- 更新日 : 2025年4月24日
厚生年金と国民年金の違い – 差額や切り替え方法
公的年金制度と言われるものには国民年金、厚生年金の2つの制度があります。それぞれ支払う保険料や受給できる額、手続き方法に違いがあります。今回は、この2つの年金制度の違いや国民年金と厚生年金の間で切り替えが発生した場合の手続き方法、保険料を両方支払うことになってしまった場合の対処方法などについて見ていきます。
目次
厚生年金と国民年金の違い
公的年金制度には、国民年金制度と厚生年金制度があります。本人や配偶者の仕事の仕方などによってどちらの年金制度に加入するかが決まります。まずは、国民年金と厚生年金それぞれの特徴と違いについて説明します。
国民年金とは
国民年金は日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての国民が加入する年金制度です。
基礎年金とも呼ばれており「2階建て」と言われる年金制度の1階部分に当たります。
日本で住民登録している外国人も国民年金に加入することになっています。
厚生年金とは
厚生年金は会社員や公務員が加入できる年金制度です。
アルバイトやパートタイマーの方でも一定の要件を満たした場合には厚生年金に加入することになります。
厚生年金は、「2階建て」の年金制度の2階部分に当たります。
厚生年金と国民年金の違いとは
厚生年金と国民年金の違いについては、下記の表で確認してみましょう。
厚生年金 | 国民年金 | |
対象者 | 会社員、公務員 (第2号被保険者) | 左記の第2号被保険者を除く20歳から60歳までの自営業者、学生、無職の人など (第1号被保険者、第3号被保険者) |
保険料 | 収入により異なる | 一律 |
保険料負担 | 会社と半額ずつ負担 | 加入者が全額を負担 |
最低被保険者期間 | 1か月 | 10年 |
支給開始年齢 | 65歳(生年月日によっては60歳) | 65歳 |
付加年金、国民年金基金 | 加入できない | 加入できる |
将来の受給額 | 収入と加入期間による | 加入期間に応じて一律 |
障害年金 | 障害等級1~3級の場合に支給 (3級に達していなくても支給される場合あり) | 仰臥位等級1~2級の場合に支給 |
遺族年金 | 生計を維持されていた妻、要件を満たした子供、夫、父母、孫、祖父母に支給 | 生計を維持されていた要件を満たした子供に支給 |
厚生年金と国民年金の受給額と保険料の計算方法と差額
次に、国民年金と厚生年金それぞれの保険料ならびに受給額について、計算方法と差額を確認していきましょう。
国民年金保険料の保険料額
国民年金の保険料はその全額を加入者が負担し、最低10年分の保険料を支払うことで受給資格を得られます(老齢年金の場合)。また、受給資格を得る期間には、納付を免除された期間の月数も含みます。
国民年金の1か月の保険料は16,590円(令和4年度)で、全ての加入者において保険料は一律となっています。しかし、その金額は毎年度、物価や賃金の変動を加味して調整されて改定されます。
※保険料改定率=前年度保険料改定率×名目賃金変動率
※名目賃金変動率=物価変動率×実質賃金変動率
厚生年金保険料の保険料額
厚生年金保険料は、毎月の給与を基にした金額(標準報酬月額)や賞与の金額(標準賞与額)から計算して求めます。
保険料の種類 | 厚生年金保険料額を求めるための計算方法 |
---|---|
毎月の厚生年金保険料の金額 | 標準報酬月額×厚生年金保険料率 |
賞与の厚生年金保険料の金額 | 標準賞与額×厚生年金保険料率 |
標準報酬月額は、1等級(88千円)から32等級(650千円)に分かれており、該当する標準報酬月額に厚生年金保険料率(18.3%)を掛け算して求めます。
厚生年金の保険料は標準報酬月額等によって決まるため、加入者により保険料が異なります。
また、厚生年金の保険料は加入者と会社で半額ずつ負担し、保険料は給料から控除して会社が国に納付する仕組みです。厚生年金は加入期間が最低1か月であっても保険料を支払っていれば受給資格を得ることができます。
厚生年金、国民年金の受給額
厚生年金ならびに国民年金の受給額については、下記の記事で説明していますので参照してください。
厚生年金と国民年金の差額
厚生年金と国民年金の納付した保険料と受給できる年金額については、これまで見てきたとおりです。
その差額については、受給開始当初は保険料の方が受給額より多いですが、受給期間が長くなればなるほど、その差は小さくなり、やがて保険料の金額より受給額の方が多くなります。
厚生年金と国民年金の切り替え方法・手続き
ここでは、厚生年金と国民年金の間での制度の切り替わりに関して、切り替え方法と手続きについて具体的に見ていきます。
国民年金から厚生年金への切り替え
国民年金に加入している自営業者、学生や専業主婦(夫)などの方が会社員や公務員として就職したときは厚生年金へ切り替える手続きが必要です。切り替えの手続きは会社が行うので、加入している方には特に必要な手続きはありません。手続きには基礎年金番号のわかる書類の提出が必要です。
就職先から基礎年金番号通知書などを提出するよう求められることがありますので、準備をしておきましょう。
厚生年金から国民年金への切り替え
逆に会社員や公務員の方など、厚生年金の加入者が自営業者やフリーランス、専業主婦(夫)などになったときには国民年金への切り替えが必要です。厚生年金から国民年金への切り替えの場合は「厚生年金から脱退する手続き」と「国民年金に加入する手続き」を行います。
厚生年金の脱退手続きは、勤務先だった会社や組織が行ってくれますが、国民年金への加入手続きは自身で行う必要があります。手続きは、退職日の翌日から14日以内に、住んでいるところの役所・役場で行います。
持ち物は、基礎年金番号通知書などの基礎年金番号がわかる書類、退職したことが分かる書類、免許証などの身分証明書が必要です。不足のないよう事前に電話などで確認しておきましょう。
厚生年金と国民年金の保険料を両方支払うケースはある?
国民年金の保険料を支払っていても、意図せず厚生年金保険料と重複して支払ってしまうケースもあります。保険料を両方支払うのはどのような場合なのか、その際の対処法と共に見ていきます。
保険料支払いの重複が起きる場合
重複が起こり得る場合としてまず考えられるのが、国民年金保険料を一定期間前納している場合です。国民年金の保険料を前納した期間中に就職した場合、前納期間の途中から厚生年金に加入することになるため重複が生じてしまいます。
保険料の支払いが重複したときはどうする?
国民年金保険料を前納している期間中に厚生年金保険料を納付してしまう重複納付が起きたときは、還付請求を行うことができます。
重複した場合には、年金事務所から「国民年金保険料過誤納額還付・充当通知書」が送付されてきます。この書類は国民年金と厚生年金の重複を通知する書類ですので、添付されている書類に必要事項を記入して郵送もしくは年金事務所へ提出します。この還付請求の手続きで払い過ぎた保険料を還付してもらうことができます。
手続き方法がわからないときは、お近くの年金事務所に相談してください。
年金の制度を正しく理解して将来に備えましょう
今回は、厚生年金と国民年金の制度やそれぞれの保険料、支給額の違いについて確認しました。また、厚生年金制度と国民年金制度の間での切り替え方法や保険料を重複して払ってしまった場合の対処法についても見てきました。
将来、正しい年金額が受給できるように、確認できるうちに年金制度について理解しておくことが重要です。正しい内容を理解して保険料の納付漏れや手続き忘れなどがないようにしましょう。
よくある質問
厚生年金と国民年金の違いについて教えてください
国民年金は日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての国民が加入する制度、厚生年金は会社員や公務員が加入する「2階建て」の制度です。この年金制度の1階部分を国民年金、2階部分を厚生年金と呼びます。詳しくはこちらをご覧ください。
厚生年金と国民年金の保険料と受給額について解説してください
厚生年金の保険料は給与・賞与の額により異なります。国民年金の保険料は一律の金額です。厚生年金の受給額は納付した保険料の額により、また、国民年金の受給額は納付した保険料の月数により異なります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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