• 更新日 : 2025年3月18日

退職後の給料はいつ振り込まれる?未払いの場合の請求方法や注意点を解説

退職月の給料が支払われていない場合、労働者としては1ヶ月分タダ働きしたことになってしまいます。しかし、退職した後に会社にどうやって請求するべきか迷う人もいるでしょう。

そこで本記事では、給料が未払いの場合の請求方法や相談先、給料を受け取る際の注意点などについて解説します。

退職後の給料はいつ振り込まれる?

退職後の給料は、原則として会社が定める給与支払日に支払われます。つまり、退職した場合もこれまでと同じ日にちに給料が支払われるということです。たとえば、末締め翌月25日払いの会社の場合、10月中に退職すれば11月25日に給料が振り込まれます。

退職後の給料を7日以内に受け取る請求の仕方

事前に請求すれば、請求日から7日以内に給料を受け取ることも可能です。これは、労働基準法第23条で以下のとおり規定されているためです。

使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。

引用:e-GOV法令検索「第二十三条」

たとえば、退職後すぐに請求することで、給料日が何日であっても、7日以内に給料を受け取ることが可能です。具体的な請求方法は会社によって異なるため、急ぎで給料を受け取りたい場合は、事前に確認しておくと良いでしょう。

自己都合退職でも給料が未払いであれば請求できる

退職の理由は給料の支払いには関係ないため、自己都合退職だとしても、会社は従業員に給料を支払うのが義務です。もし給料を支払わなければ労働基準法第24条の違反となり、会社は30万円以下の罰金を科せられます。

もし給料日になっても給料が振り込まれていなければ、従業員は請求する権利があります。自己都合退職だからといって遠慮せず、会社に請求の連絡をしましょう。

退職後の給料が振り込まれない場合の請求の仕方

退職後の給料が振り込まれない場合は、以下の手順で請求しましょう。

給料の振り込み日時を確認する

まずは給料の振り込み日を確認し、未払いであるかの確認をします。会社によっては給料日の0時ぴったりに振り込まれる場合もありますが、すべての会社が当てはまるわけではありません。

一般的には銀行の営業開始時刻と同時に振り込まれるため、午前9時が振り込み時間の目安となります。また、給料日が土日祝日と重なった場合には、会社によっては週明けに振り込まれるケースもあります。

焦って請求対応に進むのではなく、就業規則や雇用契約書などを確認し、給料日を過ぎているのか過ぎていないかのチェックから行うといいでしょう。

給料未払いの証拠書類を準備する

本来、振り込まれるべき日にちを過ぎても、給料が未払いの場合は請求手続きを進めます。未払いである証拠が必要となるため、以下のような書類を準備しましょう。

勤務状況の証拠
  • タイムカード
  • 勤務証明書
  • 業務日報
  • 業務上のメール
  • 勤怠管理ソフトの記録データ
支払い状況の証拠
給料に関する契約内容の証拠
  • 雇用契約書
  • 労働条件通知書
  • 就業規則

第三者に給料未払いに関する相談をする際に、上記書類を集めておくとスムーズに対応してもらえます。

退職した会社に未払い分の給料を請求する

書類が揃ったら会社の人事担当者に連絡し、未払い分の給料を請求しましょう。単純な人為的ミスや管理漏れであれば、メールや電話で連絡するだけですぐに支払ってもらえるケースがあります。

一方、連絡をしても一向に進展がなければ、内容証明郵便での請求に切り替えます。内容証明郵便であれば「給料の支払いを請求した」という事実を証明できるため、民事訴訟に発展した場合に有効です。この場合、会社は給料を請求された事実が残るため、言い逃れができなくなります。

内容証明郵便の書き方や注意点については、以下の記事で解説しているので、ぜひあわせてご覧ください。

関連記事:内容証明郵便とは?効力や書き方・出し方、受け取り拒否された場合の対応を解説

請求したのに退職後の給料が未払いのケースでおすすめの相談先

もし、請求しても退職後の給料が未払いのままであれば、以下の機関に相談するのがおすすめです。

労働基準監督署

労働基準監督署とは、労働基準法をはじめとする法令を守らない企業を取り締まる機関です。「労基」や「労基署」などと呼ばれることもあります。「監督課」では労働者からの相談を無料で受け付けており、対応方法に関するアドバイスをもらうことが可能です。

明らかな法令違反があった場合は、対象の企業に対して指導をしたり、必要に応じて立ち入り調査や是正勧告などの対応もしてもらえたります。ただし、残業代の請求など、民事的な損害賠償請求には対応してもらえません。賠償請求を行う場合は、別途弁護士などを通じて会社と交渉をする必要があります。

都道府県労働局

労働局とは、各都道府県に設置されている機関で、労働問題の無料相談を受け付けている機関です。労働基準監督署が企業に対して指導するのに対し、労働局は個人の労働問題に対応してくれる点に違いがあります。労働局では斡旋手続きにより、労働者が会社と話し合うための場を用意することも可能です。

弁護士

自治体へ相談しても進展がなく、会社が給料を未払いにしている場合は弁護士への相談も検討しましょう。弁護士へ相談すれば、従業員一人ひとりに合った解決策を提案し、法的な措置を行ってくれるメリットがあります。また、未払い分の給料を正確に計算してくれたり、効率よくスムーズに対応を進めてくれたりするのも魅力です。

ただし、弁護士に相談すると費用がかかります。未払い分の給料よりも弁護士費用が高ければメリットが少ないため、できるだけ自治体へ相談して解決できるようにするといいでしょう。弁護士への相談がやむを得ない場合は、無料で初回相談を受け付けている法律事務所を選ぶのがおすすめです。

退職後に給料が未払いの場合の注意点

退職後に給料が未払いの場合、すべてのケースで働いた分の賃金を受け取れるとは限りません。以下で紹介する5つの注意点もチェックしておきましょう。

退職後に給料を返金するケースがある

給料の支払いは会社の規定によって異なりますが、もし当月払いをしている会社であれば、給料を返金するケースがあります。たとえば、末締め当月25日払いの会社の場合、10月分の給料は10月25日に支払われます。10月26日〜10月31日は未就労にもかかわらず、前払いで受け取っている仕組みです。

つまり、給料日から月末までの間に退職すると、余分に受け取った分の給料を返金することがあります。前払い制度を導入している企業で働いている場合は、注意が必要です。

会社が倒産したら未払いの給料は受け取れない

会社が突然倒産してしまった場合、給料が未払いだったとしても多くの場合は支払ってもらえません。その場合は「未払賃金立替払制度」を利用し、未払い賃金の一部を立て替えてもらうことになります。

未払賃金立替払制度を利用するには「退職日が会社か倒産した日の6ヶ月前から2年の間であること」や「会社が倒産してから2年以内に立替払いを請求すること」などの条件があります。また、立て替えてもらえるのは全額ではなく一部となり、年齢ごとに上限もあるので注意しましょう。

退職後の給料は計算方法に注意が必要

自分で給料を計算して会社に請求する場合は、計算方法に注意しましょう。基本の計算式は「差引支給額(給与)= 総支給額 – 控除額(社会保険料や税金など)」ですが、社会保険料や税金の計算が少し複雑です。

また、基本的に残業や遅刻早退に関しては、会社独自の計算方法を規定しているため、就業規則の確認も必要です。計算に自信がない場合や正確な金額が必要な場合は、専門家に相談することも検討しましょう。

給料支払い義務には時効がある

退職直後は忙しくて未払いの給料に気づかず、後から請求したいケースもあるでしょう。しかし、会社が退職後の従業員に給料を支払う義務がある期間には、時効があります。

2025年2月時点では、給料支払日から3年が経過すると時効を迎えます。2020年4月1日施行の労働基準法改正によって定められており、猶予措置が終了すると時効は5年に切り替わる予定です。

3年〜5年という期間はあるものの、後回しにしていると時効を迎えて請求できなくなるリスクがあります。退職後の給料未払いに気づいたら、できるだけ早めに請求対応をしましょう。

退職後の給料だけ手渡しさせるケースがある

給料を普段から手渡ししている会社もありますが、退職後に支払う給料だけ手渡しを求める場合もあります。本来給料は手渡しが原則であるため、法的に訴えることはできません。

しかし、退職後だけいきなり手渡しで受け取るように言ってくる場合は、嫌がらせの可能性もあるでしょう。手渡しでは困る場合は、労働基準監督署に相談することをおすすめします。

退職時の給料に関するよくある質問

最後に、退職時の給料に関するよくある質問3つを紹介します。

退職後の給料明細が届かない場合の対処法は?

給与明細の発行は使用者の義務であり、法律で定められています。給与明細をもらえなかった場合は、給料未払いの請求と同じように、人事担当者に連絡して請求しましょう。発行が遅れている場合は理由も確認し、一向に発行してもらえないようであれば、労働基準監督署や弁護士に相談すると良いでしょう。

退職月の給料が少ない理由は?

退職月の給料が、これまでの月の給料より少ないのは、主に以下2つの理由があります。

  • 月の途中で退職していて日割り計算になっている
  • 月末に退職していて社会保険料が2ヶ月分控除されている

多くの場合は、末日以外の退職となるでしょう。たとえば10月に退社したケースで、10月31日に退職していれば1ヶ月分の給料が支払われますが、10月15日に退社していれば15日分の日割り計算になり、通常の給料より金額が少なくなります。

また、社会保険料は資格喪失日が属する月の前月分までが給料から控除される仕組みです。月末に退職した場合、資格喪失日が翌月1日となり、退職月の前月と退職月の2ヶ月分の社会保険料が控除されるため、手取りが少なくなります。

上記2つの理由に当てはまらず、給料が少ない点が疑問に思う場合は、労働基準監督署に相談してみましょう。

退職後に給料を早くもらうことはできる?

退職後の給料は、通常であれば今までと同じ規定の給料日に振り込まれます。ただし、事前に請求すれば早く受け取ることも可能です。労働基準法により、請求日から7日以内に受け取れるため、早く給料をもらいたい場合は退職後の請求を忘れないようにしておきましょう。

退職後に給料が振り込まれない場合はきちんと請求しよう

退職後の給料は、会社が定める給与支払日に振り込まれるため、基本はこれまでと同じ日にちに振り込みを確認できるはずです。もし規定日を過ぎても未払いであれば、企業は労働基準法に反していることとなり、従業員は請求する義務があります。

給料未払いの証拠を準備しておき、会社の人事担当者に連絡して未払いである旨を伝えましょう。連絡しただけでは進展がなかった場合は、内容証明郵便で請求したり、労働基準監督署や弁護士といった第三者に相談したりするのがおすすめです。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事