- 更新日 : 2025年11月20日
有給休暇の義務化とは?5日が最低?中小企業が取るべき対策
年次有給休暇は、労働者のリフレッシュを目的として法制化されましたが、取得率は低く推移しています。そこで、取得のルールを義務化することで有給休暇の取得率を向上させるために労働基準法が改正されました。
今回は、この法改正による取得義務化の概要、開始時期、対象者や罰則、中小企業が取るべき対策などについて見ていきます。
目次
有給休暇の義務化とは?
労働基準法では、労働者が心身をリフレッシュさせるなどのために、原則として有給休暇を労働者の請求する時期に取得させることを義務付けています。しかし、労働者側が請求自体を躊躇すること、また、周りの同僚に気兼ねをすることが多く、有給休暇の取得が進まないため、その取得促進が課題になっていました。
そこで、有給休暇の取得を法律で義務化することによって少しでもその取得率が向上するように法改正が行われました。施行時期については、大企業も中小企業も同じ時期に施行されています。
ここからは、法改正の内容、中小企業に実施猶予はあるのか、違反の際の罰則について解説していきます。
2019年4月の働き方改革関連法で改正
有給休暇の取得率が低調なことを受けて、2019年4月1日に改正された労働基準法では、年に10日以上の有給休暇が付与された労働者については有給休暇を取得させることが義務化されました。
この法改正によって、会社は労働者の有給休暇の管理を適正に行うとともに、取得状況を有給休暇管理簿で管理して、対象の労働者には1年間で5日間の有給休暇を確実に取得させなければならなくなりました。
有給休暇の義務化に実施猶予はある?
有給休暇の年5日取得の義務化は、企業規模などに応じた実施猶予期間などはなく、2019年4月1日から一斉に施行されました。
実施しなかった場合、罰則はある?
対象の労働者に有給休暇の年5日取得の義務を果たせなかった会社については法令違反となります。違反した際の罰則として、対象の労働者1人につき30万円以下の罰金が科されるのです。違反は対象労働者1人ごとに罰則が適用されますので、違反した労働者の人数により罰金の額も増えていきます。
したがって、有給休暇の取得に漏れがないよう正確に管理していくことが大切です。また、取得が進んでいない労働者には取得を促すことも必要になるでしょう。
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有給休暇の義務化は企業の業績にどのように影響する?
年次有給休暇の取得義務化は、単なる法令対応を超えて、企業の業績や職場環境にもさまざまな影響を与えています。短期的には業務調整や生産性の低下を懸念する声もありますが、長期的には職場全体の活性化や業績向上につながる可能性もあります。ここでは、そのプラス・マイナス両面の影響を整理します。
メリット:従業員の生産性や定着率が向上する
有給休暇の取得が進むことで、従業員が十分な休息を取り、心身ともにリフレッシュする機会が増えます。これにより、業務への集中力が高まり、作業効率が改善されるケースが多く見られます。結果として、同じ時間でより高い成果を出せるようになるため、生産性の向上が期待できます。
また、休みが取りやすい職場は従業員の満足度が高く、離職率の低下にも寄与します。若年層の労働者にとっては「有給が取れるか」は職場選びの大きな判断基準の一つとなっており、優秀な人材の採用・定着にもつながるという点で、企業の競争力強化に貢献します。
リスク:業務の属人化や人員不足によって業績が低下する
一方で、休暇の取得義務を徹底するあまり、業務分担がうまくいかず、生産性が一時的に低下するリスクもあります。中小企業や特定の人材に業務が集中している現場では、「その人がいなければ回らない」業務が滞ることで、納期の遅延や品質の低下が発生する可能性があります。さらに、繁忙期に複数の従業員が同時に有給を取得した場合、代替要員の確保が難しく、現場に過度な負担がかかることで業績に悪影響を与えることも懸念されます。
管理部門にとっても、有給取得のスケジュール調整や勤怠記録の管理に時間や労力を割かれ、間接的なコストが増えるケースも少なくありません。
経営視点で制度を前向きに活用することが重要
このように、有給休暇取得義務化は企業にとって負担となる一方で、制度を前向きに活用すれば中長期的な成長機会にもなり得ます。業務の平準化、チーム間の協力体制の構築、勤怠管理システムの導入などにより、休暇取得による業務への影響を最小限に抑える工夫が求められます。適切な制度設計と職場づくりを行うことで、業績へのプラス効果を最大化し、法令遵守と企業成長を両立させることが可能です。
義務化に伴い中小企業が取るべき対策
有給休暇の年5日取得義務化によって中小企業が取るべき対策についてですが、有給休暇の管理担当者がきちんと法改正に対応できているかどうかを確認しながら正確な有給休暇の管理を行うことが大切です。対象者の年5日取得が遅れている場合は早めに取得を促すなどして適切な有給休暇の管理を進めていきましょう。
ここからは、義務化に伴って注意する必要があるルールをいくつか見ておきます。
時間単位での「時季指定」は不可
ただし、半日単位での有給休暇を取得した場合においては、その取得1回につき0. 5日として、年5日取得義務から控除することができます。
特定の条件においてパート・アルバイトも対象
パート・アルバイトなど、所定労働日数が少なく1年度に付与される有給休暇の日数が10日未満の労働者については、有給休暇の年5日取得義務の対象者にはなりません。
前年度から繰り越された有給休暇の日数はカウントせず、当年度に付与された有給休暇の日数が10日以上の労働者が年5日取得義務の対象者になります。
「年次有給休暇管理簿」の作成・保存が必要
会社は、労働者ごとに有給休暇管理簿を作成して5年間(経過措置により当面3年間)保存しなければなりません。有給休暇管理簿では、有給休暇付与基準日、取得日、取得日数を労働者ごとに明示した帳簿を作成してください。労働者名簿や賃金台帳と合わせて作成しても問題はありません。
尚、必要なときにいつでも出力できる仕組みにした場合には、システム上で管理することにしても差し支えないとされています。
有給休暇の取得状況を適切に管理するポイント
年次有給休暇の取得義務化により、企業には従業員の取得状況を正確に把握し、法定の取得日数を確実に消化させる義務が生じています。適切な管理ができていないと、未取得による法令違反や罰則のリスクが発生します。ここでは、有給休暇の取得状況を適正に管理するためのポイントを解説します。
取得状況を定期的にチェックし、取得を促進する
年次有給休暇管理簿を作成するだけでなく、定期的に取得状況をチェックし、未取得者への対応を行うことが重要です。たとえば、年に数回のペースで「有給取得進捗リスト」を作成し、取得日数が少ない従業員には、管理者からの声掛けや面談を通じて取得を促します。従業員本人の希望で取得が進んでいない場合には、計画的な取得日指定を提案するなど、早めの対応が不可欠です。取得義務の5日は「時季指定」が可能なため、最終的には企業側で取得日を決定しなければなりません。
計画的付与制度を活用して管理しやすくする
有給休暇の一部を会社側が計画的に取得させる「計画的付与制度」を活用することも、管理の手間を軽減する有効な手段です。たとえば、会社の一斉休業日や年末年始・夏季休暇の一部を計画的付与日として設定することで、効率的に取得日数を確保できます。計画的付与を実施するには労使協定の締結が必要ですが、全社的な休暇取得の習慣をつくることで、取得率向上にもつながります。
管理者教育を徹底して職場全体で取り組む
取得管理の徹底には、現場の管理職による理解と実行が欠かせません。部下の有給取得状況を把握し、必要に応じて日程調整を行う役割を担う管理者が、制度の仕組みを正しく理解していないと、適切な対応が取れなくなります。そのため、年次での管理者研修や運用マニュアルの整備、勤怠管理システムの操作研修などを通じて、組織全体の運用レベルを底上げすることが求められます。
有給休暇を取得しやすい職場づくりのポイント
有給休暇取得義務化によって、制度上は取得が保障されていても、職場の雰囲気や運用方法によっては「取りにくい」と感じる従業員も少なくありません。ここでは、有給休暇を実際に取得しやすくするために、企業が取り組むべき工夫を紹介します。
上司や管理職が積極的に取得を実践する
従業員が有給を取得しやすいかどうかは、上司の行動に大きく左右されます。管理職が率先して有給休暇を取得することで、部下にも「取得してよい」というメッセージが伝わり、心理的なハードルが下がります。また、取得を阻害するような発言や態度を避け、肯定的に促す文化を醸成することも重要です。
業務の属人化を防ぎ、誰でも休める体制を整える
「自分が休んだら仕事が回らない」と感じることが、有給取得の妨げになることがあります。そこで、業務を分担・共有し、誰でも一定の業務をカバーできる体制づくりが必要です。日常的な業務マニュアルの整備や、タスク管理の透明化が有効です。
有給取得を促進する仕組みやルールを設ける
制度面では、年次の取得推進キャンペーンや有給取得目標の設定、半日・時間単位での取得制度の活用などにより、取得を後押しする仕組みが効果的です。また、有給を取得しやすいタイミングを明示したカレンダーの共有など、現場に即した工夫も取得率向上につながります。
従業員が有給休暇の取得を拒否した場合はどう対応する?
年次有給休暇の取得が義務化されたことで、企業は年10日以上の有給休暇が付与された従業員に対し、毎年5日以上を取得させる法的義務を負います。しかし、従業員本人が取得を拒否するケースもあり、企業側は適切な対応が求められます。ここでは、対処法を解説します。
本人の希望を尊重しつつ時季指定を行う
従業員が自発的に5日間の取得をしない場合、企業は「時季指定義務」に基づいて有給休暇を指定する必要があります。有給休暇は労働者の権利であると同時に、企業には取得させる責任があります。そのため、本人が理由なく取得を拒否しても、企業は「いつ休暇を取るか」を指定し、取得させることが求められます。ただし、本人の希望を一切無視するのではなく、業務や家庭の事情を配慮しつつ、できる限り双方が納得できる日程で指定するのが望ましい対応です。
拒否の背景を確認して調整を試みる
取得を拒否する理由が業務の都合や他の社員への配慮であることもあります。この場合は、代替要員の確保や業務の分散を検討し、従業員に安心して休暇を取得してもらえる環境を整えることが大切です。心情的な抵抗がある場合は、制度の目的や義務化の背景を丁寧に説明し、理解を得る努力も必要です。最終的に、企業が取得日を決定し、取得記録を残すことで法令上の義務は果たしたことになります。
退職予定の従業員に取得義務はある?
退職予定の従業員であっても、有給休暇が年10日以上付与されている場合には、原則として取得義務の対象となります。ただし、退職日までに5日間の取得が現実的に不可能な場合(例:基準日から5日以内の退職など)は、義務の対象外とされることがあります。企業は、原則として退職予定者に対しても取得義務が課せられることに注意し、義務を果たせないことがないようにしなければなりません。
育児休業や介護休業中の従業員に取得義務はある?
休業中の従業員には、有給休暇の取得義務は原則として発生しません。取得義務の対象となるのは、実際に労務提供が可能な期間がある従業員であり、休業中は労働義務が停止しているため、企業側が時季を指定して有給休暇を取得させることはできません。ただし、休業から復職した後に有給休暇の付与日から1年以内に5日間の取得が可能な場合は、その時点から取得義務の管理が必要になります。ただし、復帰日からでは5日取得することが不可能である場合などには、取得可能な日数だけ取得させれば良いとされています。
有給休暇について適切な管理を行いましょう
働き方改革関連法の施行によって、労働基準法が改正され、年次有給休暇についてもその取得率を向上させる取り組みとして「年5日の有給休暇の取得の義務付け」が行われています。
今回は、有給休暇の年5日取得義務化の概要やルール、中小企業が取るべき対策について説明してきました。
大企業、中小企業に関わらず、有給休暇取得義務化は労働者のワークライフバランスにもつながる取り組みです。法令違反による罰則を受けることがないよう、全ての労働者の有給休暇の付与日数や使用日数などに注意しながらしっかりと適正な管理を行いましょう。
よくある質問
有給休暇の義務化とはなんですか?
有給休暇取得率が低い現状を踏まえて、2019年4月1日の改正労働基準法で、全ての会社において年に10日以上有給休暇が付与された労働者には、年に5日の有給休暇を取得させることが義務付けられました。詳しくはこちらをご覧ください。
有給休暇の義務化に伴い、中小企業が取るべき対策を教えてください
有給休暇の管理担当者が労働者の有給休暇を正しく管理すること、具体的には、法改正への対応の確認や有給休暇管理簿の作成による基準日、残日数、取得日数、年5日取得義務のある労働者の取得状況の把握などです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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