- 更新日 : 2025年4月9日
管理職だと残業代は出ない?管理監督者との違いから解説!
管理職などの役職に就くと、残業代を受け取れない場合があります。一般に「管理職は残業代が出ない」と言われますが、労働基準法に則ると「管理監督者は残業代が出ない」と表現するのが正確です。この記事では管理職と管理監督者の違いと定義、36協定との関わり、管理監督者になぜ残業手当が支給されないのか、その理由を説明します。
目次
管理職だと残業代は出ない?
一定の役職に就き、管理職として扱われるようになると残業代が支給されなくなるのが一般的です。
法定外残業に対する残業代の支給は労働基準法で定められていますが、管理職には労働基準法の労働時間・休憩・休日などの規定が適用されないためです。
ここで言う「管理職」とは、労働基準法における「管理監督者」です。「管理職」が労働基準法に定める「管理監督者」に該当するかどうかで残業代の出る・出ないが変わってきます。
ここでは、管理監督者の定義と管理職との違い、残業代が支給されるケースと支給されないケースなどをご紹介します。
残業代に関係する「管理監督者」の定義
管理監督者に該当する「管理職」は、労働基準法の労働時間・休憩・休日などの規定の対象外となり、残業代が支給されなくなるとお伝えしました。
では、管理監督者とはどのような立場の従業員のことを指すのでしょうか。労働基準法における管理監督者は「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」と定義されています。
管理監督者は、労働基準法で定められた労働時間・休憩・休日の制限を受けません。
管理監督者に当てはまるかどうかは、役職名ではなく職務内容・責任と権限・勤務態様等の実態によって判断されます。企業内で管理職とされていても、労務実態によっては管理監督者には該当せず、労働基準法に定める規制を受けることもあります。
管理職と管理監督者の違いについて、次章で詳しくご紹介します。
参考:労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために|厚生労働省
管理職と管理監督者の違い
管理職と管理監督者の違いを説明するにあたり、労働基準法における管理監督者に該当する条件について詳しくご紹介します。
重要な「職務内容」を有していること
管理監督者は労働時間・休憩・休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない、重要な職務内容を有している必要があります。
重要な「責任と権限」を有していること
管理監督者は、労働時間・休憩・休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない、重要な責任と権限を有している必要があります。「管理職」という肩書があっても、自らの裁量で業務を執行する権限がなく、多くの事柄について上司の指示を仰ぐ必要があるなどの場合は管理責任者とは言えません。
実際の勤務態様も労働基準法の規制になじまないものであること
管理監督者は、経営者と一体となり、時を選ばず経営的な判断や対応を求められます。労働時間等について厳格に管理されているような場合は管理監督者とは言えません。
賃金等についてその地位に相応しい待遇であること
管理監督者は一定の責任と権限を有し、重要な職務に従事していることから、給与・賞与・その他の待遇において、一般の労働者と比較して相応の待遇がなされている必要があります。
労働基準法において、これらに該当する労働者のみが管理監督者に該当します。企業内で管理職という肩書が与えられていても、必ずしも管理監督者に該当するとは限らない点に注意する必要があります。
結局「管理監督者」は誰?課長や幹部など役職ごとの例
労働基準法における管理監督者は、経営者に近い責任と権限を有し、自身の裁量によって職務を遂行します。労働時間を管理されることもなく、賃金などの待遇についても一般の従業員と明確に差別化された立場にある労働者です。管理監督者に該当するかどうかは、役職名や肩書などではなく、あくまで労働実態に基づいて判断されます。
例えば「課長」という肩書であっても、配下社員の人事考課や労務管理に関する権限を有していない場合は管理責任者とは言えません。自身の労働時間に関して裁量権がなく、会社から管理されているような場合も、同様に管理責任者には該当しません。幹部社員なども同様で、役職・肩書ではなくあくまで労働実態に基づいて判断される点に注意しましょう。
管理職でも残業代が出るケース
管理監督者に該当するか否かは、「職務内容」「責任と権限」「勤務態様」「待遇」によって判断されます。例えば会社側から「店長」などと任命されても、十分な権限が付与されず、業務実態も一般の従業員と大差ない場合は管理監督者には該当せず、労働基準法の規定に準じた扱いを受けることが可能です。36協定が適用され、法定労働時間を超えた時間外労働については残業代が支給されます。
一方、労働基準法に定めるところの管理監督者に該当する場合は、残業手当や休日出勤手当は支給されません。しかし、労働基準法第37条の「深夜労働の場合の割増賃金に関する規定」は管理監督者にも適用されるため、22時~翌5時の深夜の時間帯における勤務には深夜手当が支給されます。
管理職で残業代が出ないケース
管理監督者の条件を満たす管理職は、労働基準法に定められた労働時間・休憩・休日に関する規定の対象外となるため、残業代が支給されません。
一般の従業員は、労働基準法第32条で労働時間の上限について「1日8時間・週40時間」と定められています。この上限を超えて仕事に従事する場合は「時間外労働・休日労働に関する協定書」、いわゆる「36協定」を労使間で締結する必要があります。法定労働時間を超える時間外労働については、法定外残業として割増賃金が支給されます。
休憩については、労働基準法第34条で「労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を与えなければならない」と規定されおり、休日に関しては労働基準法第35条で「毎週少くとも1回の休日を与えなければならない」と定められています。
管理監督者はこれらの規定が適用されないため、残業手当や休日出勤手当が支給されないのです。
自分が管理監督者かどうか、チェックするポイント
自分が労働基準法の定める管理監督者に該当するかどうかをチェックするポイントを改めて紹介します。
職務内容・責任と権限
採用や解雇、配下社員の人事考課や労務管理などの権限を有していますか。十分な権限を有していない場合は「名ばかり管理職」の可能性があります。
勤務態様
遅刻・早退などで不利益な取り扱いを受けていませんか。また、職務の大半を一般の従業員と同様の業務に従事していませんか。労働時間に関する裁量がなく、一般の従業員と勤務態様の相違が無い場合は「名ばかり管理職」の可能性があります。
待遇
基本給や役職手当を勘案すると、割増賃金の適用外となる妥当性はありますか。支給された賃金の総額が一般の従業員の賃金と同程度または下回る場合は「名ばかり管理職」の可能性があります。
これらのチェックポイントを参考に、自分が名ばかり管理職になってしまっていないかを確認しましょう。
労働実態を考慮し管理監督者に該当するかを確認しよう
ここまで、管理職の残業代についてご紹介しました。管理監督者に該当する管理職は、労働基準法に定められた労働時間・休憩・休日の規定が適用されないため、残業代が支給されません。全ての管理職が管理監督者に該当するわけではなく「職務内容」「責任と権限」「勤務態様」「待遇」によって判断されます。
役職や肩書ではなく、あくまで労働実態によって判断される点が重要です。この記事を参考に、自身が管理監督者に該当するのか、名ばかり管理職になってしまっていないかを確認してみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
通勤手当とは?計算方法と課税範囲について紹介
通勤手当は、諸手当のなかでは最も一般的な手当といえますが、意外に正確な取り扱いは知られていません。計算方法、交通費との違いや、電車やバスではなく、マイカーやタクシー、徒歩で通勤した場合の取り扱いはどうするのか。また、非課税限度額など、課税上…
詳しくみる住民税非課税世帯とは? 対象世帯への臨時特別給付金も解説
住民税非課税世帯とは、所得が一定以下で住民税の「所得割」と「均等割」の両方が非課税となる世帯です。住民税非課税世帯に該当すると、優遇措置を受けられますが、事前に自分が非課税に当たるか確認しておくことも重要です。 本記事では、住民税非課税世帯…
詳しくみる賞与の控除額の計算・シミュレーション例!手取り額を増やす方法は?
会社員にとって、賞与(ボーナス)の支給は楽しみなイベントのひとつです。 しかし、明細を見ると各種社会保険料や所得税が控除の対象として引かれており、実際に手にする金額が減ってガッカリしてしまうことがありますよね。 この記事では、賞与の各種控除…
詳しくみる賞与支払届の提出を忘れていたらどうなる?対応方法や未提出のリスクを解説
賞与支払届の提出を忘れてしまうと、延滞金が発生したり、年金記録に誤りが生じたりなど、さまざまなリスクが伴います。 そのため、賞与支払届の提出期限は原則守る必要があります。 しかし、「賞与支払届の提出を忘れてしまった!」という人事労務担当者の…
詳しくみる定額減税で毎月いくら入る?税額と手取りについて解説!
2024年に実施される定額減税の額は1人4万円です。内訳として、所得税3万円、住民税1万円が控除されます。配偶者または扶養親族がいる場合には、その人数分控除されるため、単身者では4万円、4人家族だと16万円の手取り増加になります。定額減税は…
詳しくみる給与所得の金額の計算方法は?年末調整への対応など例を用いて解説
給与所得は、収入金額から所定の給与所得控除を差し引いた金額として計算されます。正確な計算方法を把握することで、年末調整や確定申告時などの税金トラブルの防止が可能です。 本記事では、給与所得の金額の計算方法や控除の種類、年末調整について徹底解…
詳しくみる