- 更新日 : 2025年4月2日
外国人労働者の労働時間に制限はある?雇用する際に確認すべきことを解説
外国人労働者の労働時間には、日本人と同様に「1日8時間・週40時間」の上限があり、留学生は「週28時間以内」の制限が設けられています。
違反すると事業主には不法就労助長罪が適用される可能性があり、外国人本人も強制送還となる場合があるため注意が必要です。本記事では、外国人労働者を雇用する際に確認すべき労働時間のルールやリスク、適切な管理方法について解説します。
目次
外国人労働者の労働時間の実態
在留資格 | 所定内実労働時間(時間 / 月) | 超過実労働時間(時間 / 月) | 総実労働時間 |
---|---|---|---|
外国人常用労働者計 | 155.8時間 | 19.8時間 | 175.6時間 |
専門的・技術的分野 | 158.6時間 | 17.5時間 | 176.1時間 |
うち技術・人文知識・国際業務 | 157.3時間 | 14.9時間 | 172.2時間 |
うち特定技能 | 159.9時間 | 23.8時間 | 183.7時間 |
うち高度専門職 | 151.9時間 | 7.5時間 | 159.4時間 |
技能実習 | 163.2時間 | 26.2時間 | 189.4時間 |
留学 | ー | ー | ー |
身分に基づくもの | 149.5時間 | 18.5時間 | 168時間 |
うち永住者 | 149.2時間 | 15.8時間 | 165時間 |
うち定住者 | 153.0時間 | 31.5時間 | 184.5時間 |
その他 | 131.5時間 | 15.1時間 | 146.6時間 |
上記によると、技術実習生の総実労働時間(所定内実労働時間 + 超過実労働時間)が189.4時間でもっとも長く、高度専門職の総実労働時間は159.4時間ともっとも短いことがわかります。
在留資格別の短時間労働者の労働時間については、以下のとおりです。
在留資格 | 所定内実労働時間(時間 / 月) | 超過実労働時間(時間 / 月) | 総実労働時間 |
---|---|---|---|
外国人常用労働者計 | 81.1時間 | 2.7時間 | 83.8時間 |
専門的・技術的分野 | 105.5時間 | 5.0時間 | 110.5時間 |
うち技術・人文知識・国際業務 | 114.3時間 | 6.3時間 | 120.6時間 |
うち特定技能 | ー | ー | ー |
うち高度専門職 | ー | ー | ー |
技能実習 | ー | ー | ー |
留学 | 71.2時間 | 1.9時間 | 73.1時間 |
身分に基づくもの | 81.9時間 | 2.8時間 | 84.7時間 |
うち永住者 | 82.1時間 | 2.7時間 | 84.8時間 |
うち定住者 | 83.1時間 | 2.8時間 | 85.9時間 |
その他 | 72.7時間 | 1.6時間 | 74.3時間 |
短時間労働の場合、技術・人文知識・国際業務の総実労働時間が120.6時間ともっとも長く、留学生の総実労働時間が73.1時間ともっとも短い結果となりました。
上記のように外国人労働者の労働時間は、資格ごとに大きな差があることがわかります。
労働基準法と36協定に基づいて労働時間を定める必要がある
外国人労働者の労働時間も日本人労働者と同様に、労働基準法と36協定によって制限されています。労働基準法第32条では、原則として1日8時間、週40時間を超えて働かせてはいけないと定められています。
法定労働時間を超える時間外労働をさせる場合、事業者は労使間で36協定を締結し、所轄の労働基準監督署への届出が必要です。36協定がない状態で法定労働時間を超えた労働をさせることは違法です。
外国人労働者も適切な労働環境で働けるよう、事業者は法令を遵守しなければなりません。
留学生の労働時間は週28時間を超えてはいけない
留学生や家族滞在、特定活動の一部などの在留資格は、労働時間に制限が設けられています。資格外活動許可を受けた場合でも、週28時間以内のアルバイトが認められます。
資格外活動許可とは、本来の在留資格の範囲外で収入を伴う活動を行う際に必要な許可です。出入国管理および難民認定法の別表第一に記載されている就労期限のある在留資格を持つ人が対象となります。
ただし、資格外活動許可を受けていても、留学生や家族滞在、特定活動の一部の在留資格では週28時間を超えて働くことは違法です。違反した場合、在留資格の取り消しや退去強制の対象となることがあります。
そのため、留学生は学業を優先し、適切な範囲内でアルバイトをすることが重要です。
外国人労働者にも適切に休日を付与する
外国人労働者にも、日本人労働者と同様に、労働基準法第35条に基づき適切に休日を付与する必要があります。
事業主は、毎週少なくとも1回の休日を与えなければいけません。ただし、4週間に4日以上の休日を確保する場合は、毎週1日の休日を与える義務はありません。
休日の付与に関するルールは、日本人労働者と同様に外国人労働者にも適用されるため、事業主は適正な運用に注意が必要です。
長時間労働が問題視されることもありますが、法律に基づく適切な休日の確保は、健康管理や労働環境の改善につながります。事業主は、外国人労働者が適法な範囲で働けるよう、休日を適切に設定することが重要です。
労働時間に応じて休憩時間を確保する
労働基準法第34条に基づき、外国人労働者にも適切な休憩時間を確保する必要があります。6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間の休憩を、労働時間の途中に与えなければいけません。
労働基準法に基づいた労働環境を整えるためには、以下のような対応が求められます。
- 週休2日制を採用
- 週休1日制の場合は1日の労働時間を短縮
- 変形労働時間制(1ヶ月単位・1年単位)の導入 など
事業主は、外国人労働者にも適切な休憩時間を提供し、労働環境を適法に整えることが重要です。
休憩に関する具体的なルールについては、下記の記事で具体的に解説しているため、ぜひあわせてご覧ください。
週28時間に関するルールについて
留学生がアルバイトをする場合、週の労働時間は法律で28時間までと定められています。ルールを知らずに超過して働くと、留学生本人だけでなく、雇用した事業主も罰則の対象となるため注意が必要です。
適切にアルバイトを行うためにも、下記では週28時間の労働に関するルールについて解説します。
週28時間の就労期限の確認方法
留学生は原則として就労が認められておらず、在留カードの「就労制限の有無」欄には「就労不可」と記載されています。ただし、在留カード裏面の「資格外活動許可」欄に「許可:原則週28時間以内」と記載されていれば、週28時間の範囲内でアルバイトが可能です。
資格外活動許可がない場合は、最寄りの入国管理局に申請することで、許可を受けられます。ただし、審査があるため、早めに手続きを行うことが重要です。
留学生を雇用する事業主は、入社日までに資格外活動許可を取得するよう留学生に依頼し、必ず在留カードの記載内容を確認しましょう。
週28時間労働の計算方法
外国人留学生のアルバイトは、どの曜日から起算しても1週間の労働時間が28時間以内に収める必要があり、月単位で調整することは認められていません。
また、一定期間内に労働時間を柔軟に調節できる変形労働時間制は、留学生のアルバイトにも適用可能です。ただし、労働時間が不規則になることで週28時間を超えてしまうリスクが高まるため、1日8時間を超える勤務は慎重に管理する必要があります。
また、在籍する教育機関の長期休暇期間中に限り、教育機関が発行する証明書があれば、1日8時間・週40時間まで就労できます。いずれの上限もアルバイトの掛け持ちを含めた合計時間です。
雇用側が自社のシフトのみで管理すると、留学生が規定を超え、不法就労を助長する可能性があるため注意が必要です。
週28時間が許可されないケース
資格外活動許可を取得していても、在留資格で定められた「本来の活動」を行っていない場合は、許可が下りなかったり、すでに取得済みの許可が取り消されたりすることがあります。
留学生の場合、学校への出席率が著しく低い場合や、成績が極端に悪く学業を疎かにしている場合は、資格外活動許可が取り消される可能性があります。
留学生をアルバイトで雇用する際は、学業を最優先にしているか、在留資格の要件を満たしているか常に確認することが重要です。
外国人労働者の労働時間オーバーが発覚した場合のリスク
外国人労働者の労働時間が法定基準を超えると、事業主にとって重大なリスクとなるため注意が必要です。労働基準法違反による罰則や行政指導、労使トラブルの発生など、企業経営に深刻な影響を与える可能性があります。以下では、労働時間超過に伴う具体的なリスクについて詳しく説明します。
事業主に不法就労助長罪が適用される
外国人労働者の労働時間オーバーが発覚した場合、事業主には不法就労助長罪が適用される可能性があります。
時間制限を超えて働かせると、不法就労をさせた、もしくはあっせんしたとして不法就労助長罪に該当し、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される恐れがあります。また、不法就労をさせたり、あっせんしたりした外国人事業主は退去強制の対象となるため注意が必要です。
さらに、不法就労であると知らなかった場合でも、在留カードの確認不足など事業主に過失が認められれば処罰の対象となります。
外国人労働者は強制送還の対象になる可能性がある
外国人労働者が労働時間を超過し、資格外活動許可に違反すると、強制送還の対象となる可能性があるため注意が必要です。
たとえば、外国人留学生が資格外活動許可で定められた週28時間を超えてアルバイトをした場合、在留資格の更新や変更申請時に不許可となる恐れがあります。また、不法就労が発覚し、退去強制処分となった場合、退去強制の日から5年間(2回目以降は10年間)は再入国が禁止されます。出国命令の場合も、出国の日から1年間は入国できません。
強制送還を避けるためにも労働時間の上限を守り、在留資格の条件を守ることが重要です。
入国管理局は在留カードから違反がわかる
外国人労働者の労働時間オーバーは、入国管理局が在留カードを通じて把握できます。
外国人労働者の情報は、入国管理局のほか、市区町村役場やハローワークなどと共有されており、アルバイト状況も確認可能です。企業が行う納税手続きに基づき、市区町村役場が発行する納税証明書には、外国人留学生の収入額が1円単位で記載されます。
時給に対して収入額が不自然に高い場合、労働時間の超過が疑われます。入国管理局が時間制限の遵守状況を確認し、ビザの更新や変更申請が不許可となる可能性があるため注意が必要です。
外国人労働者の労働時間がオーバーしないための対策
外国人労働者の労働時間がオーバーしないためには、事業主が適切に管理することが重要です。労働時間の超過は不法就労につながり、事業主・労働者双方に法的リスクをもたらす可能性があります。
労働基準法や在留資格の条件を守るためには、正確な勤務時間の把握と適切なシフト管理が必要です。以下では、労働時間を適切に管理する具体的な方法を紹介します。
また、外国人雇用に関する注意点については、下記の記事で具体的に解説しているため、参考にしてみてください。
ダブルワークの報告をしてもらう
外国人留学生を雇用する際は、ダブルワークしているか報告してもらうことが重要です。
外国人留学生のダブルワークは認められていますが、すべてのアルバイト時間の合計が週28時間以内に収まるよう管理する必要があります。自社で時間制限を守っていても、掛け持ち先でオーバーしていれば法律違反です。
企業がダブルワークを知りながら時間制限を超えて働かせている場合、不法就労助長罪に問われる可能性があります。
そのため、雇用時に留学生が他の職場で働いていないか確認し、他の職場での労働時間を定期的に報告してもらうことが重要です。労働時間の合計が制限を超えないよう、管理体制を整えましょう。
休憩時間や休日の確認を徹底する
外国人留学生にも、日本人と同じく労働基準法が適用されます。そのため、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩が必要です。
規定を守らなければ違法となり、事業主が罰則を受ける可能性があります。また、休日の確保も重要であり、無理なシフトを強いることは避けたほうが良いです。勤怠管理ツールを活用し、勤務時間や休憩時間を正確に把握することで、適切な労務管理が可能になります。
可能な限り希望時間分のシフトを入れる
外国人労働者のダブルワークを避けるためには、可能な限り希望する時間分のシフトを入れるようにしましょう。
外国人労働者が週28時間フルで働きたいと考えている場合、希望時間を満たせないと他で掛け持ちをする必要性が生じ、結果的に労働時間がオーバーするリスクが高まります。労働者の希望を聞き、可能な限りシフトに反映することで、ダブルワークを防げます。
ただし、接客業などでは来客状況によりシフト時間を超える可能性があるため、28時間の上限に余裕を持たせたシフト設定も検討しましょう。
外国人労働者の労働時間を管理して適切に雇用しよう
外国人労働者の労働時間には、日本の法律に基づいた明確な上限があります。
とくに留学生には「週28時間以内」という厳格な制限があり、違反すれば事業主には不法就労助長罪により外国人労働者本人も強制送還のリスクを負います。適切な労働時間管理のために、ダブルワークの報告や休憩・休日の確認を徹底し、ルールを守った雇用を心掛けましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
労使協定とは?種類や届出義務および違反した場合を解説
仕事のルールは数多くあり、労使協定も重要な役割を果たしています。例えば、残業や休日出勤を実施するには、労使協定の一つである36協定の締結がなければ認められないのです。そこでこの記事では労使協定についてわかりやすくまとめました。 労働協約や就…
詳しくみる労働基準法第19条とは?解雇制限のルールや注意点をわかりやすく解説
労働基準法第19条(解雇制限)は、労働者保護のために使用者による解雇を一定期間禁止する規定です。業務上の負傷・疾病で休業中の労働者や産前産後休業中の女性労働者について、療養期間や休業期間およびその後30日間は解雇が原則禁止されます。 本記事…
詳しくみる外国人労働者の国別ではどこが多い?多い国の特徴や理由について解説
日本で受け入れられている外国人労働者数は、年々増加傾向にあります。 多くの外国人労働者は、国別でみると大半がアジア圏内であり、今後もアジア圏内のからの外国人労働者が増えるでしょう。 しかし国別の割合や、外国人労働者の特徴がわからない方も多い…
詳しくみる特定求職者雇用開発助成金とは?対象者や各コースの詳細、申請方法を解説!
特定求職者雇用開発助成金とは、障害者や高齢者などの就職困難者を採用した事業主に向けた助成制度です。令和5年度からは生涯現役コースと被災者雇用開発コースが廃止され、コースの種類や対象者も大きく変わりました。助成金の支給要件や各コースの詳細、申…
詳しくみる退職金制度とは?中小企業の相場や計算方法、税金について解説
退職金制度は、法律で義務づけられていませんが、一般的に日本ではあって当たり前と認識されているようです。従業員の長期勤続を促し、企業と従業員の双方にメリットをもたらす重要な福利厚生の一つであるといえるでしょう。本記事では、退職金制度の基本から…
詳しくみるRPOとは?採用代行のメリット・デメリット、選び方や導入すべき企業を解説
優秀な人材を採用できるか否かは、企業の命運を左右するといっても過言ではありません。しかし、採用業務に十分なリソースを割ける企業ばかりではないでしょう。 当記事では、RPO(採用代行)について解説を行っています。採用に悩む企業経営者や、人事担…
詳しくみる