• 更新日 : 2023年5月12日

源泉所得税の勘定科目は預り金?仕訳や会計処理の注意点を解説

源泉所得税の勘定科目は預り金?仕訳や会計処理の注意点を解説

給与計算を行う際、従業員に毎月支払う給与から源泉徴収税を天引きする必要があるため、仕訳の作業が発生します。給与支払い時の源泉所得税は、預り金の勘定科目で会計処理を行います。

給与から天引きしたタイミング以外にも、源泉所得税の納付、年末調整時にも仕訳が必要です。ここでは、源泉所得税の会計処理の方法について解説します。

源泉所得税の勘定科目

従業員の毎月の給与から控除した源泉所得税は、適切に仕訳をする必要があります。源泉所得税は納付までの間プールしておく必要があるため、勘定科目は「租税公課」ではなく、「預り金」として処理しましょう。なお、源泉徴収税の納付期限は、原則として給与を支払った月の翌月の10日です。

源泉所得税の仕訳例

源泉所得税の仕訳のタイミングには、給与の支払い時のほか、源泉所得税を納付するタイミング、そして年末調整があります。以下で、法人が従業員の源泉所得税を仕訳する際の勘定科目について見てみましょう。

給与支払いのタイミング

毎月の給与支払いのタイミングでは、源泉所得税は「預り金」として処理を行います。なお、給与から控除する社会保険料についても、源泉徴収税と同じく、納付までの間、預り金や法定福利費の勘定科目で仕訳を行います。

【給与25万円、源泉徴収税5千円、社会保険料4万円とした場合の仕訳例】

借方貸方摘要
給与250,000円普通預金205,000円給与
預り金5,000円源泉所得税等
預り金40,000円社会保険料

源泉所得税の納付時

源泉所得税は、原則として給与支払いの翌月10日までに納付します。源泉所得税を納付した場合には、「預り金」の勘定科目で仕訳を実行します。

借方貸方摘要
預り金5,000円現金5,000円源泉所得税等

年末調整時の仕訳

年末調整時には毎月の給与から控除した源泉徴収税額の合計額と、その年の1年間に支払った給与・賞与の合計額から正確に計算した所得税との差額を精算しなければなりません。そのため、還付もしくは追加徴収が必要なケースで仕訳が発生します。

【還付金が発生するケース】

年末調整で徴収金額が1万円多かった場合に還付金を給与で清算する際には、以下のように借方勘定科目と貸方勘定科目の双方に「預り金」を計上して仕訳を行います。

借方貸方摘要
給与250,000円普通預金215,000円給与
預り金5,000円源泉徴収税等
預り金40,000円社会保険料
預り金10,000円年末調整還付金

還付金を手渡す場合には、上記表の給与の振込額は20.5万円となります。通常の月と同じ処理を行い、従業員から預かっていた金額である「預り金」を取り崩して現金を手渡すことになるため、以下のようになります。

借方摘要
預り金10,000円現金10,000円年末調整還付金

【追加徴収が必要なケース】

年末調整で1万円の納付額が不足するために源泉所得税の追加徴収が必要となった場合、12月に従業員の給与を支払う時点で天引きします。具体的な仕訳方法は以下の通りです。

借方貸方摘要
給与250,000円普通預金195,000円給与
預り金5,000円源泉徴収税等
預り金40,000円社会保険料
預り金10,000円年末調整不足額

源泉徴収の会計処理で注意すべきケース

源泉徴収税は、上述のような従業員の給与だけではなく、弁護士や税理士等に報酬を支払う場合にも発生します。

たとえば、企業や個人事業主が税理士と個人契約を結び、税理士報酬を支払った場合は源泉徴収の対象です。一方、税理士法人に報酬を支払う際には、法人税が発生するため源泉徴収の必要はないとされます。また、従業員を雇用しない個人事業主は源泉徴収義務者ではないため、税理士報酬から源泉徴収を行う必要はありません。

個人事業主の報酬で源泉徴収されるケース

もし個人事業主で、取引先から支払われた報酬が源泉徴収されている場合、正しく仕訳することが大切です。なぜなら、源泉徴収税は所得税の前払いであり、きちんと会計処理を行い源泉所得税額を計算しておくことで、正しい確定申告が行えるからです。

個人事業主の報酬では、以下のような報酬が源泉徴収の対象となります。

  1. 原稿料や講演料など

    ただし、懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等については、一人に対して1回に支払う金額が50,000円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。

  2. 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
  3. 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  4. プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
  5. 映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
  6. ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
  7. プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
  8. 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

引用:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁

源泉徴収税の対象には所得税のほか、復興特別所得税も含まれます。入金時に差し引かれた源泉所得税は、「仮払金」や「仮払税金」「事業主貸」の勘定科目で仕訳を行います。

【個人事業主が売上を請求するときの仕訳】

個人事業主が、原稿料として受け取る報酬を取引先に請求した際の会計処理は以下のようになります。

借方貸方摘要
売掛金20,000円売上高20,000円原稿料

※消費税を考慮せずに計算しています。


【個人事業主の売上が入金されたときの仕訳】

売上が入金された場合、入金された金額と源泉徴収された金額を分けて記帳します。

借方貸方摘要
普通預金17,985円売掛金20,000円原稿料
仮払金2,042円源泉所得税等

※消費税を考慮せずに計算しています。

個人事業主の源泉徴収の流れ

個人事業主が支払う所得税が最終的に確定するのは、確定申告時です。取引先が源泉徴収した所得税は、あくまで先払いのため、確定申告で清算し、還付金がある場合には払い戻しを受けることができます。個人事業主の源泉徴収の流れは以下の通りです。

  1. 取引先に報酬を請求する際、源泉徴収税額を差し引いた請求書を発行する
  2. 取引先は源泉所得税額を差し引いた金額を報酬として振り込む
  3. 個人事業主は、入金された金額と源泉徴収税額を正しく仕訳する
  4. 取引先が、源泉所得税額を国に納付する
  5. 個人事業主が翌年に確定申告を行った際、差し引かれた源泉徴収税額を精算する

とくに、はじめて確定申告を行うフリーランスの人などは、毎回の支払いで源泉徴収された金額が明確になるように、正しい会計処理を行いましょう。

源泉所得税の仕訳について理解を深め、適切に会計処理を行いましょう!

毎月の給与から控除する源泉所得税は、納付まで企業が従業員から預かっているだけの経費とも異なる一次的な預り金です。毎月の給与支払いや納付の際に正しく処理をすることで、スムーズな年末調整が可能になります。

個人事業主の人も、源泉徴収税は所得税の前払いであり、取引先から支払われた報酬から源泉徴収されている場合には、正しい確定申告を行うために適切な仕訳の処理をする必要があります。仕訳の方法について理解を深め、適切な会計処理を行いましょう。

よくある質問

源泉所得税の勘定科目は何ですか?

給与から天引きする源泉所得税は、通常「預り金」として仕訳します。給与を支払った際、納付のタイミング、年末調整のタイミングで正しく会計処理を行う必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。

源泉徴収の会計処理で注意すべきケースはありますか?

個人事業主などが確定申告を行う場合には、源泉徴収された金額も正しく仕訳しましょう。振り込まれた報酬だけではなく、源泉徴収額を「仮払金」等で仕訳しておくことで、スムーズな確定申告が可能になります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事