- 更新日 : 2025年7月23日
給与明細の作成方法は?必要な項目や作り方を徹底解説!
給与明細を作成するにあたって必要な給与の計算は、まず勤務時間や残業時間を集計し基本給に残業手当や各種手当を加えます。そこから社会保険料や源泉所得税、住民税を控除し差引支給額を算出します。給与計算ソフトがあると効率的に作成できるでしょう。今回は給与明細の作成前に準備しておくものや、作成の手順などを解説します。
目次
給与明細はなぜ必要?
労働基準法に関する行政通達では、給与を口座振込の方法で支給する場合には「賃金の支払いに関する計算書」を交付することを求めています。労働時間や賃金などの労働条件の最低基準を定めた「労働基準法」において、給与明細の発行は義務付けられてはいませんが、行政通達を考慮すると発行すべきものだといえるでしょう。
給与明細を交付するのは会社の義務
所得税法第231条では給与から控除した金額を示す計算書と、支払明細などを発行しなければならない旨が定められており、一般的にはこれらを給与明細に記載し発行します。「所得税法」のなかで厳密に「給与明細」の発行を義務付けられているわけではありません。しかし第231条により、給与明細を発行しない場合、所得税法に違反する可能性があります。また、健康保険法第167条第3項、労働保険の保険料の徴収等に関する法律第32条第1項において、控除額を知らせることが義務付けられています。
上記の内容を踏まえると、従業員に対して給与明細を発行することは必須と捉えるべきでしょう。
アルバイトやパートも給与明細の交付対象者
給与明細は、給与を受け取るすべての人に発行しなければなりません。所得税法では、給与を支払う者(会社等)に対し、従業員に給与明細書を交付することを義務付けています。正社員やアルバイト・パートなど、雇用形態で異なることはありません。給与が発生したすべての従業員が交付の対象になります。
アルバイト・パートに給与明細を発行しない場合は所得税法違反となり、罰則が課せられるため注意してください。
給与明細に記載必須の項目
給与明細への記載が必須な項目としては、下記が挙げられます。
- 勤怠に関する項目
- 給与の支給に関する項目
- 給与から控除する項目
- 課税対象額
- 口座振込額
勤怠に関する項目とは出勤日数や欠勤日数、その月の労働時間などのことです。また、給与の支給に関する項目には基本給や残業手当、資格手当や通勤手当などの各種手当を記載します。通勤手当については、所得税が非課税となるため注意が必要です。
給与から控除する項目とは、下記のような税金や保険料のことです。
課税対象額は下記の計算式で算出します。
口座振込額は差引支給額とも呼ばれるもので、給与の支給額から上記の税金や社会保険料などを控除した金額です。
給与明細の作成前に準備しておくもの
給与明細を作成するにあたって準備しておくべきデータや書類は以下のとおりです。
- タイムカードなどの勤怠記録
- 健康保険・厚生年金保険の被保険者標準報酬決定通知書
- 住民税課税決定通知書
- 健康保険・厚生年金保険の保険料額表、雇用保険の保険料率表
- 源泉徴収税額表
それぞれの内容について解説します。
1.タイムカードなどの勤怠記録
前項の勤怠に関する項目のうち、出勤日数や労働時間などはタイムカードなどの勤怠記録をもとにします。タイムカードはタイムレコーダーにスキャンし出退勤の時刻を記録するものです。そのほか、生体認証やICカードを用いた勤怠管理システムを採用しているケースも多いでしょう。
2.健康保険・厚生年金保険の被保険者標準報酬決定通知書
健康保険・厚生年金保険の被保険者標準報酬決定通知書は、定時決定をおこなうと9月下旬頃に届く書類です。定時決定とは、標準報酬月額を決定する方法の1つです。毎年1回、4月から6月までの報酬月額を届け出て標準報酬月額を決定します。
なお、標準報酬月額は、健康保険や厚生年金保険の保険料や将来の老齢厚生年金額などを算出するときの計算基礎となる金額です。
被保険者標準報酬決定通知書には10月から翌年9月までの標準報酬月額が記載されており、10月支給分の給与からは新たな標準報酬月額で計算した社会保険料を控除します。
3.住民税課税決定通知書
住民税課税決定通知書は、毎年1月31日までに地方自治体に給与支払い報告書を提出すると、5月31日までに送付されてくる、従業員ごとの毎月の住民税納付額が記載された書類です。
住民税課税決定通知書に記載された住民税の金額を、6月から翌年5月までの1年間、毎月の給与から差し引いて企業が地方自治体に納税します。
4.健康保険・厚生年金保険の保険料額表、雇用保険の保険料率表
健康保険や厚生保険の保険料は保険料額表、雇用保険の保険料は保険料率表を、それぞれ最新のものを確認し、当てはめて求める必要があります。
5.源泉徴収税額表
源泉徴収税額表とは、給与の金額や扶養家族の人数に応じて決められた税額の一覧表のことです。給与を支払うたびに、源泉徴収税額表を用いて徴収税額を決定する必要があります。毎年変更される点に注意しましょう。
給与明細の作成手順
給与明細の作成に必要な書類やデータが用意できたら、実際に作成に入ります。作成の流れは次のようになります。
- 勤務時間を集計する
- 残業時間と残業代を計算する
- 各種手当を計算する
- 社会保険料を計算する
- 課税対象額を計算する
- 源泉所得税を計算する
- 住民税を計算する
- 各種控除額を計算する
- 差引支給額を計算する
一つずつ、内容を確認していきましょう。ここでは給与明細を作成する視点からおおまかな流れをご説明しますが、給料の計算方法の詳細は以下の記事を参考にしてください。
1.勤務時間を集計する
はじめにタイムカードなどの勤怠情報をもとに、実際の出勤日数や労働時間を集計します。残業時間や休日出勤の労働時間、深夜残業の時間も漏れなくカウントしましょう。遅刻や早退があった場合は、それらの時間分の賃金を差し引くことになります。不就労控除や欠勤控除の対応は、あらかじめ就業規則や賃金規定に明記しておきましょう。
給与明細への有給休暇の取得日数と失効日数の記載は任意ですが、従業員とのトラブルを回避するためにも記載しておくほうが望ましいです。
2.残業時間と残業代を計算する
次に、残業時間や深夜残業、休日労働の時間をもとに残業代となる残業手当を計算しましょう。残業手当の計算は下記の計算式に基づいておこないます。
割増率の最低基準は下記を参考にしてください。
種類 | 支払う条件 | 割増率 |
---|---|---|
時間外 (時間外手当・残業手当) | 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき | 25%以上 |
時間外労働が限度時間(1か月45時間、1年360時間等)を超えたとき | 25%以上(※) | |
時間外労働が1か月60時間を超えたとき | 50%以上 | |
休日 (休日手当) | 法定休日(週1日)に勤務させたとき | 35%以上 |
深夜 (深夜手当) | 22時から5時までの間に勤務させたとき | 25%以上 |
※25%を超える率とするよう努めることが必要です。
引用:しっかりマスター労働基準法 −割増賃金編−|東京労働局
企業によっては上記を上回る割増率を設定している場合があるため、労働協約や就業規則を確認しましょう。
3.各種手当を計算する
各種手当とは、通勤手当や資格手当、家族手当などを指し、企業によってさまざまな手当が設定されています。ほとんどの場合これらの手当の金額は固定ですが、なかには実際の出勤日数に応じて日割り計算をするケースもあるため、あらかじめ自社のルールを確認しておきましょう。
また、各種手当が所得税非課税に該当するかどうかのチェックが不可欠です。たとえば通勤手当の場合、非課税の上限は下記のとおりであるため、通勤手段を当てはめて計算する必要があります。
通勤の手段 | 非課税となる上限額 |
---|---|
公共交通機関のみを利用している場合 | 15万円まで |
公共交通機関とマイカーや自転車などを併用している場合 | すべて合わせて15万円まで |
マイカーや自転車 | 2キロ未満は全額非課税 2キロ以上は距離に応じて4,100~31,600円 |
参考:「マイカー・自転車通勤者の通勤手当」「電車・バス通勤者の通勤手当」|国税庁
4.社会保険料を計算する
勤務時間の集計や各種手当の計算が終わったら、控除する社会保険料の計算をします。対象となるものは下記の保険料です。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 介護保険料
- 雇用保険料
上記のうち健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料は全国健康保険協会・日本年金機構から送付される納付書に記載の保険料を確認します。雇用保険は厚生労働省が公開している「雇用保険料率表」をもとに、月の支給額の合計に雇用保険料率を掛けて算出してください。
5.課税対象額を計算する
続いて、所得税の課税対象額を計算します。課税対象額とは、給与の総支給額から通勤手当などの非課税の手当と社会保険料などの合計を引いたものです。
前述したとおり、通勤手当は非課税となる上限が決められているため、すべてが非課税になるわけではありません。課税される分は引かず、非課税の通勤手当のみ差し引く点に注意しましょう。
6.源泉所得税を計算する
源泉所得税は5.で算出した課税対象額をもとに、国税庁の源泉徴収税額表に記載されている税額を確認します。
源泉徴収税額表には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出した従業員が適用となる「甲欄」と、提出していない従業員が適用となる「乙欄」があるため、該当する欄を見ましょう。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」とは、従業員が扶養する家族について税金を軽減することを目的とした申告書のことです。
令和4年度の源泉徴収税額表は以下の国税庁のサイトを参考にしてください。
7.住民税を計算する
住民税の税額は、特定の計算式に当てはめて算出する必要はなく、各自治体から送付される「住民税課税決定通知書」に記載されている金額を確認します。
「住民税課税決定通知書」は、一般的に毎月5月末頃までに企業宛に送られてくるものです。給与から差し引く住民税は、この通知書に記載されている金額です。
8.各種控除額を計算する
住民税を確認したら、ここまで計算、確認してきた健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料などの保険料と、所得税や住民税を合計します。組合費や積立金、財形貯蓄など企業独自の控除項目がある場合はそれらも合わせ、控除合計額を計算しましょう。
9.差引支給額を計算する
差引支給額とは、いわゆる手取りの給与のことであり、従業員の口座に実際に振り込まれる金額のことです。基本給にここまで求めてきた残業手当や各種手当を合計したものから、社会保険料や税金などを控除したものです。
簡単な計算式にあらわすと下記のようになります。
給与明細における非課税手当の記載と注意点
給与明細は、従業員に支払われた給与の内訳を明示する重要な書類です。ここでは、非課税手当の具体例、記載方法、注意点について詳しく解説します。
非課税手当とは
非課税手当とは、法律で課税の対象外とされている手当を指します。これには、主に通勤手当、出張旅費、宿日直手当の一定額などが含まれます。たとえば、通勤手当については、公共交通機関を利用する場合、1か月あたり15万円までが所得税非課税とされています(所得税法施行令第20条の2)。また、転勤による引越し費用の会社負担なども非課税扱いとなる場合があります。
給与明細への記載方法
非課税手当は、通常の給与や課税対象の手当とは別に区分して記載します。給与明細の欄に「通勤手当(非課税)」「出張手当(非課税)」などと明記することで、従業員にとっても課税・非課税の内訳が一目でわかります。会計システムを利用している場合は、非課税項目として分類されるように設定することが重要です。間違って課税対象に含めてしまうと、従業員に過剰な所得税が課される可能性があります。
記載時の注意点
非課税手当の記載にあたっては、以下の点に注意が必要です。
- 非課税限度額の確認
通勤手当などには非課税限度額が定められており、それを超える部分は課税対象となります。たとえば、通勤定期代が月18万円の場合、15万円までは非課税、残りの3万円は課税扱いとしなければなりません。 - 非課税とすべき要件を満たしているか
非課税扱いされるには、一定の要件を満たしている必要があります。たとえば、出張手当の場合、出張の実態がない場合は非課税と認められない可能性があります。 - 帳簿・証憑の保存
非課税手当の根拠となる支出内容や算定根拠を明示できる帳簿・証憑を保存しておくことが求められます。税務調査などで説明を求められる可能性もあるため、証憑の管理体制も整備しておくことが重要です。
給与明細の必須内容に記載漏れがあった場合のリスク
給与明細に記載すべき必須項目(氏名、支給額、控除額、差引支給額など)が漏れている場合、企業側には複数のリスクが生じます。まず、労働基準法第108条では、賃金台帳の記載義務が定められており、これと連動して給与明細にも正確な記録が求められます。未記載や記載漏れがあると、所得税法により罰則が科される恐れもあります。
さらに、従業員との間で「給与が正しく支払われていない」といったトラブルにつながるリスクもあります。特に、控除項目の記載が不十分な場合、違法な天引きと誤解され、信頼関係の悪化を招く恐れがあります。また、税務署や年金事務所の調査時に適切な給与支払いが証明できず、追徴課税や罰則の対象となるケースもあります。
給与明細の作成方法
給与明細作成のための給与計算を効率的におこなうために、エクセルや給与計算ソフトの利用がおすすめです。給与の計算そのものはそれほど難易度が高いわけではありませんが、工程が多く手間がかかる傾向にあるためです。
ここからは、給与計算で利用するエクセルや給与計算ソフトの特徴、メリット・デメリットを解説します。
手書きで作成する方法
給与明細は、手書きで作成することも可能です。手書きで作成するときは、「給与支払明細書」という名称で販売されている複写式のテンプレートを使います。必要項目が印刷されているため、必要事項を記入するだけで作成できます。
複写式の給料支払明細書を使わず、自社でオリジナルのテンプレートを作成する場合、手書きした書類をコピーするなど、会社用と本人用に2枚用意することが大切です。
従業員が少ない場合は、手書きの給与明細作成も導入コストが低くて手軽ですが、ミスが起こりやすいのがデメリットです。また、保管の場所が必要であり、あとから検索したいときも探すのが容易ではありません。正確性や業務効率化という点では、他の方法も検討する必要があるでしょう。
エクセルで作成する方法
エクセルは、操作に慣れている方が多く使い勝手もよい点が特徴です。従業員が10人未満の企業においては、エクセルで給与計算をしているケースも珍しくありません。
しかし、エクセルによって給与計算をする場合、たとえばアルバイトの時給が時間帯ごとに異なる場合は時間別の数式を組む必要があるなど、やや難易度が高い点がデメリットといえます。手作業での入力のため、ミスが生じやすいことも考慮しましょう。法改正のたびに計算式をアップデートしなければならず、手間がかかるという問題もあります。
また、作成した給与明細は印刷して手渡しする必要があるため、業務の電子化をすすめることが困難という点もデメリットに挙げられます。
給与計算ソフトで作成する方法
時間と手間がかかる給与計算を効率的におこなうために、給与計算ソフトを利用している企業も多いでしょう。業務の効率化はもちろん、人的ミスの削減効果もあります。また、法改正に対応するための負担も軽減できます。
一方、導入にあたっての費用がかかる点がデメリットの一つです。初期費用や月額料金のほか、インストール型の場合はバージョンアップ時の更新料がかかる場合もあります。また、データ消失への対策が必要な点にも注意しましょう。
スマホアプリで作成する方法
給与明細は、iOSやAndroid OSに対応したスマホ専用アプリでも作成できます。
まず、従業員がスマホアプリから出退勤時間や欠勤などの勤怠情報を入力します。入力された勤怠データは自動的に集計が完了し、そのまま給与計算が可能です。企業は給与計算前におこなう集計の手間が省けるため、給与計算と明細の作成が効率的にできます。
また、スマホアプリはブラウザにアクセスして毎回ログインする必要がなく、すぐに給与明細を作成できるのもメリットです。
スマホアプリを導入することで会社は給与計算に要する人件費や給与明細の配布コストを削減でき、従業員にとっても出勤日・欠勤日などを一目で確認できるなど、利便性が高まります。給与明細の紛失や情報流出のリスクも軽減できるでしょう。
給与明細の無料テンプレート・ひな形
マネーフォワード クラウドでは、給与明細に使えるテンプレート・雛形をご用意しております。無料でダウンロードできますので、ぜひお気軽にご利用ください。
給与明細の電子化と法的要件
近年、ペーパーレス化やテレワークの普及により、給与明細の電子化を導入する企業が増えています。紙の配布に比べてコスト削減や業務効率化につながる一方、法的な条件を満たさなければ違法となるリスクもあります。ここでは、給与明細を電子交付する際の法的要件と注意点について解説します。
電子化のメリット
給与明細を電子化することで、印刷・封入・配布などの手間が省け、コストと時間の削減につながります。また、従業員がスマートフォンやPCでいつでも確認できるようになるため、紛失リスクの低減や自己管理の利便性も向上します。さらに、給与情報の自動保存や検索も容易になり、管理部門にとっても大きなメリットがあります。
電子化の法的条件
給与明細の電子交付には、従業員の事前の同意が必要です。これは、所得税法に基づいており、本人の明確な承諾なしに一方的に紙から電子へ変更することはできません。同意の取得は、書面または電磁的方法によることが必要です。口頭での同意取得は認められないため、後日確認できるよう記録として残すことが重要です。
また、電子明細には以下の条件も求められます。
- 給与の支給内容が明確に確認できる形式であること
- 従業員が合理的な期間内に、容易に閲覧・保存できる環境があること
- 閲覧に必要なID・パスワードの管理体制が整備されていること
たとえば、スマートフォン専用のアプリや社内ポータルサイトを利用する場合でも、セキュリティやログイン手順が適切であることが求められます。
電子化導入時の注意点
制度導入の際は、従業員への事前説明が重要です。ITリテラシーに差がある場合や、閲覧環境に不安がある従業員に対しては、紙明細との併用期間を設けたり、操作説明会を実施したりすることも検討しましょう。
また、同意後であっても、従業員が希望すれば紙での交付を再開できる体制を整えておくことが望ましいとされています。厚生労働省も、「合理的理由がある場合には紙での交付を認めるべき」との見解を示しています。
給与明細の記載内容に関するよくあるQ&A
給与明細には、従業員の報酬や控除、支給条件などが記載されていますが、その内容について疑問を抱く方も少なくありません。ここでは、よく寄せられる質問とその回答を紹介します。
Q1. 「基本給」と「手当」は何が違うのですか?
A.基本給とは、職務・職能・年齢・勤続年数などに応じて毎月一定額が支給される、給与の基礎部分を指します。一方で「手当」は、特定の事情や条件に応じて支払われるもので、通勤手当・住宅手当・家族手当・残業手当などがあります。給与明細では、基本給と手当は項目別に区分して表示されるのが一般的です。
Q2. 残業したのに「残業代」が反映されていないのはなぜ?
A.多くの企業では、残業代は「締め日」と「支給日」のタイミングの関係で翌月に反映されることがあります。たとえば、月末締め翌月25日払いの場合、3月後半の残業時間は4月の給与で支給される可能性があります。また、勤怠データに漏れがあった場合も考えられるため、不明な場合は勤怠記録と照合の上、人事・労務担当に確認してください。
Q3. 「控除額」の中に見慣れない金額があるのですが?
A.控除には、社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)や税金(所得税・住民税)のほか、会社独自の控除(組合費、積立金など)が含まれる場合があります。給与明細には略称で記載されることも多く、不明な場合は人事担当者に詳細を確認しましょう。突発的な控除(例:年末調整後の精算など)が発生することもあります。
Q4. 所得税や住民税の金額が月によって違うのはなぜ?
A.所得税は「累進課税制度」に基づいており、毎月の支給額(手当や残業代含む)によって変動します。住民税は通常6月から翌年5月まで一定額で徴収されますが、年末調整や市区町村の課税情報更新によって額が変更されることがあります。また、扶養控除の変更や副業による課税影響も金額に反映されます。
Q5. 給与明細に賞与(ボーナス)が記載されていないのはなぜ?
A.賞与(ボーナス)は、通常の月例給与とは別に支給されるため、給与明細とは別の「賞与明細」として発行されるのが一般的です。そのため、通常の給与明細には記載されていないことがあります。賞与明細には、支給額や社会保険料・税額などの控除内容が個別に記載されており、税率も月給とは異なる場合があります。もし賞与支給後に明細を受け取っていない場合は、会社の支給方針や発行方法を確認しましょう。
給与明細の作り方は、メリット・デメリットを踏まえて検討しよう
労働基準法に関する行政通達で「賃金の支払いに関する計算書」の交付が求められており、所得税法で控除金額を示す計算書と支払明細を発行することが定められています。そのため、給与明細の作成は必須でしょう。
給与明細作成のための給与計算を手計算でおこなうのはとても大変です。エクセルで給与計算をしている会社も少なくありませんが、人的ミスを防ぐことが難しく、また法改正への対応や業務の電子化が困難である点がデメリットだといえるでしょう。
一方、給与明細の作成を電子化するにしても、労務担当者や従業員が電子化の仕組みにうまく適応できるよう、配慮する必要があります。電子化への移行が自社の現状にあっているかについては、事前にしっかり検討しましょう。
給与明細の作成や配布について、関連するシステムについては以下の記事も参考にしてみてください。
よくある質問
給与明細はなぜ必要なのですか?
労働基準法に関する行政通達で「賃金の支払いに関する計算書」の交付を求めており、さらに所得税法第231条では、控除金額を示す計算書と支払明細を発行しなければならない旨が定められているためです。詳しくはこちらをご覧ください。
給与明細に記載必須の項目について教えてください
「勤怠に関する項目」「給与の支給に関する項目」「給与から控除する項目」「課税対象額」「口座振込額」などが挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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