• 更新日 : 2025年6月2日

出勤率が8割に満たない場合、有給休暇は付与できない?日数の数え方や例外を解説

有給休暇の取得には「出勤率8割以上」という条件があるため、8割に満たない場合は付与されないのでしょうか。育児や介護などで休んだ日は出勤日数に含まれるのでしょうか。この記事では、有給休暇の出勤率の計算方法から、8割に満たない場合の取り扱い、さらには会社が注意すべき点まで、わかりやすく解説します。

有給休暇の出勤率8割とは?

年次有給休暇(有給休暇)は、労働基準法で定められた労働者の権利です。一定の要件を満たした労働者に対して、心身のリフレッシュを目的として、賃金が支払われる休暇が付与されます。

有給休暇が付与されるための要件は、以下の2つです。

  • 雇入れの日から6ヶ月間継続して勤務していること
  • その6ヶ月間の全労働日の8割以上出勤していること

この2つの要件を満たせば、原則として10日間の有給休暇が付与されます。その後も、継続勤務年数に応じて所定の日数が付与されることになります。

出勤率の計算方法

出勤率は、以下の計算式で算出します。

出勤率 = 出勤日数 ÷ 全労働日 × 100
  • 全労働日:就業規則などで定められた所定の休日を除いた、労働義務のある日を指します。
  • 出勤日数:全労働日のうち、実際に出勤した日数です。

例えば、全労働日が240日で、出勤日数が192日の場合、出勤率は80%(192日 ÷ 240日 × 100)となります。

出勤日数に含める日

通常の出勤日以外にも、以下の日は出勤日数としてカウントされます。このような日は仮に休んだとしても、労働者にその責任があるとはいえないからです。

  • 遅刻や早退した日
  • 年次有給休暇を取得した日
  • 業務上の負傷や疾病を理由とする休業
  • 産前や産後の休業
  • 育児休業
  • 介護休業
  • 裁判員休暇

出勤日数に含めない日(除外日)

以下の日は、全労働日や出勤日数に含まれません。

  • 休日労働させた日:法定休日に労働させた日は、全労働日に含まれません。
  • 不可抗力や使用者の責めに帰すべき事由による休業日:不可抗力や会社都合による休業は、全労働日から除外されます。
  • 正当な争議行為(ストライキ)により労務の提供が全くなされなかった日:このような日は当事者間の衡平等の観点により、全労働日に含めることは妥当ではありません。

会社により異なる出勤日数

労働基準法や通達に定められていないため、出勤率の算定において、以下のような休暇をどのように扱うかは会社の判断に委ねられます。

  • 慶弔休暇
  • 生理休暇
  • 子の看護休暇

各月の出勤率が8割未満でもよい?

もし、入社日から6ヶ月間、またはその後1年ごとの算定期間で、8割に満たない月があったとしても、期間全体の出勤率が8割以上であれば問題ありません。有給休暇の算出では、月ごとの出勤率ではなく、期間全体の出勤率を判断の基準にしています。

例えば、最初の6ヶ月間のうち、ある月は病気で欠勤が多くても、他の月の出勤率が高く、6ヶ月間の合計で8割以上出勤していれば、10日間の有給休暇が付与されます。その後も1年ごとの期間で、同様に判断されることになります。

有給休暇は出勤率8割に満たない場合、付与されない?

労働基準法では、有給休暇の付与要件として「全労働日の8割以上出勤」を定めています。つまり、出勤率が8割に満たない場合は、残念ながら、その期間に対する新たな有給休暇は付与されません。ここでいう「8割以上」には、「8割ちょうど」も含まれます。 したがって、出勤率が8割ぴったりの場合は、有給休暇の付与要件を満たしていることになり、有給休暇が付与されます。

ここで注意したいのは、出勤率が8割に満たなかった場合でも、過去に付与された有給休暇がなくなるわけではありません。あくまで、”その期間に対する”新たな有給休暇が付与されないだけです。前年度に付与された有給休暇が残っている場合、出勤率が8割未満の年度であっても、その残日数は有効です。時効(2年間)にならない限り、繰り越して利用できることを覚えておきましょう。

出勤率が8割に満たなくても有給休暇の付与はできる?

出勤率が8割に満たなくても、会社から有給休暇が付与されるケースはあります。労働基準法は有給休暇を付与する最低ラインを定めているだけで、会社が独自に、有給休暇を付与することに問題はありません。

出勤率8割未満の従業員に有給休暇を付与することは、従業員のモチベーション向上や、優秀な人材の確保・定着につながる施策となりえます。ただし、運用にあたっては、いくつかの注意点があります。

会社独自の有給休暇制度を整備する

まずは、自社の有給休暇制度を見直しましょう。就業規則に、出勤率8割未満の従業員に対する有給休暇の取り扱いを明記する必要があります。

  • 出勤率8割未満の従業員に対する特別休暇の導入:勤続年数や、会社への貢献度などを考慮し、特別な有給休暇を付与する制度を検討できます。
  • 有給休暇の前倒し付与の検討:将来的に出勤率8割以上となる見込みがある従業員に対し、有給休暇を前倒しで付与することも考えられます。

有給休暇の付与は公平に

出勤率8割未満の従業員に有給休暇を付与する場合、特に注意したいのが、公平さです。

「一部の従業員だけが得をする」ようなルールは、他の従業員の不満につながりやすく、労使間のトラブルに発展する恐れもあります。

有給休暇を付与する際のルールをはっきりさせ、すべての従業員に平等に適用することが大切です。就業規則に明記するだけでなく、社内報や社内ポータルサイトなどを通じて、制度の内容をわかりやすく従業員に周知しましょう。

付与日数の決め方の例

出勤率8割未満の従業員への有給休暇の付与日数は、会社が自由に決められます。

  • 出勤率に応じて比例付与:例えば、出勤率75%の従業員には、本来付与される日数の75%分の有給休暇を与える、という方法です。
  • 一律に日数を付与:出勤率にかかわらず、一定の日数を付与することも可能です。ただし、出勤率8割以上の従業員とのバランスを考慮し、不公平感が生じないように配慮しましょう。
  • 勤続年数に応じた付与日数:勤続年数に応じて付与日数を変えることも、選択肢の一つです。

どのような方法を選ぶにしても、従業員が「不公平だ」と感じないように、制度設計と説明が重要になります。

出勤率8割未満で有給の付与なしなら欠勤扱い?

出勤率が8割に満たず、会社の制度でも有給休暇が付与されない場合、休むと「欠勤」扱いとなり、原則として賃金は支払われません(ノーワーク・ノーペイの原則)。つまり、休んだ日数分だけ給与が減額されます。

また、欠勤が続くと人事評価やボーナスにも影響を及ぼす可能性もあります。多くの企業では、出勤状況を人事評価の項目の一つとしています。欠勤が多いと、「自己管理能力が低い」「責任感がない」といった評価につながり、昇進・昇給に影響が出る場合があります。また、賞与の算定においても、欠勤は減額の対象となることが一般的です。

出勤率8割に満たない従業員に会社はどう対応する?

従業員の出勤率が8割に満たない場合、出勤率が低いということは、従業員が何らかの理由で 就業できていない状態かもしれません。会社としては、まずその理由を知ることが大切です。体調が悪いのか、家庭の事情があるのか、仕事で悩んでいるのかなど、理由は様々です。

もし欠勤が多い場合は、従業員と面談をして、なぜ休んでいるのか、その理由や状況を丁寧に聞きましょう。特に体調が悪い場合は、病院に行くことをすすめ、必要であれば会社の産業医との面談も考えてみましょう。

また従業員との面談では、会社の就業規則に定められた欠勤に関するルール(欠勤の定義、手続き、賃金、欠勤日数に応じた措置など)を改めて説明し、欠勤が続けば、人事評価、賞与、さらには雇用継続に影響が及ぶことを、きちんと伝えます。

その上で、従業員の状況に応じたサポートを検討します。例えば、業務上のストレスが原因であれば、配置転換や業務内容の見直し、上司や同僚との人間関係に問題があれば、部署異動や相談窓口の紹介などが考えられます。遅刻や早退が多い場合は、時差出勤やフレックスタイム制など、柔軟な働き方を検討することも、有効な対策となります。

病気やケガの場合は傷病手当金も検討する

病気やケガで長期間休む必要がある場合は、「傷病手当金」の利用も検討しましょう。従業員が病気やケガで連続して3日以上休業し、その間給与が支払われない場合、休業4日目以降は健康保険から傷病手当金が支給される場合があります(支給には一定の要件あり)。会社は、傷病手当金の申請手続きについて、従業員に情報提供し、サポートすることが望ましいです。

有給休暇の取得には出勤率8割をクリアしよう

有給休暇を取得するためには、「出勤率8割」と「6ヶ月間の継続勤務」を満たす必要があります。出勤率の計算方法を理解し、自身の労働状況を確認することが大切です。

出勤率が8割に満たない場合でも、企業の裁量で有給休暇が付与されることもあります。まずは自身の勤務状況や会社のルールを確認しましょう。

出勤率が8割に満たなかった場合、翌年の有給休暇に影響を及ぼすこともあるため、計画的に勤務し、必要に応じて労務担当者に相談することをおすすめします。

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