• 更新日 : 2025年3月5日

残業したら休憩時間を取る必要はある?法律で義務付けられた休憩について解説

残業をしたら、必ず休憩時間を取る必要があるわけではありません。残業を含めた労働時間によって、休憩が必要かどうかが変わります。

ただ「休憩時間の計算方法が分からない」「休憩取得に関するルールはある?」などと疑問に思っている人もいるでしょう。そこで本記事では、休憩時間の計算方法や労働基準法で定められた休憩取得に関するルールなどを解説します。

残業したら休憩を取る必要はある?

従業員が残業した場合に休憩を取得する必要があるのかどうかは、残業を含めた労働時間によって異なります。以下の3つのケースについて具体例を交えながら解説します。

残業含めた労働時間が6時間以下の場合

残業を含めた労働時間が6時間以下の場合は、休憩を取得する必要はありません。

たとえば、所定労働時間が5時間である時短勤務中の従業員が、以下のように働いた日は休憩を取得せずにそのまま帰宅可能です。

10:00~15:0015:00~16:00
所定労働時間
(5時間)
残業時間
(1時間)

上記の場合だと、所定労働時間と残業時間の合計が6時間となるため、休憩を取得しなくても問題ありません。

また、始業時間も休憩の取得には関係ありません。8時や13時に始業した日でも、合計の労働時間が6時間以下であれば休憩なしで業務を終えられます。

なお、時短勤務の所定労働時間は原則として6時間ですが、6時間に加えて5時間や7時間などの選択肢も設けられます。

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

残業含めた労働時間が6時間超え8時間以下の場合

残業を含めた労働時間が6時間を超え8時間以下となる場合は、最低でも45分は休憩を取得する必要があります。

たとえば、所定労働時間が6時間の従業員が2時間の残業をする日は、以下のように休憩を挟まなければなりません。

10:00~16:0016:00~16:4516:45~18:45
所定労働時間
(6時間)
休憩
(45分)
残業時間
(2時間)

労働時間が6時間1分になった時点で、最低45分の休憩を取得する必要があります。よって、遅くとも16時から休憩を取らなければなりません。休憩を45分取得すれば、残業を始められます。

なお、休憩は最低でも45分と定められているだけで、1時間や2時間の休憩を取得するように就業規則で規定しても問題ありません。休憩時間を増やすと従業員の拘束時間が伸びる点には注意しましょう。

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

残業含めた労働時間が8時間超えの場合

残業を含めた労働時間が8時間を超える場合は、最低でも1時間の休憩を取得する必要があります。

たとえば、所定労働時間が8時間の従業員が2時間の残業をする日は、以下のように休憩を挟まなければなりません。

10:00~14:0014:00~15:0015:00~21:00
所定労働時間
(4時間)
休憩
(1時間)
所定労働時間+残業時間
(4時間+2時間)

労働時間が8時間以内の場合は45分の休憩でも問題ありませんが、8時間1分以上になる場合は最低1時間の休憩を取る必要があります。

少なくとも1時間の休憩さえ取れば、残業時間が3時間や4時間に増えても追加で休憩を取る必要はありません。ただ、所定労働時間が8時間・休憩時間が45分と規定している会社で、1分でも残業をすると追加で15分の休憩を取得してもらう必要があります。

なお、労働時間の最後に休憩を取ってそのまま帰宅はできません。上記の場合だと、14時からの休憩を取らず20時に業務を終了し、20時から休憩の体で帰宅はできません。必ず労働時間内に休憩を取ってもらってください。

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

労働基準法で定められた休憩の三原則

労働基準法の第34条で定められている「休憩の三原則」について解説します。

1. 途中付与の原則

途中付与の原則とは、労働時間内に休憩時間を挟まなければならないという原則です。労働時間の最初や最後に休憩は取れません。

たとえば、所定労働時間が8時間で10時に始業する場合10時の始業と同時に休憩を取り11時から業務を始めるのは、途中付与の原則に反します。

また、10時から8時間連続で勤務して18時に終業し、そのまま18時に休憩の取得と同時に帰宅することはできず、18時~19時まで休憩したのちに帰ることもできません。

休憩は、必ず労働時間の途中に挟む必要があります。所定労働時間が8時間で10時から始業する人は、早くとも11時、遅くとも17時には休憩を取得しましょう。

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

2. 一斉付与の原則

一斉付与の原則とは、全ての従業員に一斉に休憩時間を付与しなければならないという原則です。正社員やアルバイトなどの雇用形態に関係なく、同時に休憩を取得させる必要があります。

ただ、以下の一部の業種もしくは労使協定を締結した場合は、休憩を一斉に付与しなくても問題ありません。

  • 運送業
  • 商業
  • 金融・保険業
  • 映画・演劇業
  • 郵便・電子通信業
  • 保険・衛生業
  • 接客娯楽業

上記のほかに、坑内労働者や官公署の事業に携わる人も、一斉付与の原則の例外として認められています。

一斉付与の対象外となった場合は、交代制で休憩を取得可能です。会社にいる従業員が同時に休憩を取る必要はなく、交代で休憩を取ったり都合のいい時間に休憩を挟んだりできます。

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

3. 自由利用の原則

自由利用の原則とは、従業員が自由に休憩時間を使えなければならないという原則です。休憩中は業務から解放された状態であり、休憩時間の使い方について会社が干渉してはいけません。

休憩中の従業員に業務を依頼したり、会社内に従業員を待機させたりするのは、自由利用の原則に反します。また、電話や来客の対応をさせるのも、休憩ではなく労働とみなされるため注意しましょう。

従業員が自分の意思で休憩中に仕事をしているのは、自由利用の原則に反していません。ほかにも、会社のPCを使ってゲームするのを禁止したり、制服のまま外出するのを規制したりすることも可能です。

なお、警察官・消防士・養護施設の職員などは、自由利用の原則が適用されません。休憩中に業務の依頼や待機命令などをしても、職業の性質的に問題ないとされています。

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

残業中に休憩した場合の賃金について

残業中に休憩を取得した場合、休憩した時間分の賃金は支給する必要がありません。休憩時間を除いた残業時間分の賃金を支払います。

残業を1分するごとに給与が出る場合は、休憩時間を差し引いた残業時間をもとに給与の計算をしてください。たとえば、2時間の残業のうち30分を休憩に充てた従業員に対しては、1時間30分の残業代を支給します。

また、固定残業代を設定している場合は、休憩時間を除いて規定された労働時間を超えた分の給与を支給してください。具体的には、固定残業代として設定された残業の上限が30時間で、月に31時間の残業をした従業員に対しては、1時間分の残業代を追加で支給します。

残業代を支給しないと、労働基準法に違反することになるため注意しましょう。従業員の自己申告に頼ることなく、客観的な方法で残業時間を正確に把握し、一人ひとりの残業時間や残業代を適切に管理することが大切です。

残業中に休憩を取れないときの3つの対処法

本来取得するべき休憩を、残業中に取れない場合の対処法を3つ紹介します。仕事が積み重なって休憩をあまり取れていない従業員がいたときに提案してみてください。

ただ、従業員が自主的に休憩を返上して業務を行っている場合は、無理にでも休憩を取るよう促す必要はありません。従業員が自ら進んで仕事をして休憩時間が取れなくても、違法には当たらないためです。

1. 時間をずらして休憩を取得してもらう

一つ目の対処法は、時間をずらして休憩を取得してもらう方法です。仕事の都合により休憩時間をずらすのは問題ありません。

業務が多すぎて、想定していた時間に休憩を取れないこともあるでしょう。決まった時間に休憩を取れなかった従業員がいた場合は、業務が落ち着いた頃に休憩を取るよう促してください。

ただし、業務が終わらないからといって、終業と同時に休憩は取れません。必ず労働時間の途中に休憩を挟んでもらってください。たとえば10時に始業した場合、15時や17時に休憩を取得するのは問題ありません。8時間連続で勤務して18時から休憩を取得するのは不可です。

2. 休憩時間を分割して取得してもらう

二つ目の対処法は、休憩時間を分割して取得してもらう方法です。休憩時間は一括で取得しなければならないという規定はありません。45分あるいは60分の休憩を分割して取得できます。

休憩時間は、15分ずつに分割したり、30分・15分・15分のように分けたりできます。たとえば、次のミーティングまで15分休憩して、ミーティングの終了後に残りの休憩を取ることも可能です。

ただ、3分や5分のようにあまりにも細かく分割すると、十分に休めていないとみなされて休憩時間に換算できない場合があります。従業員が十分に休憩できるかを基準にするなら、15分や30分などに分割するのが良いでしょう。

3. どうしても休憩時間を取得できなかった場合は賃金を支給する

三つ目の対処法は、業務に追われて取得できなかった休憩時間に対して賃金を支給するという方法です。

法定労働時間内なら通常の賃金、法定労働時間を超えた場合は割増賃金を支給してください。法定労働時間は1日8時間・週40時間ですが、業務の都合上、休憩を取れずに週45時間働いた従業員がいたら、超過分の5時間に割増賃金を支給する必要があります。

ただ、休憩時間を与えず代わりに給与を支払うのは違法であるため、罰則が科せられる可能性があります。あくまでも賃金を支給するのは、業務の都合で休憩を取得できなかった場合に留めてください。

残業と休憩について理解し、労働者に適切な休憩時間を周知しましょう

休憩時間は、残業を含めた労働時間をもとに計算する必要があります。残業したからといって、必ず休憩を取得しないといけないわけではありません。

休憩時間の計算方法や休憩した分の賃金について明確に理解しておけば、いつ質問や相談をされてもスムーズに対応できるでしょう。また、休憩をあまり取れていない従業員がいれば、従業員の状況に合った対応方法を提案できます。

労働時間に応じて適切に休憩を取得してもらうことで、心身ともにリフレッシュでき、生産性の向上も見込めます。


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