- 更新日 : 2025年3月27日
ぎっくり腰は労災認定される?仕事で発症した腰痛の認定基準や休業補償の金額などを解説
職場での何気ない動作や急な負荷によって、突然襲ってくるぎっくり腰。想定外の痛みとともに業務が中断されることも多く、「これは労災になるのか?」と悩まれる方も少なくありません。実は、ぎっくり腰も一定の条件を満たせば、労働災害として認定される可能性があります。
本記事では、ぎっくり腰と労災の関係を正しく理解するために、定義や認定基準、実際の事例、申請手続きの流れ、事業者が取るべき対応、補償内容などを網羅的に解説します。
目次
ぎっくり腰は労災認定される?
仕事中や通勤中に突然腰を痛めたとき、それが労災に該当するのか判断するには、まず「ぎっくり腰」と「労災」の定義をしっかり理解することが重要です。この章では、それぞれの言葉が指す内容と、それらがどう関係しているのかについて、詳しく説明します。
ぎっくり腰の定義
ぎっくり腰は、医学的な正式名称ではありません。日常的に広く使われている呼び方であり、医学的には「急性腰痛症」と呼ばれます。突然、強い腰の痛みが生じるのが特徴で、誰にでも起こりうる身近な症状です。
発症のきっかけは様々で、重いものを持ち上げたときや、体をひねったときだけでなく、何気ない動作や、特に思い当たる節がない場合でも突然痛みが現れることがあります。
ここで重要なのは、「ぎっくり腰」という言葉が特定の病名ではなく、あくまで症状の通称であるという点です。この違いは、労災に関する判断をする上で非常に重要なポイントとなります。
労災とは
労災とは、「労働災害」の略で、労働者が仕事に関連して負傷したり病気になったり、あるいは死亡したりした場合に用いられる言葉です。労災は、法律に基づいて定義され、補償の制度が整備されています。
労働安全衛生法では、労災とは「労働者の就業に関連する建設物や設備、作業行動などによって、負傷・疾病・死亡すること」と定義されています。つまり、単なるケガではなく、仕事との関係性が明確であることが求められます。
労災には、大きく分けて2つの種類があります。
- 業務災害
業務中の事故や作業によって発生する災害のことです。例えば、現場での作業中に転倒してケガをしたり、工場内で機械に巻き込まれて負傷した場合などがこれに該当します。 - 通勤災害
通勤中の事故などによって起こる災害のことです。公共交通機関を利用中に転倒した場合なども通勤災害に含まれます。ただし、私用の寄り道をした場合などは対象外となる可能性があるため、通勤経路や行動内容には注意が必要です。
ぎっくり腰が労災認定される条件
ぎっくり腰が仕事中に発症した場合でも、必ず労災として認定されるわけではありません。厚生労働省が定めている「業務上腰痛の認定基準」に基づいて、ぎっくり腰の原因と業務との関係が慎重に判断されます。この基準では、腰痛の発症原因を大きく2つに分類し、それぞれ異なる認定要件を設けています。
災害性の原因による腰痛
災害性の原因による腰痛とは、仕事中の突発的な出来事が原因で発生した腰痛を指します。例えば、作業中に急に重いものを持ち上げた、滑って転倒した、不自然な姿勢を強いられたといった、外部からの急激な力が腰に加わった場合です。
この場合、労災として認定されるには以下の2点が重要です。
- 腰を痛めた原因が業務中の突発的な出来事であると明らかに認められること
- その出来事によって腰に加わった力が、医学的にも腰痛の発症につながった、あるいは既にあった持病を悪化させたと証明されること
例えば、倉庫作業中に重量物を持ち上げようとしたところ、予想以上に重くて姿勢を崩し、その拍子に腰を痛めたというケースでは、業務による強い負荷が原因とされ、労災と認定される可能性があります。
一方で、椅子から立ち上がろうとした時や、床に落ちた物を拾おうとした時にぎっくり腰になったような場合は、仕事中であっても日常的な動作に近いため、原則として労災と認められにくい傾向があります。ただし、姿勢が非常に不自然だったり、無理な体勢での作業だったと認められる場合には、例外的に労災とされることもあります。
災害性の原因によらない腰痛
災害性の原因によらない腰痛とは、突発的な出来事が原因ではなく、長期間にわたり腰に継続的な負担がかかる仕事をしていた結果として発症する腰痛を指します。特に、重い物を繰り返し持つ作業や、不自然な姿勢を続ける業務、腰に強い振動を与える作業などが該当します。
例えば、配送ドライバーが長時間運転し、積み下ろし作業を繰り返したことで徐々に腰を痛めた場合などです。このようなケースでは、職種や作業内容、勤務年数などを総合的に判断し、腰痛との因果関係が認められれば労災となります。
この分類においては、作業に従事した期間の長さも認定の条件となっており、筋肉や軟部組織の疲労が原因の場合は3か月以上、骨の変化が原因の場合は10年以上の継続的な従事が目安とされています。
仕事中のぎっくり腰が労災認定されるケース
ぎっくり腰が労災認定されるケースは、業務遂行中に起きた事故や過負荷によるものである場合です。ここでは、具体的な例を挙げつつ、どのような状況で労災として認められるのかを詳しくご説明します。
業務中の突発的な事故の場合
ぎっくり腰が労災として認定される典型的な状況の一つが、作業中の突発的な事故です。例えば、重い荷物を持ち上げている最中や、運搬作業中に突然腰に強い痛みを感じた場合が該当します。このような状況は、特に建設業や物流業など、身体的な負担が大きい職種でよく見られます。また、職務内容や作業環境の急激な変化によって腰に過度の負担がかかったケースも考慮されます。
長時間の無理な姿勢が原因の場合
ぎっくり腰は、長時間にわたる無理な姿勢や反復的な動作を強いられる仕事環境によっても引き起こされることがあります。具体例として、同じ姿勢でのパソコン作業、頻繁な立ち座りを伴うライン作業などが挙げられます。特に、適切な休憩が取れない状況や、過重労働による身体の負荷が伴う場合に労災認定の可能性があります。
精神的ストレスが原因の場合
精神的なストレスがぎっくり腰に繋がるケースもあります。特に、過度なストレスがかかる職場環境で働く従業員においては、ストレスが一因となり筋肉の緊張が高まることがあり、結果としてぎっくり腰を引き起こすことがあります。このような場合でも、医学的な関連性が明確であれば労災と認められることがあります。
これらのケース以外にも、具体的な状況によっては労災として扱われる可能性があるため、何か疑問に感じることがあればまずは専門家に相談することをおすすめいたします。
仕事中のぎっくり腰が労災認定されないケース
ぎっくり腰が労災として認定されないケースは、その発生が業務上の負荷と明確に関連付けられない場合です。労災保険は、業務に起因する傷病に対する補償を目的としています。しかし、ぎっくり腰は日常生活や自然な身体の動きでも起こり得るため、すべてが労災認定されるわけではありません。
具体的には、以下のような状況では認定が難しくなります。
業務起因性が不明な場合
ぎっくり腰が発生した経緯が曖昧で、業務と直接関係があるかどうかが明確でない場合、労災認定は困難です。たとえば、勤務時間中であっても、単なる立ち上がりや軽微な動作だけでぎっくり腰が発生した場合、業務上の負荷との因果関係が証明しづらくなります。
業務外の要因が影響している場合
ぎっくり腰が発生したときに、業務外での体調不良や健康状態が影響していると判断される場合、労災認定されにくくなります。例えば、慢性的な腰痛を抱えている場合や、プライベートでの無理な姿勢によってぎっくり腰が引き起こされた場合などが該当します。
医学的証拠が不足している場合
労災申請には医学的な証拠が必要です。もしぎっくり腰の発生時に医療機関で診断を受けておらず、具体的な診断書や記録がない場合、業務上の負荷が原因であると証明ができません。このため、医療証拠が不十分な場合も認定を受けるのは難しいです。
以上のように、ぎっくり腰が労災として認定されない場合にも、個々の状況や証拠の集め方次第で差が出ることがあります。もしぎっくり腰が業務に関連する可能性があると感じたら、専門家に相談することも選択肢の一つです。
ぎっくり腰が労災認定された場合の給付内容
ぎっくり腰が労災と認定されると、労働者は労災保険からさまざまな給付を受けることができます。これらの給付は、治療費や休業中の生活保障、後遺障害への対応、さらには死亡した場合の遺族への補償など、多岐にわたります。ここでは、それぞれの給付内容について詳しく見ていきます。
療養補償給付
療養補償給付は、ぎっくり腰の治療にかかる医療費を全額補償する制度です。労災保険の指定医療機関で受診する場合、原則として治療費の自己負担はありません。診察料、検査料、薬代、注射、リハビリ、入院費、通院交通費など、治療に必要な費用が幅広く対象となります。
ただし、指定外の医療機関で治療を受けた場合は、一度自己負担で支払いを行った上で、後日、労働基準監督署に療養費用の払い戻しを請求する必要があります。払い戻しには領収書や診療明細書が必要となるため、必ず保管しておくことが重要です。
また、整骨院や接骨院での施術も、捻挫などと診断された場合に限り、療養補償給付の対象となることがあります。ただし、事前に労働基準監督署や医療機関と相談することが推奨されます。
休業補償給付
ぎっくり腰によって仕事を休まざるを得なくなり、賃金を受け取れない場合には、休業補償給付が支給されます。この給付は、休業4日目から支給が始まり、1日あたりの支給額は、給付基礎日額の80%です。この80%には、60%分の休業補償給付と、20%分の特別支給金が含まれています。
給付基礎日額とは、労災発生前3か月間の平均賃金をもとに日額で計算されたものです。この金額を基準に支給額が決まるため、普段の収入に近い形で生活が保障される仕組みになっています。
ただし、初日から3日間の休業については、労災保険からの補償対象外となるため、会社側が補償する義務があります。労働契約や就業規則によって補償の有無が異なるため、確認が必要です。
障害補償給付
ぎっくり腰が治療によって回復した後も、痛みや可動域の制限などの障害が残った場合には、障害補償給付が支給されます。支給の有無や内容は、残った障害の程度に応じて判断され、労災保険の定める後遺障害等級に基づいて等級認定が行われます。
認定された等級に応じて、一時金もしくは年金の形で支給されます。軽度の障害であれば一時金、日常生活に大きな支障がある重度の障害であれば、長期にわたる年金の支給となります。
等級の認定には、医師による診断や、画像検査の結果、日常生活への影響などが判断材料となります。等級によって支給額に大きな差があるため、障害の程度が正確に評価されるよう、必要な資料は揃えておく必要があります。
傷病補償年金
ぎっくり腰の症状が長期間続き、治療開始から1年6か月を経過してもなお治癒していない場合で、さらに障害等級に該当する障害があると認められる場合には、傷病補償年金が支給されます。これは、障害補償給付が対象とするような後遺障害とは異なり、治療中であっても重い障害が継続していることが条件となります。
この給付も等級に応じて年金として支給され、療養が長期に及ぶ労働者にとっての生活保障となります。
介護補償給付
障害補償年金または傷病補償年金を受けており、日常生活において常時または随時介護が必要であると認められた場合には、介護補償給付が支給されます。これは、労災によって重大な障害を負い、食事や排せつ、移動などに他者の手助けが必要な状態になった場合の支援制度です。
支給額は、介護の必要度や実際に要する介護費用に基づいて決められ、定期的に支給されます。
ぎっくり腰の労災申請の流れ
ぎっくり腰が仕事中に起こった場合には、労災として申請することが可能です。労災申請の手続きは初めての方には少々複雑に感じるかもしれません。しかし、しっかりとした手順を踏むことで、速やかに申請を進めることができます。ここでは、労災申請のプロセスをわかりやすく説明します。
事故報告書の作成
最初のステップは、事故が発生したことを職場に報告し、事故報告書を作成することです。事故報告書には、発生日時、場所、事故の詳細、及び傷病の状況を詳しく記載する必要があります。注意していただきたいのは、報告書の内容が後の申請に影響を及ぼす可能性があるため、正確かつ詳細に記載することが重要です。
労災用の診断書を取得
次に必要なのは、医師から労災用の診断書を取得することです。医療機関にて受診し、ぎっくり腰が仕事中に発生したものであることを診断してもらいます。診断書には、「労働災害である」と特記することが求められますので、医師にその旨を伝えてください。
提出書類の準備
労災申請には、いくつかの書類が必要です。代表的なものとして、「労働者死傷病報告書」や「健康保険証」、「労災申請書」があります。また、医療機関から取得した診断書のコピーも添付します。これらの書類を漏れなく準備することは、申請手続きの円滑化に不可欠です。
労働基準監督署へ提出
最後に、準備した書類を所轄の労働基準監督署へ提出します。この時点で不備があった場合、再提出が必要となりますので、事前に提出書類をしっかりと確認しましょう。担当官から認定が下りると、労災保険の給付を受けることができます。
労災申請は確かに手間がかかりますが、正しい手続きで適切な補償を受けることが可能です。労働者は疾病や障害によって生じた生活の困難を軽減できる制度を積極的に活用しましょう。
ぎっくり腰の労災報告を受けた場合の事業者側の対応
従業員がぎっくり腰を発症し、それが業務中または業務に起因するものであると報告を受けた場合、事業者は迅速かつ正確な対応を取る責任があります。これは労働者災害補償保険法や労働安全衛生法などに基づく法的義務であり、同時に企業としての社会的責任でもあります。対応を怠ると、従業員との信頼関係を損なうだけでなく、行政からの指導や罰則の対象となる可能性もあります。
以下に、事業者が取るべき対応の流れを、実務上の視点から詳しく説明します。
従業員の状態を確認する
労災の報告を受けた際に最も重要なのは、まず従業員の状態を正確に把握することです。ぎっくり腰は突然強い痛みを伴うため、業務継続が困難となる場合が多く、緊急の対応が必要になります。
状況によっては、社内の応急処置にとどまらず、すぐに労災保険指定医療機関への受診手配を行う必要があります。本人が自力で移動できない場合には、救急搬送も検討するべきです。この段階で、従業員本人が話せる状態であれば、いつどのような動作をしていたか、発症時の状況を簡潔に聞き取り、記録しておくと、後の調査や申請に役立ちます。
また、ぎっくり腰は他の重篤な疾患(椎間板ヘルニアや骨折など)が隠れていることもあるため、自己判断をせず、必ず専門医による診察を受けさせることが重要です。
ぎっくり腰が発生した状況や経緯を記録する
安全が確保された後は、ぎっくり腰が発生した背景と経緯を詳細に調査します。これは労災申請に不可欠な「業務との因果関係」を証明するための根拠資料になります。
可能であれば写真や作業手順書などの客観的資料も添付し、事故報告書などの社内文書としてまとめます。目撃者がいれば、その証言内容も記録に残しておきます。
この記録は、後日、労働基準監督署から問い合わせがあった際の対応資料としても活用できます。事実を正確かつ時系列で記録しておくことが、結果的に事業者自身のリスクヘッジにもつながります。
労働基準監督署へ報告する
ぎっくり腰を含む労災事故が発生した場合、一定の条件を満たす場合には、労働基準監督署への報告義務が生じます。例えば、労働者が4日以上休業した場合には、「労働者死傷病報告」の提出が法律上義務付けられています。
報告を怠ると労働安全衛生法に基づく行政指導や、50万円以下の罰金が科される可能性があるため、注意が必要です。報告は、事故発生後速やかに行うことが望ましく、できるだけ遅滞なく提出します。
また、従業員が労災保険の給付請求を行う際には、会社が事業主証明欄に記入・押印する必要があります。これは事業者が該当労働者の就労状況や災害発生状況について事実確認を行った証として扱われます。協力を拒否すると、従業員の正当な申請手続きの妨げになる可能性があり、紛争や行政対応に発展するリスクもあるため、適切に対応することが求められます。
従業員のフォローアップと復職支援を実施する
従業員がぎっくり腰によって一定期間の休業を余儀なくされた場合には、復職支援を含めたフォローアップも重要な業務の1つです。回復状況を把握し、主治医の意見を参考にしながら、業務への段階的な復帰計画を立てる必要があります。
特に再発リスクが高い初期段階では、無理のない業務配分を検討し、一時的な軽作業への配置転換や、業務時間の短縮など柔軟な対応が求められます。復職後に再び症状が悪化した場合には、会社の配慮不足とみなされる可能性もあるため、慎重な対応が望まれます。
また、同様の業務に従事する他の従業員に対しても、安全面の注意喚起や健康管理の指導を行うことが重要です。体の負担が大きい作業については、作業手順の見直しやサポート器具の導入など、業務環境そのものの改善を検討する必要があります。
ぎっくり腰の労災に関してよくある質問
最後に、ぎっくり腰の労災に関してよくある質問とその回答をまとめました。
ぎっくり腰の労災申請には診断書が必要?
ぎっくり腰で労災申請を行う際、必ずしも最初から診断書の提出が義務付けられているわけではありません。ただし、休業補償給付を請求する際には医師による「診療担当者の証明」が必要となり、また症状が長引いたり、後遺症が残った場合には診断書が求められることがあります。労働基準監督署から追加書類を指示されるケースもあるため、受診時には「業務中の負傷である」と医師に明確に伝え、診断書の準備に備えておくことが大切です。
持病がある場合も労災認定される?
既に椎間板ヘルニアや慢性的な腰痛などの持病を抱えている場合でも、業務によってその症状が悪化したと医学的に判断されれば、労災として認定される可能性があります。労災保険では、業務による悪化部分に限定して補償が行われるため、自然な経過で進行した症状は対象外です。認定にあたっては、医師の診断書や画像検査の結果などが重要な判断材料となるため、発症時の状況と業務との関連を明確にしておくことが必要です。
テレワーク中のぎっくり腰も労災認定される?
在宅勤務中にぎっくり腰を発症した場合でも、仕事との因果関係が明確であれば、労災と認定される可能性があります。例えば、業務に必要な資料を持ち運んでいた際に無理な体勢をとった場合や、長時間の不自然な姿勢による腰痛などが該当します。ただし、自宅では業務と私生活の境界が曖昧なため、発症時の具体的な行動や業務指示の履歴を記録しておくことが重要です。医師にも業務との関係を説明し、適切な診断を受けましょう。
介護職のぎっくり腰も労災認定される?
介護職は腰に大きな負担がかかる業務が多く、ぎっくり腰を含む腰痛のリスクが非常に高い職種とされています。例えば、利用者の体位交換や移乗介助などの作業中に突然腰を痛めた場合、突発的な動作や負荷によるものであれば「災害性の腰痛」として、長期にわたる負担による場合には「災害性の原因によらない腰痛」として、労災と認定される可能性があります。介護職の労災申請では、作業内容や頻度の詳細な記録が重要な資料となります。
ぎっくり腰の労災は接骨院の施術費用も補償される?
労災としてぎっくり腰が認定された場合でも、接骨院での施術が補償の対象となるかどうかは条件によります。原則として、労災保険指定医療機関での治療が優先されますが、接骨院の施術が医学的に妥当かつ必要と認められる場合には、労働基準監督署の判断のもとで費用の支給対象となることがあります。施術内容や期間、医師の判断などに基づき判断されるため、あらかじめ監督署に相談し、必要に応じて医師の紹介を受けると安心です。
ぎっくり腰も条件を満たせば労災認定の対象に
ぎっくり腰は日常的に起こりやすい症状である一方で、仕事との関連性が明確であれば労災として認定されることもあります。認定の可否は、厚生労働省の定めた基準に基づき、突発的な事故や長期的な業務負荷との因果関係の有無によって判断されます。労災が認められた場合には、治療費や休業補償、障害が残った際の給付など、さまざまな補償を受けることが可能です。また、テレワークや介護職といった現代的な働き方においても、ぎっくり腰が労災に該当するケースが増えています。万が一に備え、正しい知識を持っておくことが、迅速かつ適切な対応への第一歩となります。本記事がその一助となれば幸いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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