• 更新日 : 2025年4月3日

日本が受け入れている外国人労働者の現状とは?国の公表データをもとに説明

日本で受け入れている外国人労働者は、年々増加傾向にあり、今後も増加が予想されます。

国内の人材不足が進めば、これまで外国人労働者とかかわりがなかった企業や職場でも、今後は受け入れざるを得ない可能性があります。そのため早急に体制を整える必要があるでしょう。

外国人労働者の受け入れにおける日本の現状と、課題や対策について解説します。

日本で受け入れている外国人労働者の推移と現状

国内で受け入れている外国人労働者の数は、厚生労働省が公開している資料を参照することで確認できます。外国人労働者の推移や産業別の割合を見れば、自身の職場でも体制整備の必要性を感じていただけるでしょう。

厚生労働省が公開している表や産業別の割合、労働者の国籍について見ていきましょう。

外国人労働者の人数の推移

厚生労働省のデータによると、令和6年10月時点において、日本で働く外国人労働者の数は過去最多の約230万人に達しています。

【外国人労働者の人数の推移と対前年増加率】

令和2年令和3年令和4年令和5年令和6年10月
外国人労働者数172万4,328人172万7,221人182万2,725人204万8,675人230万2,587人
対前年増加率4.0%0.2%5.5%12.4%12.4%

引用:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和6年10月末時点)

令和6年10月末時点では前年より約26万人増加し、増加率は12.4%です。現状、外国人労働者の受け入れ制度が整備され、人手不足の解消に多くの企業や職場が対策していることを意味しています。

外国人労働者の受け入れの背景には、少子高齢化にともなう労働力不足があり、日本経済の活性化や持続可能な成長を目指す政府の方針が影響しています。また、東南アジア諸国からの移住希望者は、日本を選ぶ傾向にあるようです。

外国人労働者の産業別での割合

令和6年10月末時点では、日本では約230万人の外国人労働者を雇用しており、過去最多を記録しています。

厚生労働省が公開している資料の、産業別における外国人労働者の人数を見ると、とくに製造業や建設業に多くの外国人労働者が従事していることがわかります。

【令和6年10月の産業別・外国人労働者の人数の推移と対前年増加率】

外国人労働者数対前年増加率
外国人労働者総数230万2,587人12.4%
建設業17万7,902人22.7%
製造業59万8,314人8.3%
情報通信業9万546人6.0%
卸売業・小売業29万8,348人13.2%
宿泊業・飲食サービス業27万3,333人16.9%
教育・学習支援業8万2,902人3.6%
医療・福祉11万6,350人28.1%
サービス業

(ほかに分類されないもの)

35万4,418人10.5%
その他31万474人12.2%

引用:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和6年10月末時点)

製造業がもっとも多く、続いてサービス業、卸売業・小売業と続きます。

また建設業では、インフラ整備や開発のために多くの外国人労働者を必要としており、サービス業では、観光客の増加にともなう人手不足が影響しています。

外国人労働者の国籍の割合

厚生労働省が公開している令和6年10月末時点のデータによると、日本で働いている外国人労働者のなかで、国別でもっとも多いのはベトナムの約57万人です。ついで中国が約40万人、その後フィリピンが約24万人と続きます。

【令和6年10月の国籍別・外国人労働者の人数の推移と対前年増加率】

外国人労働者数対前年増加率
外国人労働者総数230万2,587人12.4%
ベトナム57万708人10.1%
中国(香港、マカオ含む)40万8,805人2.7%
フィリピン24万5,565人8.3%
ネパール18万7,657人28.9%
インドネシア16万9,539人39.5%
ブラジル13万6,173人-0.7%

引用:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和6年10月末時点)

東南アジア諸国からの労働者が多く、日本の労働市場において重要な役割をはたしていることがわかります。

外国人労働者が増加している理由

外国人労働者はほとんどの業界において増加傾向にあり、背景には人材不足のほか、国内のみではなく海外にも市場を広げようという企業の動きが関係しています。

外国人労働者が増加傾向にある理由について、3つ説明します。

人手不足が深刻化しているため

日本では少子高齢化が進行し、生産年齢人口の減少が深刻な問題となっています。

とくに、介護・配送・飲食業など、特定の産業では慢性的な人手不足が生じており、人材の確保が困難です。厚生労働省の調査によると、各業界における求人倍率は年々上昇しており、求職者よりも 求人の方が多い状態が続いています。

外国人労働者が国内の労働力不足を補完する重要な存在として受け入れられており、国は外国人労働者の受け入れを拡大するための政策を進めています。

外国人労働者を雇用すれば、即戦力となるスキルをもった人材を確保できるでしょう。とくに、技能実習制度や特定技能制度を通じて、多くの外国人が日本の労働市場に参入し、企業の人手不足の解消につながっています。

インバウンド需要に対応するため

近年、日本は円安の影響や観光業の成長にともない、インバウンド需要が急増しています。

観光客の受け入れをスムーズに行うために、ホテル・飲食店・観光ガイドなどのサービス業において多言語対応が求められるようになりました。外国人労働者に母国語を活かしてもらうことで、観光客に対して高品質なサービスを提供できます。

また観光や関連産業には、とくに外国人による視点が新たなアイデアや文化をもたらす可能性が期待されています。観光業は日本の観光業全体の質を向上させ、インバウンド需要への強化にもつながるでしょう。

グローバル展開する企業が増加しているため

観光やサービス業のインバウンド需要のほかにも、日本の企業が国際的な市場に目を向けるようになりました。

とくに、中小企業でも海外展開を行うケースが増え、現地の市場に適応できる外国人材が必要とされています。外国人労働者は、高い能力や知識、文化的な理解を通じて、企業の国際競争力を高める役割をはたしているのです。

たとえば、海外の取引先とのコミュニケーション能力や専門技術をもつ外国人は、企業の多国籍化に貢献します。また外国人がもつ異文化の視点は、商品開発やマーケティング戦略において新たなアイデアを生むでしょう。

受け入れが可能な外国人労働者の条件

外国人であれば、だれでもが日本で働けるわけではありません。外国人労働者として企業や職場で働くには、高い日本語能力とスキルが必要です。また就労が可能な在留資格をもった外国人労働者のみが、日本に住みながら働けます。

外国人労働者として雇用できる条件について解説します。

就労が認められる在留資格があること

一定の範囲において、外国人労働者を雇用する際には、特定の在留資格をもった外国人のみ雇用できます。一般的に、雇用する外国人がもっているべき在留資格には、以下のようなものがあります。
一の表外交、公用、教授、芸術、宗教、報道
二の表高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、

研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、

介護、興行、技能、特定技能、技能実習

五の表特定活動

上記の在留資格があれば、外国人労働者として特定の業務に就いて働けます。

日本への定住および永住の資格があること

外国人労働者として雇用するためには、外国人が就労可能な在留資格を保持しているかどうかが重要です。

あるいは、以下のように定住者および永住の資格を保持した外国人であれば、学歴や職業に関する制約が少ないため、企業側にとっても採用しやすいでしょう。

【入管法別表第二の上欄の在留資格(居住資格)】

永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者

永住者は在留期間が無期限であり、日本国内で安定して生活できます。一方で、留学生やワーキングホリデーの外国人など、就労が制限される資格をもつ外国人は特定の条件の範囲内でしか働けません。

外国人労働者の雇用を検討している人は、入社手続きや必要な届出についての把握が必要です。以下の記事で詳しく解説しているため、あわせてお読みください。

外国人労働者を受け入れる5つのメリット

企業や職場のなかでは、人材不足から外国人労働者の雇用を検討している人もいるでしょう。はじめて外国人労働者を受け入れる際は、受け入れるメリットとデメリットを理解したうえで、慎重に判断する必要があります。

外国人労働者を受け入れるメリットについて解説します。

1.人手不足の解消につながる

外国人労働者を雇用することで、日本における人手不足の解消が期待できます。

昨今では生産年齢人口が減少している背景から、人材確保が困難です。そのため外国人労働者の雇用を検討する企業が増えており、実際に令和6年10月末時点では230万人を突破しました。今後も企業が外国人労働者を積極的に雇用する動きが進むでしょう。

また特定技能制度など、外国人労働者が日本で働くための制度も整備されており、制度を活用することで、企業は即戦力となるつながりをもった外国人労働者を採用しやすくなっています。

2.訪日外国人への対応力向上につながる

日本を訪れる外国人旅行者の数は年々増加しています。外国人労働者は、急増する訪日外国人に対し、母国語を活かしてよりよいサービスを提供してくれるでしょう。たとえば、外国人労働者にホテルや宿泊施設の受付を担当してもらうことで、訪日外国人の受付がスムーズになり、顧客満足度が向上します。

また外国人労働者だけではなく、ともに働く既存の従業員においても、訪日外国人への対応力向上につながるでしょう。実際に、外国人労働者を雇用したことをきっかけに、社内で定期的に英会話教室を開いた企業や職場もあります。

3.助成金制度が利用できる

外国人労働者を雇用することで、以下のような助成金制度が利用できます。

  • 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
    厚生労働省が実施している助成金制度で、外国人労働者の職場定着を支援するため、就労環境の整備にかかる経費の一部を助成してくれます。
  • トライアル雇用助成金
    就職困難な求職者を雇用する際に、試用雇用の経費を支援する助成金で、厚生労働省より提供されています。外国人労働者も対象者に含まれます。

上記のほか今後も、国や自治体および民間による団体の助成金制度が増えるでしょう。

4.新しいアイデアが期待できる

外国人労働者は多様なバックグラウンドや文化をもっているため、独自性が高いアイデアを提供してくれる可能性が高いです。日本人としての従来の考え方や方法を超える新たなアイデアの創出につながるでしょう。

外国人労働者が自国での習慣や業務経験にもとづいたアイデアを持ち込むことで、意外性が高い解決策が生まれることがあります。

たとえば飲食チェーン店にて、タイ出身の外国人労働者が出した提案をもとに新メニューを開発したところ、売り上げが大幅に伸びたという成功事例があります。

5.海外市場への進出をはかれる

外国人労働者が母国の文化や言語に精通しているため、市場拡大における大きな戦力となるでしょう。とくに自国や他国で営業やマーケターといったビジネス経験や高いスキルがある人材であれば、即戦力になります。さらに高いスキルをもった人材を含め、多様な文化をもつメンバーでチームを構成すれば、企業の国際競争力が向上します。

そのほか外国人労働者を受け入れるメリットと、外国人労働者を雇用する方法について、以下の記事で詳しく解説していますので、雇用を検討している人はあわせてお読みください。

外国人労働者を受け入れる3つのデメリット

外国人労働者は、日本とは異なる言語や文化のなかで生きてきました。そのため、考え方やコミュニケーションの取り方が大きく異なるがゆえに、職場をともにして働くことに対していくつか壁や問題が生じます。

外国人労働者を受け入れる際に、想定されるデメリットについて紹介します。

1.文化や価値観の違いによるトラブルが起こりやすい

外国人労働者を受け入れる際の大きな問題のひとつに、文化や価値観の違いによるトラブルが生じやすい点が挙げられます。

日本の職場文化は、時間厳守や働き続けることを重視する傾向がありますが、他国ではプライベートや家族を重視する文化が根付いている場合もあります。

たとえば残業を依頼された際、日本人にとっては当然でも、外国人にとっては困難な場合があり、仕事の効率や人間関係に悪影響がおよぶでしょう。文化的な相違を十分に理解し、相互に配慮する姿勢が不可欠です。

2.コミュニケーションを取ることが難しい

外国人労働者を受け入れることで、従業員同士のコミュニケーションに課題が生じるリスクがあります。

日本語能力の低い外国人の場合、指示や情報の伝達に困難がともない、業務効率が低下するでしょう。たとえば、仕事に必要な指示が適切に伝わらなかった場合、混乱が生じます。情報の共有や業務の指示においては、ある程度の工夫が必要です。

またコミュニケーションの違いから誤解を生むこともあり、職場の士気やチームワークに対して悪影響をおよぼすことがあります。語学サポートやコミュニケーション研修などの整備が求められます。

3.長期的な雇用が難しい場合がある

外国人労働者の受け入れは、新たな労働力を提供する一方で、長期雇用が難しい場合があります。

言語や文化に慣れないために生活面で困難を抱えることが多く、早期離職するケースが少なくありません。

とくに住居の確保や生活サポートに対する支援が不十分な企業では、外国人労働者が離職するリスクが高まります。このため、長期的に活躍するためには、安定した生活と適切な職場環境を提供できる体制整備が重要です。

外国人労働者を雇用する際に把握しておきたい注意点について、以下の記事で解説していますので、あわせてお読みください。

外国人労働者の受け入れは今後も増加が予想される

日本国内における外国人労働者の受け入れ人数は、今後も複数の業界で増加する見込みです。

外国人労働者の受け入れ態勢においてもっとも大きな課題は言葉と文化の違いにあります。しかし、昨今では法整備や受け入れ態勢が整いつつあるため、外国人労働者を受け入れるハードルが下がってくるでしょう。

人材不足により経営が悪化する前に、メリットとデメリットを理解したうえで、外国人労働者を受け入れる体制を整えましょう。


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