- 更新日 : 2026年3月31日
従業員の退職に関する法律上のルールとは?人事が知るべき期日や手続きを解説
正社員(無期雇用)の退職は、民法第627条により申し出から2週間経過すれば法的に成立します。
- 正社員は退職申し出の2週間後に辞職可能
- 会社の就業規則よりも民法の規定が優先される
- 契約社員(有期雇用)は原則契約満了時のみ
Q:会社から退職を拒否・引き留められたら?
A:正社員の場合、法律上会社の承認は不要です。内容証明郵便で退職届を提出し、客観的な証拠を残します。
従業員から退職の申し出があった際、企業の人事労務担当者は民法や労働基準法などの法律に基づいた適切な対応が求められます。法的には申し出から2週間で退職が成立するなど、就業規則とは異なるルールが存在するため注意が必要です。
本記事では、従業員の退職に関する法律の基礎知識から、申し出を受けるべき期日、社会保険の喪失手続きなどの実務手順までを網羅的に解説します。自己都合退職の手続きやトラブル対応に悩む人事初心者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
法律で定められた退職ルールとは?
退職には、合意退職と辞職の2種類があります。合意退職とは、従業員と会社が合意したうえで雇用契約を解除することです。辞職とは、会社の承諾を得ずに雇用契約を解除することを指します。
合意退職と辞職では、法律上のルールが異なるため詳しく解説します。
合意退職の場合
従業員と会社の双方が合意して雇用契約を解除する「合意退職」には、法律上の特別なルールは存在しません。
ただ、就業規則に記載されている退職に関する規定は遵守してください。「退職に関する事項」は就業規則への記載が義務付けられているため、就業規則を作成した会社なら必ず退職の取り決めがあります。
たとえば、退職を申し出る期日や退職手続きの方法などは、就業規則に記載されていることがほとんどです。退職を考え始めたら1回は就業規則に目を通しましょう。
辞職の場合
従業員が一方的に雇用契約を解除する「辞職」には、法的ルールがあります。
正社員のような無期雇用の従業員は、いつでも辞職の意思表示が可能です。直属の上司や経営陣から承諾を得られなくても、退職を申し出た2週間後に雇用契約を終了できると民法で定められています。
対して契約社員のような有期雇用の従業員は、基本的に辞職できません。雇用契約を終了したい場合、2週間前までに退職の旨を上司や担当者に伝える必要があります。
ただし、雇用されてから5年を超えていたり、雇用期間が不確定であったりする人は、いつでも契約の解除が可能です。また、やむを得ない事情があるときも、いつでも辞職できます。
一般的には、「辞職」は役員等の責任ある立場にある人が、契約解除の申出に使われるケースが多く、一般従業員は「辞表」ではなく、「退職願」「退職届」を提出するのが通例になっています。
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従業員からの退職の申し出は法律上、何日前に受けるべきか?
正社員(無期雇用)の場合は退職日の2週間前、契約社員(有期雇用)の場合は原則として契約満了時です。これは民法第627条および第628条に基づく法律上のルールです。
自社の就業規則で「退職の1ヶ月前までに申し出ること」と定めている企業は多いですが、法律上は就業規則よりも民法が優先されます。
そのため、従業員から「2週間後に辞めたい」と申し出があった場合、会社側は法的にこれを拒否できません。
無期雇用の従業員(正社員など)の場合
無期雇用の従業員は、退職希望日の2週間前までに申し出があれば、法律上いつでも雇用契約を解除できます。民法第627条において、当事者が雇用の期間を定めなかったときは、いつでも解約の申し入れができると規定されているためです。
企業側としては、引き継ぎ業務をしっかり行ってもらうためにも、就業規則で「1ヶ月前」などの規定を設けて早めの通達を促すことが一般的です。しかし、万が一従業員が2週間での退職を強行した場合、会社は法的に引き留めることはできません。
有期雇用の従業員(契約社員・パートなど)の場合
有期雇用の従業員は、原則として契約期間の途中で退職できず、契約期間の満了時に退職するのが基本ルールです。雇用期間が定まっているかどうかは、入社時の労働条件通知書や雇用契約書で確認できます。
ただし、以下の場合は例外として期間中の退職(合意退職・辞職)が法律上認められます。
- 1年を超える契約期間において、雇用されてから初日より1年を経過している場合(労働基準法第137条)
- 病気、親族の介護、配偶者の転勤など、やむを得ない事由がある場合(民法第628条)
- 会社と従業員の双方が合意した場合
人事が対応すべき退職手続きとは?
人事が対応する退職手続きは、退職届の受理から始まり、社会保険・雇用保険の資格喪失手続き、そして離職票などの法定書類発行へと進みます。法律で提出期限が定められている書類が多いため、漏れなく対応することが重要です。
退職申し出から退職後までのスケジュールの目安は以下の通りです。
ステップ1:退職届の受理と退職日の確定
退職の申し出があったら、まずは直属の上司を通じて退職の意思を確認し、退職届を受理します。口頭でも法律上退職は成立しますが、後々の「言った・言わない」のトラブル(自己都合退職か会社都合退職かの認識相違など)を防ぐため、必ず書面で提出してもらいましょう。
退職届を受理した後は、残存する有給休暇の日数を確認し、最終出勤日と退職日を確定させます。
ステップ2:業務引き継ぎと有給消化の調整
退職日が決まったら、現場の責任者と連携して業務の引き継ぎスケジュールを立てます。退職予定者には、担当業務のマニュアル作成や後任への説明、取引先への挨拶などを計画的に進めてもらいます。
同時に、従業員が保有している年次有給休暇の消化スケジュールも調整します。労働基準法上、従業員からの有給取得申請を会社が拒否することはできないため、引き継ぎ期間と有給消化期間のバランスを早めにすり合わせることが重要です。
ステップ3:貸与品の回収
最終出勤日または退職日までに、会社から支給している貸与品を確実に回収します。
回収漏れがあると、セキュリティリスクや業務上の支障につながる可能性があります。以下のような物品・書類が対象となります。
- 健康保険証(扶養家族の分も含む)
- 社員証、入退室用のセキュリティカード
- パソコン、スマートフォン、USBメモリなどの電子機器
- 名刺、業務マニュアル、顧客リストなどの機密情報
ステップ4:法定書類の作成と社会保険等の喪失手続き
退職日の翌日以降、速やかに社会保険や雇用保険の資格喪失手続きを行い、必要書類を退職者へ送付します。これらは法律で期限が明確に定められています。
| 手続き・発行書類 | 提出先・送付先 | 法律上の対応期限 |
|---|---|---|
| 雇用保険被保険者資格喪失届 / 離職証明書 | ハローワーク | 退職日の翌々日から10日以内 |
| 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届 | 年金事務所 | 退職日の翌日から5日以内 |
| 離職票、源泉徴収票などの書類送付 | 退職者本人 | 手続き完了後、速やかに(概ね退職から2週間程度) |
| 退職証明書 | 退職者本人 | 退職者から請求があった場合、遅滞なく |
人事が知っておくべき退職対応の注意点とは?
退職時の未消化有給の取り扱いや、引き継ぎ不足に関するトラブルなど、労働基準法に基づく適切な判断が必要です。法的リスクを避けるため、以下の点に注意してください。
退職時の未消化有給
原則として、年次有給休暇を会社が買い取ることは労働基準法違反となりますが、退職時に使い切れず消滅してしまう日数分に限っては、会社が任意で買い取ることが例外的に認められています。
ただし、これは法律で義務付けられているわけではなく、あくまで会社の自由(恩恵的措置)です。就業規則に買取の規定を設けるか、個別の労使合意によって決定します。トラブルを避けるためにも、まずは計画的な有給消化を促すのが基本です。
引き継ぎ不足の従業員
引き継ぎが不十分なまま退職する従業員に対して、会社が損害賠償を請求することは法的に極めて困難です。
労働基準法第16条で「賠償予定の禁止(あらかじめ違約金などを定めることの禁止)」が定められているうえ、引き継ぎ不足によって会社にどれだけの「実害」が出たのかを明確に立証するハードルが高いためです。
人事としては、引き継ぎ不足を罰するのではなく、退職確定後すぐに引き継ぎ計画を策定させ、進捗を管理する体制を作ることが現実的な対策となります。
退職月の社会保険料
退職日が「月末」か「月の途中」かによって、最終給与から控除すべき社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の月数が異なります。社会保険料は「資格喪失日の属する月の前月分まで」納付する法律上のルールとなっているためです。 具体的には、退職日の翌日が「資格喪失日」となります。
- 月末退職の場合: 翌月の1日が資格喪失日となるため、退職月当月分の社会保険料が発生し、最終給与から控除します。
- 月の途中で退職する場合: 退職月当月が資格喪失日となるため、退職月当月分の社会保険料は発生せず、前月分までの控除となります。 控除のタイミングを間違えると、後日従業員に返金したり、逆に追加徴収したりするトラブルに発展するため、退職日と給与計算の締め日は正確に照らし合わせて確認しましょう。
「自己都合退職」と「会社都合退職」の取り扱いの違い
退職者がハローワークで失業保険(基本手当)を受給する際、離職理由が「自己都合」か「会社都合」かによって給付日数や給付開始時期が大きく変わるため、離職票には事実に基づいた正確な理由を記載する法的義務があります(雇用保険法)。
従業員からの申し出による退職は「自己都合退職(一身上の都合)」となりますが、会社側から退職を促す「退職勧奨」に応じた場合や、業績悪化による人員整理などは「会社都合退職」に該当します。
退職者から「失業保険を早くもらいたいから会社都合にしてほしい」と頼まれるケースがありますが、事実と異なる離職理由を記載することは違法行為(不正受給のほう助など)にあたるため、絶対に応じてはいけません。
退職後の情報漏洩
退職する従業員に対しては、最終出勤日までに「秘密保持誓約書」や「競業避止義務に関する誓約書」を取得することが、自社の機密情報や顧客リストを守るための有効な法的対策となります。
在職中は労働契約に付随して秘密保持義務を負いますが、退職後もその義務を継続させるためには、書面での明確な合意が必要です。万が一、退職者が不正に顧客データを持ち出して競合他社に転職した場合、誓約書があれば「不正競争防止法」に基づく差し止め請求や損害賠償請求をスムーズに行う根拠となります。
フォーマットをあらかじめ用意しておき、退職手続きの必須フロー(ステップ)として組み込んでおくのが無難です。
退職時のよくあるトラブルとは?
退職は労働者の権利ですが、会社側から強い引き留めに遭ったり、退職届の受理を拒否されたりするケースは少なくありません。
ここでは、退職できずに悩む従業員が取るべき本来の法的対処法と、近年増加している退職代行サービスから連絡が来た場合の人事労務側の適切な対応について、双方の視点から解説します。
従業員側:退職を拒否された場合
退職の意思が固いにもかかわらず直属の上司から拒否された場合は、さらに上位の役職者や人事部に直接退職届を提出するか、証拠が残る「内容証明郵便」で郵送するのが確実な法的対処法です。
無期雇用の正社員であれば、民法上は退職の意思表示から2週間経過すれば自動的に退職が成立するため、会社側の合意や承諾は必ずしも必要ありません。上司が受け取らないからといって諦めず、まずは社内の然るべき窓口へ客観的な記録が残る形で意思表示を行いましょう。 それでも自力での解決が難しくトラブルになりそうな場合は、安易に第三者の代行業者に頼る前に、まずは労働基準監督署などに設置されている「総合労働相談コーナー」などの公的機関へ相談し、正しい助言を受けることが基本となります。
企業側:退職代行サービスから連絡が来た場合、人事はどう対応すべきか?
退職代行業者から従業員の退職申し出があった場合、人事は業者の種類(民間企業、労働組合、弁護士)を確認したうえで、慌てずに本人の意思確認と事務手続きを進めるのが適切な対応です。
無期雇用であれば法律の規定通り2週間後に退職となるため、無理な引き留めや本人への出社強要を行うと、かえって事態を悪化させて法的なトラブルに発展するリスクが高いからです。まずは、本人の直筆による退職届(郵送など)の提出を求め、確かな意思表示を確認しましょう。
特に民間企業(非弁業者)による代行は「使者」としての伝言しかできず、会社側が有給消化や退職日について彼らと法的な交渉を行う義務はありません。無理に業者と交渉しようとはせず、貸与品の返却案内や離職票の作成など、事務的な退職手続きを淡々と進めるのが最もトラブルになりにくい方法です。
退職手続きにおけるトラブルの実態データ
退職手続きにおいては、法律で定められた期日や手順を守ることが求められますが、実務上ではさまざまなトラブルが発生しています。マネーフォワードが人事・労務の担当者を対象に実施した調査から、退職手続きに関するトラブルの実態を紹介します。
退職手続きでトラブルになりやすい項目
退職手続きにおいて特にトラブルや苦労が発生しやすい項目について調査したところ、最も多いのは「離職票の発行手続き(賃金台帳の集計等)」で、31.7%でした。次いで、「健康保険証の回収」が29.1%となっています。従業員との連絡が取りづらくなる退職時においては、書類の発行や貸与品の回収に関するやり取りが大きなハードルとなっていることが読み取れます。
トラブルによる業務への影響
入退社手続きのトラブルによって生じた業務への影響について調査したところ、最も多いのは「担当者の残業時間が大幅に増加した」で、37.5%でした。書類の不備や対応の遅れが、結果として人事担当者の業務負担を増大させていることがわかります。こうした事態を防ぐためにも、期日の明確化や法律に則った事前のアナウンスが重要です。
出典:マネーフォワード クラウド、退職手続きにおいてトラブルが発生しやすい項目・トラブルによって生じた業務への影響【入退社に関する調査データ】(回答者:入退社手続き業務に携わった経験がある597名、集計期間:2026年2月実施)
法律上の退職ルールを守り、円満でスムーズな退職を
退職は労働者の自由であり、無期雇用の従業員であれば、民法627条第1項により「退職希望日の2週間前」までに退職を申し出れば問題ありません。ただ、引き継ぎ業務や有給を消化し切ることを考えると、1ヶ月前には退職の旨を伝えるのがおすすめです。
法律・就業規則で定められた期日や引き継ぎの取り決めなどを守ることで、円満かつスムーズに退職できます。余裕を持ったスケジュールを意識し、退職手続きを進めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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