• 更新日 : 2025年9月2日

人事評価エラーの種類とは?原因や防ぐための対策を紹介

本記事では、代表的な人事評価エラーの種類、その原因から具体的な対策までを詳しく解説します。公正な人事評価は、社員のモチベーションを高め、企業の成長を支える土台です。しかし、評価者の無意識の人事評価エラーが、その土台を揺るがすことがあります。評価の精度を高め、社員と会社が共に成長できる環境を築きましょう。

人事評価エラーの種類と企業で起こりがちな具体例

人事評価で起こりやすいエラーには、いくつかの典型的なパターンがあります。ここでは代表的な人事評価エラー11種類を、企業で起こりがちな例とともに見ていきましょう。

1. ハロー効果

一つの目立った長所や短所に引きずられて、他の項目まで同じように高く、あるいは低く評価してしまうエラーです。実績とは直接関係のない印象によって、評価全体が歪められてしまいます。

たとえば、有名大学卒の部下だからという理由で、実際の成果以上に「きっと企画力や実行力も高いだろう」と判断してしまうケースです。また、会議で発言が少ないという印象から「仕事への意欲や協調性も低いのではないか」と事実確認をせずに推測してしまうケースも挙げられます。

2. 中心化傾向

評価に自信がなかったり、部下からの反発を恐れたりするあまり、評価が「普通」「標準」といった中央値に集中してしまうエラーです。たとえば5段階評価で、ほとんどの部下に「3」をつけてしまうような状況です。これでは、本当に頑張っている社員との差がつかず、不満の原因になります。

3. 寛大化傾向

「部下によく思われたい」「厳しい評価で関係性を悪くしたくない」といった気持ちから、全体的に評価を甘くつけてしまうエラーです。部下全員の評価が実態よりも高くなるため、本当に成果を上げた社員が正当に評価されなくなります。

4. 逆算化傾向

先に「今回は昇格させたい」「賞与はこのくらいの額にしたい」といった結論を決めてしまい、その結論に合うように、各評価項目の点数を後から調整してしまうエラーです。評価の客観性が失われ、評価制度そのものが形骸化する原因となります。

5. 論理誤差

「営業だから社交的なはずだ」「エンジニアだから論理的だろう」というように、評価者独自の論理や推測で、関連性のない項目を結びつけて評価してしまうエラーです。事実確認をせず、思い込みやイメージで評価してしまいます。

6. 対比誤差

評価者が自分自身の能力や経験を基準にして、部下を評価してしまうエラーです。自分が得意なことについては部下に厳しくなり、逆に自分が苦手なことについては甘く評価してしまう傾向があります。「自分ができたのだからできて当然だ」と考えるのはこの典型例です。

7. 期末誤差

評価期間全体の行動や実績を見ず、評価面談の直前(期末)の出来事や印象が、評価全体に大きく影響してしまうエラーです。年間を通じて安定した成果を上げていたのに、評価面談の直前に小さなミスをしたため、全体の評価が下がってしまうことなどがこれにあたります。

8. 極端化傾向

中心化傾向とは逆に、評価が「最高」か「最低」の両極端に偏ってしまうエラーです。「あの人は非常に優秀だ」「あの人は全くダメだ」といったように、中間的な評価がされにくくなるようなことを指します。これにより、多くの社員が適切に評価されない可能性があります。

9. 厳格化傾向

寛大化傾向とは逆に、評価者の基準が高すぎたり、完璧主義であったりするために、全体的に評価が厳しくなってしまうエラーです。部下のモチベーションを著しく低下させるだけでなく、評価者自身への不信感にもつながります。

10. 親近効果

親近効果とは、最後または判断の直前に示された情報をもとに評価を決定してしまうエラーです。最後に示された情報で、被評価者の評価を決定してしまうため、最後に悪印象を抱いてしまうと、それまでどれだけ優れた業績を上げていても正しく評価されません。

第一印象で評価を決定してしまう初頭効果と同様に、適切な評価を妨げる要因となり、評価者への不信感の醸成につながります。

11. アンカリング

最初に得た情報や印象(アンカー=錨)に強く影響され、その後の評価が歪められてしまうエラーです。たとえば、期初に大きな成果を上げた部下に対し、その後は成果が停滞していても、最初の良い印象に引きずられて全体を高く評価してしまうようなケースです。

そもそも人事評価エラーとは?

ここまでさまざまな種類を見てきたとおり、人事評価エラーとは、評価者が部下を評価する際に主観や先入観、個人的な感情などが影響し、事実に基づいた公正な評価が妨げられてしまう現象のことです。

人間である以上、こうしたエラーを完全になくすことは難しいものです。しかし、人事評価エラーの種類と原因をあらかじめ知っておくことで、エラーに陥る可能性を減らすことが期待できます。

公正な評価は、従業員のモチベーションや成長、ひいては会社全体の生産性にも寄与する可能性があり、人事評価エラーについて正しく理解しておくことは非常に重要です。

人事評価エラーが起きる主な原因

人事評価エラーは、評価者の個人的な資質だけの問題ではありません。評価者側、制度側、被評価者側からそれぞれの要因を見ていきましょう。

評価者側の要因

人事評価エラーが起こる背景には、まず評価者側の要因があります。たとえば、評価基準への理解が不十分であったり、部下と効果的に対話する面談スキルが不足していたりする評価スキルの不足が挙げられます。

また、日々の業務に追われ、部下の普段の仕事ぶりを十分に把握できていない情報不足も原因となり得ます。気が合う、話しやすいといった個人的な感情や、男性・女性だから、若手だからといった無意識の思い込み、すなわち主観や先入観も、公正な評価を妨げる要因として挙げられるでしょう。

制度側の要因

評価者個人の問題だけでなく、制度側(企業側)の要因も大きく影響します。積極性や協調性といった評価基準が曖昧であると、評価者によって解釈が異なり、評価にばらつきが生まれてしまいます。

また、直属の上司一人だけで評価を行うなど、多角的な視点がない評価プロセスの問題や、評価のための時間が十分に確保されていない状況もエラーを誘発します。

さらに、評価が給与や昇進に直接的に大きく影響する制度では、評価者が部下に配慮しすぎるあまり、中心化傾向のような当たり障りのない評価に陥りやすい可能性があります。

被評価者側の要因

人事評価エラーは、評価者や制度だけでなく、評価される側である部下自身の要因が歪曲を生む場合もあります。特に、自己評価と客観的な事実が乖離している場合、評価者はそのギャップを埋めるためのコミュニケーションに苦慮し、結果として評価が歪められる可能性があります。

自己高揚バイアス

自信がある分野について「自分は平均より優れている」と考えやすい、人の心理的な傾向の一つです。これにより、部下は自身の能力や業務への貢献度を、客観的な実績以上に高く評価してしまうことがあります。

ダニング=クルーガー効果

自身の能力を客観的に判断できず、自らを過大評価してしまう認知バイアスの一種です。この効果により、自己評価が高くなるという逆転現象が起こり得ます。

人事評価エラーが引き起こす経営上の問題点

人事評価エラーを放置すると、それは従業員個人の問題にとどまらず、組織全体に深刻な悪影響を及ぼします。まず、正当に評価されていないと感じた従業員は、仕事への意欲を失ってしまう可能性があります。不公正な評価への不満から、より良い環境を求めて離職してしまうリスクがあるでしょう。

社員一人ひとりの意欲が低下し、有能な人材が流出するようになれば、チームや部署のパフォーマンスは落ち込み、ひいては会社全体の生産性も低下せざるを得ません。さらに、的確な評価とフィードバックが行われなければ、従業員は何を改善し、どう成長すればよいのか分からず、貴重な人材育成の機会も失われてしまうのです。

人事評価エラーを防ぐための具体的な対策

評価基準を具体的にする

協調性のような抽象的な項目ではなく「チームの目標達成のために、月に2回以上、同僚の業務をサポートした」など、誰が見ても判断できる具体的な行動レベルまで基準を明確にしましょう。評価シートを見直すことから始められます。

評価者研修を実施する

人事評価エラーにはどのような種類があるのか、自社の人事評価制度の目的や基準はどうなっているのかを、管理職全員で学ぶ機会を設けましょう。ロールプレイング形式で面談の練習をするのも効果的です。

日頃から記録をつけて対話する

評価期間中の部下の行動や成果、改善点などを、客観的な事実に基づいてこまめに記録しておくことが重要です。また、評価面談の時だけでなく、定期的な1on1ミーティングなどを通じて、日頃からコミュニケーションを取り、認識のズレをなくしておきましょう。

複数人で評価する

直属の上司一人だけでなく、さらにその上の上長や、場合によっては他部署の管理職など、複数の視点で評価することで、一人の評価者の主観に偏るリスクを減らせます。

人事評価エラーの種類を理解して信頼される制度へ

人事評価エラーは特別なことではなく、誰にでも起こりうる可能性があるものです。大切なのは、エラーの存在を認め、その種類を理解すること、そして評価基準を明確にするなど、具体的な一歩を踏み出すことです。それが社員の納得感と、会社の持続的な発展につながっていきます。


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