• 更新日 : 2025年3月5日

契約社員も育休をとれる!取得条件や手続き方法を分かりやすく解説

出産後も仕事を続ける予定でいるけれど、契約社員でも育休はとれるの?と不安を抱いている方もいるでしょう。しかし、契約社員も一定の条件を満たせば、法律上育休を取得できます。

とはいえ、契約社員の場合は契約期間や更新の有無によって育休の取得可否が左右されることがあるため、事前に制度を十分に理解することが大切です。

本記事では、契約社員の育休取得の条件や手続き方法、取得できなかった場合の対処法を解説します。

契約社員も育休はとれる

契約社員も、育休や産前産後休業を取得する権利があります。雇用形態にかかわらず「育児・介護休業法」と「労働基準法」によって権利として認められています。

育休は、一定の条件を満たせば取得可能です。妊娠を理由に企業に契約終了を求められても、育休を申請する権利は失われません。

男女雇用機会均等法第9条では、「妊娠中の女性労働者及び産後1年以内の解雇」は原則禁止されています。

また、産前産後休業に関しては「労働基準法第65条」によって、「女性労働者が請求した場合は就労させてはいけない」と定められています。そのため、契約社員をはじめ、派遣社員やアルバイト、パートタイムなどの有期雇用労働者も取得可能です。

育休について、下記の記事でも詳しく解説しているため、ご参考ください。

契約社員が育休を取得する条件

契約社員が育休を取得するには「子が1歳6ヶ月に達する日までに労働契約が満了しないことが明らかでないこと」が条件となります。従来は、有期雇用労働者の取得要件に「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という条件もありました。しかし、2022年4月にこの要件は撤廃されました。

ただし、契約更新の可能性がないと判断される場合は、育休の対象外となる可能性があります。また、労使協定によっては、勤続1年未満の有期雇用労働者(および無期雇用労働者)を育休取得対象外にすることが可能です。

契約社員は、契約満了や更新の有無が取得可否に直結します。そのため、勤務先のルールを事前に確認しておく必要があります。

育休の計算方法については、以下の記事で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。

育休を取得できる期間

育休を取得できる期間は、原則として「子どもが1歳になるまで」です。しかし、一定の条件下で延長も認められています。

保育園に入れない場合や、配偶者が病気で育児ができない場合などは、1歳6ヶ月まで延長可能です。1歳6ヶ月を過ぎても保育園入園の目途が立たない場合は、「最長2歳の誕生日前日まで」延長できます。

なお、2025年4月から育休延長手続きが厳格化されます。手続きを怠ると育休を延長できなくなる可能性があるため、注意しましょう。

育休を取得できないケース

契約社員であっても、次のような場合は育休が認められない可能性があります。

  • 勤続1年未満で、会社の「労使協定」により育休対象外となっている
  • 契約満了時に、契約更新されないことが明らかである
  • 労働時間が短く、雇用保険の加入条件を満たしていない

育休中に契約期間が終了し、そのあと更新されない場合は、育休自体が途中で打ち切りになるケースもあります。

また、下記のいずれかに該当する労働者については「労使協定」で育児休業の取得対象外にできるため、注意が必要です。

  • 雇用期間が1年に満たない労働者
  • 育児休業申出があった日から起算して1年以内に、雇用関係が終了することが明らかな労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

参考:厚生労働省|育児休業制度(23p)

ただし、労使協定が締結されていない場合や、会社独自のルールがない場合は「育児・介護休業法」にもとづく基本的な取得条件が適用されます。自分の勤務先でどう定められているか、必ず確認しておきましょう。

正社員と契約社員で育休制度に違いはある?

育休の基本的な法律は正社員と契約社員のどちらにも適用されます。しかし、契約社員は契約更新の影響を受けるため、育休を取得しにくい点が正社員との大きな違いです。

契約社員は、育休期間中も契約が更新されるかが重要なポイントとなります。育休中に契約期間が終了し、そのあとの契約更新がなければ育休の継続ができません。また、労使協定によっては育休を取得できない可能性もあります。

一方、正社員は基本的に無期限雇用であるため、育休中も雇用が継続されるのが前提です。この差が、育休制度の取得しやすさの違いにつながっています。

産休・育休について、以下の記事でも詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。

契約社員が育休切りされることはある?

契約社員の場合は「妊娠した途端に契約を打ち切られた」「育休を申請したら契約更新を断られた」といったトラブルが起きることがあります。いわゆる「育休切り」と呼ばれるものです。

育休切りとは、育児休業を取得または取得を申請した従業員に対し、会社が解雇や雇止め(契約打ち切り)することを指します。契約社員の場合は、期間満了時に会社が契約の更新に応じてもらえず、雇用を打ち切られることが「育休切り」にあたります。

「契約期間満了だから仕方ない」と会社側は説明することがありますが、必ずしもそれが正しいとは限りません。

育休の取得が理由の雇止めは違法の可能性がある

妊娠・出産・育休取得を理由とした契約打ち切りは「男女雇用機会均等法」と「育児・介護休業法」で禁止されています。

仮に「育休を取得するなら契約更新しない」と言われた場合、それは違法である可能性が高いため、泣き寝入りせず適切に対処することが大切です。

実際に、令和4年度には「妊娠・出産・育児休業等を理由とする不利益な取り扱い」に関する相談は、労働局に4,717件も寄せられています。相談件数の多さからも、珍しいケースではないといえます。

契約社員が育休をとれなかったときの対処法

契約社員でも育休取得の権利は法律で保障されています。しかし「会社から取得を拒否された」「契約更新を打ち切られた」など、実際にはスムーズにいかないケースも少なくありません。

ここからは、育休を取得できなかったときに取るべき具体的な対処法について解説します。

会社の相談窓口に相談する

まずは、会社の人事部や労務管理担当者に事情を説明し「なぜ育休を取得できないのか」理由を明確にしてもらいましょう。

相談する際のポイントは、下記のとおりです。

相談するポイント具体例
事実関係を整理して伝える「育休取得条件を満たしている」「契約更新の可能性がある」など、自分の状況を具体的に説明する
法律を根拠に主張する「育児・介護休業法」により契約社員にも育休取得の権利があることを伝える
話し合いの記録を残す口頭だけでなく、メールやメモでやり取りの内容を残しておく

企業側が育休制度を十分に理解していない可能性があるため、育休制度を適用したい旨を主張することが大切です。契約社員にも育休取得の権利があることを伝えれば、会社側が誤りに気づき、育休取得に向けた調整が進む可能性があります。

早めに相談し、冷静に話し合うことを心がけましょう。

会社の就業規則や労使協定を確認する

育休の取得を断られた場合は、就業規則や労使協定を確認しましょう。確認するポイントは、下記のとおりです。

  • 就業規則に「契約社員は育休対象外」の記載があるか
  • 労使協定に「雇用期間が1年未満の労働者は育休対象外」とされているか
  • 契約満了後の更新の可能性に関する記載があるか

会社によっては、契約社員に関する育休取得のルールが定められているケースがあります。ただし、法律よりも不利な取り扱いがされている場合は、それ自体が違法である可能性もあるため注意が必要です。

また、労使協定で「勤続1年未満の契約社員を対象外にすること」は可能です。なお、協定自体がなかったり、会社側が一方的に判断したりしている場合は、問題があります。

さらに、契約満了時に更新の可能性がある場合は、育休取得が認められるケースもあります。契約書や労働条件通知書に「更新の可能性あり」と書かれていたら、その旨を会社に伝え、育休取得を再度求めましょう。

それでも会社側が対応してくれない場合は、外部機関への相談を検討しましょう。

厚生労働省の雇用環境・均等室に相談する

会社との話し合いで解決しない場合は、公的機関に相談しましょう。厚生労働省の「雇用環境・均等室」では、下記に該当する相談を無料で受け付けています。

  • 男女雇用機会均等法
  • 育児・介護休業法
  • パートタイム労働法

労働者と事業主との間のトラブルについて、法律上可能な対応策を説明してくれます。状況によっては、会社への指導や話し合いの場を設ける「紛争解決援助制度」の活用も可能です。

手続きが簡単で解決までの時間も短いため、相談者への負担も少なく済むでしょう。援助を受ける費用もかからないため、お金をかけずに早期解決を求める方に適しています。

弁護士に相談する

会社との交渉が難航した場合や、育休を理由に不当な扱いを受けた場合は、弁護士に相談する方法もあります。

<弁護士に相談するメリット>

  • 法的根拠にもとづく主張ができる
  • 会社と対等な立場で交渉しやすくなる
  • 裁判を起こす際の手続きがスムーズになる

弁護士費用が気になる方は、法テラス(日本司法支援センター)を利用するのがおすすめです。無料の法律相談を受けられるだけでなく、収入条件を満たせば弁護士費用の立て替え制度も利用できます。

労働問題に強い弁護士を探して相談すれば、よりスピーディーに解決へ近づけるでしょう。

育休切りの場合は、雇止めの撤回を求める

「育休を取得したいと申し出たら契約を更新してもらえなかった」というケースは、「育休切り」として違法となる可能性があります。その際は、下記の流れで雇止めの撤回を求めましょう。

雇止め撤回の流れ詳細
1.会社に「育休切りは違法」と主張する男女雇用機会均等法・育児休業法にもとづき「妊娠・育休を理由に契約打ち切りは違法」であることを伝える
2.雇止めの理由を確認する 「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」により、雇止めの理由に関する証明書の交付を請求できる

メール・書面で返答してもらい、証拠として提出できる形にする

3.労働基準監督署や弁護士を通して対応を進める雇止めに関するトラブルは、厚生労働省の雇用環境・均等室、都道府県労働局や労働基準監督署の総合労働相談コーナーで相談できる
4.雇止めが不当であると分かる証拠を集める証拠がなければ雇止めの違法性の立証が難しくなる

不当な「育休切り」に対しては、企業に対して労働者の権利を主張し、適切な対応を求めることが大切です。

育休中に受けられる経済的支援

育休を取得している間、給与が減少または無給となるケースが多いため、経済的な不安を感じる方もいるでしょう。しかし、国の制度を活用することで、一定の収入を確保しながら育児に専念できます。

ここでは、契約社員でも受けられる経済的支援制度を紹介します。

1. 育児休業給付金

育休期間中、雇用保険に加入していれば、育児休業給付金を受けとれます。支給要件は、以下のとおりです。

  • 1歳未満の子を養育するために、育児休業を取得した被保険者であること
  • 休業開始日前2年間に、賃金支払い基礎日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の)完全月が12ヶ月以上あること
  • 育休期間中の就業日数が10日以下、または就業した時間数が80時間以下であること
  • 養育する子どもが1歳6ヶ月に達するまでの間に、労働契約の期間が満了することが明らかでないこと

参考:厚生労働省|育児休業給付の内容と支給申請手続(10p)

はじめて育休手当の支給を受ける場合は、事業所を管轄するハローワークに届け出る必要があります。通常は、職場へ必要書類を提出する形になります。

また、育児休業開始日から4ヶ月を経過する日の属する月末までに行わなければいけません。申請漏れのないように、早めに会社へ確認しましょう。

産休・育休の手続きについて、以下の記事で詳しく解説しているため、ご参考ください。

2. 出生時育児休業給付金

出産時育児休業給付金とは、子どもが生まれたあと8週間以内に、4週間(28日)まで育休を取得した場合に給付金が支給される制度です。

対象者は、以下のとおりです。

  • 子どもの出生日から8週間を経過する日の翌日までの期間内に、4週間以内の期間を定めて、当該子を養育するための産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した被保険者であること
  • 休業開始日前2年間に、賃金支払い基礎日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上の)完全月が12ヶ月以上あること
  • 育休期間中の就業日数が10日以下、または就業した時間数が80時間以下であること
  • 子どもの出生日から8週間を経過する日の翌日から6ヶ月を経過する日までに、労働契約期間が満了することが明らかでないこと

参考:厚生労働省|育児休業給付の内容と支給申請手続(2p)

取得期間は、子の出生後8週間以内で、合計4週間分(28日)を限度に支給を受けられます。出生時育児休業給付金は、育児休業の取得によって、収入が減少することを補うために設けられた制度です。

必要書類を職場に提出し、担当者が管轄のハローワークに提出することで、給付金を受けとれます。

3. 社会保険料免除

育休中は、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料が免除されます。期間は、育休の開始日が属する月から、育休が終了する日の翌日が属する月の前月までです。

ただし、月の末日が含まれているか、育休を取得した月に14日以上の休業が必要となります。また、社会保険料の免除は自動的に行われません。

事業主による年金事務所への申出が必要なため、忘れずに勤務先へ確認しましょう。

4.【2025年4月~】出生後休業支援給付金

2025年4月から改正雇用保険法が施行され、出生後休業支援給付金が新たに創設されます。これによって、育児休業給付金の給付額が67%から80%に上がります。

さらに、社会保険料が免除されることによって、最大28日間は「実質10割相当」の支給が実現するのが特徴です。育児休業給付金の67%に、新しく出生後休業支援給付が13%上乗せされる形となります。

対象者は以下のとおりです。

  • 被保険者が対象期間内に子を養育するために休業していること
  • 被保険者が対象期間内に14日以上の出生後休業を行い、被保険者の配偶者が14日以上の出生後休業を行っていること

参考:厚生労働省|育児休業等給付の内容と支給申請手続(2p)

父親も母親も、それぞれ14日以上育休を取っている必要があり、夫婦で協力して育休を取ることが条件になっているのが特徴です。

出生後休業支援給付金の趣旨は、おもに父親の育児参加を促すためです。父親も育休を取るべきと言われているものの、実際に取得する方はまだ多くありません。

その理由のひとつが、育休を取ると収入が減って生活が不安に感じるためです。とくに父親は、母親に比べて一般的に減収額が大きいため、経済的な不安から育休の取得をためらう方もいます。

そのため、経済的不安を軽減し、男性の育児休業の取得を促進するために、出生後休業支援給付金の制度が創設されました。

制度を活用すれば、父親も安心して育休を取りやすくなります。出産直後は、夫婦で協力して子育てしたいと考えている方にとって、心強い制度となるでしょう。

正しい知識を身につけて、スムーズに育休を取得しよう

契約社員も正社員と同様に、法律で育休取得の権利が保障されています。とはいえ、契約期間や更新の有無に左右されやすいため、事前に確認し、準備を怠らないことが大切です。

もし育休取得を拒まれた場合でも、制度や法律について正しい知識を持ち、社内の相談窓口や公的機関を頼れば、解決につながる可能性があります。

出産後も安心して働き続けるために、本記事を参考にしながら、育休制度を上手に活用していきましょう。


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