• 更新日 : 2025年2月21日

法律上の退職ルールとは?退職は何日前に伝えるべき?手続き方法も紹介

正社員のような無期雇用の従業員の場合、法的にはいつでも退職の申し出が可能です。会社の合意がなくても、申し出から2週間後に契約終了となります。

ただ「実際は何日前に退職を伝えるべきなのか知りたい」という方もいるでしょう。そこで本記事では、退職を何日前に伝えるべきか、スムーズに退職するための手続き方法などをまとめています。

法律で定められた退職ルールとは?

退職には、合意退職と辞職の2種類があります。合意退職とは、従業員と会社が合意したうえで雇用契約を解除することです。辞職とは、会社の承諾を得ずに雇用契約を解除することを指します。

合意退職と辞職では、法律上のルールが異なるため詳しく解説します。

合意退職の場合

従業員と会社の双方が合意して雇用契約を解除する「合意退職」には、法律上の特別なルールは存在しません。

ただ、就業規則に記載されている退職に関する規定は遵守してください。「退職に関する事項」は就業規則への記載が義務付けられているため、就業規則を作成した会社なら必ず退職の取り決めがあります。

たとえば、退職を申し出る期日や退職手続きの方法などは、就業規則に記載されていることがほとんどです。退職を考え始めたら1回は就業規則に目を通しましょう。

辞職の場合

従業員が一方的に雇用契約を解除する「辞職」には、法的ルールがあります。

正社員のような無期雇用の従業員は、いつでも辞職の意思表示が可能です。直属の上司や経営陣から承諾を得られなくても、退職を申し出た2週間後に雇用契約を終了できると民法で定められています。

対して契約社員のような有期雇用の従業員は、基本的に辞職できません。雇用契約を終了したい場合、2週間前までに退職の旨を上司や担当者に伝える必要があります。

ただし、雇用されてから5年を超えていたり、雇用期間が不確定であったりする人は、いつでも契約の解除が可能です。また、やむを得ない事情があるときも、いつでも辞職できます。

※参考:第626条、第627条、第628条|民法

退職は何日前に伝えるべき?

退職の意思を何日前に伝えるべきかは、無期雇用の従業員と有期雇用の従業員で異なります。

一般的に、正社員は無期雇用の従業員、契約社員・パート・アルバイトなどは有期雇用の従業員です。雇用期間が定まっているかどうかは、雇用契約書で確認できます。

無期雇用の従業員の場合

無期雇用の従業員は、いつでも退職の意思表示ができると民法で規定されていますが、遅くとも退職したい日の2週間前までには退職の意思を伝えるべきです。

最低でも2週間ほどの余裕があれば、引き継ぎ業務をしっかり行えます。引き継ぎをしないと、後任がスムーズに仕事を進められなかったり、共有漏れが起こって取引先とトラブルに発展したりすることもあるでしょう。場合によっては、損害賠償を請求される可能性もあります。

また、就業規則で「1ヶ月前に退職の通達をする」というように規定されている場合は、なるべく規定に従った方が良いです。

しかし、就業規則よりも民法が優先されるため、就業規則に1ヶ月前と記載されていても、2週間後を退職日として契約を解除可能です。

有期雇用の従業員の場合

有期雇用の従業員は、契約期間の途中で退職できません。契約期間の満了時に退職するのが一般的です。契約期間の満了が近づくと更新するか聞かれるため、聞かれたときに退職の旨を伝えてください。

契約から5年を超えていたり、契約期間が不確定であったりする場合は、いつでも退職の申し出ができます。

さらに、やむを得ない事情がある場合も、契約期間中に退職が可能です。具体的に、病気・親族の介護・出産・遠方への引越しなどはやむを得ない事情として認められる可能性があります。

退職手続きの方法を4つの手順で解説

退職手続きの方法を4STEPで解説します。退職までのスケジュールの目安は以下の通りです。

1、退職の意思を伝える約1ヶ月~2ヶ月前
2、退職届を提出する約3週間~1ヶ月半前
3、引き継ぎを行う約3週間~1ヶ月前に開始
遅くとも退職日の3日前までに完了
(残っていれば有給を消化する)残りの日数分を消化
4、退職後に必要書類を受け取る退職から約1週間~1ヶ月後
スクロールできます

ポジションや担当業務の量によっても異なりますが、参考にしてください。

1、退職の意思を伝える

退職したい日の約1ヶ月~2ヶ月前に退職の意思を伝えましょう。3ヶ月前~6ヶ月ほど前に伝える人もいます。自分のポジションや業務内容を考慮して、適切な時期に通知してください。

ただ、退職の意思を通達する時期について就業規則に規定されていることがあります。必ず事前に確認してください。

また、退職の意思は最初に直属の上司へ伝えるのが一般的です。社長が直属の上司に当たる場合は、社長への報告が最初で問題ありません。管理部や同僚などには、退職日が確定してから退職の旨を伝えましょう。

2、退職届を提出する

退職日の約3週間前~1ヶ月半ほど前に退職届を提出してください。退職届の様式は会社で決まっている可能性があるため、上司や管理部に相談しましょう。自分で用意するのであれば、店舗で購入するかこちらからダウンロードできます。

退職届は直属の上司もしくは担当者に提出してください。提出後に退職承諾書が送られる場合があるため、必ず受け取りましょう。

退職届は法的に義務付けられた書類ではないため会社によっては口頭で退職の意思を伝えて完了するケースもあるでしょう。ただ、退職時のトラブルを最小限にするためには、退職届を提出するのが無難です。

※【退職承諾書が必要な担当者向け】こちらからテンプレートをダウンロードできます。

3、引き継ぎを行う

退職届を提出したら、すぐに引き継ぎ業務を行いましょう。約3週間~1ヶ月前には着手し、2週間~3週間ほど引き継ぎ業務に充てるのが理想です。担当業務によっては1ヶ月ほど引き継ぎ業務を行うこともあります。

具体的には以下の業務を引き継ぎの際に行いましょう。

  • 担当業務のマニュアルを作成
  • 後任に担当業務の内容や細かなルールなどを説明
  • 取引先に退職の挨拶をメールで通達

マニュアルの作成や後任への説明は、なるべく丁寧に行いましょう。雑に進めると、適切に伝わらなかったり共有漏れが発生したりする可能性があります。

遅くとも退職日の3日前には引き継ぎを完了させると、自身も周囲も安心でしょう。

4、退職後に必要書類を受け取る

残っていた有給を消化しきり退職日を迎えたら、約1週間~1ヶ月後に以下の書類が送付されます。

失業保険を受給するとき、転職先で入社手続きをするときや一旦転職せずに国民健康保険に加入するときなどに必要となるため、必ず受け取って保管してください。

また、足りない書類があった際も、前職の担当者に連絡して発行してもらいましょう。

退職にまつわる注意点

退職する際に注意すべき、有給や貸与品の返却などについて解説します。

有給は退職と同時に消滅する

有給は退職と同時に消滅します。退職日を迎えると有給は取得できなくなるため、必ず退職前に消化しましょう。有給の残存日数や引き継ぎにかかる期間などを考慮して、退職日を設定してください。

ただ、会社によっては、消化できなかった有給を買い取ってくれることがあります。原則として有給の買取は違法ですが、退職時に使い切れなかった有給の買取は例外です。

未取得の有給は賞与として支払い可能なため、対応してもらえるか上司や管理部に相談してみてください。有給の買取が会社の自由であることは、認識しておきましょう。

引き継ぎを拒否すると損害賠償請求される可能性がある

引き継ぎ業務は就業規則で義務付けられていることがほとんどです。よって、就業規則を無視して引き継ぎを一切行わなかった結果、会社に損失が発生すると損害賠償請求される可能性があります。

引き継ぎを十分に行わないと、後任の業務が進まなくなるほか、取引先とのトラブルになり契約を打ち切られることもあるでしょう。引き継ぎが不十分であった場合も、情報の伝達漏れが残る・マニュアルを理解できないなどのことが起こり得ます。

周囲に迷惑をかけないためにも、引き継ぎには1週間~2週間は時間を費やしましょう。

貸与品や健康保険証は必ず返却する

会社から支給された貸与品や健康保険証などは、必ず返却してください。返却しなかった場合、訴訟を起こされたり損害賠償を請求されたりする可能性があります。

返却義務がある物品・書類は最終出勤日に担当者へ手渡すか、デスクに残しておくのが最も簡単です。有給の最終日の翌日が退職日の場合、会社へ行くのが面倒なら郵送で返却しても問題ありません。貸与品がどれか分からない人は、管理部に聞いてください。

また、ロッカーやデスクにある私物も退職日までに持ち帰りましょう。退職日を過ぎてから忘れ物に気づいた場合は、廃棄依頼をするか取りに行ってください。

退職を拒否されたり引き留められたりしたときの対処法

退職は労働者の権利ですが、拒否されたり引き留められたりすることがあります。拒否や引き留めで困っている人は、以下の対処法を試してみてください。

  • 「転職先が決まった」「内定を承諾した会社がある」などと伝える
  • 退職希望日と併せて退職の決意を表明する
  • 現職ではできず転職先で挑戦できそうなことを退職理由として説明する
  • 「家業を手伝う」「配偶者の転勤について行く」といった本当の理由を伝える
  • 直属の上司より上の上司か管理部に退職届を提出する

ポイントは、退職の意思が揺らがないことを表明することです。説得や待遇改善の提案があっても、悩む態度は見せないでおきましょう。

退職できそうにない場合は、退職届を内容証明郵便で郵送するのも一つの手です。退職代行サービスも最近話題ですが、円満退職の方法とは言い難いため最終手段と考えてください。

法律上の退職ルールを守り、円満でスムーズな退職を

退職は労働者の自由であり、無期雇用の従業員であれば退職をいつ申し出ても問題ありません。ただ、引き継ぎ業務や有給を消化し切ることを考えると、1ヶ月前には退職の旨を伝えるのがおすすめです。

法律・就業規則で定められた期日や引き継ぎの取り決めなどを守ることで、円満かつスムーズに退職できます。余裕を持ったスケジュールを意識し、退職手続きを進めましょう。


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