- 更新日 : 2025年4月1日
特定技能外国人を採用する方法|受け入れ条件や必要な届出も解説
特定技能外国人を採用するには、必要な手続きを行ったり届出を提出したりする必要があります。ただ、「どのような手続きを行えばいいの?」「どのような状況で何の届出が必要?」などと疑問に思っている人もいるでしょう。
そこで本記事では、特定技能外国人を採用する際に必要な手続き・届出、受け入れられる企業の条件などを解説します。
目次
特定技能には2種類ある
特定技能とは、在留資格のうちの一つです。人材不足を解消するべく、専門性や技能を持った外国人を受け入れるために創設されました。
特定技能には、特定技能1号・特定技能2号の2種類があります。それぞれの違いを下の表にまとめました。
特定技能の種類 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
---|---|---|
技能水準 | 特定の分野に関する相当程度の 知識または経験を保有 | 特定の分野に関する熟練した 知識または経験を保有 |
滞在期間 | 4ヶ月・6ヶ月・1年ごとに 更新が必要 | 6ヶ月・1年・3年ごとに 更新が必要 |
日本語能力 | 日本語能力を試験で確認 | 日本語能力の試験は原則不要 |
家族の帯同 | 基本的には不可 | 条件を満たせば可能 |
就労できる分野 | 16分野 | 11分野 |
上記の表より、特定技能2号は特定技能1号よりも、専門的な技能が必要であると分かります。また、特定技能2号の方が、滞在期間や家族の帯同などが緩和されています。
令和6年の出入国在留管理庁の調査によれば、特定技能1号を持つ外国人は251,594人です。一方、特定技能2号を持つ外国人数は153人であり、1,500倍以上もの差があります。
多大なる差が生まれてしまったのは、特定技能2号の対象分野が元々2つのみであったこと、取得が難しいことなどが原因であると考えられます。
参考:特定技能ガイドブック|出入国在留管理庁、特定技能1号在留外国人数|出入国在留管理庁、特定技能2号在留外国人数|出入国在留管理庁
特定技能1号
特定技能1号とは、特定の分野に関して相当程度の知識や経験を持つ外国人が取得できる在留資格です。
- 在留期間:4ヶ月・6ヶ月・1年ごとに更新
- 日本語能力:日本語能力を試験で確認
- 家族の帯同:基本的には不可
- 就労できる分野:16分野
在留期間については、4ヶ月・6ヶ月・1年ごとに更新が必要です。ただし、通算で5年までしか日本に在留できないため、通算で5年が経過したら母国へ帰国したり特定技能2号を取得したりしなければなりません。
また、日常生活や業務で必要な日本語能力は試験で確認されます。「日本語能力試験」でN4レベルを取得するか「国際交流基金日本語基礎テスト」でA2レベルを取得する必要があります。
特定技能1号を持つ外国人は、家族を日本に滞在させられません。特定技能2号であれば、家族を滞在させられます。
特定技能1号を取得すれば、16分野すべてが就労できる対象となります。なお、介護の分野で3年以上就労した場合、国家資格の「介護福祉士」を取得することで在留資格の「介護」に切り替え可能です。
h3:特定技能2号
特定技能2号は、特定の分野に関して熟練した知識や経験を持つ外国人が取得できる在留資格です。
- 在留期間:6ヶ月・1年・3年ごとに更新
- 日本語能力:試験での確認は不要
- 家族の帯同:条件を満たせば可能
- 就労できる分野:11分野
在留期間は6ヶ月・1年・3年ごとに更新が必要です。上限はないため、更新し続ければ何年でも日本に滞在可能です。永住権を取得できる可能性もあります。
日本語能力については、試験での確認は不要とされています。特定技能2号を受け入れる企業が追加で日本語試験を受験させる必要もありません。
また、本人に家族を扶養する能力があれば、配偶者と子どもなら帯同可能です。両親や兄弟姉妹などは、扶養する能力があっても帯同できません。
特定技能2号が就労できる対象分野は、介護を除く11分野です。介護は在留資格として「介護」を取得できるため、特定技能2号の対象分野に含まれていません。
特定技能外国人の受け入れ条件は2つ
特定技能を持つ外国人を受け入れるには、以下2つの条件を満たす必要があります。
- 特定産業分野に該当する企業であること
- 対象の協議会に加入していること
特定産業分野とは、特定技能を持つ外国人が就労できる分野のことです。
介護 / ビルクリーニング / 工業製品製造業 / 建設 / 造船・舶用工業 / 自動車整備 / 航空 / 宿泊 /自動車運送業 /鉄道 /農業 / 漁業 / 飲食料品製造業 / 外食業 /林業 /木材産業 |
上記の分野に該当していれば、特定技能を持つ外国人を受け入れられます。
また、対象の分野に該当していることに加えて、協議会に加入することも条件の一つです。協議会は分野ごとに設置されており、該当する分野の協議会の構成員になる必要があります。構成員になると、特定技能の制度や情報を周知してもらえたり、法令を遵守するよう啓発してもらえたりします。
特定技能外国人を採用する流れ
特定技能外国人を採用する流れを解説します。特定技能外国人を採用する方法には、以下の3つがあります。
- すでに特定技能の在留資格を持っている外国人を雇用する
- 在留資格を技能実習から特定技能に移行してもらう
- 別の在留資格から特定技能に切り替えてもらう、もしくは特定技能の試験に合格してもらう
いずれの方法でも特定技能外国人を採用できるため、本人や自社に合った方法で受け入れましょう。
1、特定技能外国人の受け入れ条件を満たす
最初に、企業側が前述の特定技能外国人の受け入れ条件を満たす必要があります。
また、外国人本人が特定技能の資格を持っていることに加え、分野ごとの条件も満たしていなければ採用できません。一部の分野における条件を以下にまとめました。
分野 | 条件 |
---|---|
介護 | ・介護技能評価試験の合格 ・日本語試験の合格および介護日本語評価試験の合格 |
農業 | ・農業技能測定試験の合格 ・日本語試験の合格 |
宿泊 | ・宿泊業技能測定試験の合格 ・日本語試験の合格 |
航空 | ・特定技能評価試験の合格(航空分野は空港グランドハンドリング、航空機整備) ・日本語試験の合格 |
採用する際は、本人がそれぞれの分野における試験と日本語試験に合格している必要があります。
詳しい条件の内容や他の分野の条件は「特定技能ガイドブック」に記載されているため、実際に採用活動を始める前に確認しておきましょう。
2、採用活動を行う
人材紹介機関への登録や求人サイトへの出稿などにより採用活動を行えます。また、東京都は無料で特定技能外国人の紹介を行っており、マッチングをサポートしてもらえます。興味のある方は「特定技能Jobマッチング」から申し込んでみてください。
応募してくれた外国人がいたら、日本人の採用時と同様に書類選考や面接なども実施します。比較的簡単な日本語を使用しつつ数回の選考を行い、自社に合いそうな人材か判断しましょう。
もし特定技能を保有していない外国人の応募があった場合は、雇用契約を締結する前に、特定技能の試験に合格してもらうか技能実習2号を修了してもらう必要があります。
3、雇用契約を締結する
特定技能外国人の採用が決定したら、雇用契約を締結してください。注意点として、通常の雇用契約に関する法律だけでなく、特定技能雇用契約に関する基準も満たしている必要があります。
特定技能雇用契約に関する基準は、以下の通りです。
- 従事させる業務:相当程度の知識や経験を要する業務である
- 所定労働時間:会社に在籍する他の労働者と同等である
- 報酬:会社に在籍し同様の業務に従事する労働者と同等以上の額である
- 待遇:教育訓練の実施や福利厚生施設の利用などで差別的な扱いをしない
- 有給休暇:一時帰国の申し出があった際に何らかの有給休暇を付与する
- 派遣先:期間と派遣先が定められている
- 分野別の基準に適合:分野別に定められた基準に適合している
- 帰国担保措置:雇用契約の終了時に帰国する場合において、本人が帰国費用を負担できないときは会社側が負担する、また円滑に出国できるよう必要な措置を講じる
- 健康状況の把握:安定的に日本で就労活動ができるよう、健康状況や生活状況を把握するために必要な措置を講じる
特定技能雇用契約に関する基準については、特定技能の雇用契約に関する法律の第1条で定められているため必ず遵守してください。
参考:特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令 | e-Gov 法令検索、特定技能外国人受入れに関する運用要領|出入国在留管理庁
4、特定技能外国人の支援計画を策定する
特定技能1号を持つ外国人を雇用する場合は、支援計画を策定する必要があります。支援計画とは、本人が就労活動を安定的に・円滑に行うために、会社が生活上の支援を実施することをまとめた書類です。
支援計画に記載する主な内容は、以下の通りです。
- 支援責任者の氏名および役職など
- 登録支援機関(登録支援機関に委託する場合のみ)
- 義務的支援に関する10項目(出入国の送迎や日本語学習の機会の提供など)
義務的支援に関する10項目について詳しく知りたい人は、出入国在留管理庁の公式サイトをご確認ください。
なお、支援計画は、在留を申請するときに加えて、支援計画の内容を変更したときにも提出しなければなりません。
5、地方出入国在留管理局へ申請する
地方出入国在留管理局へ各種の申請もする必要があります。各種の申請が必要なタイミングとそれぞれの公式ページを以下の表にまとめました。
申請が必要なタイミング | 申請に関する公式ページ |
---|---|
日本へ入国するとき (再入国の際は不要) | 在留資格認定証明書交付申請 |
別の在留資格へ切り替えるとき | 在留資格変更許可申請 |
在留期間の更新をするとき | 在留期間更新許可申請 |
「在留資格認定証明書交付申請」については、採用した外国人が再入国する際は必要ありません。ただし、みなし再入国許可をもらう必要があり、有効期限は出国日から1年です。本人が母国を出国する際に入国審査官に対して、再入国する旨を表明すれば再入国できます。
また「在留資格変更許可申請」は、別の在留資格へ切り替えるときに申請する必要があります。たとえば、特定技能1号から特定技能2号へ切り替えるとき、留学の在留資格を持った学生が特定技能の在留資格に切り替えるときなどです。
「在留期間更新許可申請」は、在留期間を延長する際に申請します。6ヶ月以上の在留期間がある場合は、満了日の約3ヶ月前から申請可能です。
いずれも重要な申請であるため、忘れずに対応してもらいましょう。本人に代わって会社側が手続きしても問題ありません。
参考:みなし再入国許可(入管法第26条の2) | 出入国在留管理庁
特定技能外国人の雇用に関する3つの注意点
特定技能外国人の雇用に関して、3つの注意点があります。実際に採用活動を始める前に確認しておきましょう。
1、採用後も各種届出を提出する必要がある
特定技能外国人を採用したあとも、以下の各種届出を出入国在留管理庁へ提出する必要があります。
随時の届出が必要 | 定期的な届出が必要 |
---|---|
・特定技能雇用契約および登録支援機関との支援委託契約に関する届出 ・支援計画の変更に関する届出 ・特定技能外国人の受け入れが困難なときの届出 ・出入国または労働関係法令に関する不正行為を知ったときの届出 ・外国人の採用時または離職時に関する届出(採用・離職の届出のみハローワークに提出) | ・特定技能外国人の受け入れ状況や活動状況に関する届出 ・支援計画の実施状況に関する届出 |
該当する状況になったときに随時の提出が必要な届出と定期的な提出が必要な届出があるため、いずれも忘れないように注意してください。
2、原則として直接雇用しなければならない
特定技能外国人は、派遣社員としては採用できません。フルタイム社員として直接雇用する必要があります。
ただ、農業分野と漁業分野の特定技能外国人は、例外的に派遣社員としての雇用が認められています。農業や漁業には、季節的な要因で閑散期があるためです。
繁忙期と閑散期に応じて外国人に流動的に就労してもらうことで、外国人が安定的に働けるだけでなく、業者側も本当に必要な時期に人手を借りられます。
なお、派遣社員であるからと言って、農業の特定技能の資格を持った外国人は、漁業に従事させられません。漁業分野で就労する外国人も、同じく農業分野では就労できないため注意してください。
参考:農業分野 | 出入国在留管理庁、漁業分野 | 出入国在留管理庁
3、採用したら雇用契約を守り、十分に支援する
特定技能外国人を採用したら、雇用契約を守って十分に支援しましょう。外国人だからと言って、雇用契約を破ったり支援やサポートを疎かにしたりしてはなりません。
出入国在留管理庁も、受け入れ機関の義務を以下のように定めています。
- 外国人と結んだ雇用契約を確実に履行すること
- 外国人への支援を適切に実施すること
- 出入国在留管理庁およびハローワークへ各種届出を提出すること
雇用契約に関する内容は日本人と同等に作成し、採用後も十分に社会生活や日常生活における支援を実施してください。
必要な手続きを行ったうえで、特定技能外国人を採用しましょう
特定技能外国人を採用する際は、必要な手続きを行うこと・必要な届出を期日までに提出することが重要です。必要な手続きを怠ったり、届出を期日までに提出できなかったりすると、不法就労になる可能性があります。また、在留資格を失ってしまうこともあり得ます。
自社に合った特定技能外国人を採用して会社に長く貢献してもらうためにも、手続きや確認は怠らないようにしましょう。外国人が会社や日常生活で困っているようであれば、支援やサポートも惜しまず実施してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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