- 更新日 : 2025年7月14日
特定理由離職者の判定に診断書は必要|離職理由ごとに用意すべき書類も紹介
失業手当を受給する際に特定理由離職者と判定してもらうには、受給手続きにおいて書類や診断書などの資料をハローワークへ提出しなければなりません。
ただ「具体的にはどのような書類が必要?」「離職理由によって必要な書類は決まっている?」などと疑問に思っている人もいるでしょう。
そこで本記事では、特定理由離職者として判定してもらうために必要な資料を離職理由ごとに中心に紹介します。
目次
特定理由離職者に該当する人とは?
特定理由離職者に該当するのは、雇止めにより離職した人、やむを得ない事情で自己都合退職した人です。特定理由離職者の範囲は細かく定められているため、以下より詳しく解説します。
なお、キャリアアップや職場への不満などで自己都合退職した人は一般受給資格者、倒産や解雇で離職した人は特定受給資格者に分類されます。
参考:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準|厚生労働省
雇止めにあった人
有期雇用の契約が満了して更新されずに離職した人は、特定理由離職者に該当します。ただし、更新を希望したにもかかわらず、会社の合意を得られなかった場合に限られるため注意しましょう。
また、雇止めにあった人の一部は特定受給資格者に該当します。具体的には、以下のような人です。
- 有期雇用の契約を更新したことにより3年以上継続して雇用されたが、契約が更新されずに離職した人
- 有期雇用の契約を締結するときに契約が更新されることが明示されていたが、更新されずに離職した人
上記のような人は解雇されたと見なされるため、特定理由離職者ではなく特定受給資格者に分類されます。
やむを得ない事情で退職した人
以下のような、やむを得ない事情で自己都合退職した人も特定理由離職者に該当します。
1 | 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力・聴力・触覚の減退などにより離職した人 |
---|---|
2 | 妊娠、出産、育児などを理由に離職し、雇用保険法の第20条の第1項における受給期間延長措置を受けた人 |
3 | 以下のような、家庭の事情が急変したことが原因で離職した人
|
4 | 配偶者もしくは扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となり離職した人 |
5 | 以下のいずれかが原因で通勤が困難もしくは不可となった人
|
6 | 人員整理で希望退職者が募集されて離職した人 |
参考:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準|厚生労働省
上記のいずれかに該当する人は、自己都合退職だとしても特定理由離職者に分類されます。
特定理由離職者と判定されるために必要な書類とは?
特定理由離職者と判定されるには、書類やハローワーク様式の診断書といった資料が必要です。
必要な書類の具体例を、雇止めにあった人、やむを得ない事情で退職した人、やむを得ない事情で通勤が困難になった人の3つに分けて紹介します。
雇止めにあった人が持参する資料
雇止めにあった人が持参すべき主な資料は、以下の通りです。
- 労働契約書
- 雇入通知書
- 就業規則
労働契約書や雇入通知書には、契約期間に定めがあること、契約の更新や延長の可能性があることなどが明示されている必要があります。
もし「契約の更新なし」といった内容が明記されている場合は、基本的に特定理由離職者には分類されません。
やむを得ない事情で退職した人が持参する資料
自身の病気や家庭の事情の急変など、やむを得ない事情で退職した人は、主に以下のような資料や診断書を持参してください。
離職理由 | 持参すべき資料 |
---|---|
体力の不足や心身の障害などにより離職した人 | ハローワーク様式の診断書など |
妊娠や出産などで離職し、雇用保険法の第20条の第1項における受給期間延長措置を受けた人 | 受給期間延長通知書など |
家庭の事情が急変したことが原因で離職した人 | 介護や看護が必要になった家族の病状や看護・介護が必要であることが分かる診断書など |
配偶者もしくは扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となり離職した人 | 対象となる親族の転勤辞令、住民票の写しなど |
人員整理で希望退職者が募集されて離職した人 | 希望退職の周知文書や覚書など |
それぞれの離職理由を証明できる書類や資料を持参しましょう。
やむを得ない事情で通勤が困難になった人が持参する資料
やむを得ない事情で退職した人のうち、通勤が不可能もしくは困難になった人は、以下の資料を持参しましょう。
離職理由 | 持参すべき資料 |
---|---|
結婚を機に住所を変更することが理由で離職した人 | 住民票の写しなど |
保育所やその他の施設へ通うために離職した人、もしくは親族へ保育を依頼する必要があるために離職した人 | 保育園の入園許可書など |
事業所が通勤困難な地域へ移転したことが原因で離職した人 | 事業所移転の通知、事業所の移転先が分かる資料など |
自身の意思に反して、住所もしくは居所の移転をする羽目になったため離職した人 | 強制立ち退きのお知らせ、天災等の事実を証明できる書類など |
鉄道やバス、その他の交通機関が廃止されたため離職した人、もしくは運行時間が変更されたため離職した人 | 鉄道やバス、その他の運輸機関の廃止に関する書類、運行時間の変更に関する書類など |
事業主に言い渡された転勤や出向に伴う別居を回避するために離職した人 | 労働契約書など転勤の範囲が確認できるもの、転勤辞令、離職者が離職事由を記載した申立書、住民票の写しなど |
配偶者の事業主に言い渡された転勤や出向に伴う別居を回避するために離職した人、もしくは配偶者の再就職により別居を回避するために離職した人 | 配偶者の転勤辞令、住民票の写しなど |
また、上記の資料に加えて、転居後の居所からの通勤時間が分かる乗り換え案内結果などを持参すると窓口での確認がスムーズに進みます。
特定理由離職者が失業手当に申し込む際に必要な書類
失業手当に申し込む際は、特定理由離職者と判定してもらうための資料のほかに必要な書類があります。具体的には以下の書類です。
- 離職票
- 顔写真(マイナンバーカードを提示する場合は不要)
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード、個人番号がある住民票の写しなど)
- 身元確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 個人名義の通帳・キャッシュカード
顔写真に関しては、申し込み以降の手続きでマイナンバーカードを毎回提示する場合は省略できます。
上記の書類がなければ前述の資料や診断書だけあっても申し込めないため、必ず持参してください。
特定理由離職者が失業手当を受給できるまでの流れ
失業手当を受給できるまでの流れは以下の通りです。
- 失業手当を申請する
- 雇用保険受給者初回説明会に参加する
- 原則として2回以上の求職活動を行う
- 失業の認定を受ける
- 失業手当を受給する
申請時に、特定理由離職者と判定してもらうための資料と申し込みに必要な書類を持参してください。申請して7日間の待期期間が終了したら、指定された日時に説明会へ参加します。
説明会後は原則として2回以上の求職活動を行ってから、指定の日にハローワークで失業の認定を受けてください。失業の認定を受けると失業手当を受給できます。
ただし、1回で全額が振り込まれるわけではありません。1回につき、所定給付日数のうち原則28日分が振り込まれるため、認定と受給を数回繰り返すことになります。
なお、通常であれば待期期間満了後に1ヶ月もしくは3ヶ月の給付制限期間が設けられていますが、特定理由離職者と判定された人は給付制限期間がありません。よって、待期期間満了後から失業手当が発生し、初回認定日に失業の認定を受ければ待期期間満了後から失業認定日前日までの日数分、手当を受給できます。
参考:雇用保険の具体的な手続き|ハローワーク インターネットサービス
特定理由離職者の失業手当の給付日数
特定理由離職者の給付日数は、雇止めにあった人とやむを得ない事情で離職した人で異なります。
それぞれの給付日数を、以下より詳しく紹介します。
参考:基本手当の所定給付日数|ハローワークインターネットサービス
雇止めにあった人の給付日数
雇止めにあった人の所定給付日数を、以下の表にまとめました。
年齢/ 雇用保険の加入期間 | 加入期間が1年未満 | 加入期間が1年以上5年未満 | 加入期間が5年以上10年未満 | 加入期間が10年以上20年未満 | 加入期間が20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ー |
30歳以上 35歳未満 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上 45歳未満 | 150日 | 240日 | 270日 | ||
45歳以上 60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上 65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
雇止めにより離職した人の所定給付日数は、年齢や雇用保険の加入期間によって決定されます。
なお、上記の給付日数は2027年3月31日までの暫定措置です。「雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例」による暫定措置で、以前は最大150日でした。
参考:雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要|厚生労働省
やむを得ない事情で退職した人の給付日数
やむを得ない事情で自己都合退職した人の所定給付日数は、以下の通りです。
年齢/雇用保険の加入期間 | 加入期間が1年未満 | 加入期間が1年以上5年未満 | 加入期間が5年以上10年未満 | 加入期間が10年以上20年未満 | 加入期間が20年以上 |
---|---|---|---|---|---|
全年齢 | 90日 | 120日 | 150日 |
やむを得ない事情により離職した人の所定給付日数は、雇用保険に加入していた期間によって決まります。年齢による差はなく、全年齢で共通です。
また、雇止めにあった人の所定給付日数は最大で330日でしたが、やむを得ない事情で離職した人の給付日数は最大で150日と少なめになっています。
特定理由離職者の判定や診断書に関するよくある質問
最後に、特定理由離職者の診断書に関するよくある質問をいくつか紹介します。
診断書はどこでもらえる?
診断書は医師が診察や治療をして発行する書類であるため、病院で作成してもらえます。
病気や怪我などが原因で会社を退職した人は、特定理由離職者と判定してもらうにあたって病院で診断書を作成してもらってください。即日作成してもらえる病院もあれば、作成の申し込みから発行まで長いと2週間から1ヶ月ほどかかる病院もあります。
また、診断書は健康保険の対象外であるため、全額自己負担です。料金は1,000円~10,000円ほどで、地域や診断書の内容によって異なります。
様式については医師独自の診断書でも問題ありませんが、以下の項目が記載されている必要があります。
- 退職時点の状態(仕事の継続が「不可」もしくは「困難」であった)
- 手続き時点の状態(仕事の内容が変われば就労可能/退職後に症状が回復し就労可能となった)
- 健康保険の傷病手当金、労災の休業補償給付の受給歴、証明期間など
上記の内容が確認できれば特定理由離職者と判定してもらうための資料となりえますが、特定理由離職者の判定をスムーズに進めるには、ハローワーク所定の様式を持参のうえ記入してもらうよう伝えましょう。
診断書は在職中のものでも問題ない?
診断書の内容によりますが、在職中の診断書でも特定理由離職者の判定のための資料となるケースがないわけではありません。
ただ、ほとんどの場合、退職時点で仕事の継続が困難であったことは確認できても、退職後に就労可能となったことは確認できません。たとえば、退職時点で休職が必要だったという診断は確認できますが、退職後に働ける状態になったのかは在職中の診断書だけでは不明瞭です。
よって、多くのケースにおいて在職中の診断書は参考資料という扱いになります。
特定理由離職者と判定してもらうには、退職後に仕事を続けられる状態になった旨の診断書が別途必要となります。就職できる能力や健康状態などを確認できる診断書をハローワークの所定の様式で作成してもらってください。
就労の可否を確認できる診断書を提出したうえで、「就職の意思」があると確認できれば受給資格が発生します。
特定理由離職者の判定材料は?
離職理由の決定や離職者の分類は、本人の主張、書類や診断書などの証拠書類、事業主・本人双方の主張を客観的に考慮したうえで判断されます。
決定された離職理由に異議がある場合は、その旨を申し出ることも可能です。
離職票に離職理由を確認する欄があり、異議の「あり」「なし」を選べます。異議を唱えた場合は、その根拠となる資料を提出したうえで、ハローワークによって事実関係が調査されたのちに離職理由が決定されます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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