• 更新日 : 2025年8月20日

年末調整のスケジュールは?従業員・企業の担当者別に手続きの流れをわかりやすく解説

年末調整は、毎月の給与から天引きされた所得税の過不足を精算するための重要な手続きです。従業員にとっては払い過ぎた税金が戻ってくる機会であり、企業の給与担当者にとっては年に一度の重要な事務作業となります。

しかし、「年末調整はいつから準備を始めて、具体的に何をすれば良いのか」というスケジュール感が掴みにくく、毎年慌ててしまう方も少なくありません。

この記事では、年末調整の全体像が明確になるよう、従業員と企業の担当者、それぞれの視点から具体的なスケジュールとやるべきことを分かりやすく整理します。初めて年末調整を行う方や、手続きに不安がある方も、ぜひ参考にしてください。

そもそも年末調整とは

年末調整とは、1年間の給与に対する所得税額を正しく計算し、毎月の給与から源泉徴収された税額との差額を調整する手続きです。

会社は従業員に給与を支払う際、所得税を概算で天引きしています(源泉徴収)。しかし、その年の途中で扶養家族の人数が変わったり、生命保険料や地震保険料の支払いがあったりすると、最終的に納めるべき所得税額と、すでに天引きされた源泉徴収額の間に差が生まれます。

この差額を年末に精算し、払い過ぎた税金を取り戻し(還付)、不足分を納める(徴収)一連の手続きが年末調整です。

年末調整と確定申告の違いは?

年末調整は、基本的に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出している給与所得者が対象です。多くの会社員は、会社がやってくれる場合が多く、この年末調整だけで所得税の申告が完結します。

ただし、年末調整の対象者であっても、以下のようなケースでは自分で確定申告が別途必要になります。

これらのケースでは、会社での年末調整に加えて、個人で確定申告を行うことで、最終的な税額が確定し、適切な控除を受けることができます。

年末調整の対象となる収入はいつからいつまで?

年末調整の対象となるのは、その年の1月1日から12月31日までに支払いが確定した給与です。ここでの「支払いが確定した」とは、就業規則や雇用契約で定められた給与の支給日を基準とします。

例えば、2025年の年末調整であれば、2025年1月1日から2025年12月31日までに受け取った収入が対象となります。注意点として、12月分の給与が翌年1月に支払われる会社の場合、その給与は翌年(2026年)の収入として扱われるため、2025年の年末調整には含まれません。ご自身の給与明細で支払日を確認しておくと良いでしょう。

年末調整をしないとどうなる?

年末調整は法律で定められた義務であり、意図的に行わない場合、ペナルティが発生する可能性があります。また、従業員にとっては以下のようなデメリットがあります。

  • 税金を払い過ぎたままになる
    生命保険料控除や扶養控除などが適用されず、本来受けられるはずの還付金が受け取れません。
  • 翌年の住民税が高くなる可能性がある
    住民税は年末調整や確定申告の内容を基に計算されます。控除の申告漏れがあった場合、翌年の住民税額に反映され、結果として本来より高い金額が課される可能性があります。

特別な事情なく手続きを怠ると損をしてしまうため、必ず期間内に申告しましょう。

企業担当者向け|年末調整のスケジュール

企業の給与担当者にとって、年末調整は正確性とスピードが求められる重要な業務です。初めて年末調整の事務を担当する方でも安心して進められるよう、準備から提出までの流れを解説します。

10月以前|準備期間

  • その年の税制改正の内容を確認し、計算方法に変更がないかチェックします。
  • 従業員に配布する各種申告書(扶養控除等申告書、保険料控除申告書など)を準備します。
  • 従業員への案内文や、よくある質問を作成しておくと、問い合わせ対応がスムーズになります。

10月下旬〜12月上旬|書類の配布と回収

  • 従業員へ申告書を配布します。記入例や提出期限を明記した案内を添えましょう。
  • 後の作業を考慮し、提出期限は11月下旬〜12月上旬など、余裕を持って設定します。
  • 回収した書類は、記載漏れや添付書類の不備がないか速やかに確認し、問題があれば差し戻して修正を依頼します。

11月下旬〜翌年1月|年税額の計算と過不足額の精算

  • 回収した申告書に基づき、各従業員の年税額を計算します。給与計算ソフトの利用が効率的です。
  • 計算後、源泉徴収済額との差額(過不足額)を算出し、12月または翌年1月の最終給与で精算(還付または徴収)します。
  • 会社がいつ精算を行うかは就業規則や給与規定で定められているのが一般的です。

翌年1月31日まで|法定調書の提出

  • 年末調整の結果をまとめた「法定調書合計表」と各従業員の「源泉徴収票」などを作成します。
  • 管轄の税務署へ法定調書合計表と源泉徴収票を、各市区町村へ「給与支払報告書(総括表・個人別明細書)」を提出します。
  • 提出期限は原則翌年1月31日です。期限に遅れたとしても、通常は追徴課税などのペナルティはありません。ただし、虚偽の記載をしたり意図的に提出を怠った場合には罰則が適用される可能性があるため、計画的な作業が必須です。

従業員向け|年末調整のスケジュール

会社員にとって年末調整は、所得税を正しく納めるための大切な手続きです。会社がやってくれる手続きですが、従業員自身が書類を準備し、正しく申告しなければ完了しません。一般的なスケジュールとやることを確認しましょう。

10月〜11月上旬|会社から書類を受け取り、証明書を準備する

  • 会社から「扶養控除等申告書」や「保険料控除申告書」などが配布されます。
  • 自宅に生命保険や地震保険の「控除証明書」(ハガキなど)が届き始める時期です。iDeCoや小規模企業共済に加入している方は、その掛金の証明書も必要です。
  • これらの証明書は申告に必須なため、紛失しないよう大切に保管しましょう。

11月中旬〜12月上旬|申告書を作成し、会社へ提出する

  • 会社の案内に従い、申告書に必要事項を記入します。扶養家族の情報、その年に支払った保険料の金額などを正確に記載してください。
  • 記入が終わったら、控除証明書などの必要書類を添付して、会社が指定する期限までに提出します。
  • 個人としての提出期限は会社によって異なりますが、11月下旬〜12月上旬に設定されることが多いです。

12月〜翌年1月|給与明細で還付・徴収を確認する

  • 提出した書類に基づき会社が税額を計算し、所得税の過不足を精算します。
  • 多くは払い過ぎた税金が戻る「還付」となりますが、状況によっては不足分を追加で支払う「徴収」となる場合もあります。
  • 結果は、12月または翌年1月の給与明細に「年末調整還付」などの項目で記載されます。忘れずに確認しましょう。

年末調整の期限に間に合わなかった場合の対処法

「うっかり書類の提出を忘れてしまった」「会社の期限に間に合わなかった」という場合でも、対処法はあります。

会社の担当者に相談する

従業員が書類の提出期限を過ぎた場合、まずは速やかに会社の給与担当者に相談してください。作業スケジュールに余裕があれば、企業によっては期限後でも柔軟に対応してもらえる可能性があります。しかし、すでに年税額の計算が完了している場合は社内での対応が難しくなります。隠さずに報告・相談することが解決への第一歩です。

自分で確定申告を行う

会社での年末調整に間に合わなかった場合でも、諦める必要はありません。翌年の確定申告期間中(原則2月16日〜3月15日)に、自分で確定申告を行うことで、同様の所得控除を受けることができます。

会社から交付される源泉徴収票と、提出しそびれた保険料控除証明書などを使って申告します。これにより、払い過ぎた税金があれば還付を受けられるため、忘れずに行いましょう。

年末調整のスケジュールを参考に準備を進めましょう

年末調整は、従業員と企業担当者がそれぞれの役割を果たすことで完了する重要な手続きです。従業員は、控除に必要な書類を準備し、会社の定める期限内に正しく申告することが大切です。一方、企業の担当者は、法律や税制改正の内容を正確に理解し、計画的に事務作業を進める必要があります。もし期限に遅れたり忘れたりした場合でも、自分で確定申告をすれば税金の還付を受けることが可能です。この記事で紹介したスケジュールを参考に、余裕を持って準備を進め、年に一度の年末調整をスムーズに乗り切りましょう。


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