- 更新日 : 2025年2月21日
アニバーサリー休暇とは?メリット・デメリットや導入事例について解説
「社員のモチベーションを上げたい」「働きやすい職場環境を作りたい」
上記のような課題を抱える企業におすすめなのが、アニバーサリー休暇です。
従業員が誕生日や結婚記念日などの特別な日に休暇を取得できるこの制度は、企業文化の強化や人材確保にも役立つとされています。
本記事では、アニバーサリー休暇の概要、導入するメリット・デメリット、実際に導入している企業事例を詳しく解説します。
働きやすい職場環境を目指す企業担当者は必見です。
目次
アニバーサリー休暇とは自身の記念日等に取得できる休暇制度
アニバーサリー休暇とは、福利厚生の一環として従業員が自身の記念日(誕生日や結婚記念日など)に取得できる特別休暇のひとつです。
この制度は、働き方改革の流れにより、従業員満足度を高め、仕事とプライベートの両立を実現することを目的としています。
たとえば、誕生日に1日休暇を取得することで、家族や友人と特別な時間を過ごすことが可能です。また、結婚記念日や子どもの誕生日など、家族の大切な日にも活用されることが多いでしょう。
アニバーサリー休暇を導入している企業では、年に1~2日の取得を認めており、従業員がリフレッシュする機会を提供しています。また、企業ごとに独自のルールが設定され、休暇を取得した日を有給か無給にするかどうかも異なります。
アニバーサリー休暇の種類
アニバーサリー休暇には、個人や家族の記念日に適用できるさまざまな種類があります。
- 誕生日休暇
- 結婚記念日休暇
- 勤続記念休暇
- 家族記念日休暇
- 子どもの節目記念休暇
- 小売業:結婚記念日+繁忙期以外の任意日
- 医療業界:夜勤後の休暇取得 など
アニバーサリー休暇を取得することで、大切な時間を確保しやすくなります。また、家族に関する記念日としては、子どもの誕生日や親の特別な記念日なども対象となります。さらに、業界ごとの特性に合わせた利用も可能です。
たとえば、小売業では繁忙期を避けて記念日に休暇を設定する例があり、医療業界では夜勤明けにリフレッシュのための休暇を付与するケースがあります。
アニバーサリー休暇が導入されるようになった背景・目的
アニバーサリー休暇が導入される背景には、社会的な価値観の変化と労働環境の改善が求められている現状があります。
近年、ワークライフバランスの重要性が高まり、従業員が仕事と私生活を両立させるニーズが増えています。とくに若い世代を中心に、「仕事だけではなく、自分や家族の時間を大切にしたい」という意識が顕著に出ているでしょう。
また、日本政府は2025年までに年次有給休暇の取得率70%を目標に設定し、国としても取得率向上に取り組んでいます。実際に、2022年(令和4年)では62.1%、前年の2021年の58.3%から上昇しており、徐々に有給休暇の取得率は全体で上がっていると言えるでしょう。(参考:令和5年就労条件総合調査の概況)
また、企業側も優秀な人材を確保し、従業員満足度を向上させるために福利厚生を強化する動きが広がっています。アニバーサリー休暇は、こうした従業員の意識変化に対応するだけでなく、企業の魅力を高める有効な施策として注目されています。
アニバーサリー休暇を導入する3つのメリット
アニバーサリー休暇を導入することで、企業と従業員の双方にメリットがあります。
特定の日に向けて業務を調整できる
アニバーサリー休暇を導入することで、従業員は特定の日に向けて業務を計画的に進めやすくなります。たとえば、重要な記念日がある場合、その日を目標にタスクを効率的に片付けようとする意識が働くでしょう。結果として、締切意識が高まり、業務の効率化促進につながります。
さらに、休暇取得に向けた調整作業は、チーム内のコミュニケーションを深める機会にもなります。アニバーサリー休暇は、従業員だけでなく職場全体の生産性向上を目標にしている企業におすすめの制度です。
従業員の満足度が向上する
アニバーサリー休暇の導入は、従業員の満足度を大幅に向上させる効果があります。この制度があることで、従業員は自身の特別な日を大切にできる環境を実感し、仕事に対するモチベーションにもつながるでしょう。
たとえば、誕生日や結婚記念日を家族と過ごすことで、リフレッシュした気持ちで仕事に戻ることが可能です。
また、特別な休暇があることで、他の休暇も取りやすくなり、職場全体にポジティブな雰囲気を作りやすくなるでしょう。結果として、従業員が「この会社で働き続けたい」と感じ、離職率の低下にもつながります。従業員満足度を高めたい企業にとって、アニバーサリー休暇制度は有効な施策のひとつです。
採用活動へのアピールポイントになる
アニバーサリー休暇を導入することは、企業の採用活動において大きなアピールポイントとなります。採用活動時に、求職者に以下のポイントを想起させられるでしょう。
- 企業の柔軟な働き方をアピール
- 福利厚生が充実していることを提示
- 採用サイトやパンフレットでのPRが可能
- 他社との差別化要素を強化
- 離職率の低下をアピール
求職者にとって、アニバーサリー休暇制度は「従業員を大切にする企業」として認識され、応募動機を高める要因になります。
また、従業員が自分の働きが会社に認められていると感じることで、会社への忠誠心が強まり、離職率の低下にもつながるでしょう。
求職者が企業の福利厚生を比較する際に、アニバーサリー休暇がある会社が他社よりも魅力的に映ることは明らかです。企業のブランド力が向上し、優秀な人材の確保にもつながるでしょう。人材獲得競争が激化する中で、このような差別化施策は効果的です。
アニバーサリー休暇を導入する3つのデメリット
アニバーサリー休暇を導入することには、一定のデメリットも伴います。
従業員ごとの管理コストが発生する
アニバーサリー休暇の導入により、従業員個々人の休暇を管理する手間とコストが発生します。各従業員の記念日を把握し、スケジュール管理を徹底しなければなりません。追加のリソースが必要となり、人事部門に負担がかかる可能性があるでしょう。とくに、従業員数が多い企業では、管理コストがさらに増加します。具体的には以下の通りです。
- 休暇スケジュールの記録と管理が煩雑化
- 代替要員の確保が必要
- 公平性への配慮が必要
こうした課題に対処するためには、効率的な管理システムを導入するか、簡素化されたルールを設定することが求められます。休暇管理用のアプリケーションやエクセルを活用して管理表を作成する企業も少なくありません。制度導入を検討している企業は、ぜひ管理ツールの利用を検討しましょう。
業務効率が低下する可能性がある
アニバーサリー休暇の運用によって、業務効率が低下するリスクがあります。とくに、繁忙期や重要なプロジェクトの期間中に休暇取得が集中すると、業務の進行に支障をきたす可能性も少なくありません。
また、事前申請のルールを整備し、シフト調整のフローを明確にしないと、計画的な運用が難しくなるでしょう。たとえば、チーム全員が同時期に休暇を希望した場合、業務が滞るリスクが顕著に表れます。
業務に支障が出るリスクを回避するためには、休暇取得のガイドラインを整え、繁忙期には適切な制限を設けることが重要です。柔軟な運用体制を確立することで、業務効率を維持しながら制度を活用できます。
一度導入すると撤廃しづらい
アニバーサリー休暇は、一度導入すると撤廃が難しい制度となる可能性があります。この制度が従業員にとって「権利」として認識されると、廃止や変更を行う際に強い反発を招く恐れがあるからです。
また、運用上の柔軟性を失い、企業が特別な状況に対応しにくくなるケースも考えられるでしょう。たとえば、経営状況が悪化した際に制度を見直そうとしても、従業員の不満が高まり、企業イメージが損なわれるリスクです。
このような問題を避けるためには、導入時に明確な条件や対象範囲を設定し、制度の柔軟性を確保しておくことが重要です。事前に十分な検討を行い、慎重に運用を進めることが成功の鍵となります。
アニバーサリー休暇を導入する流れ
アニバーサリー休暇を導入する際には、制度の設計から従業員への周知まで、段階的に進めることが重要です。順番に説明します。
アニバーサリー休暇の対象範囲を設定する
アニバーサリー休暇を導入する際は、まず対象範囲を明確に設定する必要があります。対象となる従業員の範囲や、適用される記念日(誕生日、結婚記念日など)を具体的に決めましょう。
たとえば、正社員だけでなく、派遣社員や契約社員、アルバイトも対象とするのかを事前に検討します。また、制度の公平性を保つため、対象範囲や取得ルールを明文化し、社内で共有することが重要です。「誰がどの条件で利用できるのか」が明確になり、従業員の納得感を高められます。公平性を意識したルール設計が、制度運用の成功につながるでしょう。
取得条件について決める
アニバーサリー休暇を運用するためには、具体的な取得条件を設定する必要があります。たとえば、年間に何日利用可能か、記念日の前後何日以内に取得できるかといったルールを明確にします。
また、休暇を利用する際の事前申請の締切日や、申請手順についても決めておきましょう。たとえば、「取得希望日の1週間前までに申請を行う」「専用フォームを利用して申請を提出する」といった具体的なルールが挙げられます。
従業員がスムーズに制度を利用できるだけでなく、管理者側の運用負担も軽減できます。事前にルールを整備することで、制度の円滑な運用が実現するでしょう。
就業規則に追記する
アニバーサリー休暇を正式な社内制度として運用するためには、就業規則に追記することが不可欠です。
制度の内容や利用条件を明文化することで、全従業員が同じ基準で休暇を利用できるようになります。また、制度導入後は、社内メールやイントラネット、説明会などを活用して従業員全員に新制度を周知しましょう。
たとえば、「イントラネットでFAQを公開」「部門ごとに説明会を実施」などの手段も効果的です。こうした取り組みによって、従業員が制度を正しく理解し、積極的に活用することが期待できます。制度導入の際には、周知活動にも十分な時間とリソースを割くことが大切です。
アニバーサリー休暇を実際に導入している企業事例
アニバーサリー休暇を導入している企業は、従業員の満足度向上や働きやすい環境づくりに力を入れています。
株式会社リクルートエージェント
株式会社リクルートエージェントでは、勤続1年以上の従業員を対象に、記念日に取得可能な有給休暇を付与しています。
この休暇は従業員が特別な日を大切にできるように設計されており、4月1日時点で在籍1年以上の社員を対象に、年次有給休暇を連続4日以上利用することで5万円が支給されます。1年度で1回、毎年度利用が可能なため、従業員のプライベートを尊重している制度と言えるでしょう。
たとえば、誕生日や結婚記念日を含む連休を取ることで、家族との時間を充実させられます。リクルートの取り組みは、従業員のリフレッシュだけでなく、長期的なモチベーション維持にも寄与しているでしょう。
株式会社タカラトミー
株式会社タカラトミーでは、「誕生日休暇」や「結婚記念日休暇」など、特別な日のための休暇制度を導入しています。
さらに、リフレッシュ休暇や半日有休制度など他の制度も設けており、家族全体で記念日を祝える配慮と言えるでしょう。たとえば、子どもの誕生日に家族全員で特別な時間を過ごすことが可能です。株式会社タカラトミーの制度は、家庭と仕事を両立させたい従業員に大きな支持を受けています。
株式会社エイジェックスカンパニーズ
株式会社エイジェックスカンパニーズでは、家族の誕⽣⽇、記念⽇などの前後1ヶ⽉以内に、有給休暇を1⽇取得すると3万円の特別⼿当が⽀給されます。特別⼿当に加え、リフレッシュ休暇や産休・育休などの制度を取り入れているため、従業員のモチベーションの向上にもつながっているでしょう。
従業員の中には、結婚記念日に休暇を取得し、旅行や特別なイベントを楽しむ人が多く見られます。この制度は、企業が従業員の生活を重視している姿勢を示すものであり、職場全体の雰囲気の向上にもつながっているでしょう。
参考:ABOUT US | エイジェックスグループ 新卒採用サイト
アニバーサリー休暇を導入してワークライフバランスを実現しよう
アニバーサリー休暇は、従業員が大切な記念日を重視できるだけでなく、企業にとっても離職率の低下やモチベーション向上といったメリットをもたらします。
今回紹介した企業事例を参考に、自社でも導入を検討してみてはいかがでしょうか。働きやすい環境を整えることで、従業員満足度の向上と企業の成長を実現できます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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