• 更新日 : 2025年7月14日

会社が離職票を出さない理由は?離職票を出さないことの違法性や、対処法3選も解説

離職票は、企業を退職した労働者が、雇用保険の失業保険を受給する際に必要な書類です。失業保険を受給したいものの、会社から離職票がなかなか送られず、困っている人がいるかもしれません。

本記事では、会社が離職票を出さない理由として考えられるものを解説します。また、会社が離職票を出さないことの違法性や、出してくれないときの対処法も紹介します。

離職票とは

離職票とは、会社を退職した人が失業保険の受給手続きを行う際に、ハローワークへ提出する書類です。正式には「雇用保険被保険者離職票」と呼ばれます。

転職先を決めていない退職者にとって、失業保険は次の仕事が見つかるまでの貴重な収入源です。そのため、失業保険の申請に必要な離職票は、重要な書類といえます。

離職票が発行されるまでの流れ

離職票が発行されるまでの流れは以下の通りです。

  • 会社に離職票を交付してほしい旨を伝える
  • 会社がハローワークに対して、離職票の交付申請を行う
  • ハローワークが会社に離職票を送付する
  • 会社から労働者に離職票が渡される

離職票はハローワークから発行される書類で、会社を通じて交付申請を行います。労働者がすることは、会社に離職票を出してほしい旨を伝えるだけです。希望を伝えておけば、後は会社が必要な手続きを進めてくれます。しかし、離職票を出してほしい旨を伝えてもなかなか送られない場合は、状況に応じて労働者側での対応も必要です。

会社が離職票を出さない理由

ここからは、会社が離職票を出さない理由として、考えられるものを解説します。

自身が離職票を交付してもらえる条件を満たしていない

離職票を出してもらえる条件として、勤続時に会社の雇用保険に加入していたことが挙げられます。会社員が雇用保険に加入するには、原則として以下2つの条件を満たす必要があります。

  • 雇用契約期間が31日以上であること
  • 週の労働時間が20時間以上であること

上記どちらかの条件を満たしていない場合は、基本的に雇用保険が適用されないため、離職票の交付対象者にもなりません。

会社に離職票を交付してほしい旨を伝えていない

離職票は自動的に送られるものではなく、労働者から希望がある場合に渡されます。退職する前に、会社に交付してほしい旨を伝えていない場合は、いつまでも送られない可能性があります。

退職後に失業保険の受給を検討しているなら、会社に離職票を希望する旨を明確に伝えましょう。書面やメールで依頼すると、文字として記録が残るため「言った言わない」のトラブルが起こりにくくなります。

なお、59歳以上の労働者が退職する場合は、本人の希望の有無にかかわらず離職票が送られます。そのため、会社に交付してほしい旨を伝える必要はありませんが、担当者が手続きに不慣れな場合などは交付してほしい旨を伝えておくと良いでしょう。

会社がハローワークへの手続きを正しく行っていない

離職票は、会社が労働者から交付を希望する旨を聞き、ハローワークに対して所定の手続きを行うことで初めて発行されます。

会社が手続きを行う際は「雇用保険被保険者離職証明書」をはじめ、複数の書類の準備が必要です。

担当者が知識不足である場合、書類に不備があることで、手続きが適切に行われない可能性があります。また、労働者から離職票を出してほしいと言われていたのに、担当者が手続きを失念しているケースも考えられます。

離職票がなかなか送られない場合は、書類の不備や手続きの失念などによって会社がうまく対応できていない可能性があるため、総務担当者に問い合わせることが大切です。

ハローワークの手続きが遅れている

会社が正しく申請している場合でも、ハローワーク側の処理が遅れていることが原因で、離職票が交付されないケースもあります。

ハローワークは毎年4月から5月中旬にかけて、就職・退職に関する雇用保険の手続きが大幅に増加しやすいです。

ハローワークに問い合わせた結果、離職票を発行している途中であると返答された場合は、しばらくすれば必ず送付されます。焦らず離職票が送られるのを待ちましょう。

会社が意図的に労働者へ離職票を送付していない

会社が意図的に手続きを進めていないか、ハローワークから離職票が送付されているのに、わざと労働者へ渡していないケースも考えられます。

退職の際に強く引き止めたり、在職中にハラスメント行為をしていたりと、企業体質に問題がある職場を退職する際は注意が必要です。離職票がなかなか送られてこない場合は、会社から嫌がらせを受けている可能性があります。

離職票が送られず、会社に出してもらうようお願いしても聞き入れてもらえないのであれば、ハローワークや弁護士への相談を検討しましょう。

労働者の住所がわからないため交付できない

レアなケースですが、ハローワークで労働者の住所を確認できない場合、雇用保険施行規則に基づいて離職票を交付しない可能性があります。住所を確認できないケースとして、労働者が退職時に引っ越しており、新しい住所を会社に教えていない場合が考えられます。

会社もハローワークも新住所がわからず、労働者からも一切伝えられないと、離職票を送付できません。退職時に引っ越しを行う場合は、離職票を希望する旨とともに引っ越した後の住所を会社に伝えて、滞りなく送付できるようにしておきましょう。

会社が離職票を出さないことは違法?

会社を退職する労働者が、離職票の送付を希望する場合において、会社が出さないことは違法です。

雇用保険法では「雇用保険被保険者離職証明書」の提出を含めた、雇用保険に関する退職手続きを、労働者の退職日の翌々日から10日以内に行う旨を定めています。期限内に手続きしていない場合、雇用保険法第83条により、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

労働者が離職票の交付を希望する場合、会社側は所定の手続きを行う義務があることを理解し、万が一対応してもらえない場合は毅然とした態度で交渉しましょう。

会社が離職票を出さないときの対処法3選

ここからは、会社が離職票を出さないときの対処法3選を解説します。

会社に問い合わせる

「会社が手続きを忘れている」「ハローワーク側の手続きが遅れている」など、離職票の交付が遅れる理由は複数考えられます。

離職票がなかなか送付されない場合、まずは元勤務先の人事担当者や直属の上司に手続きの進捗を確認して、原因を判明させましょう。

会社が手続きを行っている途中であったり、手続きを忘れていたりする場合は、いつまでに離職票を送付してほしいか伝えることをおすすめします。期日を決めると、会社に迅速に動いてもらいやすくなります。

最近引っ越しをした場合は、念のため現在の住所を伝えて、離職票を滞りなく郵送できるようにすることも大切です。

万が一、会社が意図的に手続きを行っていない場合は、交付してもらえないか落ち着いて交渉しましょう。

ハローワークに相談する

会社が意図的に離職票の手続きを行わない場合、管轄のハローワークに相談することで、会社へ離職票の発行を催促してくれます。ハローワークに相談する際は、あらかじめ会社名や所在地、連絡先などの情報を控えておくとスムーズです。

退職証明書や勤怠記録、給与明細が揃っている場合は、労働者自身でハローワークに離職票の発行を請求できる可能性があるため、直接交付をお願いできないかも試してみましょう。

また、ハローワークに相談することで、離職票を発行せずに失業保険の仮手続きをしてもらえる場合もあります。仮手続きを行った場合、最初の失業認定日(失業保険を受給できる日)までに離職票を提出できないと、失業保険の支給が保留になる点に注意してください。失業保険を受給するには、最終的に離職票は必要であると認識しておきましょう。

弁護士に相談する

離職票の交付を拒んでいる会社が、ハローワークからの催促にも応じない場合、弁護士に相談して解決する方法もあります。個人の相談を受け付けている弁護士なら、親身になって話を聞いてくれるほか、自身の代理人となって会社に交渉してくれます。

不当な解雇や残業代の未払いなど、付随する労働問題をあわせて解決してもらえる点も、弁護士に相談するメリットです。しかし、弁護士に相談する際は相応の費用がかかります。

基本的にはほかの方法を検討し、弁護士への相談はあくまで最後の手段であると考えておきましょう。

離職票の離職理由が事実と異なる場合

会社都合で退職したにもかかわらず、離職票の離職理由に自己都合と記載されている場合、会社に申し出て訂正してもらう必要があります。会社側の手違いで自己都合退職にされている場合は、すぐに修正のうえ交付し直してもらいましょう。

万が一、会社が嫌がらせ目的で意図的に自己都合退職としている場合は、ハローワークに相談します。ハローワークが客観的に状況を確認し、会社都合退職と認められた場合は、離職票の離職理由を変更してもらえます。

会社都合退職と自己都合退職で何が変わるか

離職票に記載されている離職理由によって、失業保険の支給日数が異なる可能性があります。

失業保険は、以前勤めていた会社の賃金額をもとに1日の支給額を決定し、受給者の退職理由や年齢などの要件によって支給日数が決められます。ほとんどの場合、会社都合退職のほうが支給日数が多く、最長は330日です。自己都合退職の場合は、原則として支給日数の最長は150日になります。

実際は会社都合で退職しているのに、離職票の理由を自己都合退職とされている場合は、本来受け取れるはずの失業保険を全額受け取れない可能性があります。

離職票に関するよくある質問

ここからは、離職票に関するよくある質問と、質問の回答を紹介します。

離職票が交付されない場合の労働者への影響は?

離職票が交付されない状態が続くと、失業保険の受給手続きが遅くなることで、一部を受給できなくなる可能性があります。失業保険の受給期間は原則として退職してから1年間と定められており、当該期間以降の受給は不可能です。

たとえば、失業保険の支給日数が90日である場合、退職してから1年以内に90日分の受給期間を過ごさないと満額受給できません。また、失業保険の支給前には待期期間や、離職理由によっては給付制限期間も過ごす必要があります。待期期間や給付制限期間によって、受け取りまでに数ヶ月かかる可能性があるため、支給日数のみが受給手続き後退職日の1年後までに収まればいいとは限りません。

確実に満額受給するために、早めに失業保険を申請するには、離職票も可能な限り早めに交付してもらうことが大切です。

離職票と退職証明書の違いは?

離職票と退職証明書は、発行元や用途が異なります。

離職票はハローワークが発行するもので、失業保険の申請手続きに必要な書類です。一方、退職証明書は以前勤めていた会社から発行されるもので、公的な書類ではありません。国民健康保険や国民年金の加入手続きを行う際に、会社を退職した証明として用いるケースが多く見られます。

なお、退職証明書は必ず発行する書類ではなく、労働者からの希望があった際に遅滞なく発行するものとされています。

離職票がないと国保に入れない?

離職票がなくても、国民健康保険には加入できます。国民健康保険は会社に勤めていない人が加入する健康保険で、加入手続きの際は、以前勤めていた会社を退職したことが証明できる書類が必要です。原則として健康保険資格喪失証明書を提示するため、離職票がなくても対応してもらえます。

万が一、健康保険資格喪失証明書が発行されておらず、失業保険を申請した後に国民健康保険への加入を予定している場合は、念のため離職票のコピーを残しておきましょう。

離職票の発行が遅い場合、損害賠償を請求できる?

離職票の発行が遅くなり、本来受給できるはずだった失業保険を受給できなかった際に損害賠償を請求しても、基本的には認められないと考えられます。過去の判例においても同様のケースはありますが、裁判所から請求を認められませんでした。

損害賠償を請求するには、会社側の対応と損害との因果関係や、具体的な損害額などに関する法的な立証が必要です。請求を実現させるハードルは高いといえます。

離職票の交付が遅れている場合は、会社に問い合わせたりハローワークに相談したりして、早めに発行してもらえるように注力しましょう。


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