- 更新日 : 2024年5月17日
雇用保険受給資格者証とは?いつ・どこでもらえる?必要な場面は?
雇用保険受給資格者証とは、失業手当(基本手当)の受給資格があることを証明する書類です。雇用保険被保険者が離職し、基本手当の受給手続きを進める中で、ハローワークで交付されます。
本記事では、雇用保険受給資格者証の受け取り方や記載内容、離職理由を示す数字の見方、万が一紛失した場合の再発行手続きなどについて解説します。
目次
雇用保険受給資格者証とは?
雇用保険受給資格者証は、基本手当の受給手続きに必要な書類です。離職後、ハローワークに必要書類を提出し、基本手当の受給資格があると認められた場合に、雇用保険受給者初回説明会で入手できます。ここでは、雇用保険受給資格者証が、どのようなものなのかを解説します。
雇用保険受給資格者証で(仮)がついているもの
ハローワークで渡された雇用保険受給資格者証に「(仮)」の文字が記載されていることがあります。「(仮)」がつくのは、離職票の内容に確認中の事項があるときで、離職票に書かれた離職理由に異議が出されている場合などです。その後、内容が確認されると「(仮)」の文字が消去されます。
雇用保険被保険者証との違い
雇用保険受給資格者証と名称が似ていますが、雇用保険被保険者証と雇用保険受給資格者証は別の書類です。
雇用保険被保険者証は「雇用保険の被保険者であること」を証明する書類で、入社して雇用保険の加入手続きをしたときに交付されます。
なお、雇用保険受給資格者証の定義については、以下で詳しく解説しているので併せてご確認ください。
雇用保険受給資格者者証が必要な場面
雇用保険受給資格者証が必要になるのは、主に基本手当や再就職手当の受給手続きです。以下で、詳細を解説します。
① 失業手当(基本手当)を受給するとき
雇用保険受給資格者証は、基本手当を受給する手続きで使います。
基本手当を受給するには、4週間に1回の失業認定日に、ハローワークで「失業の認定」を受けなければなりません。
失業認定日には、求職活動状況などを記入した「失業認定申告書」を提出し、本当に失業の状態にあるかの確認を受けます。このとき、雇用保険受給資格者証も窓口に提出します。
失業手当の種類
失業等給付には、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付の4種類があります。
求職者給付のうち、64歳以下の一般被保険者に支給される給付金が「基本手当」です。なお、次に説明する「再就職手当」は、就職促進給付の一つです。
なお、失業等給付の詳細については、以下の記事をご参照ください。
➁ 再就職手当を受給するとき
雇用保険受給資格者証は、再就職手当を受給するときにも使います。
再就職手当とは、基本手当の受給者が安定した職業に就いたとき、基本手当の所定給付日数の3分の1以上が残っていた場合に受けられる給付金です。
再就職手当を受給するには、再就職手当支給申請書とともに、雇用保険受給資格者証をハローワークに提出する必要があります。
その他の必要な場面
雇用保険受給資格者証は、基本手当など雇用保険の給付金申請以外でも使う機会があります。社会保険の扶養手続きと国民健康保険料の軽減手続きのケースを紹介します。
雇用保険受給資格者証は、社会保険の扶養追加手続きの際に、コピーを添付することがあります。
離職後に配偶者などの扶養に入ることがありますが、一定額以上の基本手当を受けていると扶養に入ることができません。
そのため、基本手当の受給終了を確認する資料として、雇用保険受給資格者証などのコピーを添付することがあります。
また、雇用保険受給資格者証は、国民健康保険料の軽減措置の手続きでも添付を求められることがあります。
会社都合で離職した場合は国民健康保険料の軽減を受けられることがありますが、軽減措置の申請時に、離職原因を証明する書類として雇用保険受給資格者証を使えます。
失業手当・再就職手当を受け取る具体的なケース
離職理由や離職後の状況によって、基本手当受給までの期間や給付日数などが異なります。ここでは、基本手当や再就職手当を受給できる主なケースを確認しておきましょう。
自己都合で退職したとき
自己都合で離職し、次の要件を2つとも満たす場合は、基本手当が受給できます。
- 離職日以前2年間に、雇用保険被保険者期間が通算12ヶ月以上ある
- 就職の意思と能力(身体状況を含む)があり、かつ求職中である
自己都合で離職した場合の所定給付日数は下表のとおりです。
引用:基本手当の所定給付日数||ハローワークインターネットサービス
なお、自己都合退職の場合は、7日間の待機満了後、2ヶ月(5年以内に2回以上自己都合退職をしているときは3ヶ月)の支給制限があります。
会社都合で退職したとき
会社の倒産や解雇、退職勧奨など、会社都合で離職したときで、次の2つの要件を共に満たす場合は、基本手当を受給できます。
- 離職日以前1年間に、雇用保険被保険者期間が通算6ヶ月以上ある
- 就職の意思と能力(身体状況を含む)があり、かつ求職中である
会社都合による退職者は「特定受給資格者」と「特定理由離職者」の2つに大別されます。
特定受給資格者とは、倒産・解雇などの理由により再就職の準備をする時間的余裕がなく離職を余儀なくされた者をいいます。
特定受給資格者になる例を、以下にいくつか挙げます。
- 会社の倒産により離職した
- 解雇(重責解雇を除く)により離職した
- 有期雇用契約を更新し3年以上継続雇用された者が、契約更新されず離職した
- 退職勧奨を受け、離職した
- 職場のいじめやハラスメントにより離職した など
特定理由離職者とは、特定受給資格者に該当する者以外で、やむを得ない理由により離職した者のことです。
特定理由離職者の例をいくつか挙げます。
- 期間の定めのある雇用契約期間が満了し、労働者が更新を希望したが更新されなかった
- 正当な理由のある自己都合により離職した
など
「正当な理由のある自己都合」には、疾病・負傷、出産・育児など、やむを得ない家庭の事情などが該当します。
特定受給資格者と1の特定理由離職者の基本手当の所定給付日数は下表のとおりです。なお、2の特定理由離職者の給付日数は、一般的な離職者の場合と同様です。
引用:基本手当の所定給付日数|ハローワークインターネットサービス
なお、会社都合で離職した場合は給付制限がなく、7日間の待期満了後、すぐに基本手当が受給できます。
早期に就職したとき
基本手当を受給している人が安定した職業に就いたとき、基本手当の所定給付日数の支給残日数が3分の1以上残っている場合は、再就職手当が受給できます。
再就職手当は一時金で、支給残日数により、以下の額になります。
支給残日数が3分の2以上……基本手当日額×支給残日数×70%
支給残日数が3分の1以上3分の2未満……基本手当日額×支給残日数×60%
病気などでしばらく就職できないとき
基本手当の受給期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。しかし病気やけが・育児などの理由により、すぐに就職できないこともあるでしょう。
そうしたケースでひき続き30日以上職業に就くことができない場合は、受給期間の延長を申請できます。受給期間の延長は、ハローワークの窓口で申請することが可能です。
雇用保険受給資格者証はいつ・どこでもらえる?
雇用保険受給資格者証は、いつ・どこで入手できるのでしょうか。以下で、それぞれ解説します。
いつもらえる?
離職後に、住所地を管轄するハローワークで求職の申込みをし、離職票や住民票など必要書類を提出します。
その結果、基本手当の受給資格があると判断された場合は「雇用保険受給資格者のしおり」をもらえます。そして雇用保険受給者初回説明会の日程も指定されます。
雇用保険受給資格者証は、この雇用保険受給者初回説明会で交付されるものです。
どこでもらえる?
雇用保険受給者初回説明会は、通常、住所地を管轄するハローワークで開催されます。雇用保険受給資格者証は、その会場で渡されます。
雇用保険受給資格者証の発行のための手続き・流れ
雇用保険受給資格者証を受け取るには、どのような順序で、何をすればよいのでしょうか。以下で、順に説明します。
① 必要な書類を準備する
まず、必要な書類を準備します。離職後、ハローワークに持参する書類は次のとおりです。
- 雇用保険被保険者離職票-1、-2
- 個人番号確認書類
- 身元(実在)確認書類
- 写真2枚(たて3.0㎝、よこ2.4㎝)
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
上に挙げた必要書類について、補足します。
雇用保険被保険者離職票-1と雇用保険被保険者離職票-2は、退職後に会社から送付されます。送付されるのは、通常は退職日から1~2週間後です。
個人番号確認書類は、マイナンバーカード、通知カード、またはマイナンバーの記載のある住民票のいずれかを準備します。
身元(実在)確認書類は、下記1のうち1つを持参します。もし1がない場合は、2のうち異なる2つを準備します。いずれも、コピーではなく原本が必要です。
- 運転免許証、マイナンバーカード、官公署が発行した身分証明書(写真付き)など
- 健康保険証、児童扶養手当証書など
➁ 住所地を管轄するハローワークに行く
必要書類を揃えたら、住所地を管轄するハローワークへ行きます。管轄のハローワークがわからないときは、全国ハローワークの所在案内のサイトから調べることが可能です。
③ 求職申込を行い、合わせて書類を提出する
住所地を管轄するハローワークで「求職の申込み」をします。このとき、離職票などの必要書類も提出し、基本手当の受給資格があるかチェックを受けます。
④ 雇用保険受給資格者のしおりを受け取る
ハローワークで基本手当の受給資格があると判断されると「雇用保険受給資格者のしおり」が配布されます。
「雇用保険受給資格者のしおり」とは、失業認定申告書の書き方、受給期間内に病気などをしたときの扱いなど、基本手当を受給する際の必要情報が記載されているものです。
このとき、雇用保険受給者初回説明会の日程が指定されます。
⑤ 雇用保険受給者初回説明会に参加する
雇用保険受給者初回説明会に参加します。持参するものは「雇用保険受給資格者のしおり」と筆記用具です。
この説明会では、基本手当の受給についての必要事項が説明されます。
⑥ 説明会で雇用保険受給資格証が発行される
雇用保険受給者初回説明会で「雇用保険受給資格者証」が交付されます。このとき「失業認定申告書」が併せて配布され、初回の失業認定日も決まります。
⑦ 受け取った後に支給番号・氏名を確認する
「雇用保険受給資格者証」を受け取ったら、印字されている事項が事実と相違ないか、よく確認しておきます。
雇用保険受給資格者証の見方
雇用保険受給資格者証を入手したら、まず印字されている内容を確認します。ここでは、雇用保険受給資格者証の見方を確認しておきましょう。
おもて面に記載されている項目
雇用保険受給資格者証の表面には、支給番号、氏名、性別、生年月日、求職番号、資格取得年月日、離職年月日、離職理由、離職時賃金日額などの情報が記載されています。
氏名や生年月日、性別などに間違いがないか、チェックしておきましょう。離職理由のチェック方法については、後ほど説明します。
うら面に記載されている項目
雇用保険受給資格者証の裏面の上部には、写真貼付欄、支給番号・氏名欄があります。
その下は、基本手当の支給記録などが記載される欄です。
雇用保険受給資格者証を確認する際のポイント – 離職理由をみよう!
雇用保険受給資格者証の記載事項の中で、特に確認が必要なのは「離職理由」です。具体的な確認方法を、以下で説明します。
会社都合退職と自己都合退職のいずれかを確認
離職理由には「自己都合」と「会社都合」があり、どちらに該当するかにより基本手当の受給開始日や所定給付日数が異なります。
下図の青枠に印字されている数字が、離職理由です。数字の見方は、次で説明します。
出典:雇用保険受給資格者証|ハローワークインターネットサービス
(上記画像を一部加工)
退職理由は「離職理由コード」でも確認
離職理由欄の数字が示す離職理由は下表のとおりです。雇用保険受給資格者証を受け取ったら、離職理由を確認しておきましょう。
11、12 | 解雇 |
21 | 雇止め(同一の事業主に3年以上雇用されていたとき) |
22 | 雇止め(同一の事業主に3年未満雇用された場合で、契約更新の明示があったとき) |
23 | 期間満了(同一の事業主に3年未満雇用された場合で、契約更新が可能な旨の明示があったとき) |
24 | 契約期間満了(21~23 以外) |
25 | 定年(船員を除く)・移籍出向による退職 |
31、32 | 正当な理由のある自己都合退職(事業主からの働きかけなど) |
33 | 正当な理由のある自己都合退職(疾病、育児など) |
40、45 | 正当な理由のない自己都合退職 |
50、55 | 自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇 |
雇用保険受給資格証を受け取った後の注意点
雇用保険受給資格者証は、基本手当の受給のほか、再就職手当の支給申請にも必要です。重要な書類なので、紛失しないように扱いましょう。ここでは、雇用保険受給資格者証を受け取った後の注意点を紹介します。
保管期間
雇用保険受給資格者証は、4週間に1回の失業認定日の度に、ハローワークに提示する必要があります。雇用保険受給資格者証を持参しないと、失業の認定が受けられません。
また再就職手当の支給申請時にも、雇用保険受給資格者証の提出が必要です。
その後も、再就職先を早期に離職した場合や、再就職後の賃金が離職前より大幅に低下した場合などに、また雇用保険受給資格者証を使う可能性があります。そのため、再就職後もしばらくは保管しておいた方がよいでしょう。
紛失した場合の手続き – 再発行方法 –
万が一、雇用保険受給資格者証を紛失したときは、すみやかに再発行手続きを取る必要があります。再発行は、住所地管轄のハローワークで手続きできます。
雇用保険受給資格者証を受け取ったら、内容を確認しよう
雇用保険受給資格者証は基本手当の受給資格を証明する書類で、雇用保険受給者初回説明会で入手できます。その後は基本手当を受給するため、失業認定日の都度、ハローワークに提示が必要です。
基本手当の所定給付日数や受給までの期間は、離職理由により異なります。そのため、雇用保険受給資格者証を受け取ったら、氏名や生年月日などのほか離職理由についても、事実と相違ないか確認しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
特別支給の老齢厚生年金とは?65歳より前にもらえる?受給要件や手続きを解説!
特別支給の老齢厚生年金は厚生年金加入歴が1年以上あり、昭和36年4月1日(女性は昭和41年4月1年)以前に生まれた人に支給される年金です。受給開始年齢は生年月日や性別によって定められており、60~64歳から受け取れます。金額は被保険者であっ…
詳しくみる【2025年-28年】雇用保険法改正まとめ!図解資料も用意!
本記事では、2025年から2028年にかけて段階的に施行される雇用保険法の改正ポイントを、企業の人事労務担当者向けに解説します。 雇用保険の制度概要から始め、高年齢者雇用継続給付の支給率見直し、自己都合退職者に対する失業給付制限期間の短縮、…
詳しくみる労災保険に加入していないとどうなる?未加入のリスクや責任
労災保険は、常勤やパート・アルバイトなど、労働者の業務上あるいは通勤による傷病等に対して必要な保険給付を行い、保険料は会社が負担します。 会社が労災保険の加入手続きを行わなかった場合、罰則はあるのか?また、会社が労災保険に加入していなかった…
詳しくみる70歳以上の社会保険について – 対象者や手続きを解説
社会保険の適用事業所に勤務している従業員は、健康保険や厚生年金、雇用保険などに加入しています。保険料を給与から天引きされている方も多いでしょう。2021年4月1日施行の高年齢者雇用安定法改正により、65歳までの雇用確保の義務と70歳までの雇…
詳しくみる労働保険料の納付のしかたをわかりやすく解説
労働保険料は、今年度の保険料を概算で申告・納付すると同時に、昨年度に概算で申告した概算保険料と実際に支払った賃金額から計算した確定保険料との差額の清算を行う「年度更新」と呼ばれる複雑な申告・納付方法を行います。 毎月納付する健康保険料や厚生…
詳しくみる社会保険の出産育児一時金とは
出産は病気ではありません。そのため、健康保険は使えず、原則的には全ての費用が自己負担となります。しかし、産院での入院費など出産にかかる費用は高額で、どうしてもまとまった金額が必要になるのが現実です。こうした出産時の経済的負担を軽くしようとい…
詳しくみる