記入ミスや転記ミスも減らせるでしょう。
「マネーフォワード クラウド勤怠」は、1か月の無料トライアル期間を設けており、正式な導入前に自社とのマッチ具合を確認できます。トライアル時に作成したデータは、トライアル後も引き継がれるため安心です。
下記リンクから無料トライアルに申し込めるため、お気軽にお試しください。
参考:集計・管理が楽になる 勤怠管理システム|マネーフォワード クラウド勤怠
出勤簿のペーパーレス化で効率的かつ正確な管理を
出勤簿のペーパーレス化によって、勤怠管理の大幅な効率化だけでなく、ミスのない正確な管理も可能となります。手書きや手入力で発生しがちなミスも、ペーパーレス化によって大幅に削減されます。ペーパーレス化を検討中の企業は、当記事の解説を参考に、自社に合ったシステムを導入してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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