• 更新日 : 2025年9月2日

給与計算の時間短縮方法を解説!ツールの選び方も紹介

給与計算は、月末から月初にかけて勤怠集計や控除計算を短期間で正確に処理する必要があり、担当者に大きな負担がかかります。本記事では、そんな煩雑な業務を根本から見直し、時間を短縮する方法をご紹介します。

勤怠の自動集計から、給与ソフト連携、明細電子化、さらに外部委託の選択肢まで、自社に合った最適な改善策が見つかるでしょう。

給与計算の時間を短縮する7つの方法

給与計算の効率化は、部分的な改善ではなく、業務プロセス全体を見直すことが重要です。ここでは、時間短縮に効果を発揮する7つの具体的な方法をご紹介します。

1. 勤怠管理システムで集計を完全自動化する

特に効果的な時間短縮方法の一つが、勤怠管理システムの導入です。ICカードやスマートフォンアプリなどで打刻された勤怠データは、システムがリアルタイムで自動集計します。

タイムカード自動計算機能により、労働時間や残業代などが正確に算出され、手作業による集計と入力のプロセスそのものをなくせます。

2. アラート機能で打刻漏れ・申請不備を未然に防ぐ

近年の勤怠管理システムの多くは、打刻漏れや申請内容の不備があった場合に、従業員本人や管理者に自動で通知するアラート機能を備えています。

締め日になってからまとめて確認・修正するのではなく、発生したその場で対応を促すことで、月末の煩雑な確認・修正作業から解放されるでしょう。

3. 給与計算ソフトで計算を一元管理する

勤怠管理システムと連携可能な給与計算ソフトを導入すれば、給与計算プロセス全体をシームレスに繋げられます。

自動集計された勤怠データを取り込み、あらかじめ設定した情報に基づき、総支給額から控除額、手取り額までを自動で算出します。複雑な計算をシステムに任せることで、手計算による計算間違いや転記ミスといったヒューマンエラーを大幅に削減します。

4. 給与明細の電子化で印刷・封入・配布の手間を削減する

給与明細の電子化によりWeb上で従業員が自身の明細を確認できるようにすれば、紙の印刷、封入、郵送といった作業とコストを大幅に削減できます。

ペーパーレス化により、保管場所や紛失リスクの問題も同時に解決するでしょう。ただし、クラウド障害やサイバー攻撃への対策が新たに必要です。

5. 振込データ連携で銀行振込を効率化する

給与計算ソフトから、全銀フォーマットに対応した振込データ(FBデータ)を出力できる機能も重要です。このデータをインターネットバンキングにアップロードするだけで、全従業員への振込予約が一括で完了します。

振込金額を手入力する必要がなくなり、金額間違いのリスクと作業時間を大幅に削減できます。ただし、金融機関ごとに締切日や残高条件が異なるため、事前に確認しておきましょう。

6. タイムカードのアナログ業務をデータ化する

全面的なシステム移行が難しい場合でも、タイムカードスキャンデータ化でアナログ業務を効率化できます。

近年の多くのタイムカードのスキャン・読み取りアプリは、AI-OCR技術の進化により高い精度で打刻時間を読み取り、自動でデータ化が可能です。

これにより、手入力の時間を大幅に削減できるでしょう。ただし、誤読の可能性を前提とした目視での最終確認は依然として重要です。

7. 専門家(アウトソーシング)に任せて業務自体をなくす

社内での対応に限界を感じる、あるいは他の重要な業務にリソースを集中させたい場合は、給与計算業務そのものを外部に委託するアウトソーシングも一つの選択肢です。

社会保険労務士などの専門家は、複雑な計算や法改正にも対応してくれます。コストは発生しますが、担当者の負担を少なくし、確実性を担保できるという大きなメリットがあります。

そもそも給与計算業務に含まれる主な業務内容とは?

給与計算と一言でいっても、その業務は多岐にわたります。時間短縮の方法とあわせて、どのような業務が含まれるのかを正確に把握しておくことが重要です。一般的に、給与計算は以下の流れで行われます。

  • 勤怠データの集計:
    タイムカードや勤怠システムから、各従業員の労働時間、残業時間、休日出勤、欠勤などのデータを収集・集計する。
  • 総支給額の計算:
    基本給に残業手当、役職手当、通勤手当などの各種手当を加算し、総支給額を算出する。
  • 控除額の計算:
    健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料といった社会保険料や、所得税、住民税などの税金を計算し、控除額を算出する。
  • 差引支給額の決定:
    総支給額から控除額を差し引き、従業員に実際に支払われる手取り額を確定する。
  • 帳票作成と明細発行:
    労働基準法(第107~109条)で作成・保存が義務付けられている法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)を作成し、従業員一人ひとりへの給与明細を発行する。
  • 納付・振込:
    確定した給与を各従業員の口座へ振り込み、給与天引きした社会保険料や税金を納期限までにそれぞれの機関へ納付する。

これらの業務を毎月、全従業員分について正確に行う必要があるため、多くの時間と労力がかかってしまうのです。

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

手作業の給与計算が抱える3つのリスク

給与計算に時間がかかるという問題は、単に非効率ということだけにとどまりません。放置することで、企業経営に影響を及ぼす3つの重大なリスクを内包しています。

1. 人為的ミスによる信頼の失墜

手作業での転記や計算には、ヒューマンエラーがつきものです。どんなに注意深く確認しても、入力ミスや計算間違いをする可能性はゼロではありません。

給与の金額間違いは、従業員の生活に直接影響を与えるため、たった一度のミスが会社への信頼を大きく損なう原因となり得ます。

2. 業務の属人化とブラックボックス化

給与計算が特定の担当者しかできない状態は、非常に危険です。その担当者が急な病気で休んだり、退職してしまったりした場合、業務が完全に停止してしまう恐れがあります。

一度属人化してしまうと、マニュアルの作成が難しく、業務プロセスがブラックボックス化しやすい点もデメリットです。

3. 法改正への対応漏れとコンプライアンス違反

定期的に行われる社会保険料率の変更や労働関連法の改正に、手作業で正確に対応し続けるのは簡単ではありません。対応が漏れれば、追徴課税や延滞金といった金銭的なペナルティだけでなく、コンプライアンス違反として企業の社会的信用を傷つける事態に発展する恐れもあります。

自社に合った給与計算ツールの選び方

時間短縮のためにツール導入を決めた後、最も重要なのが「自社に合ったシステムを選ぶ」ことです。ここでは、導入検討時に必ず確認すべき5つのチェックポイントを解説します。

1. 提供形態はクラウド型かオンプレミス型か

給与計算システムには、インターネット経由で利用する「クラウド型」と、自社サーバーにインストールする「オンプレミス型」があります。法改正への自動対応や導入コストの低さから、現在はクラウド型が主流です。

一方、オンプレミス型はカスタマイズ性が高いですが、保守・運用コストがかかります。特別な事情がない限り、クラウド型がおすすめです。

2. 料金体系は定額制か従量課金制か

クラウド型の料金体系は、主に月額固定の「定額制」と、従業員数に応じた「従量課金制」に分かれます。従業員数の変動が少ない場合は定額制、パート・アルバイトの増減が頻繁な場合は従量課金制がコストを抑えやすいでしょう。

初期費用やオプション料金も比較し、トータルコストで判断することが重要です。

3. 機能は自社の就業規則に対応できるか

フレックスタイム制や変形労働時間制など、自社の複雑な就業規則にシステムが対応できるかは必ず確認しましょう。

無料トライアル期間などを活用し、実際に自社の勤務パターンで給与が正しく計算されるかを試すのが最も確実です。

4. 勤怠・会計ソフトとの連携はスムーズか

すでに利用している勤怠管理システムや会計ソフトがある場合、それらとスムーズにデータ連携できるかは業務効率を大きく左右します。

公式サイトで連携可能なソフトを確認するか、CSVファイルでのデータ取り込みに対応しているかなどを事前にチェックしましょう。

5. 導入後も安心して相談できるか

導入時の設定や運用開始後に疑問が生じたとき、迅速かつ的確なサポート体制が整っているかどうかは大きなポイントです。

電話やメール、チャットでの問い合わせ窓口が整備されているか、マニュアルやFAQは充実しているかなど、サポート体制の手厚さを事前に確認しておくことで、安心してシステムを運用できます。

給与計算システム導入の費用対効果

システム導入を検討する上で、コストは最も重要な判断材料の一つです。しかし、単に料金だけでなく、システム導入によって得られるリターン、つまり費用対効果で考えることが重要です。

手作業を続けることで発生する見えないコストの内訳

現状維持が最も安価だと考えがちですが、手作業には多くの見えないコストが潜んでいます。担当者が集計や入力、確認作業に費やす時間そのものが最大の人件費です。

さらに、ミスが発覚した際の修正作業、給与明細の再発行、振込の組戻し手数料、そして何より担当者の心理的負担や本来取り組むべき他の業務が停滞する機会損失も、企業にとっては大きなコストといえます。

システム導入費用の相場と料金体系の比較ポイント

クラウド型の給与計算システムは、月額制で提供されるのが一般的です。料金体系は、従業員1人あたり月額300円~800円程度の「従量課金制」や、一定の従業員数まで固定料金の「プラン制」が主流です。

比較する際は、月額料金だけでなく初期費用の有無やオプション機能の追加料金、サポートの料金体系まで確認しましょう。「安かろう悪かろう」で失敗しないためにも、自社の必須要件を満たすことを最優先に考えるべきです。

給与計算の時間短縮は自社にあった方法で検討しよう

本記事では、給与計算の時間を短縮するための実践的な方法と、その背景にある課題、システム導入のポイントなどについて幅広くご紹介しました。

日々の業務に追われ、つい後回しになりがちな給与計算ですが、改善の余地はあります。そして、その改善は単なる時間短縮にとどまらず、ミスの削減や従業員の信頼向上、さらには経営全体の生産性向上にもつながっていきます。

完璧な解決策は一つではありませんが、「自社に合った方法を見つけ、着実に実行する」ことが何より大切です。まずは小さな一歩から。無料ツールの導入やシステムの比較検討、資料請求といった行動から始めてみてください。自社に合った適切な方法で、給与計算の悩みを軽くしましょう。


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