• 更新日 : 2026年1月14日

ワークライフバランスとは?企業が取るべき施策・メリット・事例を解説

ワークライフバランス(WLB)は、仕事と生活を調和させ、その相乗効果で人生全体の質を高める考え方です。近年、単なる「仕事とプライベートを分ける」という古い認識から、両者を融合させる「ワーク・イン・ライフ」といった新しい概念へと進化しています。企業には、生産性の向上や人材確保のため、WLBの推進が不可欠です。この記事では、ワークライフバランスの最新の定義、推進が求められる背景、法的義務、そして柔軟な働き方を実現するための具体的な制度や、労務管理における注意点をわかりやすく解説します。

目次

ワークライフバランスとは?内閣府の定義と最新の考え方

ワークライフバランス(WLB)は、単に「残業を減らす」「有給休暇を取らせる」といった一時的な施策ではなく、企業の持続的な成長と従業員の人生の質(QOL)を両立させるための経営戦略です。

まずは、内閣府が示す公式な定義と、そこから派生した最新の概念を押さえたうえで、自社のワークライフバランス施策をどう位置付けるかを整理していきましょう。

内閣府によるワークライフバランスの定義と3つの条件

ワークライフバランスとは、「国民一人ひとりが、仕事、家庭生活、地域活動、自己啓発など、さまざまな活動について、自ら希望するバランスで展開できる状態」を指します。

これは、内閣府が推進している考え方であり、特定の活動に偏ることなく、多様な生き方が選択できる社会の実現を目指しています。WLBが実現された状態は、以下の「仕事と生活の調和の3条件」が満たされていることとされています。

  • 就労による経済的な自立が可能となること
    経済的に安定し、健康で文化的な生活を営むことができる。
  • 健康で豊かな生活のための時間があること
    仕事以外の生活のための時間(育児、介護、自己啓発、休養など)を確保できる。
  • 多様な働き方・生き方が選択できること
    年齢、性別、ライフステージに応じて、多様な働き方や生き方ができる。

ワークライフバランスは古い?「ワーク・イン・ライフ」との違い

近年、WLBに代わる概念として「ワーク・イン・ライフ」が注目されています。これは、WLBの「仕事と生活を切り分ける」という考え方が、現代の働き方に合わなくなってきたためです。

概念定義と特徴働き方のイメージ
ワークライフバランス(WLB)仕事と生活を明確に分け、両者の比重や時間を「バランス」させる考え方。定時に仕事を終え、プライベートの時間を確保する。
ワーク・イン・ライフ「人生(ライフ)」の中に「仕事(ワーク)」を位置づけ、仕事も生活の一部として捉え、生活全体の質を高める考え方。フレックスやテレワークを活用し、生活の都合に合わせて仕事の時間を調整する。

ワーク・イン・ライフの考え方では、仕事と生活を対立させるのではなく、両者の相乗効果で人生全体の充実度を高めることが重視されます。

企業としては、「ワークライフバランスをどう実現するか」に加え、「従業員のライフ全体の設計の中に、仕事をどう位置づけるか」という視点で、フレックスやテレワークなどの柔軟な働き方を設計していくことが求められています。

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企業がWLB推進を求められるようになった3つの背景

企業がワークライフバランスの推進を急務として求められるようになった背景には、主に以下の3点が挙げられます。

少子高齢化と労働人口の減少

働き手の減少が進む中で、女性や高齢者、育児・介護を行う者など、多様な人材が長く働き続けられる環境を作ることが企業の存続に不可欠になっています。

働き方改革関連法の施行による法規制の強化

長時間労働の是正や年次有給休暇5日取得義務など、働き方改革関連法により、企業は法的にもワークライフバランスへの対応を迫られています。もはや「やるか・やらないか」ではなく、「どう適切に対応し、競争力向上につなげるか」が問われています。

従業員の意識の変化と多様化

従来の「仕事優先」の価値観から、「仕事とプライベートの両立」「仕事を通じた自己実現」を重視する傾向が強まりました。WLBへの取り組みは、従業員の満足度と定着率に直結する課題になっています。

企業がワークライフバランスを推進するメリットは?

ワークライフバランスの推進は、「従業員を休ませるためのコスト」ではなく、企業の生産性向上や人材確保につながる投資です。主なメリットは次のとおりです。

従業員エンゲージメントと生産性の向上

WLBが充実することで、従業員は心身ともに健康になり、仕事へのモチベーションが高まります。

具体的には、仕事のオン・オフが明確になり、効率の良い働き方を意識するようになるため、時間あたりの生産性が向上します。また、企業が生活に配慮してくれる姿勢は、従業員の会社への信頼や愛着(エンゲージメント)を高め、結果として組織全体のパフォーマンスの底上げにつながります。エンゲージメントの向上は、離職防止や企業イメージ向上にも良い影響を与えます。

優秀な人材の確保と離職率の低下

WLBの実現は、採用市場における企業の競争力を高めます。

特に育児や介護と仕事を両立したいと考える層にとって、柔軟な勤務制度や休暇制度の充実は、企業を選ぶ際の重要な判断基準になります。WLBを積極的に推進している企業は、優秀な人材を惹きつけやすくなり、採用活動を有利に進められます。さらに、従業員がライフステージの変化に応じて働き方を調整できることで、離職を防ぎ、貴重なノウハウの流出を防ぐことにつながります。

くるみん・えるぼし認定による企業イメージ向上

ワークライフバランスへの取り組みは、企業の社会的責任(CSR)を果たすことにもつながり、企業イメージを大きく向上させます。

企業が WLB 推進を証明する具体的な指標として、厚生労働省による「くるみん認定」や「えるぼし認定」があります。

  • くるみん認定
    子育てサポートを積極的に行っている企業を認定する制度。
  • えるぼし認定
    女性の活躍推進に関する取り組みが優良な企業を認定する制度。

これらの認定をうけくるみんマーク・えるぼしマークを取得することは、対外的に企業の健康経営や多様性への配慮を示すことになり、採用や取引において有利に働きます。

関連記事|働き方改革とは?概要や関連法案を分かりやすく解説

ワークライフバランスと働き方改革関連法|企業の法的義務

2019年以降施行された「働き方改革関連法」は、企業に対し、ワークライフバランスを促進するための具体的な法的義務を課しています。人事・労務担当者は、これらのコンプライアンスを徹底する必要があります。

年次有給休暇5日取得義務とワークライフバランスの関係

労働基準法の改正により、2019年4月から、年次有給休暇が10日以上付与されるすべての労働者に対し、企業は年5日を時季を指定して取得させることが義務化されました。

これは、従業員が確実に休暇をとり、心身のリフレッシュや家庭生活との調和を図ることを目的とした制度であり、ワークライフバランス実現のベースとなる規定です。

企業は、

  • 従業員ごとの有給休暇付与日数・取得状況の管理
  • 年5日の取得計画の策定と管理

を行う必要があります。この義務に違反した場合、30万円以下の罰金が科される可能性があるため、「有給取得率を高めたい」というレベルではなく、コンプライアンスとして確実な運用体制を構築することが重要です。

関連資料|有給休暇5日取得義務の罰則と促進方法ガイド
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時間外労働の上限規制(残業規制)と長時間労働の是正

働き方改革関連法の柱の一つが、時間外労働(残業)の上限規制です。

原則として、時間外労働は月45時間・年360時間が上限とされ、臨時的な特別の事情がある場合でも、一定の条件のもとでしか上限を超えることはできません。大企業には2019年4月から、中小企業には2020年4月から適用されています。

この規制は、慢性的な長時間労働を是正し、従業員が仕事以外の生活時間を確保できるようにするための前提条件です。上限を超える長時間労働をさせた場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となる可能性があります。

ワークライフバランスを推進するうえでは、

  • 残業時間の見える化
  • 業務プロセスの見直し
  • 長時間労働を前提としない人員配置

といった、制度と運用の両面からの対策が求められます。

関連資料|残業時間の平均&上限かんたんガイド
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育児・介護休業法に基づく企業の義務と両立支援

育児・介護休業法は、仕事と家庭生活の両立を支援するための法律であり、企業には以下の義務があります。

  • 育児休業
    原則として、子どもが1歳になるまで育児休業を取得できる制度を設けること。一定の条件のもとで最長2歳までの延長も可能。
  • 介護休業
    要介護状態の家族1人につき、通算93日まで休業を付与する。
  • 子の看護等休暇・介護休暇
    子の病気や家族の介護のために、年5日(対象家族2人以上の場合は年10日)を上限として休暇を付与する。
  • 育児目的休暇・出生時育児休業(産後パパ育休)の整備・周知
    男性の育児休業取得を促すため、出生時育児休業(産後パパ育休)の制度を整備し、取得を促進する。

関連記事|育休は義務?男性育休の義務化や会社の対応義務について解説

企業はこれらの法的な制度を周知し、利用しやすい環境を整備することが、WLB推進の重要な要素になります。

関連資料|労働時間の種類の解説ガイド
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ワークライフバランスを実現する取り組みと制度は?

WLBを実現するためには、柔軟な制度設計と、制度を支える具体的な施策が必要です。ここでは、企業が導入すべき代表的な制度と、労務管理上の課題を解説します。

従業員のライフスタイルやニーズに合わせて、以下のような柔軟な勤務制度を導入しましょう。

フレックスタイム制度

一定期間の総労働時間を定め、日々の始業・終業時刻を従業員が自由に決められる制度です。育児や介護、通院など、私的な都合に合わせた時間調整が可能になります。

関連記事|フレックスタイム制とは?メリット・デメリットや導入の注意点を解説

在宅勤務(テレワーク)制度

自宅やサテライトオフィスなど、会社以外の場所で勤務できる制度です。通勤時間の削減、育児・介護との両立支援に効果的であり、従業員のストレス軽減につながります。

関連資料|導入準備に役立つチェックリスト付き テレワーク導入までの9ステップ

短時間勤務制度

育児や介護を行う従業員に対し、所定労働時間を短縮して勤務できる制度です。法定義務の対象外の従業員にも適用することで、幅広いニーズに対応できます。

関連資料|変形労働時間制 週平均労働時間かんたん計算マニュアル

長時間労働を削減するための施策

柔軟な制度を導入しても、業務量が変わらなければ長時間労働は解消できません。以下の施策を組み合わせ、長時間労働を削減しましょう。

ノー残業デーの設定と徹底

特定の曜日をノー残業デーとし、一斉退社を促します。単なる標語で終わらせず、管理職が率先して退社することや、消灯を徹底するなど、実効性を高める工夫が必要です。

関連記事|ノー残業デーとは?おかしい・意味ないと言われる理由は?曜日の重要性なども解説

業務の「見える化」と効率化

すべての業務の棚卸しを行い、優先順位付けや、マニュアル化による属人化の解消を進めます。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などのデジタルツールを導入し、定型業務を自動化することも有効です。

関連資料|システム導入だけでは変わらない? 勤怠管理DXのあるあるなお悩みと再設計のポイント

会議・稟議のルールの見直し

会議時間を短縮する、不要な会議を廃止する、稟議を電子化するといったルールの見直しは、業務効率を大幅に改善し、残業削減に直結します。

ワークライフバランス施策の効果測定に使えるKPI・指標

ワークライフバランス制度は、導入して終わりではなく、経営にどのような効果をもたらしているかを定量的に確認し、継続的に改善することが重要です。

効果測定の際には、次のようなKPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的にモニタリングするとよいでしょう。

  • 労働時間に関する指標
    月平均残業時間、年次有給休暇取得率、欠勤率
  • 組織状態に関する指標
    従業員エンゲージメントスコア、ストレスチェックの高ストレス者割合
  • 成果に関する指標
    時間あたりの生産性(売上÷総労働時間)、採用応募者数、離職率

これらの指標を部門別・職種別に分析することで、どの部署でワークライフバランス施策が機能しているか、どこに課題があるかを把握できます。結果を踏まえ、制度の改善や管理職へのフィードバックにつなげていくことが、ワークライフバランス推進を軌道に乗せるカギとなります。

ワークライフバランス制度導入の企業別成功事例

WLB制度への取り組みを行い、実際に成功した企業の事例をご紹介していきます。

 SCSK北海道株式会社(情報通信業)

SCSK北海道株式会社は、子育てサポート企業として「くるみん認定」を取得しています。柔軟な勤務時間の導入に加え、保育参観や授業参観などに活用できる両立支援休暇を設けるなど、子育て支援を幅広く行っています。

その結果、企業としての魅力が向上し、優秀な応募者の質が向上しました。離職率も10%程度の低い水準で推移しており、人材の定着に成功しています。

 株式会社アワーズ(レジャー業)

株式会社アワーズも、子育て支援に積極的で「くるみん認定」を取得している企業です。

特に男性社員の育児休業取得促進に力を入れており、男性社員の育児休業取得率は50%を達成しています(目標の70%達成に向け推進中)。育児休業の利用が当たり前となる職場風土を醸成することで、性別にかかわらず仕事と家庭を両立しやすい環境を実現しています。

関連記事|人事労務の最新トレンドを解説!2025年に取り組みたいポイントとは

ワークライフバランス制度を形骸化させないための注意点

ワークライフバランス制度が期待した効果を発揮できない主な原因は、制度の形骸化と不公平感の発生です。制度を継続的に機能させるためには、次のポイントに注意しましょう。

トップが率先して制度を活用する

ノー残業デーでも隠れて仕事をする、フレックス制度を申請しづらい雰囲気があるなど、制度が形骸化しないよう、経営層や管理職が率先して制度を利用することが不可欠です。また、勤怠管理システムで打刻時間を客観的に記録し、上司が部下の労働時間を常にチェックできる体制を作りましょう。

不公平感を防止する

在宅勤務者と出社勤務者の間に情報格差や評価格差が生まれないよう、全社共通のオンラインコミュニケーションツールを導入し、成果主義に基づく公平な評価制度を構築することが重要です。

関連資料|特別休暇の早見表
関連資料|企業がぶつかるテレワークのあるある問題 テレワークでのコミュニケーション不全問題、どう解決する?

ワークライフバランスを推進しよう

ここまでワークライフバランスとは何なのか、注目されるようになった背景、推進するメリット、具体的な実践例を解説してきましたが、ワークライフバランスの概要やメリット、実践例などご理解いただけたでしょうか。ワークライフバランスは、働き方改革が推し進められている現代において、切っても切り離せない考え方です。企業の方でワークライフバランスに基づいた制度導入を検討中の方は、ぜひこちらの記事を参考にしてみてください。


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