• 更新日 : 2025年8月20日

年末調整のWeb申告のやり方は?国税庁の年調ソフトやスマホで完結する方法も解説

近年、年末調整の手続きをWebで完結させる動きが進んでいます。国税庁が無料で提供するソフトウェアや、マイナポータル連携を活用すれば、お持ちのスマートフォンやパソコンから、時間や場所を選ばずに申告データを作成できるのです。

この記事では、年末調整をWebで行うための具体的なやり方や必要なものを、初心者の方にも分かりやすく整理して解説します。国税庁の無料ソフト「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」の基本的な使い方から、スマートフォンでの入力・提出方法、多くの方がつまずきやすいポイントまで解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

年末調整のWeb申告とは

年末調整のWeb申告とは、これまで紙で行っていた申告手続きを、デジタルデータに置き換えて行う方法です。従来の年末調整との最大の違いは、申告書への手書き記入と、生命保険料控除証明書といった書類の原本提出が原則不要になる点です。

従業員は、国税庁が提供する「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」などを使用して控除申告書データを作成します。生命保険料や地震保険料の控除証明書も、保険会社のサイトなどから電子データで受け取り、そのまま申告データに取り込めます。

参考:年末調整手続の電子化に向けた取組について|国税庁

年末調整のWeb申告の対象となる人

基本的に、勤務先で年末調整を受ける給与所得者であれば、誰でもWeb申告の対象となります。

ただし、最も重要な前提条件は、勤務先(給与の支払者)が年末調整の電子化に対応していることです。会社によっては独自のシステムを導入していたり、まだ電子化に対応していなかったりする場合があります。まずは自社の経理や人事の担当部署に、年末調整のWeb申告は可能かを確認することが大切です。

年末調整のWeb申告のメリット・デメリット

Web申告には多くのメリットがありますが、いくつかの注意点も存在します。

メリット
  • 手書き不要でミスが減る
    画面の案内に沿って入力するだけで、控除額などが自動計算されるため、計算ミスや記入漏れを防げます。
  • 証明書の管理が楽
    控除証明書をデータで受け取りそのまま添付できるため、紛失の心配やのり付けの手間がありません。
  • 時間と場所を選ばない
    スマートフォンやパソコンがあれば、24時間いつでも自分の都合の良い時に作業を進められます。
  • ペーパーレス化
    紙の書類が不要になるため、環境に優しく、書類の保管スペースも必要ありません。
デメリット
  • 勤務先の対応が必須
    従業員個人で完結できず、勤務先(会社)が年末調整の電子化に対応している必要があります。
  • 事前の準備が必要
    マイナンバーカードや対応スマートフォンなど、事前に用意すべきものがあります。
  • 操作に慣れが必要
    初めて利用する際は、ソフトのダウンロードや初期設定、操作方法に少し戸惑う可能性があります。

年末調整のWeb申告で準備すべきもの

年末調整のWeb申告をスムーズに進めるためには、いくつかの事前準備が必要です。特にマイナンバーカード関連は、発行に時間がかかる場合もあるため早めに手配しておくと安心です。

マイナンバーカードと対応デバイス

マイナポータルと連携して控除証明書データをまとめて取得する場合には、マイナンバーカードが必須です。カードの読み取りに対応したスマートフォン、またはパソコンに接続して使うICカードリーダライタを用意してください。また、カード取得時に設定した署名用電子証明書のパスワード(6〜16桁の英数字)も必要です。忘れてしまった場合は、お住まいの市区町村窓口で再設定手続きを行いましょう。

各種控除証明書等の電子データ

生命保険料控除、地震保険料控除住宅ローン控除などを受ける場合、それぞれの控除証明書が必要です。Web申告では、これらの証明書を紙ではなく「電子データ(XML形式)」で準備します。通常、各保険会社や金融機関の契約者向けウェブサイトからダウンロードできます。マイナポータル連携を利用すれば、これらのデータを一括で取得することも可能です。

勤務先から提供される情報

勤務先が外部のクラウドサービスを導入している場合、専用サイトへのログインIDやパスワードなどが通知されます。国税庁の年調ソフトを利用する場合でも、勤務先の法人番号や正式名称、所在地といった情報が必要になるため、給与明細や社内ポータルなどで年末調整に関する案内をよく確認しておきましょう。

国税庁の年調ソフトを使ったWeb申告のやり方

ここでは、国税庁が無料で提供している「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」を使ったWeb申告の基本的なやり方を4つのステップで解説します。

1. 年調ソフトのダウンロード

まずは国税庁の公式サイトにアクセスし、「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」をご自身のパソコンやスマートフォンにインストールします。Windows版、Mac版、スマートフォンアプリ版(iOS/Android)が用意されているので、利用環境に合ったものを選択してください。

※国税庁をかたる偽サイトを避けるため、必ず公式サイトからダウンロードしましょう。

参考:年末調整手続の電子化に向けた取組について|国税庁

2. 基本情報・勤務先情報の入力

ソフトを起動したら、ログインなどの操作は不要です。「新しく控除申告書を作成する」といったメニューから作業を始めます。画面の案内に従って、氏名・住所・生年月日などの基本情報を入力しましょう。

次に、勤務先の情報(法人番号、名称、所在地など)を入力します。質問に答えていくだけで、直感的に入力が進められるように設計されています。

3. 控除証明書データの取り込みと入力

Web申告の最も便利な部分が、控除証明書データの取り込みです。事前に準備した保険料控除証明書などの電子データ(XMLファイル)をソフトにインポートすると、保険会社名や控除額が自動で入力・計算されます。

マイナポータルと連携すれば、複数の証明書データを一括で取得・反映できるため、さらに手間が省けます。

データがないものや、国民年金保険料のように手元で金額がわかるもの(社会保険料控除)については、手入力で金額などを追加入力することも可能です。

4. データの保存と勤務先への提出

すべての入力が終わったら、内容に間違いがないかを確認し、申告書データを保存します。このとき、データはXMLファイルという形式で出力されます。

最後に、完成した申告書データを、勤務先が指定する方法で提出して完了です。

※年調ソフトの操作と、勤務先システムへのデータ提出は別の作業です。提出方法が分からない場合は、担当部署に確認しましょう。

スマホで年末調整を完結させるやり方

パソコンがなくても、スマートフォン一つで年末調整を完結させることが可能です。

国税庁の年末調整アプリを活用

App StoreやGoogle Playで「年末調整」と検索し、国税庁の公式アプリ(年調ソフトのスマートフォン版)をインストールします。このアプリを使えば、パソコン版とほぼ同じ機能を利用できます。スマホのカメラでマイナンバーカードを読み取れるため、本人確認も簡単です。

マイナポータル連携で入力がさらに簡単に

スマホのマイナポータルアプリと連携させると、年末調整の手続きが格段に楽になります。連携により、生命保険、地震保険、住宅ローン、iDeCo、ふるさと納税(寄附金)といった各種控除証明書データを、それぞれの会社のサイトを個別に訪問することなく一括で取得できます。取得したデータはそのまま年末調整アプリに引き継がれ、申告書への自動入力が完了します。

スマートフォンでの入力から提出までの流れ

  1. 年末調整アプリを起動し、基本情報を入力します。
  2. マイナポータルと連携し、必要な控除証明書データを取得して、アプリに反映させます。
  3. 扶養家族の情報や、データで取り込めなかったその他の控除について、質問に答える形で追加入力します。
  4. すべての入力が完了したら、申告書データ(XMLファイル)をスマホ内に保存します。
  5. 保存したデータを、勤務先が指定する方法で提出します。

年末調整のWeb申告についてよくある質問

年末調整のWeb申告に関して、多くの方が抱く疑問点をQ&A形式でまとめました。

e-Taxとは違うのですか?

はい、異なります。年末調整のWeb申告は、作成した申告書データを勤務先に提出するための手続きです。一方、e-Taxは、確定申告などで利用者が税務署に対して直接、電子申告・納税を行うための国税全体のシステムを指します。提出先が違うと覚えておきましょう。

勤務先がWeb申告に対応していない場合はどうすればいいですか?

勤務先が対応していない場合、従業員が個人でWeb申告を完結させることはできません。従来通り、紙の申告書に手書きで記入し、控除証明書の原本を添付して提出する必要があります。

ただし、年調ソフトには作成したデータを印刷する機能もあります。手書きの手間を省くために、ソフトで入力・計算まで行い、印刷して提出するという活用も可能です。

無料で使えるソフトは国税庁のものだけですか?

従業員が個人で利用できる無料ソフトとしては、国税庁の年調ソフトが最も代表的です。その他、勤務先が契約している人事労務関連のクラウドサービスに年末調整機能が含まれている場合、従業員は追加費用なしでそのシステムを利用できるのが一般的です。

年末調整をWeb申告でスムーズに

年末調整のWeb申告は、マイナンバーカードとスマートフォン(またはパソコン)があれば、誰でも手軽に利用できる非常に便利な仕組みです。国税庁の無料ソフトとマイナポータル連携を最大限に活用すれば、これまで手間と時間がかかっていた書類作成や証明書の管理から解放されます。

Web申告を成功させるカギは、まず勤務先の対応状況を確認することです。その上で、この記事で紹介した手順に沿って必要なものを準備し、作業を進めれば、初めての方でもきっとスムーズに手続きを終えられるでしょう。

この機会にぜひ、ペーパーレスで効率的な年末調整を体験してみてください。


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