- 更新日 : 2023年7月14日
ワークライフバランスとは?必要性や具体的な実践例を解説!
近年、働き方を見直す流れの中で「ワークライフバランス」という言葉を目にする機会が増えました。しかし、いざワークライフバランスとは何か聞かれるとよく分からないという方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、ワークライフバランスとは何か、注目されるようになった背景、推進するメリット、具体的な実践例などを解説します。
目次
ワークライフバランスとは?
2007年に内閣府が策定した「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲法」では、ワークライフバランスが実現した社会とは、
「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」
と定義されています。
つまりワークライフバランスとは、単なる「仕事時間とプライベートとの切り分け」や「仕事よりプライベートを優先させる」という考え方ではなく、「仕事とプライベートの両者を充実させて好循環を生むことを目指す」という考え方なのです。
ワークライフマネジメントとの違い
ワークライフマネジメントは、自ら仕事やプライベートをマネジメントし「主体的に努力をする」ことで仕事とプライベートを調和させるという考え方を指します。一方ワークライフバランスは、企業側がフレックスタイム制度や在宅勤務、時短勤務などの制度を設けて従業員に提案・奨励し、従業員が「受動的に制度に頼る」ことで仕事とプライベートを調和させるという考え方を指します。
ワークライフインテグレーションとの違い
ワークライフインテグレーションもワークライフバランスも、仕事とプライベートの両立を目的とする考え方です。ですが、ワークライフインテグレーションは仕事とプライベートの間に線引きをせずに、どちらも人生の一部なので相乗効果で人生を充実させていくという考え方です。一方ワークライフバランスは、仕事とプライベートの間に線引きをして、どちらかを犠牲にしないようにバランスをとるという考え方です。
ワークライフバランスが注目されるようになった背景
そんなワークライフバランスですが、注目されるようになった背景は何だったのでしょうか。ここでは、ワークライフバランスが注目されるようになった背景を解説します。
仕事と生活の両立が難しい現実がある
現代社会において、安定した仕事に就けず経済的自立ができなかったり、仕事に追われて心身の健康を損ないかねなかったり、仕事と子育てや老親の介護の両立に悩んだりしている方は少なくありません。仕事と生活のバランスで問題を抱える人が多く見られていることが、ワークライフバランスが注目されるようになった背景です。
働き方の二極化が進んだ
国内外での企業間競争の激化や長期的な経済の低迷・産業構造の変化によって、生活の不安を抱える非正規雇用の労働者が大幅に増加しました。その一方で、正社員の労働時間は高止まりしたままといったように、働き方の二極が進んだこともワークライフバランスが注目されるようになった背景の一つです。
共働き世帯の増加と変わらない働き方・役割分担意識
昔は男性が働き女性が家庭や地域での役割を果たすという分担が一般的でした。しかし、今では女性の社会参加が進み、労働者世帯の過半数が共働きなど、人々の働き方や生き方が変化しました。また、働き方や子育て支援といった社会的基盤がこうした変化に対応できていないことも、ワークライフバランスが注目されるようになった理由の一つです。
ワークライフバランスはなぜ必要?
以上のような背景で注目されているワークライフバランスですが、なぜ企業にとっても必要なのでしょうか。それは国が推奨しているからだけではありません。従業員の生活や健康を守るため、従業員のスキルアップ、生産性の向上、優秀な人材の獲得、離職防止などのため、今企業にとってもワークライフバランスの導入が必要不可欠なのです。
ワークライフバランスを企業が推進するメリット
それでは、企業がワークライフバランスを推進すると、どんなメリットがあるのでしょうか。続いて、企業がワークライフバランスを推進するメリットを解説します。
従業員の満足度向上
ワークライフバランスの推進を通じて、従業員の満足度向上が期待できます。内閣府の「仕事と生活の調和に関する意識調査」によると、男女ともに仕事を最優先とする人は少ないですが、実際には仕事が優先されていて理想と現実の間に大きなギャップが生じています。こうしたギャップを解消して理想の生活に近づけることでワークライフバランスが実現し、従業員の満足度が高められる点はメリットと言えるでしょう。
参考:第1節 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)をめぐる状況
生産性の向上
ワークライフバランスを推進する過程で、生産性の向上ができる点もメリットです。企業がワークライフバランスの実現に向けた取り組みを推し進めるためには、残業時間の削減や長時間労働の見直しは避けて通れない課題です。このような時間外労働の削減が解決できれば、若手の獲得・育成・確保、さらには人件費コストの削減も期待できるでしょう。その結果、組織全体の生産性向上が期待できます。
離職率の低下
離職率の低下につながることも、ワークライフバランスのメリットです。従業員の生活に合わせた働き方を実施すれば、子育てや介護を理由とした退職者は減少します。また、従業員満足度も向上するので、企業への定着率を高められるのです。このように、ワークライフバランスの実現によって離職率が減れば、深刻な人材不足に陥る心配もありません。
企業のイメージ向上
今では、ワークライフバランスは社会全体に浸透しており、ワークライフバランスを大切にする企業は、社内外問わず「働きやすい会社」「従業員を大事にする会社」という評価を受けやすいです。制度導入などの取り組みによって従業員のワークライフバランスを大切にすることで、企業のブランドイメージの向上につながっていきます。
ワークライフバランス実践の具体例
続いて、ワークライフバランス実践の具体例を紹介します。
- 育児休暇・産前産後休暇
育児休暇・産前産後休暇とは、出産や育児に伴ってライフスタイルが大きく変化して出産以前と同様に働くことが難しくなった方に対し、一定の給与を保障しながら長期の休暇を与えるという制度のことです。今までは女性の休暇の取得が多かったですが、近年では働き方改革の一環として、仕事での女性活躍の実現に向けた男性の育児休暇取得も促進されています。加えて、家庭も大事にしたいという男性のニーズにも答えることができるので、現在男性の休暇取得が注目されています。
- フレックスタイム制度
フレックスタイム制度とは、1ヶ月の総労働時間を規定し、その規定時間内で出社・退社時間を自由に決められるという制度のことです。ほとんどのケースは必ず出社していなければならいコアタイムが定められておりますが、中にはコアタイムを定めていないスーパーフレックスタイム制度という制度を導入している企業もあります。フレックスタイム制度の導入によって、時間の有効活用ができたり、通勤ラッシュを避けることができたりなどの利点があります。
- 在宅勤務
在宅勤務とは出社をして仕事をするのではなく、自宅からリモートで仕事を行う制度のことです。在宅勤務を導入することによって、従業員は出勤時間を自由に活用することができ、生活の質向上につながるケースが多いです。また企業としても、交通費の削減ができたり休業時のスムーズな復帰支援ができたり、障害者雇用でもメリットがあります。運用では、情報漏洩などのリスク管理やコミュニケーションの確保、勤怠管理を適切に行う仕組みづくりがポイントです。
- 長時間労働の削減
長時間労働の削減もワークライフバランスの実現には欠かせないポイントです。長時間労働の削減は働き方改革の中心でもあり、日本の多くの企業に課せられたテーマでもあります。大切なのは、ただ残業を禁止・制限するのではなく業務フロー見直しなどの業務改善とあわせて行うことです。さらに、業務改善に加えて、ご紹介してきたフレックスタイム制度や在宅勤務の導入などと併せることで、従業員がより柔軟に働ける環境づくりをすることが大切です。
- 福利厚生サービスの充実
福利厚生サービスは休暇制度はもちろんのこと、従業員のプライベートの充実を図る役割もあります。レジャー施設の利用権やフィットネスの利用権、資格取得支援制度、社内託児所の設置などその内容はさまざまです。前述したように、ワークライフバランスでは、仕事の成果をあげるためにプライベート内で英気を養ったり、スキルを得たりすることが大切と考えます。プライベートにも関わるような福利厚生サービスの充実を図ることで、好循環を生み出すことができます。
ワークライフバランスを推進しよう
ここまでワークライフバランスとは何なのか、注目されるようになった背景、推進するメリット、具体的な実践例を解説してきましたが、ワークライフバランスの概要やメリット、実践例などご理解いただけたでしょうか。ワークライフバランスは、働き方改革が推し進められている現代において、切っても切り離せない考え方です。企業の方でワークライフバランスに基づいた制度導入を検討中の方は、ぜひこちらの記事を参考にしてみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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