- 更新日 : 2026年3月25日
中小企業のモデル退職金はどのくらい?中退共制度を利用する退職金規程の作成例も紹介【テンプレート付き】
中小企業の定年退職におけるモデル退職金は、業種によりおよそ1,000万円〜2,000万円弱が目安とされています。
- 支給額は業種や企業規模、勤続年数で大きく変動する傾向がある
- 退職金が発生する最低勤続年数は「3年」とされるケースが一般的
- 制度導入時は「中退共」やひな形を活用するとスムーズに進められる
Q:自社のみで資金を用意するのが難しい場合は?
A:国が助成する「中退共(中小企業退職金共済制度)」の活用が検討できます。掛金は全額非課税となるため、本記事の規程作成例を用いれば効率的な導入が可能です。
中小企業で退職金制度を新しく導入する場合、退職金規程を作成し、従業員に支払う退職金の金額を定める必要があるでしょう。
しかし、はじめから規程を作成するのではなく、すでに用意されたひな形を利用して自社に最適化した方が、効率よく作成できます。
当記事では、中小企業のモデル退職金について、業種別および勤続年数別に紹介します。また、中小企業退職金共済制度を利用する際の退職金規程のひな型も一部抜粋して掲載します。
これから退職金制度を導入する企業の代表者の方や実務担当の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
中小企業のモデル退職金相場はいくら?
中小企業の業種別モデル退職金は、金融業・保険業が最も高く(約1,940万円)、建設業やサービス業は低めの傾向(約900万円台)にあります。
モデル退職金とは、学校卒業後すぐに入社し、標準的な能力と成績で勤務し続けたと仮定した場合のシミュレーション額(満額)を指します。 これは、業種ごとの収益構造や利益率、人材流動性の違いが退職金の支給水準に大きく影響しているためです。
東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」によると、大卒従業員が定年退職した際(※自己都合減額をしない会社都合と同等の満額水準)の業種別退職金額は以下の通りです。
業種別の退職金相場(大卒・定年退職時の会社都合)
| 業種名 | 中小企業の退職金額(万円) |
|---|---|
| 調査産業計(平均) | 1,149.5 |
| 建設業 | 929.6 |
| 製造業 | 1,107.6 |
| 運輸業,郵便業 | 938.3 |
| 卸売業,小売業 | 1,239.0 |
| 金融業,保険業 | 1,940.4 |
| 生活関連サービス業,娯楽業 | 1,054.4 |
| サービス業 | 969.1 |
出典:東京都 産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」
同じ中小企業であっても、属する業界によって退職金の相場には最大で約2倍の開きがあります。自社の退職金規程を見直す際は、全体の平均値だけでなく、同業他社の支給水準を一つの目安とすることが重要です。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
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勤続年数や退職理由で中小企業の退職金はどう変わる?
退職金の支給額は勤続年数が長くなるほど増加し、基本的には「自己都合退職」よりも「会社都合退職」のほうが手厚く支払われます。
企業は長年自社に貢献した従業員へ報いるよう制度設計をしており、かつ会社都合の場合は次の転職先が決まるまでの生活補償的な意味合いが含まれるためです。
中小企業における大卒従業員の退職金平均推移(調査産業計)を比較すると、以下のようになります。
勤続年数・退職理由別の退職金相場
| 勤続年数 | 自己都合退職(万円) | 会社都合退職(万円) |
|---|---|---|
| 3年 | 21.5 | 30.4 |
| 5年 | 43.2 | 57.4 |
| 15年 | 209.3 | 255.9 |
| 25年 | 507.3 | 615.6 |
| 30年 | 750.7 | 776.2 |
| 定年 | – | 1,149.5 |
出典:東京都 産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」
入社数年の早期離職では支給額が少なく、勤続15年〜25年の中堅層から大きく跳ね上がるのが特徴です。また、すべての勤続年数において会社都合のほうが高額ですが、30年を超えるような長期勤続になると自己都合と会社都合の金額差はほとんどなくなり、定年退職時には1,000万円を超える水準に達する傾向にあります。
学歴別(大卒・高卒など)の退職金水準の違い
退職金の金額は、大卒の従業員が最も高く、次いで短大・高専卒、高卒の順に支給水準が低くなる傾向があります。
多くの企業では「退職時の基本給」をベースに退職金を算出(基本給連動型)しており、入社時の初任給やその後の昇格スピードによる基本給の差が、そのまま退職金に反映されるためです。
学歴ごとの支給額を検討する際は、高卒採用者が定年まで勤め上げた場合の勤続年数(約42年)と、大卒採用者の勤続年数(約38年)の違いも考慮し、企業への貢献度をどのように評価するかを規程に落とし込む必要があります。
企業規模別(従業員数)に見る退職金の傾向
同じ中小企業でも、従業員数が多く規模が大きい企業ほど、退職金の平均額が高く、制度の導入率も高い傾向にあります。 企業規模が大きいほど資金力に余裕があり、中退共(中小企業退職金共済制度)などの外部積立を積極的に活用して、福利厚生を充実させやすいためです。
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、企業規模別の退職給付制度(退職金制度)の導入率は以下のようになっています。
- 1,000人以上:90.1%
- 300〜999人:88.8%
- 100〜299人:84.7%
- 30〜99人:70.1%
このように、企業規模によって退職金事情には明確な違いが見られます。
- 従業員10〜49人規模の企業: 退職金制度自体を設けていないケースが約3割にのぼり、支給額も控えめになる傾向があります。
- 従業員100〜299人規模の企業: 8割以上の企業が制度を導入しており、大企業に準ずる手厚い退職金制度を整備していることが多く、支給相場も中小企業の平均値を上回ります。
自社の従業員数や今後の採用計画と照らし合わせ、無理なく持続可能な退職金制度を構築することが求められます。
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退職金の受給に必要な勤続年数は?
退職金を支給する勤続年数は、企業により自由に決められます。
中小企業において、自己都合退職と会社都合退職のうち、それぞれ勤続年数が最低何年で受け取れる設定になっているかは下記のとおりです。
| 勤続年数 | 会社都合(%) | 自己都合(%) |
|---|---|---|
| 1年未満 | 12.4 | 4.5 |
| 1年以上2年未満 | 18.3 | 12.7 |
| 2年以上3年未満 | 8.0 | 9.3 |
| 3年以上4年未満 | 45.9 | 57.0 |
| 4年以上5年未満 | 2.5 | 2.8 |
| 5年以上 | 9.9 | 12.0 |
会社都合による退職も自己都合による退職も、最低勤続年数を3年以上と定めている企業が非常に多いことがわかります。
会社都合による退職の割合は45.9%で、自己都合による退職の割合は57%と、半数近くの企業が最低ラインとして3年を定めています。
しかし、退職金が発生する勤続年数の最低ラインは企業ごとに決められるため、下記のポイントを考慮して決めるとよいでしょう。
- 企業の業績
- 企業への貢献度が高いといえる勤続年数
- 従業員のモチベーション向上につながる年数
中小企業退職金共済制度とは?
中小企業退職金共済制度とは、中退共制度ともよばれる制度で、自社のみで退職金の用意が難しい場合に検討したい退職金制度です。
複数の中小企業による相互共済と国からの援助で退職金が用意できる仕組みで、自社のみで積み立てるよりも負担の小さい掛金で退職金を用意できます。
加入するには、業種別に下記の条件を満たす必要があります。
| 業種名 | 加入条件 |
|---|---|
| 一般業種(製造等) | 300人以下 または 資本金・出資金が3億円以下 |
| 卸売業 | 100人以下 または 資本金・出資金が1億円以下 |
| サービス業 | 100人以下 または 資本金・出資金が5000万円以下 |
| 小売業 | 50人以下 または 資本金・出資金が5000万円以下 |
出典:厚生労働省 中小企業退職金共済制度(中退共制度)加入条件
原則、企業に在籍しているすべての従業員を加入させる必要があります。しかし、下記に当てはまる人は、加入させなくてもよいことになっています。
- 一定の季節や期間のみ雇用する従業員
- 試用期間中の従業員
- 短時間労働者
- 休職期間中の従業員
- 定年などで雇用期間の終了がわかっている従業員
また、下記に該当する人は、加入できません。
- 役員(兼務役員除く)
- 既に中退共制度に加入している方
- 特定業種退職金共済制度に加入している方
- 被共済者になることに反対の意思を表明した従業員
- 小規模企業共済制度に加入している方
掛金は、必要経費として全額非課税にでき、退職金を自社で運用する手間がないなどのメリットがあるため、加入条件に当てはまっている場合は積極的に活用しましょう。
中小企業退職金共済制度を利用する場合の退職金規程の作成例
従業員を常時10名以上雇用する事業場がある企業は、退職金制度を新しく導入したり変更したりする場合、就業規則を変更、もしくは別に退職金規程を作成して管轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。
中小企業退職金共済制度を利用する場合は、企業のみで退職金を積み立てて用意するわけではないため、既存の就業規則または退職金規程に追加の記載または変更が必要です。
中小企業退職金共済制度のみを利用して退職金を用意する場合と、制度の利用と自社での積立てと併用する場合それぞれの、退職金規程の作成例を紹介します。
中退共からのみ退職金を支給する場合
中小企業退職金共済制度のみを利用して退職金を用意する場合の作成例として、「独立行政法人 勤労者退職金共済機構」が公開しているひな型の一部抜粋を記載します。
利用の際は下記一部抜粋の内容を参考に、リンク先のひな形の内容も確認のうえ休職者の場合や退職金の支払期日など、自社での取り扱いを検討する必要があります。
※別表の掛金は、賃金の5%を設定した金額です。
- 第1条:
従業員が退職したときは、この規程により退職金を支給する。前項の退職金の支給は、会社が各従業員について独立行政法人勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(以下「機構・中退共」という。)との間に退職金共済契約を締結することによって行うものとする。 - 第2条:
新たに雇い入れた従業員については、試用期間を経過し、本採用となった月に機構・中退共と退職金共済契約を締結する。 - 第3条:
退職金共済契約の掛金月額は、別表のとおりとし、毎年○月に調整する。
【別表】
| 賃金 | 掛金月額 |
|---|---|
| 16万円未満 | 8,000円 |
| 16~20万円未満 | 10,000円 |
| 20~24万円未満 | 12,000円 |
| 24~28万円未満 | 14,000円 |
| 28~32万円未満 | 16,000円 |
| 32~36万円未満 | 18,000円 |
| 36~40万円未満 | 20,000円 |
| 40万円以上 | 22,000円 |
出典:独立行政法人 勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部
社内制度と併用する場合
中小企業退職金共済制度と社内の準備金で退職金を用意する場合の作成例として、厚生労働省が公開しているひな型の一部抜粋を記載します。
中小企業退職金共済制度のみを利用する場合同様に、ひな型を利用する際は下記一部抜粋を参考に、休職者の場合や退職金の支払期日など、自社に当てはめたうえで取り扱いを検討しましょう。
- 第1条:
従業員が退職したときは、この規程により退職金を支給する。2 前項の退職金の支給は、会社が各従業員について勤労者退職金共済機構・中小企業退職金共済事業本部(以下「機構・中退共本部」という。)との間に退職金共済契約を締結することによって行うものとする。 - 第2条:
新たに雇い入れた従業員については、試用期間を経過し、本採用となった月に機構・中退共本部と退職金共済契約を締結する。 - 第3条:
退職金共済契約は、従業員ごとに、その基本給の額に応じ、別表に定める掛金月額によって締結し、毎年○月に掛金を調整する。 - 第4条:
退職金の額は、掛金月額と掛金納付月数に応じ中小企業退職金共済法に定められた額とする。 - 第5条:
従業員が懲戒解雇をされた場合には、機構・中退共本部に退職金の減額を申し出ることがある。
引用:厚生労働省 中小企業退職金共済制度(中退共制度) 掛金の決め方/規程の作り方
退職金制度の導入と併せて知っておきたい退職手続きの実態
退職手続きにおけるトラブルの傾向
過去の統計データとひな形を利用して効率よく退職金制度を導入しましょう
中小企業における退職金は、業種別により金額差があり、大企業と比較した際は、さらに大きな金額差が見られました。
また、勤続年数によっても退職金の金額が異なります。自己都合による退社であれば大きな差は見られませんが、会社都合の場合は勤続年数が多いほど退職金の金額が多いことがわかりました。
退職金制度を導入する際、常時雇用する従業員が10名以上の事業場がある企業では、就業規則を変更、もしくは別に退職金規程を作成して管轄の労働基準監督署へ届ける必要があります。
退職金規程を作成する際にはひな形が用意されているため、自社に当てはめて効率よく作成しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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