- 更新日 : 2025年3月19日
夜勤明けは休みじゃない?休日扱いになるケースとならないケースについて解説
夜勤をともなう業務に就き、心身ともに負担を抱えた従業員の増加が問題となっています。
夜勤明けは休日扱いにできません。しかし夜勤明けの日勤は合法です。とはいえ、職場は従業員の負担を考慮したシフトを作成すべきです。
夜勤明けの取り扱いについて、また夜勤を含めた、合法とされるシフトの組み方や注意点を解説します。
夜勤とは?
看護師や介護士など、どうしても夜勤が発生する職種があります。
夜勤をともなう業務は心身ともにストレスや負担が大きいため、企業や職場は、従業員の健康を考慮したシフト作成が求められます。適切なシフトを組む前に、夜勤についての定義や夜勤をともなう働き方に関するルールを把握しておきましょう。
夜勤の勤務時間
夜勤は、おもに深夜から早朝にかけての勤務を指し、具体的には通常午後8時から翌朝6時の間にシフトが組まれるケースがほとんどです。夜勤はおもに医療・製造・サービス業など、さまざまな業種で発生します。
労働基準法では午後10時〜午前5時まで勤務した場合、深夜労働に対して割増賃金が発生します。
労働基準法にもとづいた夜勤の定義について、および労働時間の計算方法について、以下の記事で詳しく解説しているためあわせてお読みください。
夜勤の割増賃金
労働基準法には、深夜に働いた場合は割増賃金が発生する旨が明記されています。深夜労働、すなわち午後10時から午前5時までの勤務が該当し、深夜労働の時間内で働いた場合は、基礎賃金の25%以上の割増賃金が発生します。
企業や職場によっては夜勤手当を独自で設けている場合もあるでしょう。少なくとも法律で定められた割増率を下回ることは認められず、夜勤手当においては会社の就業規則や労働契約への明記が必要です。
夜勤が時間外労働や休日労働と重なった場合は、それぞれの割増率が併用され、さらに高い割合での支払いが必要です。
夜勤の休憩時間
労働基準法第34条では、夜勤も通常の労働時間と同様に、休憩について以下のように取り決められています。
- 労働時間が6時間を超える場合には最低45分
- 労働時間が8時間を超える場合には最低1時間
休憩は、必ず業務の途中に設けるよう定められています。また休憩は一斉に与えることが原則ですが、業務の性質により例外が認められる場合もあります。たとえば、保健衛生業や接客娯楽業などは、一斉に休憩を付与することが困難なため、一斉付与の例外です。なお、労使協定の締結によって、一斉付与の例外とすることも可能です。
さらに、休憩時間中は従業員が自由に利用できる状態であることが求められ、労働を強いることがあってはなりません。
夜勤明けは休みじゃない?
夜勤明けの翌日に日勤として出勤する場合、日勤までの時間を有給休暇として扱われることに不満や疑問を抱く人もいるでしょう。業種や勤務形態により、夜勤明けを休日として取り扱える場合と取り扱えない場合があります。夜勤明けと休日における考え方について説明します。
夜勤明けが休日扱いにならないケース
基本的に、夜勤明けの日は休日として認められません。労働基準法では、休日の定義が「午前0時から午後12時まで」の暦日単位で与える必要があるとされています。
たとえば、月曜日の夜21時から勤務し、火曜日の朝6時に終了し、その後24時間以上、日勤も夜勤もない場合であったとしても、火曜日は休日とはみなされません。次に出勤するまでの時間がどれだけ長くても、法定の休日に必要な暦日という要件を満たしているとは認められないためです。
ただし、夜勤明けに日勤や夜勤を設けることは法律で認められています。
夜勤明けが休日扱いになるケース
夜勤明けが休日扱いになる特別なケースとして、三交代勤務や特定の職業での勤務形態が挙げられます。三交代制では、日勤・準夜勤・夜勤を交互に行うため、夜勤明けから連続した24時間を休日として扱うことが認められています。
ただしタクシーやバス、トラックドライバーなど特定の職業では、厚生労働大臣の告示にもとづいて、休息期間を含む連続した休暇が必要な場合があるため注意が必要です。
休憩時間と混同しやすい時間に仮眠時間があります。夜勤における仮眠時間や設け方について、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてお読みください。
夜勤明けの日勤は違法?
夜勤明けの日勤にかんしては、労働基準法で明確に定められていません。そのため、適切な法定休日を与え、労働時間を管理していれば違法ではありません。
しかし夜勤のあとに日勤を設ける場合、企業や職場には従業員の心身の健康を守るために、十分な休息時間を与える必要があります。
たとえば、夜勤が午前6時に終わり日勤が午前9時に始まる場合、わずか3時間の休息しか取れません。休息が短時間しか取れない状態が数日続いた場合、従業員にとって過労や体調不良のリスクが高まります。
また労働契約法では、企業や職場には労働者の安全を確保する義務があるとしており、過重労働による健康問題が発生した場合、企業や職場には法的責任が生じる可能性があります。適切なシフト管理と健康配慮が重要です。
夜勤明けの次の日に日勤を設けることについて、違法となるケースや注意点などを以下の記事で解説していますので、こちらもあわせてお読みください。
勤務間インターバル制度とは?
勤務間インターバル制度は、労働者が1日の業務終了後から翌日始業までの間に、一定の休息時間が設けられる制度です。
労働者の生活時間や睡眠時間を確保し、長時間労働の改善を図るために制定されました。たとえば終業時刻から次の始業時刻までに9時間以上のインターバルを設けることが推奨されています。
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」により、勤務間インターバル制度の導入は、企業にとっての努力義務です。健康や福祉の確保の観点から、勤務間インターバルを適切に実施するよう努める必要があります。
そして勤務間インターバル制度を適切に設けている中小事業主には、助成金が受け取れる制度が設けられています。勤務間インターバル制度について、より詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。
夜勤が発生する業務で注意すべきこと
夜勤は通常の業務とは異なる特殊な勤務形態のため、従業員にとって大きな負担につながります。また従業員のなかには、夜勤に就かせられないケースがある点にも注意が必要です。夜勤がともなう業務において、職場や人事が注意すべきことについて解説します。
夜勤できない従業員を把握する
おもに健康上の理由や法的規制から、以下の従業員は夜勤に就けないため注意が必要です。
- 18歳未満の未成年者
- 特定の疾患をもつ従業員(睡眠障害や心血管系の問題など)
- 妊産婦(夜勤に就けない旨、本人から申告があった場合のみ禁止)
企業や職場は上記に該当する従業員を考慮しつつ、健康管理や法令遵守の観点から、適切なシフト作成が必要です。
勤務間インターバルを意識したシフトを作成する
勤務間インターバル制度は、労働者が十分な休息時間を確保し、心身の健康を維持するために遵守すべき制度です。
夜勤をともなう業務では、勤務間インターバル制度を考慮したシフト作成が求められます。まず夜勤後の翌勤務開始時間を適切に設定し、交代時間の間隔を確保する必要があります。
たとえば、夜勤明けの従業員に対しては、少なくとも9時間以上のインターバルを設けましょう。シフトを作成する際は、労働者の勤務時間や活動リズムにもとづいた適切な休息時間を考慮しながら、シフトを調整します。
また従業員の健康を考えるには、シフトのパターンを多様に設定し、フレキシブルな勤務体制を確保することも大切です。たとえば、夜勤の負担を軽減するために2交代制を導入したり、夜勤明け制度を導入したりする方法などが効果的です。
夜勤の業務を自動化できないか検討する
夜勤業務は、ツールやシステムで自動化できる場合があります。
従業員があらかじめ設定しておき、ツールやシステムが深夜に自動で完了してくれる仕組みを構築すれば、業務効率が向上するうえ、最終的には夜勤がなくなる可能性も期待できるでしょう。
自動化の導入にあたり、まず夜勤の業務工程を分析し、自動化が可能な箇所を明確にします。たとえば、夜間のデータ入力や監視業務、機器の操作など、定型化された業務は自動化に向いています。
次に、必要なシステムや機器の選定を行い、導入計画を立てましょう。自動化によって夜勤業務の効率化が実現すれば、労働者はより重要な判断業務や、対人でのコミュニケーションが必要な業務に集中できます。また夜勤業務だけでなく、日勤業務にも活用できるでしょう。
夜勤についてよくある4つの質問
夜勤・日勤・準夜勤を組み合わせたシフトは、複雑でさまざまなパターンが考えられるため、判断に迷う場面もあるでしょう。夜勤について、よくある質問についてまとめました。夜勤が発生する業務に就いている人や、取りまとめてシフトを作成している人は、ぜひ参考にしてください。
Q1. 夜勤明けに日勤に入ることは可能ですか?
A1. はい。
夜勤明けの日勤は、合法です。日本の労働基準法では、連続勤務に関する決まりにおいては明確に定められていないため、夜勤から日勤の切り替えは禁止されていません。たとえば、夜勤を終えたあとに少し休憩をはさんで日勤に就く形態がとれます。
従って、夜勤明けの3時間後に日勤を開始することも、法的には問題ありません。
しかし、企業には「安全配慮義務」があります。夜勤明けの労働は従業員にとって大きな負担となるため、安全配慮義務に沿ったシフト作成が必要です。また、夜勤明けの日を法定休日として扱うことはできないため、休暇制度や労働時間管理に注意が必要です。
Q2. 夜勤明けに夜勤で労働することは可能ですか?
A2. はい。
夜勤明けの日に再度夜勤で労働することは可能です。労働基準法では、深夜0時を超えて勤務した場合は勤務日とみなされます。たとえば、月曜日の午後8時から火曜日の午前5時まで夜勤をした場合は月曜日の労働としてカウントされます。
そのため、夜勤明けの次の勤務を火曜日の午前中から行うことは法律的には問題ありません。
ただし、従業員の健康面への配慮が重要です。夜勤明けは体力が消耗しており、再度の夜勤や日勤での労働は従業員に大きな負担をかける可能性があります。法令上の問題はなくても、労働環境の改善や安全配慮義務の遵守が不可欠です
Q3. 夜勤や多重業務により過労死につながった事例はありますか?
A3. はい。
残念ながら、過労死により従業員が亡くなった事例が存在しますので、2つ紹介します。
【事例1】JR西日本事件
長時間労働が原因で、28歳の男性が飛び降り自殺で亡くなりました。具体的には、当該社員は長時間にわたる勤務と、職場のストレスが重なりうつ病を発症しました。労働時間の把握が不十分で、企業側が社員の健康状態や労働環境について適切な管理を行っていなかったことも、過労死を引き起こした要因とされています。社員の遺族は約1億9000万円の損害賠償を求めて訴訟を提起し、大阪地裁は企業に対して賠償責任を認める判決を下しました。
【事例2】電通過労自殺事件
2015年に新入社員として入社した従業員が、入社からわずか9ヶ月で、飛び降り自殺により亡くなりました。月に約100時間以上の残業を強いられ、仕事のプレッシャーに耐えながら自己の限界を超える働き方を続けた結果、精神的なストレスを蓄積させた結果、自殺に至ったのです。電通は事件に関連して、遺族に対して約1億6800万円の賠償金を支払うことで合意しました。
Q4. 10日の朝6時に退勤し、12日の9時に出勤しました。11日は有給扱いですか?
A4. いいえ。
有給休暇の扱いについては、労働基準法にもとづき、労働者に労働義務がある日を休暇として取得した場合に適用されます。
10日の朝6時に退勤して12日の9時に出勤する場合は、11日の午前0時から日付が変わる時間帯まで空くため、休日にできます。しかし、企業や職場が休日としてもともと与えている日なので、有給扱いにはできません。
夜勤明けは休日・有給扱いにはできない
夜勤明けは、原則休日扱いにはできません。そのため、夜勤明けの当日が有給休暇として残日数から引かれていた場合は違法です。
夜勤は従業員にとって健康を大きく損なう働き方であることを意識し、企業や職場は適切にシフトを組む必要があるでしょう。過重労働や夜勤の連続は最悪、従業員の過労死につながります。
従業員は自身の健康を守る行動を、職場は自動化できる業務はできるだけ自動化をすすめ、負担軽減に努めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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