- 更新日 : 2023年1月25日
IT導入補助金とは?補助対象や申請方法を解説

IT導入補助金とは、経済産業省、中小企業庁、中小機構による、IT導入にかかった費用の一部を助成する中小企業向けの制度です。ソフトウェアの購入やクラウド導入にかかる費用を助成するもので、2022年版はインボイス制度や地域DXの実現を見据えて補助金が組み込まれました。
今回は、2022年版のIT導入補助金の概要と補助対象、申請方法などを解説していきます。
目次
IT導入補助金とは
IT導入補助金とは、ITツールの導入にかかる費用を一部助成する小規模事業者や中小企業向けの制度です。業務効率化や売上アップなど、インボイス制度への対応など、ITツールやクラウドサービスの導入サポートを目的としています。
2022年版以前のIT導入補助金の活用事例には、以下のようなものがあります(※過去の導入事例については2022年版のIT導入補助金と導入要件等が異なることがあります)。
- 生菓子製造業の事例:IT導入補助金を利用して、自社ECサイト立ち上げのために「EC-CUBE」を導入。新規顧客開拓により売上アップを実現した。
- 金融業の事例: IT導入補助金を活用したバックオフィスをサポートする「マネーフォワードクラウド」を導入。クラウド型サービスの導入で管理部門の作業効率が上昇したばかりでなく、テレワーク率も上昇した。
- 飲食業の事例:IT導入補助金を活用して「テンポスエアー」を導入。顧客のセルフ注文とセルフレジシステムの実現により、釣り銭の受け渡しミスが大幅に減少しただけでなく、顧客単価も上がった。
- 教育・学習支援業の事例:IT導入補助金を利用して、「Microsoft 365 Business Standard」と顧客管理システム「ZOHO CRM スタンダード」を導入。出先でのミーティングやスケジュール管理が可能になり、対面でのミーティング時間の5割削減に成功した。
- 医療業の事例:IT導入補助金を利用して、クラウド型電子カルテの「WiseStaff-9 Plus」を導入。カルテ入力と診療の効率化が図られ、サービスの質が向上した。
IT導入補助金の補助対象
IT導入補助金2022は、通常枠(A類型、B類型)、デジタル化基盤導入類型、複数社連携IT導入類型の4種類があり、それぞれ補助対象や補助額などが異なります。
通常枠とデジタル化基盤導入類型の補助対象となる事業者は、資本金や常時雇用の従業員が一定以下の中小企業と常時雇用の従業員が一定以下の小規模事業者(個人事業主含む)です。
複数社連携IT導入類型は、商工団体、まちづくりや観光振興などの事業を担う団体や中小企業者、複数の中小企業や小規模事業者から成るコンソーシアム(共同企業体)が補助の対象です。複数社連携IT導入類型は、通常枠やデジタル化基盤導入類型とは異なり、複数社から成る組織や複数社をサポートする団体のIT導入を促進することで、地域DXの実現などを後押ししています。
以下の表は、IT導入補助金の通常枠などの補助対象者となる中小企業者と小規模事者の範囲の詳細を示したものです。
【中小企業者のうち補助対象者(※財団法人などその他の法人を除く一部)】
参考:「事業概要|IT導入補助金2022」をもとに作成
【小規模事業者のうち補助対象者】
参考:「事業概要|IT導入補助金2022」をもとに作成
通常枠(A・B類型)
参考:「IT導入補助金2022公式サイト」をもとに作成
通常枠(A類型、B類型)は、生産性向上に役立つITツールの導入を支援するものです。一定の要件はあるものの、ほかの枠と比べるとツールの機能要件が厳しくないため、利用しやすい制度といえるでしょう。
通常枠の、A類型とB類型の大きな違いは、ITツール導入による生産性向上にかかわるプロセス数と賃上げ目標、補助額です。
A類型はITツール導入によって、「顧客対応・販売支援」「会計・財務・経営」など、7種のプロセスのうち1プロセス以上の生産性が向上する見込みがあれば利用できます。一方、B類型は補助額が高額ですが、4プロセス数以上の改善が必要です。
また、賃上げ目標について、B類型は審査時において必須となっていますが、A類型は必須ではなく審査時の加点要素となっている部分が異なります。
デジタル化基盤導入類型
参考:「IT導入補助金2022公式サイト」をもとに作成
デジタル化基盤導入枠は、インボイス制度を控え、企業間取引のデジタル化を図るために設けられた導入枠で、通常枠よりも高い補助率となっています。
通常枠との違いは、導入するITツールに機能要件が加わることです。会計、受発注、決済、ECのいずれかの機能が備わったITツールの導入でなければデジタル化基盤導入類型の申請はできません。該当しないときは、通常枠で申請することになります。
また、デジタル化基盤導入類型は、5万円から50万円以下の補助額と50万円超から350万円までの補助額に補助率が区分されています。50万円超から350万円までの補助額は補助率がより高くなっていますが、機能要件が追加され、デジタル化基盤導入類型の要件となる会計、受発注、決済、EC機能のうち、2機能以上の要件を満たさなければなりません。
通常枠と比べ、満たさなければならない要件が増えますが、補助率が増えるほか、通常枠では補助されないハードウェア購入費も補助対象になります。
ITツールの導入にともない必要なハードウェア購入費は、ほかのITツールの補助額とは別に補助枠が設けられています。パソコンやプリンタなどの購入費の補助額の上限は10万円(補助率1/2)、レジや券売機などの購入費の補助額の上限は20万円(補助率1/2)です。
複数社連携IT導入類型
分析経費 | 取りまとめるための経費 | |||
導入関連費・ハードウェア購入費 ※②のみクラウド利用料の補助は最大1年 |
複数社連携IT導入類型は、地域DXの実現などを目的に、複数社連携のためのITツール導入を支援するものです。ほかの類型と異なり単独での申請はできず、10以上の事業者で構成された事業グループ(参画事業者は中小企業者や小規模事業者等に限る。代表事業者は別途規定有り)が受けられる補助金になります。
複数社連携IT導入類型で補助されるのは、基盤導入経費、消費動向等分析経費、補助事業者が参画事業者をとりまとめるために要した経費です。
基盤導入経費の対象は、デジタル化基盤導入類型と同じで、会計・受発注・決算・ECのいずれかの機能を有するITツールとハードウェア購入費用となります。
消費動向等分析経費は、消費動向分析システムなどのシステムの導入費用やクラウド利用費、ITツール導入にかかわるAIカメラやビーコンなどのハードウェア購入費用が対象です。
複数社連携IT導入類型では、ITツール導入費から事業グループの取りまとめで必要になった会議費などの経費に至るまで、幅広く補助することで、事業者が協力してデジタル化推進を図ることをサポートしています。
IT導入補助金の申請方法と事業者登録
IT導入補助金を利用するための申請方法と、補助対象の事業者をサポートするサービス事業者の登録申請について解説します。
中小企業・小規模事業者等の申請方法
ここでは、IT導入補助金2022の補助金申請の手続きの流れを説明します。
1.募集要項や制度の趣旨について確認する
IT導入補助金の公式サイトに公募要領が掲載されます。公募要領には、補助対象の事業や補助対象経費、補助率や補助上限、交付申請のフロー、審査内容などが細かく記載されます。補助金を受けるには要件を満たす必要がありますので、ITツール導入の前にどのようなものが対象になるかなど、内容をよく確認しておきましょう。複数社連携IT導入類型の適用を受けたい場合は、補助事業グループ(10以上の事業者で構成)の結成、代表となる事業者の決定、外部専門家の選定などの準備も必要です。
2. IT導入支援事業者やITツールを選択する
申請の前段階として、導入するITツールの選択、導入を支援するIT導入支援業者の選定が必要です。自社の経営課題などを整理して、自社に適したツールや支援事業者を精査しましょう。複数社連携IT導入類型では、補助事業計画を立案し、計画に適したITツールの選定や事業者の選定を行っていきます。
3.「gBizIDプライム」アカウント取得
補助金の交付申請では、「gBizIDプライム」のIDとパスワードが必要になります。新規のID発行には2週間程度の時間を要しますので、早めに取得しておきましょう。複数社連携IT導入類型では、代表事業者のみgBizIDプライムを取得します。
4.「SECURITY ACTION」実施
補助金申請の要件を満たすには、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が創設した「SECURITY ACTION」宣言を行わなくてはなりません。これは、事業者自らが情報セキュリティ対策に取り組む姿勢を自己宣言する制度です。IT導入補助金の申請のためには、1つ星、または2つ星での宣言が必要です。SECURITY ACTION自己宣言者サイトで使用規約を確認後、新規申し込みを行い、およそ1~2週間前後で届くロゴマークをダウンロードします。複数社連携IT導入類型では、代表事業者がセキュリティアクション宣言を行います。
5.交付申請
後述するIT導入支援事業者と共同で事業計画を策定し、交付申請を行います。交付申請にはIT導入支援事業者から申請マイページに招待をしてもらう必要があり、招待を受けたページに必要な情報を入力して申請します。複数社連携IT導入類型では、代表事業者が参画事業者の申請情報や書類を取りまとめ、jGrants(補助金の電子申請システム)より交付申請を行わなくてはなりません。
6.ITツールの契約や支払い
補助金を申請するITツールの発注、契約、支払いができるようになるのは、交付決定を受けた後です。交付決定以前に契約などを行って導入したITツールは補助の対象にはなりません。
7.事業実績報告
ITツールの発注、契約、納品、支払いなどが行われたことが分かる書類を提出します。
8.補助金の交付手続き
事業実績報告により補助金額が確定したら、申請マイページで補助金の額を確認できるようになります。事務局による確認が終了した後、補助金が交付されます。
9.事業実施効果報告
実施効果報告のため、事業者は申請マイページに期限までに実施効果についての情報を入力します。
支援者であるITベンダー・サービス事業者の登録
補助事業者のサポートを担うITベンダーやサービス事業者を「IT導入支援事業者」といいます。IT導入支援事業者は、補助事業を実施するうえでの共同事業者であり、事業推進サポートの円滑化を担う事業者です。IT導入支援事業者として登録することで、自社製品を普及できるなどのメリットがあります。IT導入支援事業者になるには、登録申請が必要です。
ここでは、IT導入補助金2022のIT導入支援事業者登録の手続きの流れを説明します。
1.IT導入支援事業者の登録申請
IT導入支援事業者の登録は、単独(法人)での登録、コンソーシアム(共同事業体)での登録の2種類があります。単独で登録した法人が、コンソーシアムの幹事社または構成員として重複して登録することも可能です。登録要綱などで登録要件を満たしていることを確認した後、IT導入補助金の事務局に登録申請を行います。事務局による審査、外部審査委員会による審査が行われ、採否の決定が行われます。
2.ITツール登録
IT事業者ポータルより、補助金交付申請の対象になる自社で取り扱うITツールの登録を行います。登録にあたっては、ITツールの仕様や機能などが分かる明確な資料などの添付が必要です。
3.事業者への提案
小規模事業者や中小企業者に、登録したITツールの提案を行います。
4.交付申請・決定
補助金を申請する中小企業や小規模事業者と共同で申請書を作成し、事務局へ提出します。交付申請にともない、IT導入支援事業者は申請マイページの招待申請を事務局に申請しなくてはなりません。IT事業者ポータルへの入力後、内容を補助事業者に確認してもらい、承認を受けたのちに、事務局へ申請の宣誓を行い提出します。
5.補助事業の実施(ITツールの納入)
交付の決定後に、補助金の対象になるITツールの契約や納入ができるようになります。
6.事業実績報告
ITツールの受注や納付などがあれば、補助事業者は事業実績報告をしなければなりません。IT導入支援事業者は、補助事業者が実績報告を行えるようサポートします。
7.アフターフォロー
IT導入支援事業者は、ITツール納入後も継続的なアフターフォローが求められます。
8.事業実施効果報告
報告内容の入力は補助事業者が行います。IT導入支援事業者は、IT事業者ポータルより報告内容を代理で提出しなくてはなりません。
IT導入補助金申請のスケジュール
IT導入補助金2022の申請は、以下のスケジュールで行われます。
登録申請 | |||
登録申請 | |||
交付申請 | |||
基盤導入類型 | |||
IT導入類型 |
参考:「スケジュール|IT導入補助金2022」をもとに作成
スケジュール表にもあるように、IT導入補助金を利用する事業者の交付申請は、交付申請をした期間に応じて、通常枠は1次締切と2次締切の2回、デジタル化基盤導入類型は1次締切から4次締切まで4回に分けて申請期間が設けられています。
詳細は公式サイトよりご確認ください。
参照:スケジュール|IT導入補助金2022
ITツールを取り入れるならIT導入補助金を活用しよう!
IT導入補助金は、小規模事業者や中小企業のITツールの導入費用を補助する制度です。生産性向上に寄与するITツールの導入をした事業者が利用できる通常枠のほか、毎年通常枠とは別に、補助率の高い枠が設けられることもありますので、募集要項を注意深く確認しておきましょう。
また、補助金の交付は、交付決定後にITツールを導入する事業者が対象です。ITツールの導入を検討中の事業者は、IT導入補助金を活用したITツールの導入ができないか、まずは検討することをおすすめします。

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よくある質問
IT導入補助金とは?
IT導入補助金は、小規模事業者や中小企業者のITツール導入にかかる費用を一部補助することで、生産性向上をサポートする制度です。詳しくはこちらをご覧ください。
IT導入補助金の補助対象は?
補助の対象事業者は中小企業者や小規模事業者(複数社連携IT導入類型は中小企業者などから成る団体やコンソーシアム)で、それぞれの補助枠の条件を満たしたITツールの導入が対象です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。