- 更新日 : 2025年7月30日
健康保険の扶養条件 所得税法などとの違いを比較
従業員の給与計算をしたり、社会保険の手続きを取ろうとして混乱したりすることが多いのは「扶養家族はどの範囲までなのか」という扶養基準です。これは、健康保険での扶養基準と、ほかの扶養基準が異なることに関係しているようです。
ここでは健康保険での扶養基準を軸にして、ほかの扶養基準とはどのように違うのかを見ていきます。
健康保険での扶養基準
まず、健康保険における扶養条件には複数のとポイントがあります。
まず、「同居しているかいないか」が前提となる重要なポイントです。そしてその次に、扶養基準の範囲と年収など収入要件を満たすかどうかで扶養基準は異なります。
それぞれのポイントから扶養基準を確認してみましょう。
扶養基準における被扶養者の範囲
別居の場合の扶養基準
健康保険での別居の場合の扶養基準において、被扶養者として認められるのは、父母や配偶者、兄弟姉妹、子、祖父母、孫です。
同居の場合の扶養基準
健康保険での同居の場合の扶養基準において、扶養者と同居している事実があれば、親族でも認められます。ただし、3親等内の親族に限られます。3親等とは、父母の兄弟姉妹、甥姪です。3親等の配偶者も認められます。
なお、配偶者が内縁関係であってもかまいません。その配偶者の父母や、配偶者の子供も配偶者生存中はもちろん、配偶者が死亡した後に引き続いて同居している場合も認められます。
被扶養者の収入要件
健康保険での年間収入による扶養基準において、大前提となるのが年間収入額です。その額が130万円未満でなければ扶養とは認められません。
年間収入とは、給与によるもの(賞与や手当などを含む)のほか、事業所得、傷病手当や出産手当金などの手当金、公的年金、給付金(雇用保険の失業給付など)を合わせたものになります。
別居の場合の扶養基準
年間収入が130万円未満で別居している場合は、この年間収入額が被保険者から援助される額に満たななければに、扶養家族として認められます。被保険者からの援助とは、仕送りなどによる受け渡しがあった年間合計額です。
年間収入の130万円未満という扶養基準は、60歳以上が対象となる場合には180万円未満となります。障害のある人(障害厚生年金該当者)の場合も同様です。
同居の場合の扶養基準
年間収入が130万円未満で同居している場合は、家族の年間収入が被保険者の2分の1未満である場合に被扶養者として認められます。
また、世帯の状況によっては、年間収入が被保険者の年間収入の半分を上回っても、全額を上回らなければ、被扶養者として認められる場合があります。
なお、この場合の同居は、住民票に記載された住所を同じくする同一世帯であることが求められます。
※平成28年10月より、年間収入が130万円以下未満であっても一定の要件を満たす短時間労働者(パートタイマー)は健康保険の被保険者として加入対象になり被扶養者から除かれることになります。
厚生年金保険と健康保険での扶養基準の違い
厚生年金の場合、被扶養者として認められるのは配偶者のみで、健康保険の被扶養者の範囲と大きく違っています。しかも、年齢が20歳以上60歳未満と限定されています。
収入に関しての制限については健康保険と同様です。この被扶養者は国民年金の第3号被保険者と呼ばれ、保険料は加入する組織(厚生年金または共済組合)の負担となります。
所得税法上と健康保険での扶養基準の違い
会社の経理では、扶養控除や配偶者控除として所得税の計算をする際にも扶養基準を確認する必要があります。
扶養控除と配偶者控除という2つの控除における扶養基準から、所得税法上と健康保険との違いを見てみましょう。
扶養控除での扶養基準
所得税法上の扶養控除における被扶養者の要件は、以下のとおりです。
1. 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
2. 納税者と生計を一にしていること。
3. 年間の合計所得金額が38万円以下であること。 (給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
4. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
この4つに当てはまれば、所得税申告の際に扶養控除(扶養親族のうちその年12月31日現在の年齢が16歳以上の人)を受けることができます。健康保険では年間収入が130万円未満を前提としている部分が違います。
所得税に関わる扶養控除について詳しくはこちらのページをご参照ください。
配偶者控除での扶養基準
所得税法では、配偶者に対して扶養控除とは別に、配偶者控除という制度を設けています。健康保険では被扶養者の範囲を配偶者に限定していないので、まずこの点が違います。
所得税法では、原則として配偶者の年間の合計所得金額が38万円以下の場合に配偶者控除が適用されます(控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1000万円を超える場合は、配偶者控除は受けられません)。
しかし、合計所得金額の計算は、所得の種類によって異なります。
所得が給与によるものだけである場合、その年間合計額から給与所得控除額を引いた額が38万円以下であれば配偶者控除が適用となります。(2020年分以降、配偶者の年間所得が48万円以下の場合に対象 )給与のほかにも不動産や譲渡、一時所得などがあれば、給与所得控除後の金額にその他の所得の金額を足して38万円以下となる場合に適用されます。
また、令和2年から配偶者控除・配偶者特別控除の改正がおこなわれ配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下の場合で、控除をうける納税者本人の合計所得金額が900万円超え1000万円以下の場合には一定(最大38万円)の配偶者特別控除を受けることができます。
配偶者控除の要件について、より詳しい解説は「年末調整における配偶者控除」のページよりご確認ください。
まとめ
健康保険での扶養基準はとても広い範囲に及んでいます。この基準で所得税の処理をしてしまうと、税務署の指摘を受けて申告をし直さなければならなくなったりします。また、延滞税や加算税などが発生することもありますので、これらを混同しないように注意が必要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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