• 更新日 : 2025年9月2日

入社書類の一括管理方法を解説!ツールの選び方も紹介

入社書類の一括管理とは、雇用契約書・誓約書・扶養控除等申告書などの各種書類を、一つのシステムまたはプロセスで統合的に管理することを指します。

本記事では無料ツールでのペーパーレス化から、クラウドシステムの導入、さらにアウトソーシングの選択肢まで、業務の効率化につながる入社書類の一括管理についてご紹介します。

入社書類を一括管理する5つの方法

入社書類を一括管理する最適な方法は、企業の規模やかけられるコスト、目指す効率化のレベルによって異なります。

ここでは代表的な5つの管理方法を解説します。自社の状況に合う方法はどれか、比較しながら読み進めてみてください。

1. Excelやスプレッドシートでの管理

最も手軽に始められるのが、ExcelやGoogleスプレッドシートを活用する方法です。入社者リストや提出書類のチェックリストを作成し、クラウドストレージで共有すれば、簡易的な一括管理が可能です。

多くの人が使い慣れているため導入のハードルは低く、従業員の規模が少ない企業では導入コストがかからないという利点があります。

ただし入力規則の徹底や同時編集時のトラブル、バージョン管理の煩雑さといった課題があり、従業員の規模数によっては手作業の多さから根本的な効率化にはつながりにくい側面があります。

2. Googleフォームの活用

Googleフォームを使えば、入社者に必要な情報をWeb上で入力してもらうことが可能です。回答は自動的にスプレッドシートに集計されるため、転記の手間が省けます。無料で利用でき、カスタマイズ性も高いのが魅力です。

ただし、収集できるのはあくまで情報であり、身元保証書や誓約書といった署名・捺印が必要な書類の回収には別途フローが必要です。

また、システムの標準機能だけでは複雑な権限設定や労務管理システムとの高度な自動連携は難しい場合があります。

3. 人事労務システムの導入

現在、入社手続きに対応した人事労務システムの導入が有力な選択肢となっています。クラウド型のシステムは、入社者情報の収集から社会保険手続き、雇用契約の締結までをWeb上でまとめて処理できるものもあります。

入社手続きのペーパーレス化はもちろん、従業員情報のデータベース化により、その後の労務管理も大幅に効率化されます。業務効率化による人件費やペーパーコストの削減が期待できるため、費用対効果を検討すべき選択肢の一つです。

4. 電子契約サービスの活用

すでに使用している管理方法にプラスする形で、電子契約サービスを連携させる方法もあります。これは、特に雇用契約書や秘密保持契約書など、法的な効力を持つ署名が必要な書類のやり取りに特化した解決策です。

入社者情報の管理はExcelなどで行い、契約関連のみを電子化することで、コストを抑えつつ重要な部分の効率化とコンプライアンス強化を実現できます。他の方法と組み合わせやすい点がメリットです。

5. アウトソーシングの利用

社内のリソースが限られている場合に有効なのが、入社手続き業務そのものを専門の外部業者へ委託するアウトソーシング(BPO:ビジネス・プロセス・アウトソーシング)です。書類の発送・回収からデータ化、チェック作業までをプロに任せることで、担当者はコア業務に専念できます。

専門知識を持つ業者が対応するため、法改正への対応や業務品質の安定化も期待できますが、社内にノウハウが蓄積しにくい点や、委託コストを考慮する必要があります。

また、アウトソーシング先の品質はベンダー・拠点・担当者でばらつくため、SLA(サービス品質保証契約)と定期監査で実績を確認することが重要です。

入社書類の一括管理が重要視される3つの理由

1. 従来の紙管理が抱える3つの限界

従来のアナログな管理方法では、多くの企業が共通の課題を抱えています。まず、書類の印刷、配布、回収、保管にかかる時間とコストの非効率性です。

次に、手作業による転記ミスや、書類の紛失といったヒューマンエラーのリスク。そして、鍵付きのキャビネットで保管していても、物理的な盗難や災害によるセキュリティ・BCP(事業継続計画)上の懸念です。これらの限界は、企業の成長を妨げる要因にもなり得ます。

2. 法改正が後押しするペーパーレス化の流れ

電子帳簿保存法は 2022 年改正に続き、2024年1月1日から電子取引データの電子保存が全事業者に原則義務化されました。これにより、たとえば雇用契約書を電子メールで送受信した場合、そのデータは電子保存の対象となります。

法令を遵守し、適切な労務管理を行うためにも、入社手続きのペーパーレス化は避けて通れないテーマなのです。

参考:電子帳簿保存法関係|国税庁

3. 従業員体験の向上という新たな視点

入社手続きは、新入社員と会社の最初の重要な接点です。スマートフォン一つで手続きが完了するスムーズな体験は、入社者の負担を軽減するだけでなく、先進的でDX化に対応している企業というポジティブな印象を与えるでしょう。

このような優れた従業員体験(Employee Experience)は、入社後のエンゲージメントや定着率の向上にもつながりやすく、採用競争力を高める上で重要な要素の一つとなっています。

入社書類の一括管理にはツール活用が効果的

手作業の限界を根本から解決できる

Excelや紙での管理では、担当者のスキルや注意力に頼る部分が多く、転記ミスや督促漏れ、進捗状況の不透明さといった問題が起こりがちです。

優れたツール、特に人事労務システムには、入力内容の自動チェック機能や、未提出者へのリマインドメール自動送信機能、誰がどこまで手続きを終えたか一目でわかるダッシュボード機能などが備わっています。

これらは、ヒューマンエラーのリスクを低減し、業務の属人化を解消する上で効果が期待できます。

無料から有料まで状況に応じて使い分けが可能

「いきなり有料ツールはハードルが高い」と感じる場合、まずはGoogleフォームのような無料ツールから始めるのがよいでしょう。情報の収集を自動化するだけでも、一定の効果は得られます。

従業員数が増え、個人情報のセキュリティ強化や、その後の労務管理・給与計算とのデータ連携まで見据えるなら、有料のクラウドシステムの導入を検討するのもよいでしょう。

企業の成長フェーズや解決したい課題の深さに応じて、ツールのステップアップを検討するのが賢い選択です。

入社書類の一括管理で失敗しないシステムの選び方

抜本的な解決策として人事労務システムの導入を検討する企業は多いでしょう。しかし、どのサービスを選べばよいか迷ってしまうかもしれません。自社の課題を解決し、スムーズに運用を軌道に乗せるためには、いくつかの重要な選定ポイントがあります。

1. どこまで自動化できるか対応範囲の確認

システムによって、自動化できる業務範囲は異なります。入社手続きに特化したものから、年末調整、給与計算、勤怠管理までカバーするオールインワン型までさまざまです。

まずは入社手続きの課題を解決することが最優先ですが、将来的に他のバックオフィス業務も効率化したいと考えている場合は、拡張性や連携のしやすさも視野に入れて検討しましょう。

2. 万全なセキュリティ対策

従業員のマイナンバーをはじめ、機微な個人情報を大量に扱うため、セキュリティ対策は最も重要な選定基準です。

通信の暗号化(SSL/TLS)、IPアドレス制限、二要素認証といった基本的な機能はもちろんのこと、第三者機関によるセキュリティ認証(ISMS認証など)を取得しているかどうかも、信頼性を判断する上での大きな指標となります。

3. 担当者・入社者双方にとっての使いやすさ

高機能なシステムであっても、使いこなせなければ意味がありません。人事担当者にとって管理画面が直感的でわかりやすいか、そして何よりITに不慣れな入社者でも迷わずスマートフォンなどで手続きを進められるかが重要です。

無料トライアルやデモを活用し、実際に操作感を試してみることをおすすめします。

4. サポート体制の充実度

システムの導入初期や、法改正があった際には、不明点やトラブルが発生しがちです。電話やチャット、メールなどで気軽に問い合わせができるか、ヘルプページやマニュアルは充実しているかなど、サポート体制の手厚さを確認しましょう。

導入時の設定を代行してくれるサービスや、専任の担当者がつくプランの有無も比較ポイントになります。

5. 料金体系と費用対効果

料金体系は、従業員数に応じた月額課金制が一般的です。初期費用やオプション料金の有無も必ず確認しましょう。

ただし、単純な価格の安さだけで選ぶのは危険です。システム導入によって削減できる作業時間や人件費、ペーパーコストなどを算出し、費用対効果の視点で判断することが、失敗しないための鍵となります。

入社手続きの一括管理で業務効率化を実現しよう

本記事では、入社書類を一括管理するための5つの具体的な方法から、ツール活用の重要性、システムの選定ポイントまで幅広くご紹介しました。

入社手続きの一括管理は、単なる業務効率化にとどまらず、ヒューマンエラーの削減、従業員体験の向上、ひいては戦略的な人事へのシフトまで実現できる取り組みです。自社の課題や規模に応じて無料ツールから段階的に導入し、最適なシステムを連携させることで、人事部門の効率化やDX推進を実現できるでしょう。


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