- 更新日 : 2025年3月18日
外国人雇用で利用できる助成金とは?2025年最新情報を徹底解説
近年では事業における人材不足が進んでおり、グローバル化に伴い外国人雇用をご検討の方もいらっしゃるでしょう。事業者向けの各種助成金制度を活用すれば、採用負担を軽減できるチャンスも広がります。
本記事では、2025年最新の制度情報や対象条件、申請方法を解説し、実務に役立つポイントを紹介します。
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外国人雇用で利用できる助成金5選
外国人を雇用する企業向けに、活用できる助成金が複数用意されています。主に5種類の助成金があり、それぞれ目的や受給条件が異なるため、自社に適したものを選ぶことが重要です。
助成金を活用することにより、雇用コストの負担軽減や人材育成の支援が受けられます。以下では、各助成金の詳細を解説します。
助成金については、下記の記事で詳しく解説しているためぜひあわせてご覧ください。
1. 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、外国人労働者が働きやすい環境を整え、職場への定着を促進するための助成金です。
外国人労働者は、日本の労働法や雇用慣行に不慣れなため、労働条件や解雇をめぐるトラブルが発生しやすい傾向にあります。外国人労働者が働きやすい環境を整備のうえ、助成金を活用すれば、労使間でのトラブルを回避しながら、快適な労働環境を提供できます。
対象となる事業主
本助成金の対象は、雇用保険の被保険者となる外国人労働者(特別永住者および在留資格「外交」「公用」を除く)を雇用する事業主です。
主な受給要件は以下のとおりです。
- 外国人労働者を雇用し、「外国人雇用状況届出」を提出していること
- 認定を受けた「就労環境整備計画」に基づき、就労環境整備措置を実施すること
- 過去に助成金を受給した事業主が就労環境整備計画を提出する場合、最終支給決定日から3年以上経過していること
- 倒産・解雇などの理由による離職者の割合が6%以下であること
- 就労環境整備計画期間初日の前日から起算して6ヶ月前の日からの計画期間中に、事業主都合の解雇を行っていないこと
参考:人材確保等支援助成金 (外国人労働者就労環境整備助成コース) ガイドブック|厚生労働省
上記を満たすことにより、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)の対象となります。
支給額
本助成金は、就労環境整備計画期間内に事業主が外部機関へ支払った費用が対象です。
支給額は、賃金要件を満たす場合は支給対象経費の2/3(上限72万円)、満たさない場合は支給対象経費の1/2(上限57万円)と定められています。
賃金要件とは、外国人労働者の基本賃金が最も遅い施策実施日から1年以内に5%以上増加していることを指します。賃金要件を満たすと助成額が増加するため、事前に確認しておきましょう。
受給までの流れ
本助成金を受給するまでの流れは以下のとおりです。
- 提出期間内に就労環境整備計画を作成し、本社所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークへ提出する
- 認定を受けた計画に基づき、外国人労働者の就労環境整備措置を導入する
- 導入した措置を計画通りに実施し、実施した措置を証明する書類を準備する
- 計画期間終了後の算定期間(12ヶ月間)終了後2ヶ月以内に、都道府県労働局またはハローワークへ申請する
- 申請が認められれば、助成金が支給される
参考:人材確保等支援助成金 (外国人労働者就労環境整備助成コース) ガイドブック|厚生労働省
申請書類は、期限内必着で提出する必要があります。郵送の場合は、期限までに到着していることを確認してください。
2. 人材開発支援助成金(人材育成コース)
人材開発支援助成金(人材育成コース)は、事業主が労働者に専門的な知識や技能を習得させるために職業訓練を実施した場合、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成される制度です。
計画的な人材育成を促進し、企業の競争力向上や労働者のスキルアップを支援することが目的です。
対象となる事業主
本助成金は、職務に関連する専門知識や技能を習得するための訓練を実施する事業主が対象です。外国人労働者を含むすべての労働者を対象に、支給要件を満たす訓練を実施すれば助成を受けられます。
対象となる事業主は、雇用保険適用事業所であり、職業能力開発計画や訓練実施計画を策定し、従業員に周知することが重要です。また、職業能力開発推進者の選任や適正な賃金支払い、解雇制限、必要書類の保存・提出なども求められます。オンライン訓練を実施する際は、テレワーク制度の導入が必要です。
支給額
本助成金の支給額は、訓練時間と企業の規模に応じて異なります。
【OFF-JT/OFF-JTとOJTとの併用により訓練を実施した場合】※一部抜粋
中小企業の事業主・事業主団体 | 中小企業以外の事業主 | |
---|---|---|
経費助成 | 45% | 30% |
賃金助成(1人1時間あたり) | 760円 | 380円 |
参考:令和6年度版パンフレット(人材育成支援コース)詳細版|厚生労働省
上記に加え、賃金要件または資格要件を満たした場合には支給額が加算されます。資格要件とは就業規則、労働協約または労働契約等に規定したうえで、訓練終了後の翌日から起算して1年以内にすべての対象労働者に対して実際に当該手当を支払い、毎月決まって支払われる賃金を3%以上増加させていることを指します。
【eラーニング・通信制により訓練を実施した場合(経費助成のみ)】
中小企業の事業主・事業主団体 | 中小企業以外の事業主 | |
---|---|---|
10時間以上100時間未満 | 15万円 | 10万円 |
100時間以上200時間未満 | 30万円 | 20万円 |
200時間以上 | 50万円 | 30万円 |
参考:令和6年度版パンフレット(人材育成支援コース)詳細版|厚生労働省
専門実践教育訓練の指定講座は一律で200時間以上の区分、通信制訓練は一律で10時間以上100時間未満の区分が適用されます。
受給までの流れ
本助成金を受給するまでの流れは以下のとおりです。
- 「職業訓練実施計画届(様式第1−1号)」を作成し、訓練開始日の1ヶ月前までに各都道府県労働局へ提出する
- 部内・部外講師による事業内訓練や教育訓練施設での事業外訓練を実施する
- 訓練終了日の翌日から2ヶ月以内に「支給申請書(様式第4号)」と必要書類を労働局へ提出する
- 労働局が審査を行い、支給・不支給を決定する
参考:令和6年度版パンフレット(人材育成支援コース)詳細版|厚生労働省
上記の流れに沿って、計画的に手続きを進めることが重要です。
3. キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者や短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用者のキャリアアップを支援する制度です。事業主が正社員化や処遇改善の取り組みを実施した場合、費用の一部が助成されます。
主な支援内容は、①正社員化支援(非正規雇用者を正社員に転換した場合の助成)、②処遇改善支援(賃金規定の改定や社会保険への加入にあたっての手当支給・労働時間延長・などに対する助成)の2つです。
対象となる事業主
本助成金は、非正規雇用の労働者を正社員化したり、処遇改善を行ったりする事業主が対象です。全コース共通の対象者は、以下のとおりです。
- 雇用保険適用事業主の事業主
- 雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を設置する事業主
- 雇用保険適用事業所ごとで労働者にキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格認定を受けた事業主
- コースの対象労働者の労働条件や勤務状況、賃金の支払い状況などを明記した書類を整備し、賃金の算出方法を明示できる事業主
参考:キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)|厚生労働省
処遇改善支援コースでは外国人労働者も支給対象ですが、正社員化コースでは外国人技能実習生や特定技能第1号の労働者は対象外です。また、EPA(経済連携協定)で受け入れられた看護師や介護福祉試験合格前の方も対象外となります。
支給額
本助成金の支給額は、以下のとおりです。
中小企業 | 大企業 | |
---|---|---|
正社員化コース | 有期雇用:80万円(40万円 × 2期) 無期雇用:40万円(20万円 × 2期) | 有期雇用:60万円(30万円 × 2期) 無期雇用:30万円(15万円 × 2期) |
賃金規定等改定コース | 3%以上5%未満:5万円 5%以上:6万5,000円 | 3%以上5%未満:3万3,000円 5%以上:4万3,000円 |
賃金規定等共通化コース | 60万円 | 45万円 |
賞与・退職金制度導入コース | 賞与または退職金制度:40万円 両方導入:56万8,000円 | 賞与または退職金制度:30万円 両方導入:42万6,000円 |
社会保険適用時処遇改善コース | (手当等支給メニュー) 1・2年目:40万円(10万円 × 4期) 3年目:10万円 (労働時間延長メニュー) 30万円 | (手当等支給メニュー) 1・2年目:30万円(7.5万円 × 4期) 3年目:7.5万円 (労働時間延長メニュー) 22.5万円 |
参考:キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)|厚生労働省
支給額は企業の規模や取り組みにより異なり、一定の要件を満たすことで助成を受けられます。
受給までの流れ
本助成金の受給までの流れは、コースにより異なります。
【正社員化支援に関するコース】
- キャリアアップ計画を作成し、提出をする
- 正社員への転換規定がない場合は、就業規則を改定する
- 就業規則に基づいて正社員化を実施する
- 正社員転換後、6ヶ月分の賃金を支払い、転換前6ヶ月と比べて3%以上の賃金増額を実施する
- 賃金支払い後の翌日から2ヶ月以内に支給申請を行う
参考:キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)|厚生労働省
【処遇改善支援コース】
- キャリアアップ計画を作成し、提出する
- 賃金規定の改定や社会保険適用などの取り組みを実施する
- 取り組み後、6ヶ月分の賃金を支払う
- 支給申請を行う
参考:キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)|厚生労働省
助成金は受給要件を満たした場合に支給されるため、上記の流れに沿って申請しましょう。
4. トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、職業経験が不足し、就職が困難な求職者を、無期雇用への移行を前提に一定期間試用雇用する事業主に対し、助成する制度です。求職者の早期就職を促進するとともに、企業の雇用機会の創出を目的としています。
トライアル雇用の期間は原則3ヶ月間で、期間中に求職者の適性や能力を見極めたうえで、本採用の可否を判断できます。
対象となる事業主
本助成金では、一定の要件を満たす求職者をトライアル雇用として採用した事業主が対象です。対象の求職者は以下のとおりです。
- 無期雇用を希望し、トライアル雇用に同意していること
- 週30時間以上の勤務を希望していること
- ハローワークまたは民間職業紹介機関に求職申込をしていること
- 紹介日前に以下のいずれにも該当しないこと
- 期間の定めのない雇用契約で、フルタイム労働をしている
- 週30時間以上の事業運営や役員業務を行っている
- 現在トライアル雇用期間中である
- 以下のいずれかに該当していること
- 過去2年以内に2回以上離職・転職を繰り返している
- 1年以上就労経験がない
- 妊娠・出産・育児で離職し、1年以上就労していない
- 1968年4月2日以降生まれで、個別支援を受けている
- 特別な就職支援が必要と判断される
参考:トライアル雇用助成金リーフレット(事業主向け)|厚生労働省
上記の条件を満たす求職者を雇用した事業主が、トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の対象となります。
支給額
本助成金は、支給対象者1人あたり月額4万円が支給されます。対象労働者が母子家庭の母または父子家庭の父の場合、月額5万円となります。
助成を受けるには、事前にハローワークや地方運輸局、職業紹介事業者にトライアル雇用求人を提出し、紹介を受けた求職者を原則3ヶ月の有期雇用が必要です。一定の要件を満たすと助成金が支給されます。
受給までの流れ
本助成金の受給までの流れは、以下のとおりです。
- トライアル雇用開始から2週間以内に実施計画書をハローワークに提出する
- トライアル雇用終了日の翌日から2ヶ月以内に、事業所を管轄するハローワークまたは労働局に支給申請書を提出する
- 申請内容が確認され、支給対象者の条件に応じて助成金が支給される
ハローワークに実施計画書を提出する際は、雇用計画の条件が確認できる書類を添付しましょう。上記の流れを完了することで、助成金が支給されます。
厚生労働省が提供する外国人雇用のための支援策
厚生労働省は、外国人を雇用する事業者向けにさまざまな支援策を提供しています。適切な雇用管理を促進し、企業と外国人労働者双方にとって働きやすい環境を整えることが目的です。以下では、各支援策について具体的に解説します。
外国人雇用管理アドバイザー
外国人雇用管理アドバイザーは、外国人労働者を雇用する事業主が適切な雇用管理をできるよう指導・援助する制度です。
厚生労働省の「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」に基づき、専門家が事業所を訪問し、適切な雇用管理に関するアドバイスを行います。申込はハローワークで受け付けており、訪問日程を調整のうえアドバイザーが派遣されます。
相談料は無料で、企業の負担なく利用できることが特徴です。
外国人労働者の人事・労務に役立つ支援ツール
厚生労働省は、外国人労働者の人事・労務管理に役立つ3つの支援ツールを提供しています。
ツール名 | 詳細 |
---|---|
労務管理のポイント・例文集 | 全9カテゴリーにわたり、実際に想定される場面のポイントや例文、図表を掲載している。入社時の労働条件説明やオリエンテーションでの質疑応答で活用できる。 |
雇用管理に役立つ多言語用語集 | 労働・社会保険関連の約420語をやさしい日本語と9ヶ国語で解説している。就業規則の説明時に、理解しにくい用語を簡単に翻訳できる。 |
モデル就業規則(やさしい日本語版) | 外国人社員向けの就業規則作成に役立つ資料。 |
参考:外国人の方に人事・労務を説明する際にお困りではないですか?|厚生労働省
上記のツールをうまく活用することで、外国人労働者との円滑な雇用管理が可能になります。
外国人雇用の助成金を利用する際の注意点
外国人雇用に関する助成金を利用する際は、注意点があります。助成金ごとに対象要件や申請手続きが異なり、適切な雇用管理が必要です。不備による不支給を防ぐため、以下では各注意点を解説します。
助成金は後払いである
助成金は、原則として後払いでの支給です。種類により振込時期が異なり、一括で支給される場合もあれば、年に一度申請が必要な場合もあります。
支給を受けるには、定められた取り組みを実施し、実績が確認・認定される必要があります。不備があったり、条件を満たしていなかったりする場合は支給されないため、適切な対応を行うことが重要です。
計画的に進めることで、助成金が有効活用できます。
実態と異なる書類等による受給は不正受給となる
助成金の申請で実態と異なる書類を提出すると、不正受給となり犯罪にあたります。事実と異なる内容を申請した時点で不正受給とみなされ、書類の偽造や公金の不正受給など重大な違反となります。
不正が発覚した場合、助成金は支給されず、すでに受け取った場合は返還を求められるため注意が必要です。さらに、悪質な場合はすべての雇用関係助成金が今後3年間支給停止となるため、適切な手続きが重要です。
助成金を利用する際は、ルールを守り正しく申請しましょう。
外国人雇用の際は助成金をうまく活用しよう
外国人雇用において助成金制度を賢く活用すれば、採用や研修にかかる費用を大幅に削減できます。最新の支給条件や申請手続きのポイントを正確に把握し、適切な対策を講じることで、企業のグローバル競争向上につなげられます。
助成金を活用する際は、受給対象や申請方法を確認し、適用かどうか確認したうえで利用しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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