- 更新日 : 2025年7月14日
勤怠管理の見える化とは?メリットや注意点まで徹底解説
勤怠管理の見える化とは、社員の出退勤状況や労働時間などをデータで把握できる状態にすることです。従業員の勤怠管理に対してお悩みがある場合は、勤怠管理の見える化を検討してみるといいでしょう。
本記事では、勤怠管理の見える化のメリットや注意点まで解説します。
目次
勤怠管理の見える化とは|従業員の勤怠をリアルタイムで管理すること
勤怠管理の見える化とは、従業員の出勤・退勤時間や休憩時間、有給休暇の取得状況などをリアルタイムで把握・管理できる仕組みです。
勤務状況をデータ化することで、誰が・いつ・どれだけ働いているかが明確になり、労働時間の適正管理や不正防止につながります。
また、法令遵守や業務の効率化にも効果があり、事業運営において欠かせない取り組みといえます。勤怠管理については、以下の記事で詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。
勤怠管理で見える化すべき9項目
勤怠管理を見える化する際は、どの項目を対象とするかを事前に明確にしておくことが重要です。把握すべき情報が整理されていれば、勤怠の記録や確認作業もスムーズに行え、管理ミスの防止にもつながります。
以下では、見える化すべき9つの項目を紹介します。
1. 始業時間・終業時間
始業時間・終業時間とは、業務の開始と終了時に打刻された時間を指します。
出社時間や退社時間とは異なり、実際に業務を行っていた時間を示します。出社時間は会社に到着した時刻、退社時間は会社を出た時刻であり、勤怠管理の基準にはなりません。
勤怠管理システムを使えば、始業・終業時間を自動で記録でき、申告ミスやトラブルの防止に役立ちます。始業時間と終業時間の関係性については、以下の記事をあわせてご覧ください。
関連記事:終業時間とは?始業時間との関係やどこまで含まれるか解説
2. 勤務時間・労働時間
勤務時間は、雇用契約や就業規則で定められた始業から終業までの時間です。
一方、労働時間は、労働者が使用者の指揮命令下にある実労働時間を指し、拘束時間から休憩時間を差し引いて算出します。たとえば、勤務時間が9時から18時で休憩が1時間ある場合、労働時間は8時間です。
勤務時間と労働時間を正しく区別して見える化することで、労務管理の適正化と法令遵守につながります。
3. 出勤日数
出勤日数とは、従業員が業務のために実際に出勤した日数を指します。
年次有給休暇の出勤率算定における出勤日数には、遅刻や早退をした日が含まれますが、休日出勤は含まれません。
出勤日数を見える化することで、勤務状況を正確に把握でき、労務管理や給与計算にも活用できます。勤怠の偏りや不備にも早期に気づきやすくなり、対応の精度が高まります。
4. 休憩時間
休憩時間とは、労働義務から解放され、疲労回復などに充てる時間です。
労働基準法第34条では、労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与える必要があると定めています。
休憩時間を見える化することで、労働基準法違反の防止や従業員の健康管理に役立ちます。
休憩時間に関する労働基準法第34条の規定については、以下の記事で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:労働基準法第34条とは?休憩時間をわかりやすく解説
5. 時間外労働時間
時間外労働時間とは、法定労働時間を超えて行われた労働時間です。
労働基準法では、労働時間は1日8時間・週40時間までと定められています。使用者が時間外労働を命じるには、労使協定(36協定)を締結し、労働基準監督署への届出が必要です。
36協定で定める時間外労働には「月45時間・年360時間」の上限があり、上限を超える場合は特別条項が必要です。また、時間外労働には通常25%以上の割増賃金が必要で、月60時間を超えた分は50%以上の割増率が適用されます。
時間外労働時間を見える化することで、労働時間の上限管理や適正な支払いが可能となり、法令違反の防止につながります。
6. 深夜労働時間
深夜労働時間とは、原則として午後10時から午前5時までに行われた労働時間です。
深夜帯に就労した場合は深夜労働とされ、通常賃金の25%以上の割増賃金を支払う必要があります。時間外労働と重なる場合は50%以上、休日労働と重なる場合は60%以上の割増が必要です。
深夜労働時間を見える化することで、該当時間を正確に把握でき、割増賃金の未払いを防げます。とくに日をまたぐ勤務では見落とされやすいため、正確な記録が欠かせません。
深夜労働の計算方法や割増率については、以下の記事で詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。
関連記事:深夜労働とは?割増率や給与の計算方法、深夜労働が禁止される労働者について解説
7. 休日労働時間
休日労働時間とは、労働基準法で定められた法定休日に行われた労働時間を指します。
休日とは、労働契約上で労働義務のない日のことです。労働基準法では1週間に1回、または4週間を通じて4日以上の休日を与えることが義務づけられています。たとえば、法定休日が日曜日と定められている場合、土曜や祝日に労働しても、休日労働には該当しません。
休日労働時間を見える化することで、割増賃金の支払い漏れや管理ミスを防げます。
8. 有給休暇
有給休暇とは、労働者の心身の回復と労働力の維持を目的に、法定休日とは別に毎年一定日数を付与する制度です。
雇入れから6ヶ月継続勤務し、全所定労働日の8割以上を出勤した労働者には、10日の年次有給休暇を付与する義務があります。その後は、1年ごとに付与日数が増え、6年6ヶ月以上の勤続で最大20日となります。
有給休暇は、発生日から2年で時効消滅するため、残日数を見える化し、計画的な取得や消滅防止に活用することが重要です。
有給休暇に関する詳しい情報は、以下の記事で解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:有給休暇はいつから?日数や付与タイミング、前倒しの場合、給与計算まとめ
9. 欠勤
欠勤とは、従業員が会社所定の労働日に出勤しないことを指します。病気や怪我、家庭の事情など、従業員側の都合により本来の出勤日に勤務を休む場合が該当します。
ただし、有給休暇や産前産後休業、育児休業、介護休業など、法律や就業規則に基づく休暇・休業は欠勤には含まれません。
欠勤を見える化することで、業務への影響やほかの従業員への負担を把握しやすくなり、対応の調整や人員配置の最適化にも役立ちます。
欠勤については以下の記事で解説しているため、あわせてご覧ください。
関連記事:欠勤とは?休職・休業・有給との違い、欠勤控除の計算方法を解説
勤怠管理を見える化するなら勤怠管理システムがおすすめ
勤怠管理を見える化するには、勤怠管理システムの導入を検討しましょう。
勤怠管理システムとは、従業員の出退勤や労働時間、休暇などの情報をデジタルで一元管理できる仕組みです。出退勤の打刻や記録、残業時間の集計、休暇申請、シフト作成など、勤怠に関わる業務を効率的に処理できます。
労働者の勤怠状況を正確に把握することは事業者の義務であり、勤怠管理システムの導入により管理の手間を削減し、法令遵守や労務リスクの軽減も可能です。
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勤怠管理システムで見える化するメリット
勤怠管理システムで勤怠状況を見える化することには、メリットがあります。導入前にメリットを把握しておけば、システムの機能を効果的に活用し、勤怠管理の効率化や精度向上につなげることが可能です。
以下では、勤怠管理システムで得られる各メリットを紹介します。
1. 従業員の過重労働を防げる
勤怠管理システムを導入すれば、従業員の労働時間をリアルタイムで把握でき、過重労働の防止に効果的です。
タイムカードや紙の出勤簿など、手作業による管理では、月の途中で正確な労働時間を把握しづらく、残業の上限を超えていたことに後から気づくケースもあります。
勤怠管理システムを使えば、働きすぎている従業員を一目で把握でき、早期の対応や適切なシフト調整が可能になります。過重労働は法令違反だけでなく、健康障害や離職の原因にもなるため、早期の把握が重要です。
2. 法令違反のリスクを回避できる
勤怠管理システムを導入することで、法令違反のリスクを回避できます。
2019年の労働安全衛生法改正により、企業には従業員の労働時間を「客観的な方法」で把握する義務が課されました。勤怠管理システムは、客観的な方法で記録できる手段のひとつです。
勤怠管理システムを使えば、残業時間や有給休暇の取得状況をリアルタイムで確認できるため、長時間労働や年休未取得などの法令違反を未然に防げます。正確な記録と管理ができる環境を整えることで、労務トラブルの抑制にもつながります。
3. 不正打刻・隠れ残業・打刻ミスを防げる
勤怠管理システムを導入することで、不正打刻・隠れ残業・打刻ミスといった勤怠上の不正や誤りを防げます。
タイムカードによる管理では、他人による代理打刻や実際の労働時間と異なる記録がされる不正打刻が発生するおそれがあります。また、残業しているのに申告されない隠れ残業、打刻の忘れ・誤入力といったミスも起こりやすくなるため、注意が必要です。
勤怠管理システムには、不正や改ざんを防ぐ仕組みが搭載されているものも多く、正確な労働時間の記録に役立ちます。
たとえば、指紋や顔、静脈などを読み取る生体認証機能があり、本人確認と打刻を同時に行えます。ほかにも、パソコンにログインして行うWebブラウザ上の打刻もあり、不正や改ざんを防ぐのに勤怠管理システムは効果的です。
4. 業務が効率化できる
勤怠管理システムを導入すれば、従業員の勤怠状況や残業時間、有給取得率などがリアルタイムで見える化され、業務の効率化につながります。
たとえば、残業時間が法定上限に近づいた際にアラートを出す機能であれば、事前対応が可能となり、労務リスクの回避にも効果的です。従業員数が多い企業では、タイムカードによる手動管理では確認や集計に時間がかかり、ミスも発生しやすくなります。
勤怠管理システムで勤怠データを自動化すれば、担当者の負担が軽減されるだけでなく、組織全体としての人件費管理や労務対応のスピードも向上します。
業務効率と労務リスクの両面から改善を図りたい企業にとって、勤怠管理システムは効果的な選択肢です。
勤怠管理を見える化する際の注意点
勤怠管理を見える化する際は、メリットだけでなく注意点も事前に把握しておくことが重要です。注意点を確認せずに運用すると、従業員とのトラブルや情報管理上の問題が発生するおそれがあります。
以下では、勤怠管理の見える化における各注意点について解説します。
1. 見える化する目的を決めておく
勤怠管理を見える化する際は、自社の目的を明確にしておきましょう。
勤怠管理の見える化は、単なる情報の可視化ではなく、課題の解決や業務改善につなげるための手段です。たとえば、リモートワークの勤怠管理を効率化したい場合は、働く場所に関係なく出退勤時刻や労働時間を正確に把握できる仕組みが必要です。
目的を定めることで、必要な機能や運用ルールも明確になります。導入前には、会社や従業員の働き方に合ったシステムかどうかを確認しておきましょう。
2. 運用ルールと操作性を従業員に周知する
勤怠管理を見える化する際は、システムの操作方法や運用ルールを全従業員にしっかり周知しましょう。
勤怠の記録方法や申請手順が曖昧なままだと、入力ミスや申請漏れが発生し、正確な管理ができなくなります。ITに不慣れな従業員には、サポート体制や操作研修が必要になる場合もあります。
統一されたルールで勤怠管理するには、社内説明会の実施やマニュアルの配布などにより、理解を深めることが効果的です。全従業員がスムーズに打刻や申請機能を使えるかどうかを事前に確認しておけば、円滑な運用につながります。
3. 初期費用や運用コストがかかる
勤怠管理を見える化するには、勤怠管理システムの導入が一般的ですが、初期費用や運用コストが発生します。
クラウド型システムでは、一人あたり月額300〜500円程度が目安で、従業員数に応じて割引されることもあります。一方、オンプレミス型は買い切りのため初期費用が高く、保守費用として月額1万円以上かかる場合もあるため事前確認が必要です。
ただし、Excelやタイムカードによる管理でも、集計や確認にかかる人件費が発生するため、コストがまったくかからないわけではありません。
勤怠管理システムの導入には費用がかかりますが、業務の効率化によって全体の管理工数を削減できる点がメリットです。
4. 導入後のサポート体制を事前に確認しておく
勤怠管理の見える化を目的にシステムを導入しても、操作や設定で戸惑う場面は少なくありません。
初期設定がうまくいかない場合や、従業員からの問い合わせ対応が必要な場面では、サポート体制の有無が運用の成功を左右します。そのため、導入前にサポート内容を具体的に確認しておきましょう。
確認の際は、質問への対応スピードや、法改正後に迅速なアップデートの有無など、具体的なサポート内容を事前に確認しておくことが大切です。なかにはチャット対応のみや有料サポートに限られるケースもあるため、サポートの範囲と条件を事前に把握しておく必要があります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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