- 更新日 : 2025年3月5日
正社員の雇用契約書は義務ではない!作成方法や注意点を解説
「雇用契約書ってどうやって作成すればいいんだろう?」「必須の記載事項が何かわからない…」
はじめて雇用契約書を作成する際、上記の疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
雇用契約書は、労働条件を明確化し、労使間のトラブルを未然に防ぐために欠かせない重要な書類です。
本記事では、正社員の雇用契約書作成の基本的な作成手順から、記載漏れを防ぐための注意点、さらによくある疑問まで、わかりやすく解説します。
ぜひ参考にしてください。
目次
正社員への雇用契約書の作成は義務ではない
正社員に対する雇用契約書の作成は法律上の義務ではありません。
労働基準法では労働条件を明示することが義務付けられていますが、「雇用契約書」ではなく「労働条件通知書」を交付すれば、義務を満たせます。
労働条件通知書には、労働時間や賃金、就業場所などの法定記載事項を含める必要があり、記載事項に漏れのない労働条件通知書を交付すれば雇用契約書を作成・交付しなくても違法にはなりません。
たとえば、労働基準監督署の指導事例でも、契約書ではなく労働条件通知書を交付している企業が多く見られます。
したがって、企業側は契約書の作成を必須と考える必要はありません。
しかし、後のトラブルを防ぐためにも、可能な限り双方の合意を明文化した雇用契約書を作成することが望ましいでしょう。
労働条件通知書と雇用契約書の違い
労働条件通知書と雇用契約書には、労働者との合意の有無に違いがあります。
労働条件通知書は、事業主が労働者に対して一方的に労働条件を通知するものであり、労働者の同意の有無が書面に残りません。
一方、雇用契約書は、労働者と使用者の双方が合意した内容を明文化し、署名または記名押印を行うため、労働者の同意が書面に残る点が特徴です。
たとえば、労働条件の変更があった場合、労働条件通知書では通知のみで済みますが、雇用契約書では両者の合意が必要です。
労働条件通知書は最低限の義務を果たすためのものであり、契約書は労使双方の認識を一致させる役割があります。
このような違いについて理解したうえで、状況に応じて適切な書類を活用してください。
雇用契約書が必要な理由
雇用契約書を作成することで、労使間のトラブルを未然に防げます。
とくに、給与や労働時間、業務内容などの重要な条件を明文化することで、認識のズレをなくし、後々のリスクを回避しやすくなるでしょう。
たとえば、残業代の支払いについて口頭での合意のみでは、後から「言った・言わない」のトラブルに発展することがあります。
しかし、雇用契約書に「月◯時間の残業は固定残業代に含む」などの明確な記載があれば、問題を防げるでしょう。
また、企業側にとっても、従業員が労働条件を理解した証拠として契約書を保管しておくことで、不当な請求を避けることが可能になります。
そのため、法的義務がなくても、労働条件について使用者・労働者双方が合意した記録として雇用契約書を作成することが推奨されます。
正社員の雇用契約書の作成方法
正社員の雇用契約書を作成する際には、労働条件通知書に記載すべき法定事項を網羅し、記載漏れを防ぐことが重要です。
労働条件通知書に記載すべき事項を網羅する
雇用契約書を作成する際には、労働条件通知書に記載すべき項目をすべて網羅することが重要です。
労働基準法では、必ず記載しなければならない「絶対的明示事項」と、定めがある場合に記載が求められる「相対的明示事項」が存在します。
それぞれの項目を漏れなく記載した雇用契約書を作成することで、契約上のトラブルを防げるでしょう。
記載漏れを防ぐためのチェックポイントは以下の通りです。
- 雇用契約書に記載すべき主要項目
- 労働契約の期間
- 業務内容や就業場所
- 労働時間、休日、休暇
- 賃金の計算方法、支払い方法
- 退職や解雇に関する事項
- 記載漏れチェックリスト
- 契約締結前に法定記載事項を確認する
- 既存の契約書テンプレートを見なおす
- 最新の労働基準法にもとづき適宜修正を行う
上記を意識することで、適正な雇用契約書の作成が可能になります。
絶対的明示事項
労働基準法では、雇用契約書や労働条件通知書に記載しなければならない「絶対的明示事項」が定められています。
絶対的明示事項は、雇用契約を締結する際に必ず労働者へ明示しなければならない項目です。
記載すべき必要な内容は以下の通りです。
【絶対的明示事項の内容】
項目 | 説明 |
---|---|
労働契約の期間 | 期間の定めの有無、更新基準 |
就業場所・業務内容 | 採用時の就業場所・従事すべき業務、及び、これらの変更の範囲 |
労働時間・休憩・休日・休暇 | 始業・終業の時刻、残業の有無、休憩時間、休日など |
賃金 | 計算・支払方法、締日・支払日など |
退職 | 退職申出の期日、解雇となる理由など |
参照:採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。具体的には何を明示すればよいのでしょうか。|厚生労働省
上記を適切に記載することで、契約内容の不明瞭さをなくし、労働トラブルを未然に防げます。
企業側は、必要事項を正しく理解し、雇用契約書や労働条件通知書に適切に記載してください。
相対的明示事項
相対的明示事項とは、労働基準法において、企業が就業規則や労働契約において特定の定めがある場合にのみ記載義務が生じる労働条件のことです。
労働基準法では、以下のような項目を相対的明示事項として定めています。
【相対的明示事項の内容】
項目 | 説明 |
---|---|
昇給 | 条件、昇給のタイミングなど |
退職手当 | 支給条件など |
臨時の賃金 | いわゆる賞与の支給条件など |
その他の事項 |
|
参照:採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。具体的には何を明示すればよいのでしょうか。|厚生労働省
上記の項目がある場合は、雇用契約書や労働条件通知書への明記が求められます。
たとえば、退職手当や賞与に関する記載が不明瞭な場合、従業員とのトラブルにつながる可能性があります。
企業は、契約時に相対的明示事項を正しく反映し、労使双方が納得できる契約を作成してください。
変形労働時間制の有無を記載する
雇用契約書には、通常労働時間制か変形労働時間制のどちらを採用しているかを明記する必要があります。
労働時間の制度を明確にすることで、労働者が勤務時間の仕組みを正しく理解し、予期せぬ労働トラブルを防げるためです。
【労働時間制度の種類】
労働時間制度 | 特徴 |
---|---|
通常労働時間制 | 1日8時間、週40時間の法定労働時間の原則どおり |
変形労働時間制 | 一定期間内で労働時間を柔軟に調整可能 |
たとえば、1ヶ月単位の変形労働時間制では、繁忙期に労働時間を長めに設定し、閑散期に短縮することで、労働時間の効率的な運用が可能になります。
ただし、変形労働時間制を導入する場合は、対象となる期間や労働時間の上限を明確にし、就業規則に規定する、もしくは労使協定の締結・労働基準監督署へ届け出る必要があります。
企業は、雇用契約書に労働時間のルールを明記し、適正な勤務管理を行ってください。
転勤や人事異動・職種変更有無を記載する
雇用契約書には、転勤や人事異動、職種変更の有無について明確に記載することが求められます。
勤務地変更や職務変更の可能性を事前に伝えることで、労働者が将来的な勤務条件を理解し、不要なトラブルを防げるためです。
記載すべきポイントは以下の通りです。
- 転勤の有無:国内外の異動の可能性を記載
- 人事異動の有無:部署変更や昇進・降格の可能性を明記
- 職種変更の有無:採用時の職務からの変更の可能性を明記
2024年4月の労働基準法改正により、企業は労働者に対して勤務地や職務変更の範囲を明示するよう義務付けられました。たとえば、「全国転勤あり」とだけ記載するのではなく、「〇〇エリア内での転勤の可能性あり」など具体的な範囲を示すことが望ましいとされています。
企業は、労働条件が変更となる可能性を適切に伝え、労働者の理解を得ることが重要です。
試用期間の有無を記載する
雇用契約書には、試用期間の有無と条件を明記することが重要です。
試用期間のルールを明確にすることで、労働者が勤務開始後の雇用条件を正しく理解し、トラブルを未然に防げるためです。
試用期間に関する記載事項は以下になります。
項目 | 記載内容 |
---|---|
試用期間の有無 | 試用期間がある場合はその期間(例:3ヶ月)を明記 |
試用期間中の給与・待遇 | 本採用時と異なる場合は詳細を記載(例:営業手当は支給しない) |
本採用の条件 | 試用期間終了後に自動的に本採用となるのか、評価が必要かを記載 |
たとえば、「試用期間3ヶ月、期間中の給与は本採用時と同条件」と記載することで、労働者は試用期間中の待遇について明確に理解できます。
また、「試用期間中の評価によっては本採用とならない場合がある」と明記することで、企業側も採用の柔軟性を持たせられます。
試用期間の条件を正しく伝え、双方の認識を一致させるようにしましょう。
正社員の雇用契約書を作成する際の注意点
正社員の雇用契約書を作成する際には、契約内容の明確化や法的要件の遵守が求められます。
とくに、電子契約の活用や雇用期間の定め、契約違反時の罰則などに注意する必要があります。
電子契約で雇用契約書の提示・署名も可能
雇用契約書は、紙の書類だけでなく、電子契約でも作成・締結することが可能です。
電子契約の導入により、契約書の管理が効率化され、企業と労働者双方にとって利便性が向上します。
電子契約を利用する際の注意点は以下の通りです。
- 事前確認が必要:電子契約システムの導入有無を確認する
- 労働者が閲覧・保存できる環境を確保:契約内容をいつでも確認できる状態にする
- システムの選定:信頼できる電子契約サービスを導入する
たとえば、「クラウドサイン」や「DocuSign」などの電子契約システムを活用すると、労働者はオンラインで契約内容を確認し、電子署名を行えます。
企業は、労働基準法の要件を満たしながら、契約業務のデジタル化を進めることで、業務効率の向上と法令遵守を両立させることが可能です。
正社員には雇用期間の定めはない
正社員の雇用契約は、原則として期間の定めがありません。
無期雇用であることを前提としつつも、企業によっては定年制度を設けることが一般的です。
そのため、雇用契約書には定年の有無や年齢を明記する必要があります。
【無期雇用の例外条件】
例外 | 説明 |
---|---|
定年制 | 一定の年齢(例:60歳、65歳)で雇用終了 |
再雇用制度 | 定年後に契約社員として再雇用 |
期間の定めがある特殊ケース | 特定のプロジェクト終了後に雇用終了など |
たとえば、企業が「60歳定年・65歳までの再雇用制度あり」と明記することで、労働者は退職後の生活を見据えた見通しを立てやすくなります。
雇用契約書に違反すると罰則あり
雇用契約書に記載された内容に違反した場合、企業には労働契約法にもとづく罰則が適用される可能性があります。
企業が契約内容を適切に履行しないと、労働基準監督署からの指導や罰則の対象となるため、注意が必要です。
【雇用契約に関する罰則例】
違反内容 | 罰則 |
---|---|
労働条件の明示義務違反 | 30万円以下の罰金 |
賃金未払い | 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 |
たとえば、企業が雇用契約書で明示した給与を支払わない場合、労働基準法に定める罰則が科せられる可能性があります。
また、企業が雇用契約書で明示した労働条件と実際の労働条件が異なる場合、労働者は直ちに雇用契約を解除できます。
そのため、企業は不備のない雇用契約書を作成し、明示した労働条件に即して適正な労務管理を行わなければなりません。
正社員の雇用契約書を作成する際のよくある疑問
雇用契約書を作成する際には、作成するタイミングや在宅勤務時の対応、ひな形の有無など、さまざまな疑問が生じます。
適切な契約書を作成するためには、労働基準法にもとづいた正しい知識を持ち、企業と労働者双方にとって明確な内容を記載することが重要です。
雇用契約書を作成するタイミングは?
雇用契約書は、入社日に提示のうえ署名を求めるのが一般的です。
労働基準法では、労働条件を明示する義務がありますが、具体的な明示時期についての規定はありません。
しかし、企業と労働者の双方が雇用条件を確認し、トラブルを防ぐためにも、入社前または入社日に契約を締結することが望ましいでしょう。
また、契約内容に変更がある場合は、その都度契約書を更新し、双方が署名もしくは記名押印します。
在宅勤務の場合の作成方法は?
在宅勤務(テレワーク)を導入する場合、雇用契約書には就業場所や費用負担に関する規定を明記する必要があります。
記載すべきポイントは以下の通りです。
たとえば、「在宅勤務時のインターネット通信費は月5,000円を上限として会社が負担する」と記載することで、労働者は費用面での不安を解消できます。
在宅勤務制度を適正に運用するためにも、契約書に明確なルールを記載しましょう。
正社員の雇用契約書のひな形・テンプレートはある?
雇用契約書のひな形は、厚生労働省が提供する「モデル労働条件通知書」を参考に作成できます。
モデル労働条件通知書には、労働時間や賃金、休日・休暇、退職に関する事項などの基本的な項目が含まれています。
ただし、各企業のルールや制度に応じて、必要な項目を追加・修正することが重要です。
雇用契約書は、企業と労働者双方の権利と義務を明確にする重要な書類であるため、適切なフォーマットを活用しながら、わかりやすい契約書を作成しましょう。
正社員への雇用契約書は労働基準法に則って作成しよう
正社員の雇用契約書は、労働基準法に則って適正に作成することが求められます。
契約書を作成する際には、入社前に労働条件を明示し、在宅勤務などの特別な勤務形態に対応した内容を記載することが重要です。
また、厚生労働省の「モデル労働条件通知書」を活用することで、漏れのない契約書を作成できます。
企業と労働者の双方が安心して働ける環境を整えるために、適切な雇用契約書の作成を心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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