• 更新日 : 2025年7月16日

年末調整の訂正や年末調整後の修正の仕方について

会社員の場合、11月~12月初旬頃に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」と「給与所得者の保険料控除申告書」「給与所得者の基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」(以下、年末調整書類とする)が配布され、期限までに記入・提出を求められます。

※2019年までは「配偶者特別控除申告書」という1つの様式でしたが、2020年からは税法改正に伴い「配偶者控除等申告書」の中に「基礎控除申告書」と「所得金額調整控除申告書」が追加されました。

この書類に記載された内容を基に、会社は「年末調整」を行っています。

年末調整書類の中の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、前年の年末にその時の現状を記載した書類を一度提出しており、実際に年末調整をする際、再度記載が求められます。
1年の中で、お子様が就職されて扶養でなくなったり、お子様を出産されて扶養家族が増えたなどの事情により、扶養状況が変わっていることを考えて、再度訂正ができるようにしています。

今回は、この時の年末調整書類の修正の仕方 および 実際の年末調整が完了してしまった後、年末調整書類に記載した内容が間違っていたと気が付いた場合の対処についてお話します。

目次

年末調整書類の修正方法

年末調整書類の訂正に際しては、修正液の使用は認められていません。
正しい訂正方法は以下の通りです。

  1. 間違えた個所に二重線を引く
  2. 二重線の上部(または下部)に訂正分を記載

    年末調整書類の記入は、以下のページを参考に確実に行って、訂正がなるべく生じないようにしましょう。

    なお、令和3年4月1日以降、税務官庁への提出書類には押印を省略することができるようになりました。ここで問題となるのが、押印不要制度に伴い、訂正印を押すべきかどうかという点です。
    訂正印の是非については現在法的な決まりはありませんが、仮に押印不要の書類に押印してあっても内容や効力、取扱いに変わりはないとされています。
    押印しても問題ないのであれば、押印がないと後から指摘されるよりあらかじめ押しておいた方がよいでしょう。

    修正が必要なケースは?

    年末調整で一度申告した内容に修正が必要なケースについて、いくつか事例を紹介します。

    扶養家族の人数が変わった

    前年末に一度、年末調整書類を提出してからの1年間に結婚・出産などで家族が増えたり、別居していた両親と同居し扶養家族が増えたりした場合には、扶養家族の人数を変更修正しなければなりません。
    年末調整の基準日は、その年の12月31日です。
    ここで注意したいのは、12月31日までに子供が産まれた場合です。平成23年以降、扶養控除の適用条件に変更があり、16歳未満の子供は所得税の控除対象外となりました。つまり、16歳以上でない限り扶養控除の対象にはなりません。

    しかし、共働き夫婦でそれぞれの年収が850万円を超えているようなケースでは「所得金額調整控除」に影響が出てきます。新生児であっても「23歳未満の扶養親族」に該当しますので、夫婦ともに「所得金額調整控除」の修正が必要になります。年末調整後に再婚し、扶養することになった子供が16歳以上といった場合は、扶養控除の適用が可能になるため、年末調整の修正が必要です。

    配偶者の年収が変わった

    収入が一定額以下の配偶者は世帯主に扶養されているとみなされ、世帯主の所得税が軽減される制度が「配偶者(特別)控除」です。

    配偶者控除の対象となるための条件は、1年間の所得の合計が48万円以下であることです。(2019年分以前は、配偶者の年間所得が38万円以下の場合に対象 )対象となる配偶者が給与所得者であれば、これに給与所得控除の55万円を加えた「年収103万円以下」ならば配偶者控除の適用対象となります。しかし、前年末の年末調整書類記載時は見込み額となるため、1年の間に配偶者の収入が増えた場合には103万円を超えてしまうこともありえます。

    その場合は修正が必要です。(2020年分以降は基礎控除48万円、給与所得控除55万円に変更されますが、合計控除額が103万円のため、引き続き給与収入103万円以下なら所得税はかかりません。)

    ※配偶者控除については以下の記事をご覧ください。

    生命保険料控除や介護保険控除等を忘れていた

    単純に記載を忘れた場合や、保険会社から届く保険料控除のハガキが見つからず申告をあきらめたものの提出後にハガキが発見された場合には、修正が必要です。

    年末調整後に保険に加入した

    これは、新たに保険に加入した場合です。年末調整書類の提出後に新たな保険に加入した場合には、当然修正が必要となります。

    なお、加入は10月だったが保険会社からの証明書が届かず記載できなかった場合も修正により控除を受けることができます。

    年末調整完了後に間違いに気づいたら…再調整の方法

    会社が年末調整をする際、配布された書類に正しい情報を記載することが望ましいですが、実際の年末調整が完了してしまってから、記載した内容の間違いに気づくということもあるかもしれません。その場合の対処方法を見ていきましょう。年末調整完了後、会社側で内容を修正できる期間は、翌年1月31日までです。会社の経理等に報告し、修正を依頼します。

    ただ、会社は源泉所得税の納付(一般なら1月10日まで、納期の特例なら1月20日まで)を行いますので、源泉所得税の納付額も修正しなければなりません。その他にも源泉徴収票の再出力、給与支払報告書の再作成など会社に面倒をかけることになりますので、できれば自分で修正したいと思う方もいるでしょう。

    自分で修正したいという方は、確定申告で修正するという選択肢があります。

    確定申告による修正

    「年末調整と確定申告は何が違うの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。どちらも税務署へ申告するという点は同じです。税務署への申告を、会社に行ってもらうのが年末調整で、自身で行うのが確定申告です。申告方法は源泉徴収票と所定の用紙(国税庁のサイトより入手可能)があれば比較的容易に行うことができます。

    確定申告の概要と手順については、以下の記事でご確認いただけます。

    控除申告書の修正申告を減らすためのチェックリスト

    年末調整では、従業員が提出する各種控除申告書の記入内容が正確であることが前提となります。記入ミスがあると、税額の誤算や修正申告につながり、会社・従業員双方に負担がかかります。こうしたミスを未然に防ぐためには、事前にチェックリストを活用し、記入漏れや誤記を抑える工夫が有効です。

    年末調整 控除申告書 記入チェックリスト(従業員用)

    氏名:___________________
    部署:___________________

    提出書類の確認

    提出の有無書類名
    □ 済 / □ 未扶養控除等(異動)申告書
    □ 済 / □ 未基礎控除・配偶者控除・所得金額調整申告書
    □ 済 / □ 未保険料控除申告書(生命保険・地震保険等)
    □ 済 / □ 未住宅借入金等特別控除申告書(該当者のみ)
    □ 済 / □ 未前職の源泉徴収票(該当者のみ)

    記入内容の確認

    チェック内容
    □ 済氏名(フリガナ)を正しく記入している
    □ 済生年月日を西暦または和暦で統一して記入している
    □ 済住所を現住所で記入している(転居後の更新済み)
    □ 済扶養親族の氏名・続柄・生年月日が正確に記載されている
    □ 済控除対象配偶者の所得金額見積もりが記載されている
    □ 済所得の種類・金額が漏れなく記入されている

    添付書類の確認(該当者のみ)

    添付有無書類名
    □ 有 / □ 無生命保険料控除証明書
    □ 有 / □ 無地震保険料控除証明書
    □ 有 / □ 無社会保険料(国民年金など)支払証明書
    □ 有 / □ 無小規模企業共済掛金払込証明書(iDeCoなど)
    □ 有 / □ 無障害者手帳の写し(障害者控除を受ける場合)
    □ 有 / □ 無残高証明書(住宅ローン控除を受ける場合)

    最終確認

    •  提出日を確認した(   月   日)
    •  不明点がある場合は担当者に事前に相談済み
    •  書類に押印(または署名)を忘れていない

    提出期限:令和〇年〇月〇日( )まで
    ※期限を過ぎると年末調整に反映されない可能性があります。ご注意ください。

    年末調整の控除申告書の記入ミスを防ぐチェックリスト活用法

    ここでは、控除申告書の種類ごとにチェックすべきポイントや、チェックリスト導入時の注意点を解説します。

    提出書類を整理して確認を徹底する

    年末調整に必要な申告書類は主に、「扶養控除等申告書」「基礎控除申告書」「配偶者控除等申告書」「所得金額調整控除申告書」「保険料控除申告書」など複数にわたります。書類が複数あることで、従業員が提出すべき書類を失念したり、不要な書類を誤って提出することがよくあります。そのため、チェックリストには、各従業員の提出対象となる書類をあらかじめ明示し、回収漏れがないよう確認を促す欄を設けておくことが効果的です。

    記入項目を明確に指定して間違いを減らす

    控除申告書には、氏名・生年月日・マイナンバー・扶養親族の情報など、重要な情報を記載する欄が多数あります。これらの項目は、記載漏れや転記ミスが起きやすいポイントです。チェックリストでは、各欄に対して「記入済みか」「記載内容に誤りがないか」「添付書類が必要か」などをチェックできるように設計することで、提出前のセルフチェック精度を高めることができます。

    添付書類の有無を確認して不備を防止する

    控除申告書のうち、生命保険料控除や地震保険料控除などは、証明書の添付が必要です。これらの添付漏れは非常に多く、年末調整後に修正申告を余儀なくされるケースも少なくありません。チェックリストには、該当する控除欄に「証明書添付要」と記載し、対象者にはその準備を促す項目を設けると良いでしょう。提出時に人事担当が一目で添付有無を確認できる仕組みがあることで、全体の業務効率も向上します。

    従業員に事前配布して自主的な確認を促す

    チェックリストは、単に人事部門の管理用として使うのではなく、従業員に事前配布し、自己確認のツールとして活用してもらうことが大切です。各記入項目の意味やよくあるミスを簡単に注記したうえで、自分でチェックを入れてから申告書を提出するよう案内すれば、記入ミスの大半は事前に防ぐことが可能です。とくに初めて年末調整を経験する新入社員にとっては、記入の道しるべとなります。

    社内業務に組み込んで精度を高める

    チェックリストは、従業員だけでなく、人事・労務担当者が提出書類を確認する際の最終確認ツールとしても活用できます。紙ベースのチェックシートに加えて、クラウド型の年末調整システムに組み込んだ電子チェックリストを活用する方法も増えており、記入不備を自動で検出する機能と併用することで、確認の抜け漏れを大幅に削減できます。業務フローの中に定型的に組み込むことで、年次業務としての安定運用が可能になります。

    年末調整の電子化による修正申告件数の削減効果

    年末調整業務は、人事労務部門にとって毎年大きな負担となる業務の一つです。控除申告書の記入ミスや添付書類の不備によって発生する修正申告は、企業側にも従業員側にも時間的・心理的な負担をかけます。近年、年末調整業務の電子化が進んでおり、それに伴って修正申告の件数を大幅に削減する効果が期待されています。

    記入ミスをシステムで防止できる

    紙の申告書では、住所や氏名の誤記、扶養親族の続柄や生年月日の記入漏れなど、初歩的なミスが多く見られます。電子化された年末調整システムでは、入力必須項目に空欄があるとエラーが表示される機能や、選択形式で入力させることで記載ミスを未然に防ぐ仕組みが整っています。また、従業員が入力した内容はリアルタイムで確認・修正が可能となるため、担当者が一つひとつ手作業でチェックする必要も減少します。

    添付書類の提出漏れを検知できる

    生命保険料控除証明書や地震保険料の証明書など、紙提出時には同封し忘れや封入ミスが頻繁に起こります。一方、電子申告対応システムでは、該当控除にチェックが入っている場合、証明書のアップロードが完了していないと提出できない設計が施されています。これにより、添付漏れによる修正申告の発生が大幅に抑えられます。データはクラウド上で保管されるため、後からの再確認も容易です。

    所得情報との連携で計算ミスを回避できる

    紙ベースでは、従業員が各種所得金額を自己申告で記入するため、見積額の計算違いや、控除額の上限超過による不備が起きやすくなります。電子化された仕組みでは、源泉徴収票の情報や社内の給与システムと連携して自動計算が行われ、控除額の上限を超える入力ができないよう制御されているため、税額計算の正確性が高まります。これにより、修正申告が必要となるケースを根本的に減らすことができます。

    提出状況をリアルタイムで管理できる

    紙での運用では、誰がいつ何を提出したかの管理が煩雑になり、未提出や記載不備の発見が遅れがちです。電子化により、提出状況や入力進捗を管理画面上で一括把握でき、提出漏れや記入エラーを即座に通知・督促できます。担当者が提出済みと誤認して放置するようなリスクも回避され、対応漏れによる修正申告のリスクも大幅に軽減されます。

    年末調整を電子化するには

    年末調整を電子化する手順を正しく把握し、段階的に導入することが修正数削減の鍵となりますので見ていきましょう。

    (1)対応システムを選定して導入を開始する

    まず、年末調整に対応したクラウド型人事システムを選定し、運用環境を整えます。これらのシステムを利用すれば、申告書の配布・回収・計算が一元管理できます。

    (2)社内ルールを整備して運用を明確にする

    システム導入後は、申告スケジュールや記入ルール、問い合わせ対応方法を明文化します。社内向けガイドラインを作成して共有することで、統一的な運用が可能になります。

    (3)従業員に操作を案内して提出を促す

    申告内容の入力ミスを防ぐため、マニュアル配布や説明会で操作方法を丁寧に案内します。不明点への対応窓口を設けると、提出率と精度の向上につながります。

    (4)提出状況を管理してミスを防止する

    システム上で提出状況や添付書類の有無を確認し、未提出者への自動リマインド機能を活用します。提出内容に不備がある場合は即時フィードバックし、修正を促します。

    年末調整の書類は正しく記載しましょう

    1年に1回、年末に行われる年末調整ですが、会社から配布された年末調整書類について、なんとなく提出しているという方も多いのではないでしょうか。
    この年末調整書類は、実は年末調整を行うための情報が詰まっている、とても大切な書類です。
    内容が間違っていたということになると、後から経理担当者による年末調整作業のやりなおし、または自分での確定申告という作業が発生します。
    そんなことにならないよう、今年の年末調整の際には記入要領などを参照し、正しく記載することを心がけましょう。

    よくある質問

    年末調整の修正とは?

    年末調整の際に提出した「扶養控除等申告書」等に間違いがあり、一度精算した所得税(年税額)に差額が生じた際、正しい所得税に再計算し直すことです。詳しくはこちらをご覧ください。

    年末調整を修正しなければならないケースは?

    配偶者控除や扶養控除といった「人的控除」の間違いや、生命保険料控除や損害保険料控除といった「保険料控除」の間違いなどがあります。詳しくはこちらをご覧ください。

    年末調整の修正方法は?

    会社で年末調整のやり直し(再調整)をしてもらうほかに、自分で確定申告書を提出して修正する方法もあります。詳しくはこちらをご覧ください。


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