• 更新日 : 2025年7月18日

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書はどこでもらえる?会社・税務署・ダウンロードの方法

給与を受け取っている会社員が年末調整で提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、所得税や住民税の計算に欠かせない重要な書類です。しかし、「どこでもらえるの?」「会社からもらえなかったらどうする?」といった疑問を持つ人も少なくありません。この記事では、扶養控除等申告書をどこで入手できるのか、一般的な入手方法や自分でダウンロードする必要があるケースなどをわかりやすく解説します。

目次

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書はどこでもらえる?

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、一般的に勤務先から受け取りますが、自分でダウンロードすることも可能です。

勤務先の会社から受け取る

勤務先から書類を受け取れなかった場合や紛失した場合は、国税庁の公式ウェブサイトから最新の申告書をPDF形式でダウンロードできます。記入例や手引きも同時に公開されているため、自分で記入して提出することも難しくありません。最近では、紙ではなく社内の人事システムや電子申告サービス(e-Tax連携システムなど)を通じて電子的に提出できる企業も増えています。

国税庁のウェブサイトからダウンロード

会社から申告書を受け取れない場合や紛失した場合でも、国税庁のウェブサイトからPDF形式でダウンロードできます。国税庁のウェブサイトでは、最新の申告書だけでなく、記入例や手引きも提供されているため、安心して作成できます。令和6年分(2024年)だけでなく、令和7年分(2025年)の申告書が既に公開されています。

参考:A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|国税庁

自分で扶養控除等(異動)申告書の準備が必要になるケース

扶養控除等(異動)申告書は、通常は勤務先から配布されるものですが、すべての給与所得者に必ず配られるとは限りません。勤務形態や雇用状況、勤務先の体制によっては、申告書が配布されなかったり、自分で用意しなければならないケースもあります。

申告書を受け取れなかった場合でも、提出しなければ税金が多く引かれてしまうリスクがあるため、当てはまる方は早めの対応が重要です。

12月入社など転職したばかりの場合

転職したタイミングによっては、新しい勤務先で年末調整を受けられない場合があります。たとえば、12月に入社した従業員で、年内に給与の支払がない場合には、会社側が年末調整を行わないケースがあります。

雇用形態が単発・短期・不定期で、年末調整の対象から外れている場合

雇用期間が数ヶ月程度の短期アルバイトや、勤務日数・時間が不定期なパートタイム労働者は、会社側で年末調整の対象外とされることがあります。

特に、年末に在籍していない(例:11月で退職)場合や、年収が少額で源泉徴収されていないようなケースでは、会社が申告書を配布しないこともあります。

副業先や、複数の勤務先のうち「主たる給与支払者」でない職場(乙欄扱い)

給与を複数の会社から受け取っている場合、扶養控除等申告書を提出できるのは1か所(主たる給与支払者)のみです。それ以外の職場(副業先など)は乙欄で課税され、申告書の提出対象外とされます。

このため、副業先では申告書自体が配布されない、あるいは「提出しないでください」と案内されることが一般的です。

年末調整の運用に不慣れな小規模事業者などのケース

従業員数が少ない小規模企業や個人事業主のもとで働いている場合、年末調整の手続きが徹底されていないことがあります。申告書の配布や提出管理があいまいで、従業員が自分で気づいて用意する必要があるケースも。

中には、事業主が「自分で確定申告してね」と案内してくる場合もあり、会社からの積極的な案内がないこともあります。

会社からの配布前に紛失してしまった場合など

会社がしっかり配布していても、個人が受け取り忘れたり、書類をなくしてしまった場合も自分で申告書を用意する必要があります。最近では紙の書類ではなく、社内のWebシステムやメールで配布されるケースもあるため、見落としに注意が必要です。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書はどこに提出する?

作成した扶養控除等申告書は、勤務先の人事部や給与担当部署に提出します。従業員が直接税務署に提出する必要はありません。提出方法は、紙での提出や、会社によっては電子的なシステムを利用する場合もあります。

提出期限は、一般的にその年の最初の給与が支払われる前日、または年末調整の案内に従って会社から指示があります。年の途中で扶養親族の状況などに異動があった場合は、その異動があった後、速やかに提出する必要があります。

複数の勤務先から給与を受け取っている場合は、原則として、主たる収入を得ている一ヶ所の勤務先にのみ提出します。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書とは

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出することで、給与を受け取る人が扶養親族の有無や状況を勤務先に伝えます。これにより、勤務先が毎月の所得税の源泉徴収額を正しく計算し、年末には過不足の調整(年末調整)を行えるようになります。所得税法に基づき、給与所得者はこの申告書を適切に提出する義務があります。

所得税・住民税の扶養控除に関わる基礎資料

この申告書は、所得税だけでなく、住民税の控除内容にも影響する書類です。住民税に関する事項も記載することになるため、一度の提出で所得税と住民税の両方に関する扶養情報を届け出ることができるようになっています。

年末調整の基礎となる情報を届け出る

提出された申告書は、会社が年末調整を行う際に必要です。これにより、以下のような控除を受けることが可能になります。

例えば、配偶者や子どもなどの扶養親族がいる場合、その人数や所得に応じて控除額が変わるため、正しく申告することで税額が軽減されます。

提出は義務、記載内容は正確に

この申告書の提出は、会社員にとって事実上の義務とされています。正しく提出しなかった場合、扶養控除が受けられず、本来よりも多く税金を引かれてしまう恐れがあります。また、記載する内容(氏名、生年月日、マイナンバー、親族との関係性など)に誤りがあると、税務処理に支障が出ることもあるため、記入時は慎重に確認することが大切です。

提出タイミングは「最初の給与支払い前」と「年末調整時」

一般的には、入社時(初回給与支払い前)と年末調整の案内があった時期(11月ごろ)に提出を求められます。また、扶養親族の増減や、配偶者の収入状況に変化があった場合は、その都度「異動」として修正して提出する必要があります。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書が必要な人、不要な人

扶養控除等申告書は、年末調整を行う上で重要な書類であり、原則として給与所得のある人は提出する必要があります。

扶養控除等申告書は、すべての給与所得者が必要というわけではありません。給与の有無・扶養親族の有無・年末調整を受けるかどうかなどの条件によって、提出が必要な人と不要な人が分かれます。以下に該当するかどうかで、自分が対象かを判断できます。

扶養控除等(異動)申告の提出が必要な人

  1. 給与所得があり、年末調整を受ける人(=会社員など)
    会社などから給与を受け取っている人で、年末調整の対象となる場合は、原則として扶養控除等申告書の提出が必要です。これは、会社が年末調整を行うために、従業員の扶養親族等の情報を把握する必要があるためです。
  2. 扶養親族がいる人
    配偶者や子ども、親などを扶養している場合は、扶養控除や配偶者控除などを受けるために、申告書への記入が必須です。扶養している人数や相手の所得によって控除額が変わるため、正確な情報を記載して提出する必要があります。
  3.  扶養親族がいない場合でも年末調整を受ける人
    扶養親族がいない人も、年末調整の対象であれば、申告書の提出が必要です。申告書には本人情報や世帯主の情報、配偶者の有無なども記載するため、「扶養がいない=提出不要」とはなりません。

扶養控除等(異動)申告の提出が不要な人

  1. 給与所得がない人
    会社や団体からの給与を受け取っていない人は、扶養控除等申告書を提出する必要はありません。たとえば専業主婦(主夫)や無職の人、年金のみで生活している高齢者などが該当します。
  2. 年収2,000万円超の給与所得者
    所得税法により、年収が2,000万円を超える給与所得者は年末調整の対象外とされており、扶養控除等申告書の提出も不要になります。その代わり、自分で確定申告を行い、必要な控除を申告することになります。
  3. その年の12月の給与支給前に退職した人
    たとえば、9月や10月に退職し、12月まで再就職していない場合、その人は年末調整を受ける対象ではないため、申告書の提出は不要です。年の途中での退職により、会社側が年末調整を行わないケースに該当します。
  4. 年末調整を受けない人(副業など)
    副業先などで源泉徴収されていても、年末調整を受けない(または受けられない)勤務先に勤めている人も、基本的には申告書の提出は不要です。ただし、その場合は、翌年の確定申告で扶養控除などを申請する必要があります。

複数の勤務先がある場合の注意点

複数の会社やアルバイト先などから給与を受け取っている場合、扶養控除等申告書を提出できるのは「主たる勤務先(本業)」の1ヶ所のみです。他の副業先には提出できません。そのため、副業先では乙欄(高めの税率)で源泉徴収されることになります。

給与所得者の扶養控除等申告書を提出しないとどうなる?

扶養控除等申告書を勤務先に提出しないと、所得税や年末調整において不利な扱いや、下のような具体的な影響があります。

1. 所得税が高くなる(=「乙欄」で課税される)

通常、会社は扶養控除等申告書をもとに、あなたに適用される税率(「甲欄」)で源泉徴収税額を計算します。しかし、申告書を提出しない場合は、税率の高い「乙欄」が適用されます。

税区分税率の特徴適用条件
甲欄通常の税率申告書を提出した人
乙欄高めの税率申告書を提出していない人、副業先など

つまり、毎月の手取り収入が少なくなる可能性があります。

2. 扶養控除・配偶者控除などが受けられない

申告書を提出しないと、扶養親族の情報が会社に伝わらず、本来受けられるはずの扶養控除や配偶者控除が適用されません。その結果、税金を多く払うことになる恐れがあります。

3. 年末調整が受けられない

扶養控除等申告書は、年末調整を行うための基礎資料です。これが提出されていないと、会社側は年末調整を実施できません。

その場合、あなたは自分で確定申告を行い、控除を申請し直す必要があります。手間も時間もかかるため、原則として会社に申告書を提出して処理してもらう方がはるかにスムーズです。

4. 住民税にも影響する

この申告書は、所得税と同時に住民税の扶養親族情報も兼ねています。提出しないと、住民税でも正しい控除が受けられず、翌年6月以降の住民税が高くなる可能性があります。

5. 確定申告で取り戻すことができる

年末調整を受けられなかった場合でも、翌年2月中旬〜3月15日頃に確定申告を行えば、必要な控除を適用して税金の還付を受けることが可能です。

確定申告でできること
  • 申告書に記入する予定だった扶養親族情報を改めて申告できる
  • 過剰に引かれていた源泉所得税の一部を還付してもらえる
  • 所得控除(配偶者・扶養・医療費など)を申告して正しい納税額に調整できる

給与所得者の扶養控除等申告書を出せなかったときの確定申告のやり方

会社に申告書を提出できなかったために、年末調整で扶養控除などが反映されなかった場合でも、確定申告を行えば正しい税額に修正し、払いすぎた税金の還付を受けることが可能です。

確定申告で改めて申告できる主な所得控除

確定申告を行う際の具体的な流れは次のとおりです。

  1. 勤務先から源泉徴収票を受け取る
    → 毎年12月下旬~1月下旬頃に交付されます。年収や源泉徴収税額、社会保険料額などが記載されています。これが申告の基礎資料になります。
  2. 扶養親族や配偶者の情報を確認する
    → 氏名、生年月日、続柄、年間所得の見積額、マイナンバー、同居・別居の別など。扶養控除や配偶者控除の適用要件に該当するかを事前に整理しておきます。
  3. 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で申告書を作成する
    → 所得や控除、扶養情報を入力すると、自動で税額が計算されます。控除欄で該当する項目(例:扶養控除・配偶者控除など)を正確に入力します。途中で保存も可能です。
  4. マイナンバー関連書類と本人確認書類を用意する
    → e-Taxで提出する場合はマイナンバーカード+対応スマホやICカードリーダーが必要。書面提出の場合はマイナンバー通知カード+運転免許証などのコピーを添付します。
  5. 作成した確定申告書を提出する
    → 提出方法は「e-Tax(ネット上)」「郵送」「税務署に持参」の3通り。控除を申告する場合、証明書類(生命保険料控除証明書、医療費の明細書など)も必要に応じて添付します。
  6. 還付金の振込を待つ
    → 申告後、税務署の審査を経て還付手続きが進みます。通常は1〜2ヶ月程度で、申告書に記載した本人名義の口座へ振り込まれます。

還付申告なら5年以内まで申告可能です。今年に限らず、過去に扶養控除申告書を出しておらず控除が漏れていた場合でも、5年以内であれば遡って還付申告できます。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は会社以外からも入手できる

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、通常は勤務先の会社から配布されることが一般的です。ただし、勤務状況や雇用形態、タイミングなどによっては、会社から配布されない場合や、自分で用意する必要が出てくる場合もあります。

申告書が配布されるかどうか不安な方は、会社の人事や給与担当に確認しましょう。確認しても配布されない、あるいは配布時期に間に合わない場合は、自分で国税庁のサイトから取得し、記入・提出することができます。

正しく提出することで、扶養控除をはじめとする各種控除を受けることができ、税負担を軽減することが可能です。したがって、給与所得者は、扶養控除等申告書の内容を正確に理解し、適切な時期に勤務先に提出することが大切です。


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