- 更新日 : 2024年8月21日
労働時間とは?計算方法や勤務時間、残業代の注意点を解説!
労働時間とは、労働者が使用者のもとで労働している時間を指します。法定労働時間は1日上限8時間・1週間上限40時間で、会社が定める所定労働時間は、これを超えてはなりません。法定労働時間を超えて働かせると時間外労働になり、割増賃金を支払う必要があります。長時間労働の是正・改善のためには、労働時間の正しい管理が求められます。
目次 [非表示にする]
労働時間とは?
労働時間とは、従業員が会社に労働を提供している時間を指す言葉です。会社の指揮監督下にある時間ともされています。また賃金の計算対象となっている時間であるともいえます。労働時間には法定労働時間と所定労働時間がありますが、それぞれどういった時間を指しているのでしょうか?違いを見ていきましょう。
法定労働時間
法定労働時間とは法律で定められている労働時間のことをいいます。労働基準法で規定されている「1日あたり上限8時間・1週あたり上限40時間」が、法定労働時間です。
労働基準法 第32条
使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。
所定労働時間
所定労働時間とは、会社が定めている労働時間を指します。就業規則に定めている時間のことです。労働基準法に抵触しない範囲で会社が自由に定めることができます。
例)
始業時刻は9:00、終業時刻は18:00とする。(12:00から13:00までは休憩時間)
→労働時間は8時間となる
所定労働時間をどう決めるかは会社の裁量に任されています。そのため1日あたり上限8時間・1週あたり上限40時間より短くしている会社も、大企業を中心に多く見られます。
例)
始業時刻は9:00、終業時刻は17:00とする。(12:00から13:00までは休憩時間)
→労働時間は7時間となる
しかし次のような規定は労働基準法を下回るため、認められません。
例)
始業時刻は8:30、終業時刻は18:00とする。(12:00から13:00までは休憩時間)
→労働時間が8時間30分となり、8時間を超えるため労働基準法違反となる
労働時間と勤務時間の違いは?
勤務時間は始業時間から終業時間までの、休憩時間を除く時間です。所定労働時間と同じになりますが、所定労働時間が労働基準法上、その企業の就業規則などで定められた労働時間を意味するのに対し、勤務時間は一般的に用いられる用語であり、特に定義はありません。
労働時間と時間外労働時間の違いは?
労働時間とは従業員が会社の指揮監督下に置かれた労働を提供している時間を指します。時間外労働時間は、労働基準法が原則として禁止する1日8時間を超える労働時間を意味します。
労働時間の計算方法は?
労働時間は始業時間から終業時間までの、休憩時間を除いた時間です。
例)
始業時間は9:00、終業時間は17:00、12:00から13:00までは休憩
→労働時間は8時間
労働時間を計算する際の注意点は?
労働時間を間違えて計算すると、長時間労働につながります。労働基準法違反となったり従業員の健康を損ねたり、会社の信用を大きく失う恐れがあるため、以下の注意点に留意し、正確に計測しなければなりません。
原則1分単位で計算する
労働時間は1分単位で把握・計算します。端数を切り捨てる計算方法は認められないので、注意が必要です。例えば以下の計算方法は禁止されています。
- 10分や15分、30分単位として、端数を切り捨てる
- 始業時間より5分早く仕事を開始しても、労働時間にカウントしない。
- 1時間に満たないと残業時間にならない。
労働時間を15分単位にできるのは、1か月の合計時間を求めて、時間外労働時間の割増賃金を計算するときです。日々の時間外労働時間を15分単位にできるわけではありません。混同しないよう、気をつけましょう。
労働時間に応じて休憩時間を付与する
労働時間に応じて、会社は従業員に休憩を与えなければなりません。
- 労働時間6時間超で、少なくとも45分間の休憩
- 労働時間8時間超で、少なくとも1時間の休憩
労働基準法で定められていて、休憩を付与しないと6か月以下の懲役または30万円以下の罰則が科せられる恐れがあります。
遅刻や早退、欠勤は労働時間から差し引く
従業員が遅刻や早退、欠勤をして就業しなかった時間は、労働時間から差し引きます。労働時間から引く時間も1分単位としなければなりません。例えば10分の遅刻で労働時間を30分差し引くことはできません。
時間外労働や残業代の取り扱いに注意する
時間外労働時間や残業代の扱いは、労働基準法を遵守することが求められます。時間外労働は上限規制、残業代は割増賃金に注意しなければなりません。働き方改革によりそれまでは特別条項付き36協定の締結により実質的には無制限となっていた時間外労働時間に上限が設けられ、割増賃金率の見直しも行われました。
労働時間を正しく管理する方法は?
労働時間管理方法には様々なものがありますが、適切な管理が可能な方法としてはタイムカードを使うものと勤怠管理システムを使うものが考えられます。それぞれがどういった方法か、どのようなメリット・デメリットがあるかについて理解しましょう。
タイムカードを活用する方法
タイムカードは紙媒体などに始業時刻と終業時刻を打刻して、差を労働時間として把握・管理する方法です。簡単で労働者の負担にならないというメリットがある一方、打刻の押し忘れが発生する、出張時や在宅勤務時には使えないというデメリットがあります。手作業での集計が必要で、その際にミスが発生する恐れがある点もデメリットとされています。
勤怠管理システムを活用する方法
勤怠管理システムはパソコンのログイン・ログアウト情報などを元に、自動で労働時間の把握・管理を行う方法です。自動で集計でき、ミスも起こらない点がメリットとされています。デメリットにはタイムカードと比べて初期投資費用がかかる点や、システムの導入・運用に関する従業員教育が必要な点が挙げられます。
自社に合った管理方法を選んで労働時間の正しい管理を徹底しよう
労働時間は労働基準法で1日上限8時間・1週上限40時間と定められています。超えた時間は時間外労働時間となり、割増賃金を支払わなくてはなりません。時間外労働の割増賃金率は原則25%ですが、月60時間を超える時間外労働については50%となります。
長時間労働を改善するため、一定時間を超える割増賃金率の引き上げが行われました。割増賃金率の引き上げによる人件費増大を防ぐためには、法定労働時間を遵守するため、労働時間を正確に把握・管理し、適正化を図る必要があります。
労働時間を適切に管理する方法として代表的なものにはタイムカードを使う方法と、勤怠管理システムを使う方法があります。導入して効果を得るためには自社に適した方法を選ぶことが大切です。
それぞれの方法について、どのようなメリット・デメリットがあるかをよく理解し、労働時間の正しい管理を徹底しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
労働時間とは?含まれる範囲や上限、計算方法を解説
会社で雇用される従業員には、原則として働くべき時間が定められています。その時間は勤務先や従業員ごとに異なりますが、正確に把握すべきであることに変わりはありません。 当記事では、労働時間について網羅的に解説します。正しく労働時間を理解し、従業…
詳しくみるテンプレート付き – 時間外勤務申請書について解説!
長時間労働の削減を図るために「残業申請制」の導入を検討している労務担当者の方も多いのではないでしょうか。残業申請制を導入するためには、時間外勤務申請書の作成が必要です。この記事では、時間外勤務申請書の概要や保存期間、記載項目について解説しま…
詳しくみる夜勤明けは休みじゃない?休日扱いになるケースとならないケースについて解説
夜勤をともなう業務に就き、心身ともに負担を抱えた従業員の増加が問題となっています。 夜勤明けは休日扱いにできません。しかし夜勤明けの日勤は合法です。とはいえ、職場は従業員の負担を考慮したシフトを作成すべきです。 夜勤明けの取り扱いについて、…
詳しくみる8連勤は違法? 連勤は何日まで可能かを解説
日本の多くの会社では1ヶ月に1回以上、休日が2日間ある週を設けるという、週休2日制を導入しています。したがって5連勤までは、一般的な働き方であると考えられます。 しかし、変則的な働き方を採用している会社では、8連勤や9連勤をしている方も少な…
詳しくみる7連勤は違法?週またぎはOK?労働基準法に基づき分かりやすく解説!
7連勤は、肉体的疲労と精神的なストレス、そしてプライベートの喪失が重なり、働く人にとって大きな負担となります。 表面的には仕事をこなせているように見えても、休息が取れないまま働き続ければ、心身の健康を損ない、最終的にはパフォーマンスの低下や…
詳しくみるフレックスタイム制とは?メリット・デメリットや導入の注意点をわかりやすく解説!
フレックスタイム制は、従業員が自由に始業と就業の時刻を決められます。柔軟な働き方をサポートする労働時間制度ですが、「完全自由」「残業代がつかない」など様々な誤解があるのも事実です。 ここでは制度の基本を説明すると共に、メリット・デメリットを…
詳しくみる