- 更新日 : 2024年12月20日
転職する従業員の社会保険手続き
従業員が転職をするときの社会保険手続きは、現在勤めている会社での社会保険喪失手続き後、転職先の会社での取得手続きの順で行われます。
転職者から回収する書類
転職のために現在の会社を退職することになった場合は、社会保険の資格喪失手続きを行います。
その際、会社は転職者から以下の書類を回収します
■健康保険被保険者証(被扶養者分も回収)
社会保険の資格喪失届の届出日は喪失日より5日以内で、日程に余裕がありません。
そのため、退職が予定されている従業員には、あらかじめ健康保険被保険者証を退職日までに返還することを徹底しておく必要があります。
■健康保険被保険者証を紛失した場合の添付書類
被保険者より「保険証をなくした」という申し出をされた場合は「健康保険被保険者証滅失届」を、また、催促しても被保険者が保険証を返還しない場合には「健康保険被保険者証回収不能届」を提出します。
退職後の健康保険
退職すると通常、社会保険(社保)は切れてしまいますので、何らかの健康保険に加入しなければなりません。
退職後の健康保険に関する選択肢は以下のとおりです。
1. 家族の扶養に入る
転職先が見つかる目処が立たない場合、および転職先での収入が130万円を切ると予想される場合には、社会保険に加入している家族(親や配偶者など)の扶養に入ることができます。
扶養に入れてもらう家族の会社で手続きを行うことで、健康保険証を受け取ることができます。扶養に入ると健康保険料がかからず、国民健康保険に入る必要もなくなるため非常に経済的です。
2. 国民健康保険に入る
市町村によって保険料は異なってきます。事前に市町村役場へ自身の保険料がいくらかを確認しておきましょう。
また、扶養家族がある場合は、その家族分の保険料がかかってしまうために注意が必要です。
ただし、国民健康保険は月末をまたいだ時のみ保険料が発生します。そのため、前職を退職後、月をまたがずに再就職をした場合は保険料がかからないというメリットがあります。
国民健康保険の加入手続き期限は14日以内です。この期間内に再就職が決まった場合は特に問題はありません。
しかし、国民健康保険に加入しないまま退職後15日以上経過し、医療機関にかかった場合、医療費は全額自己負担となります。その後、国民健康保険に加入してもその負担分が戻ってくることはありません。そのため15日以上の空白期間がある場合には、何らかの手続きをとる必要があります。
国民健康保険への加入を考えている場合には、手続きの方法、保険料の納付等について事前に各市町村へ確認することが重要です。
3. 任意継続被保険者になる
会社を退職しても、社会保険(健康保険)をそのまま任意継続できる制度があります。
任意継続被保険者の保険料は、初回の保険料は保険者の指定した日、初回以外はその月の10日(10日が土曜日、日曜日、または祝日の場合は翌営業日)までに納付しなければなりません。
任意継続被保険者となるためには、資格喪失後20日以内に申しこむ必要があります。
月をまたがずに再就職をした場合は、転職先で加入した社会保険の保険料と、任意継続被保険者の保険料を二重払いしなければならない事態が発生します。
退職後の厚生年金
退職後の厚生年金に関する扱いは、転職までの期間により異なります。
1.退職月と転職月が同じ場合
被保険者期間は、月末に在籍していた場所でカウントされるため、同じ月に退職(資格喪失)・転職(資格取得)が行われた場合、月末在籍の転職先で被保険者期間が発生するため、被保険者期間に空白はありません。
2.月末に退職し、翌月中に転職した場合
退職日が月末ならば、その月の被保険者期間は前の職場で、翌月末の被保険者期間は転職先で発生します。そのため、この場合も被保険者期間に空白はありません。
3.退職から転職までに月をまたいだ場合
退職から転職までに月末をはさんだ空白期間がある場合は、被保険者期間に空白が発生します。
そのまま放置すると国民年金も未納の状態になり、将来の年金給付額に影響があります。
このような事態を防ぐため、国民年金の加入手続きを行うことを忘れてはいけません。
このケースで退職者に配偶者がいる場合には注意する必要があります。国民年金には扶養という考えがないため、配偶者も別途の加入手続きが必要になります。
転職後に新たに厚生年金の被保険者となった場合は、配偶者も国民年金の第1号被保険者から第3号被保険者への変更手続きを行います。
この手続きを怠ると、配偶者は第1号被保険者扱いのまま放置され、将来年金を受け取る際に受給額が減ってしまうということになりかねません。
まとめ
転職における社会保険の手続きは、退職から転職までの期間の長さにより方法が異なります。
特に健康保険の場合は退職後の選択肢に幅があり、そのうえ、申込手続期間にはさほどの余裕がありません(国民健康保険は退職後14日以内、任意継続手続きは資格喪失後20日以内)。
退職前から保険料額をリサーチして、どれを選ぶか早めに決めておくことが大切です。
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