- 更新日 : 2025年4月22日
中途採用者の住民税の手続きまとめ!一括徴収とは?
会社には住民税の特別徴収が義務付けられており、中途採用者も原則として特別徴収の対象となります。
ただ、下記のように疑問に思う人もいるでしょう。
「中途採用した場合はどのような手続きをする?」
「いつから住民税を天引きすれば良い?」
そこで本記事では、中途採用した際に必要な住民税の手続き、住民税を天引きするタイミングなどを解説します。
目次
住民税の納付方法
住民税の納付方法には、特別徴収と普通徴収の2種類があります。対象者や納付回数など、それぞれの概要について以下より詳しく解説します。
住民税の特別徴収とは
住民税の特別徴収とは、所得税の源泉徴収のように会社が住民税を従業員の給与から毎月天引きして納める方法のことです。
原則として給与所得者からは特別徴収しなければならず、地方税法によって会社に特別徴収が義務付けられています。
6月から翌年5月まで年12回に分けて納付する必要があり、原則として一括での納付は認められていません。
ただし、従業員が常時10人未満の会社は「納期の特例」を利用でき、年12回の納付回数が年2回となります。納付回数が少なくなるだけで、給与から毎月天引きしなければならない点は同じであるため注意しましょう。
また、納税方法には納付書での振込や電子納税などがあります。基本的に口座振替はできません。
参考:
個人住民税と特別徴収について|個人住民税の特別徴収推進ステーション
地方税法|e-Gov 法令検索
住民税の普通徴収とは
住民税の普通徴収とは、納税者が自ら住民税を納付する方法のことです。普通徴収の対象者は、個人事業主や一部の給与所得者です。
6月・8月・10月・翌年1月の年4回に分けて住民税を納めます。6月に一括での納付も可能ですが、年4回でも一括でも最終的な税額は変わりません。
また納税方法としては、納税書での振込・口座振替・クレジットカード払いなどの方法があります。
会社からすると普通徴収の方が楽でコストを浮かせられると思いますが、会社には特別徴収が義務付けられています。普通徴収が認められた従業員を除き、会社の判断で、勝手に普通徴収への切り替えはできないため注意してください。
参考:個人住民税と特別徴収について|個人住民税の特別徴収推進ステーション
住民税の一括徴収とは
住民税の支払期間は毎年「6月から翌年5月」までです。
従業員が1年間で支払う金額(年税額)は、各市町村から住民税の通知が来た時点で決まっています。
継続して特別徴収を行えない、もしくは行わない場合は退職の時期により、以下の通り住民税の徴収が行われます。
なお、一括徴収は前職が行うため、中途採用をした側の会社は一括徴収を行う必要がありません。中途採用者が退職した時期によって、一括徴収が行われている可能性があるという点を理解しておきましょう。
退職日が1月1日から4月30日までの場合
転職以外の理由で退職する場合、従業員は特別徴収で納付できなくなる未徴収の住民税を自分で納付するのが原則です。
ただし、退職日が1月1日から4月30日までの場合は、会社が従業員から未徴収の住民税を一括で徴収しなければなりません(地方税法第321条の5第2項)。これを「一括徴収」と呼びます。
なお、退職時点で支給される給与や退職金から一括徴収を差し引きしてマイナスとなる場合、その分の金額を普通徴収で納付することになります。
退職日が5月1日から5月31日までの場合
退職日が5月1日から5月31日までの場合は、5月分のみです。従って、通常通りの住民税額が最後の給与から徴収されます。
退職日が6月1日から12月31日までの場合
退職日が6月1日から12月31日までの場合は、退職者の意思で翌年5月までの住民税の納付方法を一括徴収か普通徴収か選択できます。
中途採用者の住民税の手続きについて
中途採用者の住民税の手続き方法には3つのパターンがあるため、以下にてそれぞれ詳しく解説します。
前職から継続して特別徴収する場合
前職から継続して特別徴収する場合の手続き方法について解説します。
前職の担当者が、転職先を把握して「給与所得者異動届出書」に必要事項を記入のうえ、市区町村に提出します。提出後に転職先の会社へ「特別徴収税額決定通知書」が送付されるため、通知書に基づいて住民税を納めてください。
ただ、中途採用者が前職に転職先を知られたくなかった場合は、転職先の会社に「給与所得者異動届出書」が送付されます。前職の担当者が必要事項を記入して送ってくるため、転職先の担当者も残りの必要事項を記入して市区町村へ提出してください。提出すると「特別徴収税額決定通知書」が届きます。
いずれの方法でも特別徴収を継続可能です。状況に応じて適切に手続きを行い、住民税を納付しましょう。
参考:特別徴収に係る各種届出・手続き|練馬区公式ホームページ
普通徴収から特別徴収に切り替える場合
以下のケースに該当する中途採用者は、普通徴収から特別徴収へ切り替える手続きをする必要があります。
- 前職から特別徴収を引き継がなかった、もしくは退職時に普通徴収を選択した場合
- 転職先を決めずに退職して、自身で住民税を納付していた場合
- 個人事業主だった場合
- 前職で普通徴収が認められていた場合
特別徴収へ切り替える際は、「特別徴収への切替申請書」を市区町村へ提出してください。「eLTAX」で申請できる場合もあります。提出・申請後に「特別徴収税額決定通知書」が送付されるため、通知書に基づき住民税を納付してください。
また地域によっては、未納分の普通徴収の納付書を添付する必要があります。ただし、普通徴収の納付期限を過ぎた税額は特別徴収できません。本人が納税しなければならないため、納付書も添付しないでください。
なお、4月より後に中途採用となった場合は、本人が会社に特別徴収を希望する旨を申し出たうえで、転職先の会社が「給与所得者異動届出書」を作成し提出します。
参考:特別徴収にかかる手続きについて|個人住民税の特別徴収推進ステーション
前年に所得がない場合
以下のケースのいずれかに該当する場合、住民税の手続きは不要です。
- 専業主婦だった人や無職だった人が中途採用として入社した場合
- 生活扶助を受けていて住民税が非課税であった場合
- 所得が一定額以下のため住民税が非課税であった場合
中途採用者が上記に該当する場合、住民税が発生しないため手続きをする必要がありません。
念のため、本人に所得がなかったことや非課税であったこと、自宅に通知書と納付書が送られていないことを確認しておきましょう。
給与収入のみで年収が100万円を超える場合は、翌年から特別徴収を開始してください。なお中途採用後も、給与収入のみで年収が100万円以下となる場合は、引き続き非課税です。
中途採用者の住民税はいつから天引きする?
中途採用者の住民税の天引きを開始するタイミングは、状況によって異なります。
特別徴収を継続する場合 | 入社した月から天引きする |
---|---|
普通徴収から特別徴収へ切り替える場合 | 切り替えの申請をした1ヶ月〜2ヶ月後から天引きする |
前年に中途採用者の所得がなかった、 もしくは中途採用者が非課税であった場合 | 入社した年の翌年6月から天引きする |
2025年10月に入社して特別徴収を継続する場合は、2025年10月から住民税の天引きを開始してください。
2025年10月に入社して切り替え申請をした場合は、基本的に2025年11月もしくは12月に住民税の天引きを開始します。ただ、切り替えのタイミングは地域によって異なるため注意しましょう。
2025年10月に前年の所得がない人が入社した場合は、2026年6月から住民税の天引きを開始してください。なお、住民税の算定時期は前年の1月〜12月であるため、2025年10月〜12月の3ヶ月分の給与額に基づいて課税されます。
中途採用者の所得税や保険の手続きについて
中途採用者の所得税や各種保険の手続きについて解説します。
所得税
自社で年末調整するケースと本人に確定申告をしてもらうケースがあります。
年の途中で転職した場合は、自社で年末調整を行ってください。前職で発行される源泉徴収票を本人から受け取って、自社で源泉徴収した所得税と一緒に年末調整を行います。
一方、年の途中で退職したが翌年に再就職した場合は、本人に確定申告をしてもらう必要があります。また、源泉徴収票の受け取りが間に合わなかった場合や中途採用者が個人事業主だった場合も、本人が確定申告をしなければなりません。
前職と自社の源泉徴収票や個人事業の収入をもとに、自身で確定申告を行うよう伝えましょう。
参考:
No.2674 中途就職者の年末調整|国税庁
No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき|国税庁
社会保険
社会保険については「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を提出する必要があります。事務センターまたは管轄の年金事務所へ郵送するか、窓口へ持参してください。電子申請もできます。
また、期限は入社した日から5日以内です。忘れないように従業員が入社したその日のうちに手続きを完了させましょう。
会社を退職すると、空白期間の有無に関わらず健康保険と厚生年金保険から外れている状態になります。よって、期限内に必ず手続きを済ませ、再び健康保険と厚生年金保険に加入させなければなりません。
参考:
従業員を採用したとき|日本年金機構
従業員を採用したときの詳細説明|日本年金機構
雇用保険
雇用保険については、所轄のハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。電子申請も可能です。期限は、雇用保険の資格取得日が属する月の翌月10日までです。
手続きをすると「雇用保険被保険者証」がハローワークから送付されるため、本人に渡してください。
雇用保険も会社を退職すると未加入の状態になっているため、必ず再加入の手続きを行う必要があります。もし再加入の手続きを怠ると、本人が失業保険を受け取れない可能性もあるため注意してください。
参考:
事業主の行う雇用保険の手続き |厚生労働省
利用上の注意|ハローワークインターネットサービス
労災保険
労災保険は、会社単位で加入する保険です。1人目の従業員が入社したときに加入手続きを行っていれば、会社にいる全ての従業員に労災保険が適用されます。
従って、1人目の従業員が入社したときは加入手続きが必要となりますが、2人目以降は手続きする必要はありません。また、入社のタイミングだけでなく退職のタイミングでも特に手続きは不要です。
参考:労災補償|厚生労働省
中途採用者の状況に応じて、適切な手続きをしましょう
基本的に中途採用者からも住民税を特別徴収する必要があります。ただ、中途採用者に前年の所得がない場合や非課税であった場合は、特別徴収する住民税がないため手続きは不要です。
また、中途採用者が前職から特別徴収を引き継ぐのか、普通徴収から特別徴収に切り替えるのかによって手続き方法も変わります。給与から住民税を天引きするタイミングも異なるため注意しましょう。
適切な方法で手続きを完了させ、納付期限を守って住民税を納めてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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