- 更新日 : 2025年6月10日
カタルシスとは?意味やカタルシス効果の活用方法を解説!
カタルシスは、もともとは演劇用語として使われていた言葉ですが、現代では浄化や解放という意味の心理学用語として多く用いられています。「カタルシスを感じる」などと用い、カタルシス効果を得ることにはストレスが軽減できる、不安が解消できるといったメリットがあります。
目次
カタルシスとは?
カタルシスは英単語の「catharsis」をカタカナ読みした、浄化や解放という意味で使われる言葉です。ギリシャ語の「katharsis」に由来し、ネガティブな感情を吐き出すことを指します。もともとは悲劇論で使用される演劇学用語だったものが、医学用語や宗教用語を始めとするさまざまな用語として用いられるようになりました。
現在では、心理学用語としてトラウマなどの負の感情を問題解決する際に使用される他、文学や演劇に影響された観客の精神作用に及ぼす負荷軽減の意味でも用いられます。
カタルシスという言葉の由来
カタルシスの語源はギリシャ語の「katharsis」です。古代ギリシャの哲学者・アリストテレスが著書「詩学」において悲劇論を展開するにあたり、「悲劇が観客の心に怖れと憐れみの感情を呼び起こすことで精神を浄化する効果」と記したことを起源としています。
演劇用語から後に医学用語に転用され、薬剤を投与して嘔吐させたり下痢を引き起こしたりする治療行為を指す言葉として用いられるようになりました。現代では浄化や解放を意味する、主に心理学用語として多用されています。
カタルシスが得られる場面 – カタルシス効果
カタルシスは人に対してどのような作用を及ぼすのでしょうか?カタルシス効果や、もたらされるメリットについて理解しておきましょう。
カタルシス効果について
カタルシス効果とは精神的な圧迫を受けた後に、その負の感情の解放時に得られる心理的効果を指します。一定程度のストレスがかけられた際、その圧力からの解放時には解放感をはじめとするポジティブな感情が湧きます。さらに精神的な安定が得られたり、とらわれていた嫌な過去から解放されたりする効果がカタルシス効果です。
カタルシス効果を得るメリット
カタルシス効果を得るメリットには以下のような点が挙げられます。
- ストレスが軽減できる
ネガティブな感情は他人には打ち明けにくいものですが、一人で抱え込んでいると余計に心理的な負荷として蓄積します。カタルシス効果で吐き出すことによって、ストレスが軽減できます。
- 不安が解消できる
カタルシス効果によりネガティブな感情が解放され心が浄化されるにともない、不安も解消されます。平穏な気持ちを取り戻すことができ、リラックスできます。
- 感情が整理できる
カタルシス効果でネガティブな感情を手放すことができ、不必要な感情や好ましくない影響を及ぼす恐れがある行動を排除できます。
- 自己理解ができる
自己理解して、自分らしい生き方ができるようになります。本来の自分を取り戻し、生き生きとした生活が送れるようになります。
- 自己表現ができる
創作活動によりストレスが発散できます。さまざまなスキルが向上することにより自信が生まれたり、仲間との交流によりコミュニケーションスキルが向上したりします。
- 他人と信頼関係が築ける
心にゆとりができることで他人とのコミュニケーションもスムーズに行えるようになり、信頼関係も築きやすくなります。
- メンタル不調が予防できる
ストレスが軽減でき、ゆとりある生活を送ることによって、メンタル不調を予防することができます。
カタルシス効果を引き出す方法
カタルシス効果の引き出し方には自分自身で引き出す方法と、他者によって引き出してもらう方法の2つがあります。自分自身での引き出し方には本を読む・映画を見る・芸術に触れるといったやり方があります。他者による引き出し方でカタルシス効果を引き出す際は、どのような点に注意が必要でしょうか?カタルシス効果を引き出すためのポイントをご紹介します。
環境の整備
相手のカタルシス効果を引き出すためには、まず環境の整備が重要です。落ち着いて、また安心して対話できなければ、カタルシス効果を引き出すことはできません。具体的には次の点に注意して、環境整備を図りましょう。
- 外部に話が漏れない
外に話し声が聞こえると、会話の内容が漏れてしまいます。関係のない人にまで話が聞こえてしまう環境では相手は自分のプライベートが守られないことことに不安を感じ、対話に集中できなくなります。気が散ってしまう環境下ではカタルシス効果も期待できません。オープンスペースなどではなく、きちんと区切りのある個室を準備するなど、環境に気をつけましょう。
- アルコールは避ける
食事をしながらの対話に問題はありませんが、飲酒してしまうとアルコールの影響が出てしまうので注意が必要です。気が大きくなったり感情的になったりすることに気をつける必要があるため、避けるようにしましょう。
心理面での配慮
心理面では相手に心を開いてもらえるよう、十分な配慮が求められます。カタルシス効果を得るためには、相手から信頼されることが非常に大切です。そのためには相手のことを最優先に考えることが重要です。
相手を理解したい、一緒に問題解決したいといった気持ちで、誠実に相手と向き合うことが求められます。気持ちが先走り、相手を尊重した行動が取れないこともよくあります。じっくりと話を聞き、分かったような気にならないことにも注意が必要です。相手のペースで話すように促したり、聞き役に徹したりすることが求められます。
業務においてカタルシス効果が役立つ具体例
カタルシス効果は業務において、さまざまに役立ちます。顧客対応と従業員管理の際にカタルシス効果が役立つ具体例をご紹介します。
顧客対応におけるカタルシス効果
カタルシス効果は、顧客対応において主に次のシーンで役立ちます。
- クレーム処理
クレーム処理では、怒っているあるいは困っている顧客の気持ちに寄り添い、その上で必要な対応・情報提供を行うことが求められます。適切な対応によってカタルシス効果が得られれば信頼回復ができ、次回以降の購入などにつながると期待できます。
- 営業活動
営業活動では相手のニーズを聞き出し、求めている商品・サービスを提案する必要があります。困っていることや要望を正直に打ち明けてもらうためには信頼を得なければならず、カタルシス効果が信頼関係の構築に役立ちます。
- 販売
販売においても、売上にカタルシス効果が活用できます。購買意欲のある人でも、気に入った商品でなければ積極的な購入には結びつかず、販売者は会話内容や態度、雰囲気などの情報をもとに購入につながる商品を勧める必要があります。
従業員管理におけるカタルシス効果
従業員管理では上司と部下の信頼関係構築に、カタルシス効果が有効活用できます。人事面談や1on1といった上司と部下が1対1で行うミーティングにおいて、上司が部下の話を聞く際にカタルシス効果を引き出すことで、部下の信頼を得ることができます。信頼関係構築によって業務効率アップや生産性向上といった仕事にも良い影響が期待できます。
カタルシス効果は研修でのコミュニケーション能力開発にも用いることができます。受講者に自分の気付きや学習した内容を他のメンバーに伝えさせることで、自身の内面の解放を促すという働きです。営業スキルの向上に特に効果的で、カタルシス効果によって相手との距離を縮めるという、コミュニケーション能力の向上も期待できます。
カタルシス効果を従業員管理に活用しよう
カタルシスは、現代では主に心理学用語やビジネス用語としてストレス解消や自己理解を促す、という意味で使用されます。カタルシス効果としてストレス軽減や自己理解、自己表現の向上、信頼関係構築、メンタル不調予防といったメリットがあります。カタルシス効果は業務において、顧客対応や従業員管理に役立ちます。
カタルシス効果を引き出す際は、環境面と心理面で配慮する必要があります。具体的には外部に話が漏れないように環境を整える、アルコールの力を借りない、誠実に相手と向き合うといったことが求められます。カタルシス効果による信頼関係構築やコミュニケーション能力向上を図り、従業員管理に活用しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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