• 更新日 : 2025年6月19日

雇用契約書の保存期間は5年|保存の起算日や適切な保存方法も紹介

雇用契約書の保存期間は5年です。2020年4月に労働基準法が改正され、3年から5年に延長されました。ただ、当面の間は3年とする経過措置が講じられています。

雇用契約書の保存期間を調べている人の中には「保存する起算日はいつ?」「5年の保存が義務化されるのはいつから?」などと疑問に思っている人もいるでしょう。

そこで本記事では、雇用契約書の保存期間や起算日、経過措置の詳しい内容などを解説しています。適切な保存方法や保存を怠った場合の罰則もまとめています。

雇用契約書とは?

雇用契約書とは、企業と労働者の間で雇用契約が成立したことを証明するための書類です。労働条件の内容を明らかにし、記載された条件のもとで労働に従事することに同意したと明確化する役割もあります。

雇用契約書に発行の義務はありません。企業と労働者の双方の合意があれば、口頭でも契約は締結できます。

ただ、「言った、言っていない」のトラブルが発生する可能性があるため、雇用契約書を発行するのが望ましいです。雇用契約書と似た書類である労働条件通知書と兼用して「労働条件通知書 兼 雇用契約書」を作成する会社もあります。

雇用契約書の保存期間

労働基準法の第109条により、雇用契約書の保存期間は5年と規定されています。雇用契約書を電子化した場合でも、5年保存する必要があります。

もともとは3年でしたが、2020年4月に労働基準法が改正されて5年に延長されました。ただし、改正当時から当面の間は引き続き3年とする経過措置が講じられているため、3年保存するか5年保存するかは会社の任意です。

いつ経過措置が終了して、5年の保存が義務化されるかは明言されていません。

経過措置が終了しても対応できるように、保存の起算日が2020年4月以降の契約書は5年、2020年3月以前の契約書は3年と分かるように整理しておきましょう。もしくは、経過措置が終了することを見据えて、今のうちから5年間保存する体制を整えるのもおすすめです。

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

雇用契約書を保存する起算日

雇用契約書を保存する起算日は、労働者が退職した日もしくは死亡した日です。労働基準法施行規則の第56条にて定められています。

たとえば、2025年6月18日に退職した人の雇用契約書は、5年後の2030年6月17日まで保存する必要があります。経過措置が講じられているため、3年後の2028年6月17日まででも問題ありません。

労働者が入社した日や雇用契約を締結した日が起算日となるわけではないため注意しましょう。

参考:労働基準法施行規則 | e-Gov 法令検索

雇用契約書の保存方法

雇用契約書の保存方法には、書面と電子データの2通りの方法があります。それぞれの保存方法について、保存の要件や注意点などを以下より解説します。

書面として保存

書面で交付した雇用契約書は、書面のまま保存が義務づけられています。年度別に分けてファイルやフォルダなどに保存すると良いでしょう。契約を締結した従業員・契約の締結日・更新日などの情報をまとめた管理台帳を作成すると、必要なときに探しやすいです。

また、書類をスキャンしてPDFとして保存する「スキャナ保存」も活用可能です。

ただし、PDF化した雇用契約書はコピーとして扱われるため、証拠としての法的効力が認められない可能性があります。PDF化したとしても、契約書が本物であることを証明するために原本も保管しておくことが推奨されます。

電子データとして保存

雇用契約書を電子データで交付し、そのまま電子データとして保存する方法もあります。具体的には、電子契約サービスや社内のファイル管理システムを利用して保存する方法です。

電子契約サービスとは、雇用契約書の作成・締結・管理までクラウド上で完結できるサービスのことです。リモートで契約を締結できる、必要な雇用契約書を簡単に検索できる、などのメリットがあります。

ファイル管理システムとは、電子化された書類を一括で管理するシステムのことです。契約更新の時期を通知してもらえる、アクセス権限を細かく設定できる、といった特徴があります。

なお、雇用契約書を電子データとして交付できるのは、労働者が希望している場合に限られます。希望を伺ったときに、書面が良いと言われたり電子データでの交付を拒否されたりした場合、書面で雇用契約書を交付しなければならないため注意しましょう。

雇用契約書の保存を怠った場合の罰則

雇用契約書を保存期間の途中で破棄したこと、そもそも保存していなかったことが判明した場合、労働基準法の第120条により30万円以下の罰金が科される可能性があります。

雇用契約書は、企業と労働者の双方が労働条件に合意したことを証明する書類です。

雇用契約書をきちんと保管していれば、トラブルや問題が起こったときに証拠として確認できます。よって、労働基準法で規定されている保存期間は必ず守りましょう。

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索

保存する必要がある主な書類

保存する必要がある主な書類を年数別で紹介します。

2~4年|健康保険・厚生年金・雇用保険に関する書類

2〜4年保存する必要がある主な書類は以下の通りです。

種類保存期間起算日
健康保険に関する書類
(健康保険資格取得確認通知書など)
2年退職日もしくは死亡日
厚生年金に関する書類
厚生年金保険資格取得確認通知書など)
2年退職日もしくは死亡日
雇用保険に関する書類
(資格取得確認通知書など)
2年
(一部は4年)
退職日もしくは死亡日
労災保険に関する書類
(療養補償給付たる療養の給付請求書など)
3年退職日もしくは死亡日

健康保険・厚生年金・雇用保険に関する書類は2年、労災保険に関する書類は3年保存してください。

なお、雇用保険の被保険者に関する書類の保存期間は、2年ではなく4年であるため注意しましょう。

5年|雇用契約・賃金・労務管理に関する書類

5年保存する必要がある主な書類は以下の通りです。

種類保存期間起算日
雇用契約に関する書類
(雇用契約書、労働条件通知書など)
5年退職日もしくは死亡日
解雇に関する書類
(解雇決定関係書類など)
5年退職日もしくは死亡日
災害補償に関する書類
(診断書、領収書など)
5年補償の終了日
賃金に関する書類
賃金台帳、賃金決定関係書類など)
5年書類により異なる

労働者や業務に関する書類
(労働者名簿、出勤簿、退職関係書類など)

5年書類により異なる

上記の書類の保存期間はいずれも5年です。

ただし、保存の起算日は書類によって異なります。たとえば、雇用契約書や解雇決定関係書類などは退職日もしくは死亡日、賃金台帳や出勤簿は最後の記入日が起算日です。

なお、労働基準法の第109条の対象である書類は、2020年4月の法改正で保存期間が3年から5年に延長されましたが、経過措置により当分の間は3年となっています。よって保存期間を5年ではなく3年としても問題ありません。

参考:改正労働基準法等に関するQ&A|厚生労働省労働基準局

7〜10年|税務・会計・決算に関する書類

7年〜10年保存する必要がある主な書類は以下の通りです。

種類保存期間起算日
年末調整に関する書類
給与所得者の配偶者特別控除申告書など)
7年年末調整をする年の
翌年1月10日の翌日
確定申告に関する書類
仕訳帳総勘定元帳など)
7年
(一部は5年)
確定申告の申告期限の翌日
株主総会や決算に関する書類
(株主総会の議事録、貸借対照表など)
10年書類により異なる

年末調整や確定申告に関する書類は7年、株主総会や決算に関する書類は10年保存しなければなりません。

また保存の起算日も書類によって異なり、たとえば株主総会の議事録は株主総会の日、貸借対照表は作成日が起算日です。

なお、確定申告に関する書類のうち請求書や白色申告の棚卸表などは、保存期間が5年となっています。

参考:記帳や帳簿等保存・青色申告|国税庁

雇用契約書の保存に関するよくある質問

最後に雇用契約書の保存に関して、よくある質問をいくつか紹介します。

保管期限を過ぎた雇用契約書はどのように破棄すべき?

保管期限が過ぎた雇用契約書は、シュレッダーにかけたり溶解処理業者に依頼したりして破棄すべきです。情報漏洩を防ぐために、雇用契約書を復元できない状態にする必要があるためです。

シュレッダーで破棄する場合は、細断サイズが細かいタイプのシュレッダーを使用することをおすすめします。

都度書類をシュレッダーにかける手間を省きたい場合は、溶解処理業者に依頼すると良いでしょう。溶解処理業者に依頼すれば、復元が不可能な状態にまで雇用契約書を溶かしてくれます。

雇用契約書の原本は企業と労働者のどちらが保管すべき?

契約書の原本が一通しかない場合は、契約における主要な当事者が原本を保管するのが一般的です。

雇用契約書に関しては会社側で原本を保管することが適切とされます。会社できちんと管理すれば、改ざんや紛失などのリスクも抑えられるでしょう。

ただ、基本的に契約書は二通作成し、当事者がそれぞれ原本を保管します。特別な理由がない限りは原本を二通作成して、会社と従業員の双方が原本を保管してください。

雇用契約書の保存期間はなぜ延長されたの?

雇用契約書の保存期間が延長されたのは、法改正によって賃金の債権に関する消滅時効が2年から5年に延長されたことと関係しています。

賃金の債権に関する消滅時効とは、未払いの賃金や残業代があった場合に請求できる権利が消滅するタイムリミットのことです。

賃金債権の消滅時効が延長されたと同時に、雇用契約書だけでなく賃金台帳や労働者名簿などの保存期間も延長されました。

なお、賃金債権の消滅時効や特定の書類の保存期間は延長されましたが、改正当時から当面の間は3年とする経過措置が講じられています。

参考:未払賃金が請求できる期間などが延長されています|厚生労働省


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