• 更新日 : 2025年3月5日

在宅勤務(テレワーク)の導入で使える給付金や補助金・助成金は?概要や要件を解説

在宅勤務(テレワーク)を導入・継続するには、IT設備の整備やセキュリティ対策など、一定のコストがかかります。費用の負担を軽減するために、国や自治体では給付金や補助金などの制度を提供しています。

本記事では、在宅勤務で使える給付金や補助金制度の概要や、要件を詳しく解説します。適切な制度を活用し、スムーズに在宅勤務を導入したい方は、参考にしてみてください。

在宅勤務とは

在宅勤務とは、オフィスに出社せず、自宅で業務を行う勤務形態のことを指します。近年ではテレワークやリモートワークという言葉も一般的になっています。

とくに、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、多くの企業が在宅勤務を取り入れるようになりました。従業員は通勤時間を削減でき、企業側もオフィスコストを抑えられるのがメリットです。

ただし、「在宅勤務」と「在宅ワーク」は意味が異なるため、注意しましょう。

在宅勤務は、企業に雇用されている方が自宅で業務を行うことを指します。一方、在宅ワークは、フリーランスや個人事業主が、自宅で仕事をする場合に使われる言葉です。

この違いを理解しておくことが大切です。

以下の記事で、テレワークについて詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。

在宅勤務の割合

国土交通省の「令和5年度 テレワーク人口実態調査」によると、令和3年には首都圏の企業でテレワークを実施する割合が42.3%に達しました。徐々に減少傾向にありますが、新型コロナウイルスの流行前と比べると、高い水準を維持しているのが現状です。

実施頻度に関しては、過去1年間でテレワークを行った「雇用型テレワーカー」のうち、週1~4日テレワークを取り入れている方の割合が増えています。

完全にリモートワークに移行する企業は少なく、多くの企業が出社とテレワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」の形態を採用していることが特徴です。

在宅勤務は一時的な流行ではなく、企業の働き方の選択肢として定着しつつあります。今後も労働環境の変化に応じて、テレワークの活用が続くことが予想されます。

参考:国土交通省|令和5年度 テレワーク人口実態調査(9・11p)

以下の記事で、在宅勤務について詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。

在宅勤務(テレワーク)の導入で活用できる給付金・補助金・助成金一覧

在宅勤務を導入する際に活用できる支援制度には、給付金・助成金・補助金があります。それぞれの違いを理解しておくことが大切です。

  • 給付金:一定の条件を満たせば受け取れる資金で、返済の必要がない
  • 助成金:おもに企業向けで、雇用促進や労働環境の改善を目的としている
  • 補助金:企業が設備投資や事業拡大を行う際に活用できる資金で、申請後に審査を経て支給される

ここでは、在宅勤務(テレワーク)の導入で活用できる助成金・補助金制度について解説します。

IT導入補助金

IT導入補助金は、企業が業務の効率化を目的にITツールを導入する際に利用できる制度で、テレワーク環境の整備に活用できます。

IT導入補助金の通常枠の詳細は、下記のとおりです。

  • 対象者:中小企業・小規模事業者など
  • 補助上限額:5万~450万円
  • 補助率:中小企業は1/2

参考:中小企業庁|IT導入補助金2025の概要

補助金を活用すれば、テレワーク対応のソフトウェアや、クラウドサービスの導入費用を一部負担してもらうことが可能です。

ただし、採択率100%ではないため、申請すれば必ず支給されるとは限りません。なお、補助率は導入するツールによって異なります。

導入を検討する際は、補助対象経費や補助額を確認し、適切な申請を行いましょう。

人材確保等支援助成金(テレワークコース)

人材確保等支援助成金は、テレワークの導入・拡大を目指す企業を支援する制度です。新規導入だけでなく、既存のテレワーク環境を強化する場合にも活用できます。

助成の種類受給要件受給額
機器等導入助成1. テレワーク実施計画を作成し、管轄の労働局に提出してその認定を受けること

2. 上記の認定を受けたテレワーク実施計画に基づき、実際にその取組を実施すること。

3. 評価期間(機器等導入助成)におけるテレワーク実施対象労働者のテレワーク実施状況が、次の(1)または(2)の基準を満たすこと。

(1)評価期間(機器等導入助成)において、1回以上、テレワーク実施対象労働者全員がテレワークを実施すること

(2)評価期間(機器等導入助成)にテレワーク実施対象労働者が週平均1回以上テレワークを実施すること

※実施を拡大する事業主の方は、上記に加え、評価期間(機器等導入助成)の延べテレワーク実施回数を計画提出前3ヶ月と比べて25%以上増加させる必要がある

4. テレワークの実施促進について、企業トップ等からのメッセージ発信を行うなど、労働者がテレワークを実施しやすい職場風土作りの取組を行う事業主であること

1企業あたり、支給対象となる経費の50%

※以下のいずれかの低い方の金額を上限する

  • 1企業当たり100万円
  • テレワーク実施対象労働者ひとりあたり20万円
目標達成助成1. 離職率にかかる目標の達成

(1)テレワークに関する制度の整備の結果、評価時離職率が、計画時離職率以下であること

(2)評価時離職率が30%以下であること

2. 評価期間(機器等導入助成)初日から12ヶ月を経過した日から3ヶ月間に1回以上テレワークを実施した労働者数が、評価期間(機器等導入助成)初日から12ヶ月を経過した日における対象事業所の労働者数に、計画認定時における対象事業所の労働者全体に占めるテレワーク実施対象労働者の割合を掛け合わせた人数以上であること

1企業当たり、支給対象となる経費の15%

賃金要件を満たす場合は25%

※以下のいずれかの低い方の金額を上限とします。

  • 1企業当たり100万円
  • テレワーク実施対象労働者ひとりあたり20万円

出典:厚生労働省|人材確保等支援助成金(テレワークコース)

支給対象となる経費の範囲は、下記のとおりです。

  1. 就業規則・労働協約・労使協定の作成・変更
  2. 外部専門家によるコンサルティング
  3. テレワーク用通信機器等の導入、運用
  4. 労務管理担当者に対する研修
  5. 労働者に対する研修

2024年4月1日から、機器等導入助成の助成率が30%から50%に引き上げられました。また、

新規導入のみならずテレワークの実施を拡大する企業についても助成対象となりました。企業の労働環境改善を目的としているため、長期的にテレワークを継続する企業に有用な制度です。

テレワーク促進助成金

テレワーク促進助成金は、東京都が都内の事業者向けに提供している助成金です。企業がテレワーク環境を整備・拡充する際の費用を補助し、従業員の柔軟な働き方を推進することを目的としています。

常時雇用する労働者が2名以上999名以下の事業所が対象です。また、一般コース・非正規社員拡充コースがあり、助成金の支給額は事業所の規模によって異なります。

  • 労働者30人以上999人以下の事業所:上限250万円(助成率1/2)
  • 労働者2人以上30人未満の事業所:上限150万円(助成率2/3)

参考:公益財団法人 東京しごと財団|テレワーク促進助成金(令和6年度)

令和6年度の申請受付は、令和7年2月28日までです。

助成金を活用すれば、企業は低コストでテレワーク環境を整備できるだけでなく、非正規社員の労働環境改善にもつながります。申請を行う際は、助成対象となる経費を明確にし、適切な見積もりを用意しましょう。

なお、申請手続きには、必要書類の準備や自治体とのやり取りが求められます。慌てないように、早めに対応を進めることが大切です。

ワーケーション実証費用助成金

ワーケーション実証費用助成金は、地方でテレワークを行う際にかかる宿泊費や交通費の一部を補助する制度です。近年、地方自治体による支援制度が増加しており、多くの企業やフリーランスが活用しています。

制度を導入している自治体の例を、下記にまとめています。

自治体・制度名対象者補助対象補助内容
北海道富良野市

ワーケーション展開費用助成金

企業の役員・社員・フリーランス移住体験・サテライトオフィス進出・研修型ワーケーションなど「子育て向けワーケーション・移住体験支援事業」において、宿泊費の2/3(上限10万円)・レンタカー代の1/2(上限5万円)を補助
北海道中札内村

ワーケーション費用助成事業

  • 日本標準産業分類に掲げる企業・団体
  • テレワークの活用を通して柔軟な働き方を推進する企業・団体
  • 企業等としてすでに1年以上の事業活動実績があること。
  • 国・都道府県その他の公的機関から同種の助成金等を重複して交付を受ける者でない
  •  風俗営業等の規制および業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条に定める業種、公序良俗に反する事業または宗教的施設として活用する事業を営む者でない
  • 中札内村暴力団排除条例(平成25年条例第2号)第2条第1号に規定する暴力団、同条第2号に規定する暴力団員または同条第3号に規定する暴力団関係事業者に該当しない者
  • 本村の宿泊施設に連続して4泊以上の滞在をすること
  • 滞在期間中、本村の店舗等を1回以上利用すること
  • 滞在期間中、本村が指定したアンケートに回答すること
宿泊費の1/2

(上限5,000円/泊、最大14泊)を補助

参考:
富良野市|【ご案内】令和6年度「ワーケーション展開費用助成金」について
中札内村|ワーケーション費用助成事業

助成制度を利用すれば、地方でのワーケーションを手軽に実践でき、新しい働き方を体験することが可能です。

テレワーク移住支援補助制度

テレワーク移住支援補助制度は、地方移住を促進するための補助制度です。在宅勤務を継続しながら地方に移住する方に対し、引越し費用や住宅購入費を補助してもらえます。

たとえば、移住支援金制度は、下記の項目にすべて該当する方が対象です。

  1. 移住元:東京23区の在住者または東京圏から東京23区へ通勤している者
    ※東京圏とは、東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県
  2. 移住先:東京圏以外の道府県または東京圏の条件不利地域への移住者
    (移住支援事業実施都道府県・市町村に限る)
  3. 就業等:地域の中小企業等への就業やテレワークにより移住前の業務を継続、地域で社会的起業などを実施

参考:地方創生|移住支援金

移住前の10年間で通算5年以上東京圏に在住し、直近1年以上は東京23区に居住または通勤していることが条件となります。

この制度は、移住後も現在の仕事を続けながら、地方で新しい暮らしをはじめることを支援するのが目的です。支援を受けるには、自治体ごとの要件を満たす必要があります。事前に詳細を確認し、計画的に申請を進めましょう。

在宅勤務(テレワーク)のメリット

在宅勤務を導入することで、企業と従業員の双方にさまざまなメリットがあります。具体的なメリットは、下記のとおりです。

メリット詳細
多様な人材を確保できる
  • 居住地に関係なく採用が可能になり、より幅広い人材の確保につながる
  • 地方や海外に住む優秀な人材も採用できるため、企業の競争力を強化できる
コストを削減できる
  • 従業員が自宅で業務を行うことで、通勤手当の支給額を抑えられる
  • 資料のデジタル化が進めば、紙の使用量が減り、印刷代や郵送費の削減につながる
  • オフィスに出社する必要が減ることで、光熱費や賃貸費用の見直しもできる
企業イメージの向上につながる
  • 働きやすい環境を整えることで、従業員の満足度が向上し、離職率の低下にもつながる
  • 求職者にとって魅力的な職場環境と映るため、優秀な人材が集まりやすくなる

在宅勤務をうまく活用することで、企業の成長と従業員の働きやすさを両立させられるため、より持続可能な働き方の実現につながるでしょう。

在宅勤務について、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

在宅勤務(テレワーク)のデメリット

在宅勤務には多くのメリットがあります。しかし、運用面ではいくつかの課題もあります。

具体的なデメリットは、下記のとおりです。

デメリット詳細
勤怠管理が難しくなる
  • オフィス勤務と異なり、テレワークでは従業員の勤務状況をリアルタイムで把握するのが難しくなる
  • 自己申告制では、実際の労働時間と申請内容に差が生じる可能性がある
業務の進行に時間がかかる
  • テレワークでは、コミュニケーションの手段が限定されるため、意思疎通に時間がかかる
  • 進捗管理のための報告作業が増え、業務負担が増加する可能性もある
セキュリティリスクが高まる
  • 自宅や外部のネットワークを利用することで、情報セキュリティのリスクが高まる
  • 個人のPCやスマートフォンを業務に使用する場合、ウイルス感染や情報漏洩の危険性が伴う

在宅勤務のデメリットを理解して適切な対策を講じることで、安全で円滑なテレワーク環境を整えられるでしょう。

テレワークを導入する際の注意点

テレワークを導入する際の注意点を4つ解説します。

導入目的を明確にする

企業がテレワークを導入するのは、下記のように、さまざまな理由があります。

  • 業務の効率化
  • 柔軟な働き方の実現
  • コスト削減

しかし、目的を明確にしないと、テレワークを導入しても基本的なルールが曖昧になるでしょう。そのため、導入前にテレワークの目的を明確にし、社内全体に周知することが大切です。

また、企業の方針にあわせてテレワークの適用範囲や業務フローを整理し、従業員が迷わず業務を進められる環境を整えましょう。

以下の記事では、在宅勤務・テレワーク導入のために企業がするべき準備について解説していますので、あわせてご覧ください。

労務管理を適切に行う

テレワークでは、オフィス勤務と異なり、上司や同僚と直接顔をあわせる機会が少なくなります。そのため、労務管理が適切に行われないと、長時間労働や生産性の低下などの問題が発生する可能性があります。

適正な労務管理を行うには、勤怠管理システムを活用し、始業・終業時間の報告ルールを明確にすることが重要です。

また、テレワークでは、中抜け時間(業務時間中の私用時間)が発生することもあります。そのため、企業側は、業務遂行の実態を把握できる仕組みを整える必要があります。

具体的には、下記のような方法です。

  • 勤怠管理システムを導入する
  • 定期的な進捗報告を必須とする

従業員の労働状況を、適切に管理できる環境を構築しましょう。

セキュリティ対策を行う

テレワーク環境では、企業の機密情報を社外で取り扱うため、セキュリティリスクが大幅に増加します。情報漏洩や不正アクセスのリスクを最小限に抑えるためには、従業員のセキュリティ意識を高めるとともに、適切な対策を講じることが大切です。

とくに、自宅やカフェなどの公衆Wi-Fiを利用すると、第三者による盗聴や不正アクセスのリスクがあります。下記の対策を実施することで、セキュリティリスクを軽減できるでしょう。

  • VPN(仮想プライベートネットワーク)の利用
  • 業務専用のパソコン・スマートフォンの支給
  • ウイルス対策ソフトの導入

個人所有のPCで業務を行う場合は、社内システムへの不正アクセスやデータの持ち出しリスクが高まるため、業務専用端末の利用を推奨する企業も少なくありません。

このようにセキュリティ対策を徹底すれば、安心して業務に集中できる環境を整えられるため、企業全体の信頼性向上にもつながるでしょう。

公平な人事評価ができる仕組みを整える

テレワークでは、従業員の働きぶりを直接確認する機会が減ります。そのため、人事評価が不透明になりやすい点に注意が必要です。

「出社している社員の方が評価されやすい」といった誤解が生じると、従業員のモチベーション低下につながる恐れがあります。

このような状況を防ぐために、定期的な面談を実施し、評価基準を明確にすることが大切です。とくに「成果+プロセス」の両面から評価を行えば、透明性のある評価制度を構築できます。

また、下記のように、従来の評価制度を見直すことも大切です。

  • 業務遂行状況を可視化できるシステムの導入
  • テレワーク勤務者とオフィス勤務者で公平な評価基準を設定

仕組みを整えることで不公平感を解消し、従業員のモチベーション向上につなげられます。

以下の記事では、テレワーク導入にあたっての注意点について解説していますので、あわせて参考にしてください。

助成金を活用し、効率的に在宅勤務(テレワーク)を導入しよう

在宅勤務(テレワーク)を導入するなら、IT設備の整備やセキュリティ対策が必須です。適切な補助金や助成金を活用すれば、コスト負担を軽減しながらスムーズに導入できます。

助成金の種類や申請要件を十分に確認し、自社に最適な制度を選ぶことが大切です。

また、導入後の運用にも注意し、労務管理やセキュリティ対策を強化することで、テレワークのメリットを最大限に活かすことが可能になります。

助成金を上手に活用しながら、計画的にテレワーク環境を整備し、従業員が安心して働ける仕組みを整えましょう。


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