- 更新日 : 2025年6月23日
介護保険料の計算方法は?第1号・第2号被保険者の違いや保険料の取り扱いについて解説
介護保険法では、介護保険被保険者のうち、65歳以上の方を「第1号被保険者」、40歳から64歳以下の公的医療保険加入者を「第2号被保険者」と定めています。第1号被保険者と第2号被保険者とでは介護保険料の決定方法や納付方法が異なります。
本稿では、介護保険料の決定方法や納付方法について解説します。
目次
介護保険料とは?第1号被保険者と第2号被保険者の違い
介護保険料は加入者の区分(第1号か第2号か)によって計算方法や納付方法が異なります。第1号被保険者は65歳以上の方で、市区町村が保険料を決定・徴収します。一方、第2号被保険者は40~64歳の方で、医療保険(職場の健康保険や国民健康保険)と一体的に保険料を支払います。
以下の表に、第1号と第2号被保険者の主な違いをまとめます。
区分 | 対象者(加入条件) | 保険料の計算方法 | 保険料の納付方法 |
---|---|---|---|
第1号被保険者 | 65歳以上の方(介護保険制度の第1号加入者) | 市区町村ごとに基準額と所得段階に応じた保険料率を設定し、「基準額 × 所得に応じた係数」で年額保険料を算定 | 市区町村が徴収。年金月額が1.5万円以上なら年金から特別徴収(天引き)、それ未満なら納付書等による普通徴収 |
第2号被保険者 (会社員等・被用者保険) | 40~64歳で職場の健康保険組合や協会けんぽに加入している方とその被扶養者 | 標準報酬月額や賞与額 × 介護保険料率で算定(健康保険と一体で計算) ※被扶養配偶者など40歳以上の家族は個別には負担しません(被保険者の保険料に含まれる) | 勤務先の給与・賞与から天引き(健康保険料に介護分を上乗せして徴収) ※事業主が従業員分を預かり、健康保険料と合わせて納付 |
第2号被保険者 (自営業等・国民健康保険) | 40~64歳で国民健康保険に加入している方(自営業者・無職の方など) | 国民健康保険料(税)の中に介護分保険料が含まれる。市区町村ごとに定めた所得割率や均等割額等により算定(前年所得や世帯人数に応じた計算式) | 国民健康保険料として市区町村に納付(年金天引きは無し)。保険料の中で介護分が明示され、40~64歳のみ負担。 |
第1号被保険者の介護保険料
第1号被保険者の介護保険料について見ていきましょう。
計算方法
第1号被保険者の介護保険料は市区町村が3年ごとに策定する介護保険料率に基づいて決まります。各市区町村には基準となる保険料基準額(年度額)が設定され、被保険者の所得水準に応じていくつかの保険料段階(所得区分)が設けられています。計算式は、「基準額 × 所得区分に対応した割合」で、その人の年間介護保険料が算出されます。
所得が低い方は基準額の0.5倍~0.75倍程度、高い方は1.2倍~1.5倍程度(市区町村によって異なる)のように負担水準が変わります。
市区町村ごとに保険料段階の数や基準額は異なります。例えば、基準額が年額6万円の場合、所得の低い第1段階では年額3万円(月額2,500円)、中間層で6万円(月額5,000円)、高所得の方は9万円(月額7,500円)といった具合です。都市部か地方かによっても違いがあり、介護サービス見込み量や財政状況で保険料水準は変わります。
市区町村ごとの違い
市区町村により介護保険料の水準はかなり異なります。都市部ではサービス需要が多く保険料が高めになる傾向があり、地方では比較的低く抑えられる場合もあります。また、財政支援や公費投入の割合により差が生じます。
全国平均では月額保険料は年々上昇傾向にあり、厚生労働省の推計では2025年頃には全国平均で月額8,165円程度に達すると見込まれています。2024年は第9期介護保険事業計画の初年度にあたり、多くの自治体で保険料改定が行われました。高所得者の負担増・低所得者の据え置きまたは軽減といった負担見直しが行われ、負担の公平化が進められています。
納付方法
65歳以上の第1号被保険者の介護保険料は、市区町村が直接徴収します。年金受給者の場合、年金額が月額1万5千円以上ある方は原則として年金から天引き(特別徴収)されます。特別徴収では、年6回の年金支給時に介護保険料が自動的に差し引かれるため、払い忘れが防止できます。
一方、年金額が少ない方や年金未受給の方は納付書払い等による普通徴収となり、指定された期日までに口座振替や金融機関窓口で納付を行います。
新たに65歳になった方は、誕生日の前日が属する月以降に介護保険料の納付が開始されます。通常、65歳到達時には市区町村から介護保険被保険者証が交付され、あわせて保険料額の通知も届きます。年金からの特別徴収開始まではタイムラグがあるため、最初の半年程度は納付書で支払うケースもあります。
社会保険料控除
第1号被保険者として支払った介護保険料は所得税・住民税の社会保険料控除の対象となります。特別徴収で年金天引きされた場合も含め、その年に支払った介護保険料は全額が控除可能です。年末調整や確定申告で介護保険料控除の適用を受けることで、税負担が軽減されます。自治体から送付される「介護保険料納付証明書」を用いて申告しましょう。
第2号被保険者の介護保険料
第2号被保険者の介護保険料について見ていきましょう。
会社員(被用者保険加入者)の場合の計算方法と徴収
40~64歳の会社員や公務員など、健康保険組合や協会けんぽ等の被用者保険に加入している第2号被保険者は、介護保険料を健康保険料と一緒に給与天引きで納めます。計算式は健康保険の標準報酬月額と賞与額に全国一律の介護保険料率(2024年度では1.60%)を乗じて算出されます。例えば標準報酬月額28万円の場合、介護保険料は28万円 × 1.60% = 4,480円が月額の保険料となります(この金額を労使折半し、本人負担2,240円が給与から控除)。
賞与についても、支給額に同じ料率をかけて計算し、賞与支給時に控除されます。なお、標準報酬や賞与には上限が定められており、高額な給与・賞与であってもそれ以上の保険料負担は生じません。協会けんぽでは月額報酬の上限139万円、年間賞与の上限573万円が設定されています。
給与からの天引きの流れ
介護保険料は健康保険料の一部として毎月の給与および年2~3回の賞与から天引きされ、会社がまとめて納付します。被用者本人が個別に手続きする必要はありません。ただし、40歳になるタイミングで介護保険料の控除が開始される点に注意が必要です。
通常、40歳の誕生日の前日が属する月分の給与から介護保険料が引かれ始めます。そのため、誕生日が月初1日の場合は前月から計算対象です。逆に65歳到達時にはその月分をもって会社の給与からの介護保険料控除は停止となります。65歳以降は第1号被保険者として市区町村に保険料を払う形に切り替わるため、企業の担当者は社保手続き上、該当者の介護保険料控除を外す処理が必要です。
社会保険料控除
第2号被保険者として給与天引きされた介護保険料は、年末調整で自動的に社会保険料控除として扱われます。個別に申告しなくても、源泉徴収票に反映された社会保険料等の金額に介護保険料が含まれており、所得税・住民税の計算上控除されます。
自営業者など(国民健康保険加入者)の場合の計算方法と納付
40~64歳で自営業・フリーランス・無職の方など国民健康保険(国保)に加入している第2号被保険者は、介護保険料を単独で支払うのではなく、国民健康保険料(税)の一部として介護分を負担します。国民健康保険料は大きく医療分・後期高齢者支援分・介護分の3つに区分されており、40~64歳の加入者にはこのうち介護分保険料が賦課されます。65歳未満でない世帯員には介護分はかかりません。
国民健康保険の介護分保険料は、市区町村ごとに定められた計算式によって算出されます。自治体により異なりますが、一般的には以下のような構成です。
- 所得割:世帯の加入者(40~64歳)の前年所得に対し〇%の率を乗じて算定
- 均等割:加入者数に応じて一人あたり〇円を負担
- 平等割(世帯割):1世帯あたり〇円を一律負担(導入していない自治体もあります)
これらを合計したものがその世帯の年間介護分保険料となります。例えば「所得割10%、均等割1人あたり1万円」という自治体で、前年所得200万円の40代夫婦2人世帯の場合、所得割20万円・均等割2万円=合計22万円(年額)といった具合です。実際には医療分・支援分も加わった総額の国保料が算出され、世帯主宛に通知されます。
納付方法
国民健康保険料は市区町村から届く納税通知書に基づき、原則として年10~12回の分割払いで納めます。会社員のような給与天引きはなく、自身で口座振替や納付書払いにより納付します。介護分も他の分と一体化していますが、通知書等で内訳が示されるため、自分の介護保険料が年間いくらかを確認することが可能です。こちらも社会保険料控除の対象となり、国保加入者本人がその年に支払った国保料(介護分含む)は全額が所得控除されます。
最新の介護保険料率と制度改正動向
2024年の主な改定ポイントと最新料率について解説します。
第1号被保険者の保険料改定
2024年は介護保険制度開始以来、第9期(2024~2026年度)の計画初年度となり、各市区町村で保険料水準の見直しが行われました。全国平均では月額保険料が約6,000円台後半から7,000円台に上昇したと言われており、厚労省推計では2025年度には平均8,000円超になる見込みです。多くの自治体で所得段階の細分化(例:段階数を増やし高所得者からより多く負担)や、低所得者の据え置き措置などが講じられました。
従来9段階だった保険料区分を11段階に増やし、所得の高い高齢者の負担率を引き上げた自治体もあります。これらの改定により、高所得層では月額数百円~数千円の負担増、中低所得層では据え置きか微増にとどまるケースが目立ちます。
第2号被保険者の介護保険料率引き下げ
健康保険における介護保険料率が令和6年(2024年)3月分より1.82%から1.60%へ引き下げられました(協会けんぽ等全国一律の率。本人負担分は0.80%に相当)。これは高齢化の進展に伴い国庫負担割合等で調整が行われた結果で、16年ぶりの料率引き下げとなりました。企業の給与計算では2024年4月以降の控除額が若干減る形となっています。
なお、健康保険全体の保険料率(医療分+介護分)は各健康保険組合や協会けんぽ各支部で毎年見直されます。2024年度は医療分も含めた協会けんぽの総合保険料率は多くの都道府県で微減となり、例えば東京都は10.00%→9.98%に改定されています。
法制度の改正動向
令和6年の介護保険法改正では、サービス提供体制の見直しやICT活用推進などが柱となりましたが、保険料負担面でもいくつかの変更がありました。第1号被保険者の低所得者に対する保険料軽減強化や、一定以上所得者の割増強化などが国の制度として示されています。また、被保険者の利便性向上のため、口座振替の推進やマイナンバーカードを用いた電子収納の検討も進められています。
企業に関係する部分では、第2号被保険者の資格取得・喪失時の情報連携強化(適切に保険料徴収漏れを防ぐ仕組み)が挙げられます。これら制度改正に伴う具体的な保険料計算への影響は現時点では限定的ですが、将来的にはさらなる負担構造の見直しも議論されています。
介護保険料の取り扱いの注意点【企業の人事労務担当者向け】
企業の人事労務担当者にとって、従業員の介護保険料の取り扱いは社会保険事務の一環です。実務上、注意すべきポイントをまとめます。
年齢到達による徴収開始・停止
従業員が40歳になったらその月から介護保険料の控除を開始し、65歳になったらその月分で控除を終了します。人事システムや給与計算ソフトに生年月日情報を登録し、該当月に自動反映されるよう管理しましょう。中途入社社員で40歳以上のケースや、扶養家族から外れて本人が第2号被保険者になるケースなどの見落としに注意が必要です。
保険料率の定期改定への対応
毎年3月(4月納付分)に協会けんぽの保険料率改定があり、介護保険料率も変更となる可能性があります。また健康保険組合でも年度途中に料率改定が行われる場合があります。最新の料率通知を確認し、タイムリーに給与計算の控除率を更新してください。
介護保険料率は全国統一ですが、医療保険分と合算したトータル率が変更になるため、従業員への周知(控除額変動の説明)も行うと親切です。
賞与からの介護保険料控除
賞与支給時には標準賞与額に介護保険料率を乗じて保険料を控除します。標準賞与額の上限(年間573万円等)にも留意し、高額賞与の場合でも適切に計算できているか確認しましょう。賞与ごとの社会保険料控除額は従業員への明細でしっかり通知し、年末調整時に計上漏れがないようにしましょう。
65歳到達時の手続き
従業員が65歳になると第2号被保険者から外れ、市区町村の第1号被保険者になります。この際、会社での介護保険料控除が止まりますが、健康保険自体は75歳まで継続加入する点に注意してください。健康保険の資格上は「介護非該当」となりますので、資格喪失手続きは不要ですが、標準報酬月額通知などで介護保険の印字が外れることを確認しましょう。
また、本人には市区町村から新たな保険料通知が届くことを伝えておきましょう。
退職者・継続被保険者への対応
定年退職などで会社を退職し、任意継続被保険者となる場合もあります。任意継続中も40~64歳であれば介護保険料負担があります。その計算・納付は協会けんぽ等が行いますが、人事担当者として従業員から問い合わせを受けることもあるため、任意継続の保険料額(全額自己負担)に介護分が含まれる点を説明できるようにしましょう。
被保険者の立場により介護保険料の仕組みは変わる
介護保険料の計算方法や納付方法は、第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40~64歳)で大きく異なり、それぞれの立場で押さえるべきポイントがあります。
2024~2025年にかけて介護保険料率や制度にも変更が生じています。今後も高齢化が進む中で保険料水準の見直しは避けられないとされています。介護保険料の仕組みを理解し、適切に対応することで、将来の介護に備えた安心にもつながります。
企業の担当者の方も、本記事のポイントを踏まえて社内の社会保険実務を円滑に進めてください。丁寧かつ正確な保険料の取り扱いによって、従業員の方々も安心して働き続けることができるでしょう。
よくある質問
介護保険料とは何か?
40歳以上の方が、介護サービスを受けるため必要な財源を確保する保険制度です。詳しくはこちらをご覧ください。
第1号被保険者と第2号被保険者の違いは?
65歳以上の被保険者のことを「第1号被保険者」40歳から64歳未満の被保険者のことを「第2号被保険者」と呼びます。詳しくはこちらをご覧ください。
介護保険料の計算方法は?
被保険者の年齢や介護保険制度の運用者である市町村によって課税基準や金額が変わってきます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
労基署の臨検とは?書類の確認ポイント、是正勧告があった場合の対応
「立ち入り検査で何を見られるのか分からない」 「準備が整っていなかったらどうしよう」 労基署の臨検に対して不安を抱く人事労務担当者もいるでしょう。 臨検は企業の問題点を明らかにし、改善するための機会であり、適切な準備と対応を知れば、不安を軽…
詳しくみる離婚をしたら社会保険はどうなる?会社が行う手続き
従業員が離婚したら、会社は健康保険喪失証明書を発行するといった被扶養者関連の手続きをします。配偶者が離婚後すぐに就職しない場合、資格喪失日から14日以内に社会保険から国民健康保険への切り替えが必要なこともおさえておくと、問い合わせにスムーズ…
詳しくみる社会保険の種類について解説!一覧表付き
社会保障制度のなかでも最も身近に感じるのが社会保険制度といえるでしょう。病気やケガの際には医療保険や労災保険、老後の生活には公的年金、会社退職時には雇用保険と、誰にとっても頼りになります。 企業の人事労務担当者にとって社会保険の知識は必須で…
詳しくみる源泉徴収の計算方法と対象となる所得
わたしたちが払っている税金は、1年間の総収入から基礎控除や社会保険料などを差し引きした後、その残額に税率を掛けることにより計算されます。 一般的なサラリーマンの場合、勤め先の会社側が税額を計算するので給料からあらかじめ天引きされています。こ…
詳しくみる労働保険の年度更新はどうやる?やり方と注意点を解説
従業員を雇用している事業所が年に1回必ず行わなければならないのが、労働保険の年度更新です。年度更新の際には、前年度の確定保険料と今年度の概算保険料を計算しなければなりません。期限の直前にあわてないよう、手続きのやり方を確認しておきましょう。…
詳しくみる厚生年金と国民年金はいくらもらえる?受給額の計算方法を解説
厚生年金と国民年金がいくらもらえるかは、年金の種類によって異なります。国民年金は納付期間が長ければ長いほど満額の受取額に近づきますが、厚生年金の場合は報酬の額や加入期間に応じて変動します。 ここでは、年金制度の基本や計算方法を解説するととも…
詳しくみる