- 更新日 : 2023年1月13日
個人事業主の国民年金は確定申告でいくら控除できる?厚生年金との違いも解説!

国民年金は、基本的に日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人が全員加入することになっている年金です。会社などに勤めている人は会社が加入する厚生年金などが加入者に代わって国民年金を負担しています。
そして、その年に支払った国民年金の保険料は確定申告で控除を受けることが可能です。
ここでは個人事業主について、国民年金保険料の控除の受け方のほか、前納したり、家族分の国民年金保険料を支払ったりした場合はどうなるのか?などについても詳しく解説します。
目次
個人事業主の国民年金はいくら控除可能?
個人事業主等が国民年金の保険料を支払った場合、原則としてその1年間に支払った保険料の合計金額を全額、社会保険料控除として控除できます。
社会保険料控除とは、健康保険や介護保険、国民年金や厚生年金などの保険料を支払った場合に受けられる控除のことです。個人事業主の場合は確定申告、サラリーマンでも家族の国民年金保険料を支払った場合は年末調整で控除を受けることができます。
社会保険料控除をはじめ、生命保険料控除、基礎控除などの所得控除後の所得を「課税所得金額」と言います。所得税はこの課税所得金額に税率を乗じて求めます。
そのため、支払いの全額が所得控除となる国民年金保険料を支払えば、節税につながります。さらに、この税額から「税額控除」を控除できる場合もあります。
国民年金と厚生年金の違いは?
ここで、国民年金と厚生年金の違いについて改めて解説をしておきます。日本の公的年金には、20歳以上のすべての人が加入する「国民年金」と会社員などが加入する「厚生年金」があります。この2つについて、異なる点と共通する点を説明します。
国民年金と厚生年金の違い
国民年金と厚生年金の違いとしては、まず加入者要件が異なります。
サラリーマンや公務員の配偶者で一定の人(第3号被保険者) | |
国民年金と厚生年金の主な違いは次のとおりです。
国民年金は、20歳以上〜60歳未満のすべての人に加入義務があります。老後は、老齢基礎年金として誰もが等しく受け取れる年金となります。年金として受給資格を得るためには、最低10年間保険を納める必要があります。この10年間とは、保険料の納付済期間と免除期間などを合算した期間です。
老齢基礎年金を満額受け取るためには、原則として保険料の納付月数が480ヶ月必要となります。国民年金の1ヶ月の保険料は令和4年度(令和4年4月~令和5年3月まで)で月額16,590円ですが、毎年改定されます。
一方、厚生年金は会社などに所属し、かつ要件を満たす人が必ず加入できる年金です。
日本の年金制度は二階建てとなっており、一階部分は国民年金であり、厚生年金は二階部分にあたる年金となり、国民年金に「上乗せして」支給される年金と言えます。したがって、厚生年金に加入している期間は、国民年金にも同時に加入していることになります。
厚生年金は、条件を満たすと自動的に加入する年金で、受給資格は最低1ヶ月の加入であり、老後に年金を受け取れます。厚生年金の1ヶ月の保険料は、その人の標準報酬月額等によって決まり、1人ひとり異なっていますが、保険料は会社と折半になっています。
国民年金と厚生年金の共通点
一方、国民年金と厚生年金に共通する点は以下のとおりです。
- 老後、亡くなるまでの年金を支給する
- 障害年金、遺族年金を支給する
- 将来の物価変動を予測して年金を支給する
国民年金も厚生年金も予測不可能な将来のリスクに対し、国民皆年金制度によって社会全体で備え、生涯を通じて保障を続けるために必要な制度と言えます。
厚生年金についての詳細は、こちらの記事をご参照ください。
国民年金で控除を受けるための必要書類
国民年金で控除を受けるためには、「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」が必要です。「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」は、年金事務所から毎年11月ぐらいに送付されてくるハガキのことです。(封書で送付されるA4版の控除証明書もあります。)
引用:令和4年 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書(ハガキ)の見方|日本年金機構
「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」には「納付済額」「見込額」「合計額」の3つが記載されていますが、最下段の赤文字の「合計額」が社会保険料控除の対象となる金額です。
「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」を紛失した場合は、年金事務所に再発行を依頼します。「ねんきんネット」のIDを取得している人は、「ねんきんネット」から再交付申請をすることができます。
参考:「ねんきんネット」による通知書再交付申請|日本年金機構
国民年金で控除を受けるための申告書の書き方
個人事業主が国民年金の控除を受けるためには、確定申告書に記載します。記入場所は、確定申告書の第二表の社会保険控除欄となります。社会保険の種類には「国民年金」、支払保険料には「社会保険料控除証明書」に記載されている金額を記入します。
国民年金だけでなく、国民健康保険などもあれば記入してすべての合計額を算出します。
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁、令和 年分の所得税及び復興特別所得税申告書を加工して作成
個人事業主が年金制度で節税するコツ
国民年金については、前納することで少しだけですが安くできます。また、所得税の節税策としては、iDeCoなどの活用をおすすめします。
国民年金保険料の2年前納制度を利用
国民年金保険料の2年前納制度とは、国民年金の保険料2年分をまとめて支払うことで、2年間で15,000円程度の保険料が割引になる制度のことです。
国民年金保険料の所得控除額は、その年に支払った保険料の全額です。そのため、国民年金保険料を2年前納すれば支払った年において、その2年分の保険料すべての所得控除ができます。もちろん、前納分を各年分の保険料として各年度において所得控除することもできます。
このほか、6ヶ月前納、1年前納もあり、現金払いの場合は年平均で約1.8%の割引となっています。
口座振替やクレジットカードでの支払いではそれぞれ割引される金額が異なるため、割引率も異なります。
2年前納制度の手続方法 ①口座振替
口座振替による前納は、「国民年金保険料口座振替納付(変更)申出書兼国民年金保険料口座振替依頼書」に記入し、金融機関か年金事務所に持参します。書式のダウンロードは、日本年金機構のサイトからできます。口座振替2年前納にすると、令和4年度においては15,790円の割引が適用されます。
2年前納制度の手続方法 ②クレジットカード
クレジットカードによる前納は、「国民年金保険料クレジットカード納付(変更)申出書」に記入し、年金事務所に持参又は郵送します。書式のダウンロードは、日本年金機構のサイトからできます。クレジットカード納付2年前納にすると、令和4年度においては14,540円の割引が適用されます。
2年前納制度の手続方法 ③現金
口座振替による前納は、「国民年金保険料口座振替納付(変更)申出書兼国民年金保険料口座振替依頼書」に記入し、金融機関か年金事務所に持参します。書式のダウンロードは、日本年金機構のサイトからできます。
家族分の国民年金を使って節税
配偶者や同居している親や兄弟、まだ就労していない学生や無職の子どもなど、納税者本人以外にもその納税者が納めている国民年金がある場合は、まとめて確定申告で社会保険料控除として所得控除することができます。ただし、生計を一にする配偶者その他の親族の保険料に限られます。
自営業やフリーランスが家族の国民年金も支払っている場合、日本年金機構から送付されてくる家族の「社会保険料控除証明書」を元に記入します。社会保険料控除の欄に家族の分の国民年金保険料の額をプラスして申告することで、節税効果が期待できるのです。
注意点としては、例えば配偶者の公的年金から徴収された社会保険料はその配偶者が支払ったものであるため夫の社会保険料控除とすることはできない点です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用
iDeCoは、個人型確定拠出年金のことで、自分で選んだ金融商品にて運用し、将来に備える私的な年金制度です。年金としての受取は原則60歳以降にできます。
iDeCoにおいて、支払った掛金は全額が所得控除の対象になり、受け取るまでは運用益が非課税となっていますので、節税に大いに貢献する制度と言えます。確定申告では、社会保険料控除ではなく、小規模企業共済等掛金控除を使います。
年金とは違い、自らの掛金を自ら運用した成果が将来の受取額となります。
国民年金保険料を支払って賢く節税しよう
1年間に支払った国民年金保険料は、社会保険料控除として所得から控除できます。確定申告などで申告することで納める税金の金額が安くなります。
また、2年前納制度を利用したり、家族の保険料を支払ったりしている場合はそれらの金額も控除になり、さらに節税につながります。国民年金保険料を支払っている場合は忘れずに申告をして、賢く節税しましょう。
よくある質問
個人事業主の国民年金はいくら控除可能?
国民年金保険料を支払えば、その支払いの全額について所得控除が可能となります。 詳しくはこちらをご覧ください。
国民年金と厚生年金の加入者の違う点は?
国民年金の加入者は、個人事業主や学生など(第1号被保険者)と、サラリーマンの配偶者など(第3号被保険者)となり、厚生年金の加入者は、サラリーマンや公務員など(第2号被保険者)です。 詳しくはこちらをご覧ください。
国民年金保険料の2年前納制度とは?
国民年金の保険料2年分をまとめて支払うことで、2年間で最大15,000円程度の保険料が割引になる制度のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。