- 更新日 : 2025年7月14日
離職防止の7つの対策&成功事例|離職の原因やおすすめツールまで徹底解説
人材確保が難しくなっている今、離職を防ぐことは採用活動以上に重要な課題です。
本記事では離職の主な原因から具体的な対策、実際に成功した企業事例、そして離職防止に役立つツールまで、わかりやすく解説します。
目次
なぜ今、離職防止が重要なのか
日本では、少子高齢化による労働人口の減少が年々深刻さを増しています。
厚生労働省の「令和5年版厚生労働白書」によると、2070年には人口の約39%が65歳以上になると予測されており、働き手の確保がますます難しくなることは避けられません。
とくに中小企業や地方企業では、採用自体が難しくなっている現実があります。新しく人を雇うことが困難であれば、今いる社員に長く働き続けてもらうことが、経営の安定と成長のために欠かせない条件になります。
さらに、採用コストの高騰や教育投資の回収前に辞めてしまうリスクを考えると、単に人事部門の課題にとどまらず、企業全体のテーマと位置づける必要があるのです。
企業の採用競争が激しくなる中で、「辞めにくい職場」「働き続けたくなる職場」づくりこそが、今後の競争力につながるカギだといえるでしょう。
離職の主な原因
離職の理由は人によってさまざまですが、実際の退職理由にはいくつか共通の傾向があります。
とくに職場での人間関係や仕事へのやりがいやキャリアへの不安、そして働き方や待遇の不満は、多くの調査や事例から見えてくる重要なポイントです。
ここでは、代表的な3つの離職理由を取り上げ、それぞれの課題と企業側の視点について解説します。
以下の記事では、具体的な日本の離職率や離職率が高い会社の特徴、また外国人労働者を雇用した場合の離職率について解説しています。
関連記事:
日本の離職率はどれくらい?高い会社や労働環境の特徴
外国人労働者の離職率が高い理由とは?定着率を向上させるためのポイントも解説
仕事へのやりがいの欠如
仕事そのものにやりがいを感じられないと、毎日の業務が「こなすだけ」になり、モチベーションは低下していきます。
とくに、「ありがとう」や「助かったよ」といった感謝や称賛の言葉が少ない職場では、社員が自分の存在意義を見失いやすくなります。
また、人間関係がうまくいかないと、どんなに仕事内容が好きでも居心地の悪さから退職を選ぶ人も少なくありません。
さらに、そもそも業務内容に興味が持てなかった場合、仕事そのものに前向きになれず、早期離職につながるケースもあります。
キャリア形成や評価制度が不透明
「頑張っても報われない」と感じさせる職場では、社員の離職リスクは高まります。
たとえば昇進や昇給の基準が不明確だったり、説明が不十分だったりすると、社員は将来に希望を持ちにくくなります。
また、どれだけ成果を出しても正当に評価されていないと感じると、不満が積もって退職につながることもあるでしょう。
とくに若手社員は、「自分がこの会社でどう成長できるか」が見えない環境では、早い段階でキャリアチェンジを検討する傾向があります。
ワークライフバランスや福利厚生への不満
どんなにやりがいのある仕事でも、働く環境が厳しすぎると長く続けるのは難しくなります。
たとえば、残業が多い・休日が少ない・休みが取りづらいといった状態が続けば、心身ともに疲弊し、離職につながる恐れがあります。
また、子育てや介護などライフステージの変化に対応できる制度が整っていない職場では、やむを得ず退職せざるを得ないケースも考えられるでしょう。
福利厚生も他社と比較されたときに「この会社には安心感がない」と思われると、転職の動機になりやすい要素のひとつです。
離職防止の施策をしない場合のリスク
離職を防ぐ取り組みは、「余裕があればやるべきこと」ではありません。むしろ今の時代、離職対策を怠ることで企業に与える影響は深刻化しています。
社員の流出を放置してしまうと、採用・教育コストの増加だけでなく、職場の雰囲気の悪化や生産性の低下、採用活動そのものの失速につながるおそれがあります。
ここでは、離職防止に取り組まなかった場合に企業が直面する3つの大きなリスクを整理してみましょう。
採用・教育コストが無駄になる
離職が頻発すると、そのたびに求人広告費や紹介手数料、手続き関連のコストが発生します。
また社員が定着しないと、何度も同じ内容を教えることになり、新人育成にかかる時間と手間が重なっていきます。
教える側の社員の負担も減らず、通常業務に支障をきたすことになりかねません。
このように、離職を繰り返す環境では育成と業務の両立が難しくなり、組織の効率も低下していきます。
職場の士気が下がり生産性が悪化する
社員が辞めると、その業務をほかの社員がカバーせざるを得ません。その結果、既存社員の負担が増え、モチベーションが下がる要因になります。
「自分のチームからまた辞めた」「あの人がいなくなってから雰囲気が変わった」という空気が広がると、次の離職を誘発する連鎖が起きることもあるでしょう。
職場の空気が悪くなれば、当然業務効率や品質も下がり、生産性の低下につながるため、経営にも悪影響を及ぼします。
採用力の低下につながる
離職率の高さは、社外からも簡単に見える時代です。
転職サイトの口コミやSNSでは、「この会社は辞める人が多い」といった声がすぐに広がります。
こうした情報が広まると、応募者が減り、優秀な人材が避けるようになるため、採用活動そのものが難しくなってしまいます。
さらに、高い離職率が常態化すると「ブラック企業」という印象を持たれやすくなり、取引先からの信頼にも影響が出るおそれがあるでしょう。
離職防止に有効な7つの取り組み
離職を防ぐには「給与を上げればよい」「制度を整えればよい」という単純な話ではありません。
実際には、職場での信頼関係や将来への期待、働き方への柔軟性など、さまざまな要素が絡んでいます。
ここでは、実際に多くの企業で成果が出ている7つの具体的な取り組みを紹介します。どれもすぐに実践できる内容ばかりなので、自社に合った形で取り入れてみてください。
1. やりがいを感じられる職場づくり
「ありがとう」が自然に飛び交う職場では、働く人の気持ちは安定しやすくなります。
たとえばサンクスカードやピアボーナス制度など、お互いを認め合う仕組みを導入することで、職場の温かさが生まれるのです。
また、社員が意見を出せるような風通しのよい制度を設けると、「自分もこの会社をつくっている一員だ」と感じられます。
さらに、経営者の想いを社内にしっかり伝える場を設けることで、社員は「大切にされている」と実感でき、定着にもつながるでしょう。
こうした積み重ねが、「ここで働き続けたい」と思える職場づくりに結びついていきます。
2. キャリア育成制度の構築
「この先、自分はどうなれるのか」が見えないと、将来に不安を感じて離職につながります。
そのためには、キャリアの道すじを示す表や図を使い、成長のイメージを描けるようにすることが大切です。
また、新人には年齢の近い先輩がサポートするメンター制度や、仕事の中で実践的に学ぶOJT研修が効果的です。
不安を感じやすい時期に「ひとりではない」と思える体制があるだけで、安心感は大きく変わります。
さらに、部署異動や社外プロジェクトへの参加といった柔軟なチャレンジ機会をつくることで、キャリアの幅が広がり、成長意欲の維持にもつながります。
3. 人事評価制度の見直し
努力しても「何を見て評価されているのかわからない」と感じる職場では、社員の不満が溜まりやすくなります。
まずは評価の基準をわかりやすく示すことが基本です。結果だけでなく、行動や努力のプロセスもきちんと認める仕組みがあると、納得感が生まれます。
さらに、制度自体を社員の声をもとに改善していく姿勢があると、「この会社は話を聞いてくれる」と感じてもらえ、信頼の土台にもなります。
4. 柔軟な働き方の選択肢を増やす
すべての社員に同じ働き方を求めると、生活や事情に合わずに辞めてしまうケースが出てきます。
そこで、在宅勤務・時短勤務・フレックス制度といった柔軟な働き方の導入が効果的です。
「自分に合った働き方ができる」と感じられると、会社への満足度が高まり、長く働きたいという気持ちにつながります。
さらに、「私はこう働きたい」という意見を出せる環境を整えることで、ワークライフバランスの充実にもつながります。
以下の記事では、働き方の選択肢のひとつである、「時間単位の有給休暇」について、解説していますので、ご参考ください。
関連記事:時間単位の有給休暇の義務化はいつから?2025年最新内容〜導入方法を紹介
5. コミュニケーションの活性化を図る
職場内で気軽に話せる雰囲気があるかどうかは、離職率に大きく関わります。
たとえば、上司と1対1でじっくり話す1on1ミーティングを定期的に設けると、不安や不満を早めに拾いやすくなります。
また、社内チャットや掲示板を活用して日常的な情報共有や雑談ができる環境を整えることも、孤立感の防止につながるでしょう。
加えて、社内イベントなど部署を超えて交流できる機会をつくると、チーム全体の一体感も生まれやすくなります。
6. 面談やアンケートの機会を設ける
社員がどのような気持ちで働いているかを知るには、定期的な面談やアンケートの実施が欠かせません。
月に1回、10分でも時間をつくることで、変化に気づきやすくなります。
アンケートなどで集めた声は、ただ見るだけでなく、具体的な改善に反映することが大切です。
「意見を言っても変わらない」と思わせないように、フィードバックと行動をセットで実施しましょう。
7. 離職防止ツールを活用する
離職を防ぐためには、「なんとなくの感覚」だけでなく、データにもとづいて社員の状態を把握することが重要です。
近年は、従業員の気持ちや傾向を見える化できる離職防止ツールも多数登場しています。
たとえば、1on1記録の蓄積、サーベイによる満足度の可視化、離職リスクの分析などが可能です。
こうしたツールを使えば、人事担当者の業務負担を減らしながら、必要な対応を早めに打てるようになります。
離職防止施策を実施する前に押さえるべきポイント
離職防止は、「よさそうな施策をとりあえず取り入れる」だけでは効果が出にくいものです。
効果的に成果を上げるには、自社の現状を正しく知り、課題に合った対応を丁寧に設計することが重要です。
まずは、自社で「どの層の社員が、なぜ辞めているのか」を把握するところからスタートしましょう。
退職理由や離職時期を分析することで、どのような対策が有効なのかが見えてきます。
次に、施策を実行する際は「一度やって終わり」ではなく、小さくはじめてから改善点を洗い出し、何度も試すというプロセスが大切です。
現場の声を取り入れながら調整することで、社員にとっても納得感のある仕組みになり、定着しやすくなります。
とくに初期段階では、「負担が少なく、継続しやすい形」ではじめることが、施策を形骸化させないためのポイントです。
離職防止の成功事例
業種や職種によって、直面する離職の課題は異なります。
本章では、実際に離職防止に取り組み、成果を上げている企業の事例を紹介します。
具体的な課題や対応策、取り組みの工夫を知ることで、自社の対策のヒントにもなるはずです。
社会福祉法人げんき
社会福祉法人げんきでは、職員の大半が女性という背景から、結婚や出産、育児といったライフイベントによる離職が多いという課題を抱えていました。
この問題に対応するために、法人全体で柔軟な働き方を支える制度改革を進めました。
具体的には、以下のような施策を導入しています。
- 短時間正職員制度の導入
- 在宅勤務の推進とICT活用による業務効率化
- 月単位の変形労働時間制の採用
- 障がい者や高齢者の雇用の推進
- 残業の届け出制を徹底し、無理な労働を抑制
上記の取り組みによって、職員のワークライフバランスと現場の業務効率化の両立が進みました。
とくに注目すべき成果として、コロナ禍においても退職者ゼロを実現し、2021年度の離職者もわずか1名という結果が報告されています。
参考:東京都福祉人材情報バンクシステム|社会福祉法人げんきの事例
大津建設株式会社
建設業界は長時間労働や休日の少なさが課題とされる中で、大津建設株式会社は働き方改革と定着支援を目的とした取り組みを段階的に進めています。
まず、以下のような休日数の拡大に注力し、計画的に休日日数を増やしました。
- 2022年に「4週6休」→「4週7休」
- 2023年には「4週8休」
この変化に対しては、従業員から「家族との時間が増えた」「しっかり休めるようになった」といった前向きな声が寄せられています。
さらに、2021年にはICT対応の建設機械を現場に導入し、従来は3人が必要だった作業をひとりでこなせるようになったという具体的な効果も報告されています。
これらの取り組みによって、作業日数の短縮や安全性の向上といった成果が生まれ、社員が長く安心して働ける環境づくりが進んでいるのです。
離職防止にはマネーフォワードがおすすめ
離職を防ぐための取り組みを進めるうえで、「人事情報の一元管理」は大きなカギとなります。
マネーフォワード クラウド人事管理は、社員の基本情報から評価データ、面談記録までをひとつの画面で確認できるクラウド型のツールです。
このツールを導入することで、以下のようなメリットが得られます。
- 人事・労務・勤怠・給与との連携が可能なので、情報管理の手間が大幅に軽減される
- 面談やアンケートの履歴を蓄積できるため、社員の変化にも早期に気づきやすい
- 人事担当者の業務負担が減ることで、離職防止の施策立案や実行により集中できる
「気づいたら辞めていた」とならないために、日常の情報を見える化する仕組みは欠かせません。
社員との信頼関係を築く基盤として、マネーフォワードのようなツールの活用は有効な選択肢です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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