- 更新日 : 2023年9月14日
合同会社の資本金はいくら必要なのか
平成18年5月1日に施行された会社法によって、会社を設立する際の資本金の制限がなくなりました。それまで株式会社が1,000万円以上、有限会社が300万円以上という規制が撤廃されたため、1円からの資本金でも会社の設立は可能です。しかし、資本金1円で会社をスタートさせるのは現実的ではありません。
合同会社は会社設立の手順が簡略化されましたが、「1円あれば誰でも簡単に会社が設立できる」という趣旨のものではありません。
資本金は、設立した会社を運営するために欠かせない元手です。事業内容や業態によって必要な元手は異なりますが、資本金に関して共通した注意事項があるので、要点をピックアップしていきます。
合同会社の最低資本金
合同会社の場合、どの程度の資本金が適当なのかを考えてみましょう。
まず、合同会社では、会社を構成する『社員』がすべて出資者でなければなりません。ここでいう『社員』とは、一般でいう従業員とは異なります。『社員』=『出資者』となります。個人事業主が法人化するために合同会社を設立する場合には、社員が1人であれば、1円を出資して会社を設立することは可能です。
2名の場合は各1円の出資で合計2円という具合に、一緒に事業を担う人数分増えていくことになります。
資本金の基準
合同会社は『社員』が出資するという形を取らなければならないため、資本金を多くすることは『社員』への負担が増すことを意味します。
また、資本金額を決定することは、設立する会社が明確な事業計画を考える際の基礎となるものです。事業計画を基に、どの程度の資本金が必要なのかを検討して下さい。資本金は金融機関に対する信用にも関わりますので、慎重に判断しましょう。
開業で必要になる主な費用
開業の際に必要となる支出をまかなえることが資本金の大きな役目と言えます。支出が必要となる主なものをみてみましょう。
・事務所や店舗を設置する費用:会社の住所地になる事務所や、事業を展開する店舗などを借りる際の敷金や保証金ほか、賃貸借契約に必要な支出。
・設備や備品をそろえるための費用:事務所物件では入居前に内装工事が必要なことも。会社用にそろえる机やイス、電話、事務用品、名刺、名札など。
・運転資金:事業の運営に必要な資金。人件費や家賃など固定費:社員やパート・アルバイトなどへの人件費、現金で支払う原材料や商品の購入代など。さらには、事務所・店舗の家賃、水道光熱費、電話料金、郵便料金、インターネット維持費用など。
注意が必要な資本金額による制限
会社法では資本金1円であっても会社を設立することができますが、事業内容によってはこれ以外の規制によって不都合が生じる場合があります。
なかでも許認可事業では、資本金の要件をクリアしていなければ許認可を受けられません。せっかく会社を設立してもそのままでは事業を始められない事態もありえるのです。
資本金要件がある主な許認可事業は、一般建設業(自己資本が500万円以上)や一般労働者派遣事業(2,000万円×事業所数)です。また、一般貨物自動車運送事業では許認可の申請直前に、規定の必要資金額を自己資金額が上回っている預金残高証明書やそれに付随する書類が必要になります。
許認可は業種や業態によって細かく規定されていますので、設立後の事業に支障をきたさないよう、事前に業界団体や申請先へ問い合わせるようにしてください。
資本金と登録免許税
合同会社の設立登記の際に納める登録免許税は、資本金額によって異なります。具体的には、資本金額に1,000分の7を掛けた金額ですが、この税額が6万円に満たないときは、6万円となっています。
資本金と消費税納税
新規に設立した法人については、1期目と2期目には消費税課税の基準となる基準期間が存在しないことになります。したがって、特別な場合がなければ基本的に納税義務は免除となります(1期目の半年間の課税売上額または給与の支払い額によっては2期目から課税あり)。
ただし、事業を開始した際の資本金額が1,000万円以上であれば、この免除は適用されません。
資本金と法人住民税
事業所所在地の地方公共団体が徴収する税金に法人住民税があります。法人税額に応じた税額と均等割額の合計が課せられますが、赤字で法人税額の課税所得がゼロで計算される場合でも法人住民税均等割額だけは払わなければなりません。
この均等割額の税率には従業員数50人以下と50人超の区分のほかに、資本金額が1,000万円以下、1,000万円超〜1億円以下、1億円超〜10億円以下、10億円超〜50億円以下、50億円超の区分があり、それぞれ均等割税額が異なります。
参考記事
よくある質問
1円からの資本金でも会社の設立は可能?
1円からの資本金でも会社の設立は可能です。しかし、資本金1円で会社をスタートさせるのは現実的ではありません。詳しくはこちらをご覧ください。
合同会社が資本金の金額を決めるポイントは?
事業計画を基に、どの程度の資本金が必要なのかを検討します。開業で必要になる主な費用を確認しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
合同会社が資本金の金額を決めるときに確認しておくべき税制度は?
登録免許税、消費税納税、法人住民税は資本金と大きく関係します。確認しておくと良いでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
合同会社の関連記事
新着記事
借金のある個人事業主が法人化するには?債務引受の流れや仕訳を解説
個人事業主時代にできた借金は、法人化のタイミングで会社に引き継いで債務引受をするか、個人で返済し続けるかのいずれかの方法を選択する必要があります。 この記事では借金を個人で返済する場合と法人に引き継ぐ場合の違い、債務引受の種類、手続きの手順…
詳しくみる古物商開業に許認可は必要?古物商許可申請の流れや開業準備のまとめ
古物商の開業にあたり、古物商許可が必要な取引と必要ない取引があります。開業する際は、必要な取引が該当するかよく確認しておくことが大切です。今回は、古物商許可証が必要なケースや不要なケース、許可申請の流れ、古物商開業の流れについて解説します。…
詳しくみる個人事業主の法人化で合同会社を選ぶメリットは?手続きの流れをまとめて解説
合同会社を選択して法人化すれば設立費用を抑えられ、比較的自由度の高い経営が実現できるでしょう。個人事業主が法人化で合同会社を選ぶことには、このようにいくつかのメリットがありますが、その一方で注意点もあります。本記事で詳しく解説しますので、法…
詳しくみる法人化したときの役員報酬の決め方・ルールは?決定後の届出手続きも解説
「役員報酬」とは、法人の役員が会社から受け取る対価のことです。法人化後の経営者の収入として重要な位置づけとなり、従業員の給与とは異なるルールが適用されます。 個人事業主からの法人化、法人設立を検討している方に向けて、本記事では役員報酬の定義…
詳しくみる法人化するときに有限会社は新設できない?会社形態を選ぶポイントを解説
個人事業主からの法人化する際、「有限会社」を選択できません。整備法の施行によって新規で設立ができなくなっているからです。そのため、現在は株式会社や合同会社などの会社形態を選択して法人化する必要があります。 本記事では、法人化によって検討をす…
詳しくみる連帯保証人なしで創業融資を受けられる?日本政策金融公庫の制度などを解説
創業融資など事業に必要な融資を受ける際には連帯保証人を立てなければならないというイメージがあるかもしれませんが、利用する金融機関や融資制度によっては保証人がいらないこともあります。この記事では、連帯保証人なしで創業融資を受けられるケースにつ…
詳しくみる