- 更新日 : 2025年4月18日
社宅の家賃相場はどれくらい?東京の相場や計算方法、税制上のメリットを解説
社宅制度は、企業が従業員に提供する福利厚生のひとつです。ただし、無償で提供すると給与として課税され、従業員の税制上の負担が増加してしまいます。適切な家賃設定は、従業員の満足度向上と企業のコスト面の効率化につながるでしょう。
本記事では、社宅家賃の相場や従業員・役員それぞれの社宅家賃の決め方、コスト面でのメリットをわかりやすく紹介します。
目次
社宅の家賃の相場はどれくらい?
賃貸会社から企業が自社名義で借り上げて従業員に提供する借り上げ社宅では、家賃を企業と従業員でそれぞれ負担します。
もし、企業が社宅の家賃を全額負担した場合、現物給与として従業員は全額課税されることになります。そのため、企業は社宅家賃の従業員負担額の割合を税制上不利にならないように配慮して設定することが必要です。
国税庁が規定する賃貸料相当額以上に設定
社宅家賃の従業員負担額は、家賃そのものの金額ではなく「賃貸料相当額」の規定によって算出されます。「賃貸料相当額」とは、国税庁が規定する基準額のことです。
社宅を提供する場合には、「賃貸料相当額」の50%以上を従業員が自己負担すれば給与として課税されないため、50%以上で設定するとよいでしょう。
企業にとっても給与扱いとならず、福利厚生費として損金に計上できるため、節税効果が見込めます。
参考:国税庁 No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき
東京の社宅家賃の相場
人事院の東京都特別区内(23区)の独身用借り上げ社宅の平均月額使用料と賃料のデータによると、企業が契約している賃料と従業員の負担額の平均は、以下の通りです。
企業規模によらず全体としては、企業が契約している独身用借り上げ社宅の賃料の平均額が84,394円に対し、従業員の自己負担額は、平均20,346円となっています。
このデータから、東京都特別区内の独身用社宅の相場は、8万5千円程度、従業員の負担額は2万円程度であると推察されます。
| 企業規模 (独身用社宅がある企業) | 借り上げ社宅 | |
|---|---|---|
| 使用料(従業員の負担額) | 賃料(企業の契約額) | |
| 規模計 | 20,346円 | 84,394円 |
| 500人以上 | 19,824円 | 84,580円 |
| 100~500人未満 | 20,453円 | 83,391円 |
| 50~100人未満 | 21,163円 | 88,238円 |
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社宅制度導入によるコスト面と税制上のメリット
社宅制度を導入すると、従業員の経済的負担が軽減されるだけでなく、企業と従業員ともに社会保険料の軽減や税制上でメリットがあります。
社会保険料の負担が軽減される
社宅制度の導入によって、社会保険料を削減できる可能性があります。
社宅を従業員に貸与した場合には、現物給与として換算された額が報酬として扱われ、社会保険料の計算基礎となります。無償で貸与した場合であれば、換算額全てが報酬です。しかし、従業員から家賃を徴収する場合には、家賃と換算額の差額部分が報酬となり、会社負担分は報酬とはなりません。
一方で住宅手当を支給している場合には、その全額が社会保険料を計算する際の基礎に含まれます。そのため、住宅手当の代わりに社宅制度を導入すれば、社会保険料の軽減や、従業員の手取り増加の効果が望める可能性があります。
社会保険料は会社と従業員が折半するため、社会保険料の削減は会社にとってのメリットともなるでしょう。
社宅費用を経費に計上できる
企業は社宅制度の導入により、税制上でもメリットがあります。従業員から家賃として「賃貸料相当額」の50%以上を徴収していれば、「賃貸料相当額」は給与扱いとはならず、税務上は損金扱いです。
企業はこの仕組みにより課税所得を減少させることができ、結果として納税額が軽減されるため、節税効果を得られます。
ただし、社宅を無料で提供している場合、または「賃貸料相当額」の徴収割合が50%未満の場合、社会保険料の場合と同様に注意が必要です。
企業は「賃貸料相当額」または「賃貸料相当額」と実際に徴収した金額の差額を給与として計上する必要があるため損金計上ができなくなり、節税効果は減少するでしょう。
社宅制度と住宅手当の家賃補助との違いは?
住宅関連の福利厚生として、企業が物件を借り上げて提供する社宅制度のほかに、住宅手当による家賃補助の制度があります。
社宅の家賃は、従業員の給与から天引きされますが、住宅手当は従業員が自分で物件を契約した後、企業がその家賃の一部を補助する制度です。社宅と比べると、自由に物件や立地条件を選択できるというのがポイントでしょう。
ただし、住宅手当は給与とみなされ、給与に上乗せされることで課税所得が増えてしまいます。それに伴い住民税や所得税が増加するため、社宅制度とは異なり節税効果はありません。また、先述の通り住宅手当は、社会保険料の計算においても社宅に比べて不利になる場合があります。
社宅の家賃の決め方
ここからは、社宅の家賃の決め方について計算方法を解説します。「賃貸料相当額」をもとに、企業と従業員双方に利益をもたらす設定にすることが重要です。なお、社宅を提供する対象者が従業員か役員かで計算方法が異なるため注意してください。
【従業員の場合】賃貸料相当額の50%以上を自己負担
社宅を従業員に提供する場合は、従業員の自己負担額を「賃貸料相当額」の50%以上に設定しましょう。これにより、従業員は住宅給与として課税されず、企業も経費として計上できます。企業と従業員の両方が税金面で有利になる理想的な設定が、この50%以上の負担割合です。
賃貸料相当額の計算方法
家賃設定の基準となる「賃貸料相当額」は、次の3つの合計額になります。
- (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
- 12円×(その建物の総床面積(㎡)/3.3㎡)
- (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
参考:国税庁 No.2597使用人に社宅や寮などを貸したとき
具体例として、「賃貸料相当額」が6万円の物件を従業員に提供した場合に給与として課税される金額は以下の通りです。
| 従業員の負担割合 | 徴収額 | 企業負担額 | 課税対象額 |
|---|---|---|---|
| 無償 | 0円 | 60,000円 | 60,000円 |
| 20% | 12,000円 | 48,000円 | 48,000円 |
| 50% | 30,000円 | 30,000円 | 0円 |
たとえば、従業員に社宅を無償提供した場合、「賃貸料相当額」全額の60,000円が給与として課税されます。
また「賃貸料相当額」の20%の家賃を徴収する場合、「賃貸料相当額」と徴収額の差額分の48,000円が給与として課税されることになります。
次に、50%の家賃を徴収する場合は、給与として課税されません。この場合、企業も「賃貸料相当額」全額の60,000円を損金として計上できます。
【役員の場合】賃貸料相当額の100%を自己負担
社宅を役員に貸し出す場合、賃貸料相当額の割合が従業員の場合とは異なるため注意が必要です。
役員の場合、給与で課税されないようにするためには、賃貸料相当額を100%徴収する必要があります。無償で提供している場合や、賃貸料相当額より低い家賃を徴収している場合は給与の課税対象となります。
賃貸料相当額は、社宅の床面積によって異なり、小規模な住宅と小規模でない住宅、豪華住宅に分けて計算しなければなりません。
なお、一般に提供されている社宅と認められない、いわゆる豪華社宅とよばれる社宅については、通常支払うべき家賃に相当する額が賃貸料相当額になり、いずれの算式も適用はありません。
豪華社宅かどうかは、床面積が240㎡を超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等で判定されます。
ここでは、小規模な住宅と小規模でない住宅の計算方法についてそれぞれ説明します。
小規模な住宅の賃貸料相当額の計算方法
小規模な住宅とは、下記の条件を満たした住宅のことです。
- 法定耐用年数が30年以下の建物の場合:床面積が132㎡以下
- 法定耐用年数が30年を超える建物の場合:床面積が99㎡以下
従業員の場合と同様に、「賃貸料相当額」は以下の3つの合計額になります。
- (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
- 12円×(その建物の総床面積(㎡)/3.3㎡)
- (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
小規模でない住宅の賃貸料相当額の計算方法
次に小規模でない住宅の「賃貸料相当額」は、自社所有の社宅か賃貸会社などから借り上げた社宅かで計算方法が違います。
自社所有の社宅の場合、次のAとBの合計額の12分の1が「賃貸料相当額」です。
(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%
ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合は10%を乗じます。
(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%
企業が借り上げた社宅の場合は、家主に支払う家賃の50%と自社所有社宅の場合の計算式で算出された「賃貸料相当額」とのどちらか多い金額が「賃貸料相当額」になります。
具体例として、小規模住宅と小規模でない住宅において、「賃貸料相当額」が6万円の物件を役員に提供した場合に給与として課税される金額は以下の通りです。
| 役員の負担割合 | 徴収額 | 企業負担額 | 課税対象額 |
|---|---|---|---|
| 30% | 18,000円 | 42,000円 | 42,000円 |
| 50% | 30,000円 | 30,000円 | 30,000円 |
| 100% | 60,000円 | 0円 | 0円 |
役員の場合は、企業の負担額と「賃貸料相当額」との差額が給与として課税され、「賃貸料相当額」を100%支払った場合に全額が非課税となります。企業は、「賃貸料相当額」の全額を損金として計上できるため税制上のメリットは大きいでしょう。
社宅家賃を決める時の注意点
社宅の家賃は、社内の社宅規定に従って決定されます。初めて社宅制度を導入する場合は、家賃設定の社内基準も社宅規定に定めましょう。ここでは、社宅の家賃を決める際に注意すべき点を解説します。
家賃に含める費用を明確にする
社宅の家賃を決める際は、従業員とのトラブルを避けるためにも、家賃に含める項目を明確化し、社内規定に定めておくことが重要です。
具体的には、社宅退去時の修繕費を家賃に含めるかどうかもあらかじめ取り決めをしておく必要があります。社宅の場合は、企業側が負担するのが一般的ですが、通常の範囲を超えた修繕費などが発生する場合も考慮して、社内規定で定めておきましょう。
また光熱費や水道代などを家賃に含める際には、非課税の適用外となる可能性が高く、課税扱いとなる場合があるため、注意が必要です。
家賃に含める項目を社宅規定で明確化し、従業員に事前に説明しておきましょう。税務上の問題も考慮して家賃に何を含めるかを慎重に検討することが大切です。
立地条件に適した家賃にする
社宅の家賃を決めるうえで、立地条件は重要な要素です。職場からアクセスしやすいかどうか、最寄りの駅までの距離を考慮する必要があります。
交通の便が悪いエリアや郊外の家賃は比較的安く、駅周辺や都市部は高くなるため、家賃に反映させることも検討しましょう。
ただし、安い家賃だけを優先して利便性が損なわれると、従業員の不満につながります。築年数や周辺環境の治安なども考慮した適切な家賃設定が、従業員満足度を高めることになるでしょう。
税金や保険料の負担を考える
社宅の家賃を決める際は、コスト面で従業員と企業どちらにもメリットがある金額に設定します。
従業員の負担を軽くするつもりで無償提供してしまうと、全額が税や社会保険料の対象にされてしまい、社会保険料や所得税、住民税の負担が増加してしまいます。そのため、社宅の家賃は「賃貸料相当額」の50%以上に設定するのが一般的です。
社宅は、福利厚生の一環であることを念頭におき、従業員が不利益を被ることがないようにしましょう。
社宅の家賃相場を把握し、税制上のメリットを考慮して家賃を設定しよう
社宅の家賃相場は、周辺地域の賃料の10〜20%が一般的です。企業が社宅を提供する際は、国税庁規定の「賃貸料相当額」を基準に家賃を設定する必要があります。
とくに、従業員の自己負担額を「賃貸料相当額」の50%以上にすると、給与として課税されません。税金だけでなく、社会保険料の負担が減らせる場合もあり、企業はさらに経費に計上できるため全体的なコストが抑えられます。社宅の家賃を決める際は、税務上の効果を考慮し、双方に有利な条件を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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